Kuniのウィンディ・シティへの手紙

シカゴ駐在生活を振り返りながら、帰国子女動向、日本の教育、アート、音楽、芸能、社会問題、日常生活等の情報を発信。

シカゴブルースフェスティバル2日目~ココ・テイラーバンドでの菊田俊介の存在感光る!

2008-06-09 | スポーツ一般・娯楽
シカゴブルースフェスティバルの2日目のメインステージ、ペトリロ・ミュージック・シェルのトリを勤めるブルースの女王、ココ・テイラーと彼女のバンド「ブルーマシーン」の演奏は、夜の8時35分からだった。

ダウンタウンに行く快感を覚えてしまったやっちゃんと私は、「菊田さんと話さないことには、気持ちがおさまらない!もういくっきゃない!」とばかり、綿密な計画を立る。やっちゃんは、菊田氏とどうしても一緒に写真を撮りたいらしい。

上の息子と下の息子の友達を呼び、楽しい気分で金曜日の午後を過ごさせ、その間に必死で晩御飯の支度。上の息子に下の息子の面倒を見るように頼むと、いつものように「任せておいて!」私よりきちんと面倒を見て、早く寝かせつけられる有能で頼りになるベビーシッターである。金曜日の6時半のメトラに乗り、やっちゃんと私は、再びグランドパークをめざす。

しかし、しかし、着いたら、すごい人、人、人。木曜日の昼とは、えらい違いだ。メインのステージの場所には、すぐ着いたのだが、人の多さに圧倒される。8時半より前に着いたので、その前のエディ・クリアウオーターズ・ウェストサイド・ストラットとそのゲストたちが演奏している。はるかかなたにステージが見える。こうなったら、前に進むしかない!とばかり、私たちは、ずんずんひたすら人をかき分け進む。真ん中あたりにきて、大きなスクリーンがあるのに気づく。



本格的な大規模コンサートだ。でも、みんなローンチェアでゆったり座ってビールを飲んでわいわいやってる。バカでかい屋根を立てて、日よけをしているグループもいて、こんなのありって感じ。まるで、キャンプみたいなノリ。



だいぶ前にやってきたが、まだまだステージのプレイヤーが小さく見える。やっとステージの前の座る場所を見つける。セキュリティの人がいる。チケットが必要なのかしら?えーい、はいってしまえ!笑顔、笑顔。不安気なやっちゃんをリードしながら、入る。手にスタンプを押されて、入った。なんと、まだまだ席があるではないか!やっちゃんとめまぐるしく席を探す。





そのとき、ステージには、なんと日本でも人気のオーティス・クレイが紹介されているではないか!何人かの人たちがステージ前で写真を撮っている。私も写真もとらないと!またしても、ずかずか一番前の柵に行って、必死で撮る。ここでは、何ショットか撮って、自分の席にもどればいいのだそうだ。またまた、なんて、太っ腹。これもすべて、タダよ!主役のエディ・クリアウオーターは、20年間もシカゴのブルースシーンで活躍するベテラン左ききギタリスト。



やっちゃんと真ん中の前から10列目ぐらいに2席確保し、コンサートを見ながら、夕飯を大急ぎで食べる。誰も食べてないよ。でもかまうものか!腹ごしらえをしないと、菊田さんと話せないもんねー!

ココ・テイラーとそのバンドの紹介のときは、話す人の横で、手話でも紹介されたのに感動する。



ステージ上には、昨日私たちを興奮させた菊田氏がまたしても前日と似たような透けた白いステージ衣装と帽子をかぶっている。「うーん、洗濯してないのかなあ。」「いや、きっと何枚も同じ衣装を持っているのよ。」やっちゃんと私はぶつぶつうるさい。



いよいよ演奏が始まった。さすがに、ココ・テイラーはでていない。主役の前座といった感じ。巨大な人波の渦の熱気が、一気に菊田氏の演奏に向けられる。1人の日本人のギター演奏が、これほどの大観衆の注目をとらえる。菊田氏が歌も歌う。



かなりの人たちが、菊田氏を認知しているのか、日本人がブルースを表現しているのに驚くわけでもなく、白人がブルースギターを弾いているのと同じように、その巧みなテクニックに酔いしれている。菊田氏のブルースギターは、「東洋人でもおまえらと同じハートを持っているんだよ!」と語りかける。

コンサート会場が盛り上がってきたところで、いよいよシカゴブルースの女王、ココ・テイラーのお出まし。すごい貫禄!光輝く金色のピタッとしたドレスで登場。泣く子も黙るとは、このことか!「地球が震えるようなパワフルな歌声」とカタログに表現される通り、そのド迫力の歌声は、屋外の巨大会場に似合う。



「アイム・ア・ウーマン」という歌は、まさに彼女の心の奥底からの魂の叫びといった感じか。80歳を過ぎても女であり、キャリアを全うする女王、ココ・テイラー。菊田氏は、このココ・テイラーのバンドに2000年から参加。世界中のさまざまな場所で、彼女についてツアーをしている。ココ・テイラーが菊田氏をうれしそうに見ながら、歌う。その雰囲気に菊田氏への絶大な信頼を感じる。なかなかそこまでの実力を認められた日本人ギタリストは少ないのではないか。そういう人が、このシカゴにいるというのは、私たちの誇りである。



さて、ココ・テイラーは、最後まで出演せず、さっさとあっさりと退場。なんだか足元がおぼつかない感じ。やはり、今年80歳という年齢には勝てないか?!バンドは、演奏を続ける。前に座っている大柄のアメリカ人のおじさん2人が、「チャイニーズだろ。」などど知ったかぶりで菊田氏のことを話している。ちょっと待ってよ!おじさん、思わず、トントンして、「彼は、ジャパニーズよ。」と教えたら、そのおじさん、ハイファイをする。そのすぐ後、私の左隣のおじさんが、「彼のプレーはいいねえ。」と話しかけてくるので、思わずグーサインをだした。私が写真を撮っている間、やっちゃんは、隣のおじさんに、「キクタの家族か?」と聞かれたらしい。家族って、奥さんって意味?ウーン、やっちゃんも魅力的なのだ。

そうこうしているうちに、コンサートは終了。みんな肩を組んで、挨拶。「もう一度やって!」という声がかなり聞こえるが、アンコール演奏はなかった。やっちゃんと2人で、急いでステージの方へ駆け寄る。菊田氏が機材をかたづけているところに、「きくたさーん、いい演奏をありがとう!」と手を振ると、笑顔で答えてくれた。やっちゃんが、「話したいね!」と言って、思案する。目の前のセキュリティの人に「ジャーナリストなんだけど、キクタをよんで!」と頼むが、「僕たちは、プレイヤーと話してはいけないことになっている。このステージの裏で待っていれば、話せるぜ。」と教えてくれる。

やっちゃんは、すごい勢いで駆け出し、その道を探して、まっしぐら。私は、ハアハア言いながらついていく。でも、やっちゃん、全然違う方向へ。早くしないと、菊田氏が帰っちゃうよ。やっと、楽屋からの出口を見つける。セキュリティの人に聞くと、2箇所出口があるから、どちらからでてくるかわからないという。しばらく待つ。まったくでてこないので、もう一方の方に行く。やはり誰もでてこない。もう10時前だ。10時半の電車に乗らないと次の電車まで2時間ぐらい待つことになる。「もう菊田さん帰ったんじゃない」と私は、あきらめて、歩き出す。

しばらくしたら、やっちゃんが、大声で、「あれ菊田さんだ!」菊田氏が白い帽子をかぶって出てきた。服も着替えて、ティーシャツ姿。よかった、待った甲斐があった。菊田氏は、まったく疲れた様子がなく、とても感じよく、私たちに接してくれた。写真を一緒に撮るのも気持ちよくOKしてくれた。プレーしてない菊田氏は、なんだかとても若々しく、気さくで素敵だった。やはり、ステージでは、プロのギタリストとして、真剣勝負のやや厳しい大人びた表情になるのだろう。



私たちはもっと菊田氏と話したかったが、名残惜しみながら、またまた、帰り道、タクシーに飛び乗って、興奮さめやらないまま、メトラで、音楽談義にふけって帰った。今度は、菊田氏が定期的に演奏するブルースバー、キングストンマインドに絶対行こうということになった。なんだか、病み付きになりそうな気配です。菊田さーん、素晴らしい一夜をありがとう!

また、明日、もう少し写真を追加します。