万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国松長官狙撃事件を推理する-国際的な地下水脈はあるのか?

2018年09月10日 15時33分47秒 | 国際政治
先日、NHKスペシャルのシリーズ番組、「未解決事件」おいて、1995年3月30日に発生した国松長官狙撃事件を取り上げておりました。同シリーズは、ドキュメンタリーと再現ドラマとを組み合わせて立体的に事件を検証し、未解決事件となった真相に迫るというコンセプトで製作されているようです。

 今般の「警視庁長官狙撃事件」も、オウム事件との関連が指摘されながらも、結局は迷宮入りしてしまった謎を追求しています。同番組は、警視庁捜査第一課の原雄一刑事の奮闘を軸に展開しており、全体的な流れとしては、当初、警察がオウム真理教教団による犯行との見立てを公表してしまったため、警察の面子、公安部と刑事部から成る警察内部の確執、公益との兼ね合い等から、真犯人として名乗り出た中村泰なる人物を逮捕できず、公訴時効の日を迎えてしまった経緯を描いています。言い換えますと、その供述や経歴からして実行犯である可能性が極めて高いにも拘らず、オウムとの関連性を立証できない、つまり、オウムとは無関係であったことがネックとなり、中村容疑者の不逮捕に至ったこととなります。

 しかしながら、憶測の域はでないものの、オウム真理教と中村容疑者を結ぶ国際的な地下水脈が存在していたと仮定すれば、この謎は、すんなりと解けるかもしれません。同番組では、上記のストーリーを強調するために、両者の間の関連性を一先ずは否定しています。再現ドラマの後半部分には、中村容疑者自身が、原刑事に対して‘私が、オウムから依頼されて事件を起こした、ということにしてはどうでしょうか’と‘虚偽’の自白の採用を持ちかけており、‘これは、悪魔の取引です’と語るシーンを設けています。NHKとしては、視聴者に対して無関係のイメージを与えたかったのでしょうが、同番組、並びに、ネット情報等から、オウム真理教と中村容疑者との関連性を疑わせる幾つかの事実を拾うことができます。

 示唆的事実とは、(1)中村容疑者の父親は、南満州鉄道の職員であった、(2)同容疑者は、1940年に帰国して1949年に東大に入学するものの、その時、実弟の証言によれば、自らの過去の写真を全て破棄するという奇妙な行動をとっている(背乗りの疑い?)(3)帰国後、同容疑者は、旧制水戸高校時代に5.15事件に参加した極右団体「愛郷塾」のメンバーとなるものの、東大入学後は左翼革命思想へ転向している。革命資金調達のために銀行強盗を繰り返し、無期懲役刑で収監されるが、服役期間にあってチェ・ゲバラの思想に心酔し、スペイン語までマスターする、(4)出所後には、度々渡米して射撃訓練で銃の腕前を鍛えると共に、日本への銃密輸に手を染めている、(5)渡米期間中、現地のメキシコ系女性の母娘と事実上の家庭を設けている、などがあります。これらの事実を繋ぎ合わせますと、戦前から繋がる国際的な地下水脈を推測することもできないわけではありません。

満州国では、日本人共産主義者も数多く雇用されており、自らの理想の実現を同国に求めたとする説もあります。国家社会主義と共産主義とは対立的に見えて(両者は同根?)、共に全体主義体制を志向する点で相互転換が容易な傾向にあり(アイゼンクのパーソナリティー分析)、中村容疑者の思想的な変転、あるいは、両思想の混在は、まさにこの傾向性で説明されるのです(革命派でありながら、同容疑者は、何故か、拉致問題に対しては憤慨している…)。中村容疑者は、満鉄職員であった父親から思想的な影響、あるいは、人脈を受け継いでいる可能性もあり、番組に登場した実弟も、凶悪犯罪者であるにも拘わらず、同容疑者に対しては擁護的でもありました。そして、その思想的特徴は、北朝鮮という国家にも共通しています。国松長官狙撃事件の現場には北朝鮮のバッチが残されており、同国との関連性も謎とされていますが、同容疑者の背景は、北朝鮮、さらには、ロシアといった共産主義との関連が深い諸国との接点を窺わせるのです。

 加えて、もう一つ、可能性として指摘できるのは、中村容疑者とメキシコ人女性を介した国際共産主義組織との関係です。番組では、在米メキシコ人の母娘は中村容疑者の犯罪歴等については何も知らなかったとしていますが、獄中でスペイン語を習得するぐらいですから、同容疑者は、計画的にヒスパニック系の‘革命の同志’を探していたと推測されます。不可思議なことに、実際の母娘は明らかにヒスパニック・インディオ系の容姿をしているのですが、再現ドラマでは、何故か、ヒスパニック色の薄い白人系の女優が演じていました。NHKの意図は、中村容疑者と中南米一帯に張り巡らされている国際共産主義ネットワークとの関係が疑われるのを避けたかったのかもしれません。

 また、中村容疑者には協力者が複数存在しており、単独犯と云うよりは組織犯の疑いが濃く、警察内部に協力者があったか、もしくは、獄中で面会した複数のメディア関係者に協力者があり、情報伝達、あるいは、上部からの指令伝達の機会として利用していたとも考えられます。

一方、オウム真理教も、その教祖の松本智津夫は、旧満州地域に近い北朝鮮出身者であり、事件当初より、サリンの製造技術の供与など、北朝鮮やロシアとの関係が指摘され、マスコミにもオウム真理教の協力者があって、サブミリナリーという一種の洗脳映像を放映したTV局もあり、東大卒などの高学歴者や元左翼活動家が教団に加わってもおり、警察内部にも協力者がありました。

このように、両者には、共通点、あるいは、接点が見られます。オウム真理教、並びに、中村容疑者を背後から操ったのが共に国際共産主義組織であったと仮定しますと、点と点が繋がり線となるかのように、国松長官狙撃事件の謎も解けてくるように思えるのです。乃ち、両者には直接的な関係はないものの、それぞれ同一の指令部からの別々の命令を受けて行動し、一連の事件を起こしたとも推理できるのです。オウム真理教が、国権簒奪、即ち、国家転覆を目的とした教団であった理由も、その背後の国際組織の目的が極めて政治的であったからなのでしょう。同狙撃事件の目撃証言との食い違いも、同組織が、事件の捜査を徒に混乱させ、未解決へと導くために両者に同時に行動を命じたとすれば説明がゆきます(とはいえ、中村容疑者が真犯人とは限らない…)。

同事件の真相は、国際共産主義ネットワークのさらにその奥にまで踏み込む必要もあるのでしょうが、オウム事件の闇が晴れる日は、近代以降、日本国を覆ってきた歴史の深い闇も消え、ようやく呪縛が解けて新たな一歩を踏み出す日となるのではないかと、ふと、予感するのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする