万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

第2回米朝首脳会談はどちらのイニシャチヴか?

2018年09月11日 13時05分14秒 | アメリカ
2度目の米朝会談提案=正恩氏、トランプ氏に書簡
今月10日、アメリカのサンダース報道官は、記者会見の席で、トランプ大統領が、北朝鮮の金正恩委員長から二度目の米朝首脳会談の開催を求める書簡を受けとったことを明らかにしました。トランプ大統領は、この要請に快く応じる姿勢を見せていますが、何故、北朝鮮は、今の時期に二度目のトップ会談を申し出たのでしょうか。

 金委員長からの書簡を受けての開催となりますと、二度目の首脳会談の時期は、北朝鮮側が決定したこととなり、米朝関係のイニシャチヴは、一先ずは北朝鮮側が握る形となります。米研究機関やIAEA等の分析によりますと、6月12日の第一回米朝首脳会談以降も、北朝鮮は、核、並びに、ICBMの開発を秘かに継続しているそうですので、開発の進捗状況から判断し、北朝鮮側が、アメリカに対するさらに強力な交渉材料を手にしたとする自信を得ている可能性もあります。つまり、第一回首脳会談での合意、あるいは、口約束を半ば反故にし、第二回目においては、中国の黙認の下で開発に成功した核やICBMの脅しにより、より有利な条件をアメリカから勝ち取ろうとする、北朝鮮側の思惑が推測されるのです。

 このシナリオは、当事国であるアメリカ、同盟国である日本国、そして、国際社会にとりましてはまさに‘悪夢’なのですが、同会談が、公式には北朝鮮側からの要請とする体裁をとりつつも、アメリカ側の圧力によるものであると想定しますと、別のシナリオもあり得ます。先日、ポンペオ米国務長官の訪朝が、北朝鮮の非協力的態度を理由に突然にキャンセルされた一件は記憶に新しいところであり、また、先日、米高官の一人が、トランプ大統領が書いた北朝鮮への軍事制裁を示唆するツウィートの下書きを見て、あまりの脅迫的な内容に投稿を思い止まらせたとする旨の証言もあります(訂正:この情報は、米中首脳会談以前の段階のもののようです。)。一方の北朝鮮側の動きを見ても、先日の軍事パレードではICBMは登場せず、金委員長の談話でも、先軍政治路線時代には‘お決まり’であった好戦的な言い回しが影を潜め、経済発展を力説していたそうです。こうした北朝鮮側の軟化ぶりはアメリカへの配慮以外に考えられえず、上述したシナリオとは矛盾します。もっとも、第二回米朝首脳会談のその日まで、北朝鮮は、秘かに磨いてきた鋭い爪を隠しておこうとしているのかもしれませんが…。

 表向きは北朝鮮、あるいは、その背後の中国がイニシャチヴを採っているように見えながら、その実、第2回米朝首脳会談の真の発案者がアメリカであるとしますと、トランプ政権は、いよいよ北朝鮮に対して重大な選択を迫ろうとしているのかもしれません。それは、アメリカが納得する形で完全なる非核化を実行するのか、それとも、軍事制裁を覚悟するのか、という…。トランプ大統領としては、11月の中間選挙、あるいは、その先の再選への好影響を見越して、目に見える外交上の実績を国民に示す必要がありますので、この時期での第2回米朝首脳会談は、政治日程としても好都合です。そして、仮にアメリカ主導説が正しければ、第一回米朝首脳会談は、どちらかと言えば、金委員長に主役を獲られたような‘政治ショー’でしたが、今度ばかりはトランプ大統領も主役を譲ることなく、アメリカの有権者を意識した自らがヒーローとなる‘政治ショー’を演出するはずです。

 他のファクターが働いて、全く別の方向に向かう可能性もあるのですが、以上に述べてきたように、米朝両国にあって、どちらがイニシャチヴを握っているかによりまして、予測され得るシナリオは随分と違ってきます。何れにしても、第2回米朝首脳会談によって、第1回米朝首脳会談において残された‘曖昧さ’が拭い去られ、中国やロシアも絡み混戦模様が続く朝鮮半島情勢がより明確な輪郭を現すのではないでしょうか。

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コメント (2)
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