お箸*3 自分だけの食器

2016-02-20 | お箸の世界
 前回、日本人はひとりで食事をする時にも 「いただきます」 「ごちそうさま」 と、

感謝の言葉を述べると申しましたが、食器に関しても日本独特の慣習があります。

それは、諸外国ではあまり見かけない 「自分だけの食器」(「属人器」とも言います)。


 たとえば小さな男の子のアンパンマンのお茶碗を、うっかり家族の誰かが使ってしまったら、

子供なりに抗議したり、あるいは目に涙を浮かべたりするでしょう

たとえばお年頃の娘さんに、「お箸が見当たらないから、お父さんのを使って」 などと言えば、

「ぜ~~~ったい イヤ 」 という声が聞こえてきそうです。

たとえば職場の上司に、「いやぁ 悪い悪い。 間違えて君の でコーヒーを飲んじゃったよ」

などと言われた日には、私でしたら、翌日さりげなく をデビューさせます。

 このように、日本人には幼い頃から 「自分だけの食器」 という観念があり、

それらを他の人に使われることも、他の人の物を使うことも好みません。


 「自分だけの食器」 に対して、同席した人と一緒に使う食器を 「共用器」 と言います。

そして 「共用器」 のお料理を取り分けて、自分の分を入れるお皿が 「銘々器」。

中国料理で円卓を囲む時、ターンテーブルの上の大皿が 「共用器」 で、取り皿が 「銘々器」。

洋食ではお料理ごとにお皿が替えられますが、いずれも 「銘々器」。

自分の前に置かれた器は、今は 「自分の食器」 ですが、「自分だけの食器」 ではありません。


 日本でも、さすがにお父さんの丼 お兄ちゃんのカレー皿 まで決めているお宅は少なく、

「自分だけの食器」 といえば、 せいぜい お茶碗とお椀とお箸、そして くらいでしょうか。


 思えば、上司に を使われると、すぐにでも買い換えたくなる一方で、

誰が使ったか分からない で外食を楽しめるのですから、不思議といえば不思議。

逆に 「分からない」 からこそ、美味しくいただけるのかも知れませんが、

「自分だけの食器」 には、愛着と衛生観念の他にも何かありそうで、好奇心がくすぐられます


お読みくださいまして、ありがとうございます。
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