前回 美化語 について、『 もともと 「お」 や 「ご(御)」 が付いている、あるいは自然と付けてしまう 』 と申しましたが、
それでは、「 もともと 」 とはいつ頃からなのか、「 自然と付けてしまう 」 のはどのような背景があるのか、
今日は、そのあたりを探ってみることにします。
時は室町時代、宮中に仕える女官たちの間では、「 女房言葉 」 が使われていました。
「女房」 といっても 「妻」 ではなく 「使用人」 のことで、部屋(房)があてがわれていたのが 「女房」 のはじまり。
ちなみに 清少納言 や 紫式部(平安時代)も、「位」は与えられていたものの、女房という身分だったようです。
「女房言葉」 は、語頭に 「お」、または語尾に 「もじ(文字)」 を付けるのが特徴で、前回ご紹介した、
おにぎり や おでん 以外にも、惣菜を数々そろえた「おかず」、小豆を萩の花に見立てた「おはぎ」、
そして、杓子(しゃくし)に 「もじ」 を付けて 「しゃもじ」 と呼ぶなど、今に残る言葉が数多くあります。
美化語 が、食べ物や家の中の品に多く使われたのは、女性たちの日常生活に密着していたためでしょう。
江戸時代になりますと、将軍家に仕える侍女が使うようになり、さらには武家の女性や町人にまで広まりますが、
「刺身」 を 「お造り」 と言い表すあたり、縁起の悪い言葉を忌み嫌った、武家社会の名残りでしょうか。
このように、美化語 の中には女房言葉に由来するものが数多くあり、その優美で上品な言葉遣いは、
時を越えて女性たちに語り継がれ、さらには丁寧な表現として、男性にも使われるようになりました。
学習院大学人文科学論集(著者・鈴木智映子氏) によりますと、昭和31年頃にピークを迎えた 「お」 の使用は、
昭和30~40年代に減少した後、大幅な減少は見られず、平成に入って再び減少傾向にあるとのことです。
以前は 「 お帳面に、きれいな お字 を書く 」 という言い方もされていたそうですが、
「 お帳面 」 は 「 ノート 」、「 お茶の間 」 は 「 リビング 」、「 おさらい 」 は 「 復習 」、
「 お三時 」 や 「 おやつ 」 は 「 ティータイム 」 へと、時代は移り変わって行きました。
そういえば、童謡「 どんぐりころころ 」(大正時代の作品) に、
「 お池 にはまって さあ大変 」 「 やっぱり お山 が恋しいと 」
という歌詞がありますが、最近では、子供に対してもあまり聞かれなくなった 「お」 の使い方ですね。
言葉は生きていて、常に変化していますが、特に 美化語 は、その時代を反映しているように思われます。
冒頭に、『 「自然と付けてしまう」のは、どのような背景があるのか 』と書きましたが、
「よく聞く」 「そのように教わった」 という場合、人は 「 自然と付けてしまう 」 ものですし、
たとえば、お客様と従業員(立場)、男性と女性(性別)、大人と子供(年齢差)、そして親疎など、
話し手と聞き手との関係によっても、自然と付けたり、逆に、自然と省いたりするものです。
美化語 を取り入れることで、その言葉だけでなく、全体を敬語で整えようとする意識が働きます。
過不足なく使いこなして、敬語に磨きをかけたいものです。
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それでは、「 もともと 」 とはいつ頃からなのか、「 自然と付けてしまう 」 のはどのような背景があるのか、
今日は、そのあたりを探ってみることにします。
時は室町時代、宮中に仕える女官たちの間では、「 女房言葉 」 が使われていました。
「女房」 といっても 「妻」 ではなく 「使用人」 のことで、部屋(房)があてがわれていたのが 「女房」 のはじまり。
ちなみに 清少納言 や 紫式部(平安時代)も、「位」は与えられていたものの、女房という身分だったようです。
「女房言葉」 は、語頭に 「お」、または語尾に 「もじ(文字)」 を付けるのが特徴で、前回ご紹介した、
おにぎり や おでん 以外にも、惣菜を数々そろえた「おかず」、小豆を萩の花に見立てた「おはぎ」、
そして、杓子(しゃくし)に 「もじ」 を付けて 「しゃもじ」 と呼ぶなど、今に残る言葉が数多くあります。
美化語 が、食べ物や家の中の品に多く使われたのは、女性たちの日常生活に密着していたためでしょう。
江戸時代になりますと、将軍家に仕える侍女が使うようになり、さらには武家の女性や町人にまで広まりますが、
「刺身」 を 「お造り」 と言い表すあたり、縁起の悪い言葉を忌み嫌った、武家社会の名残りでしょうか。
このように、美化語 の中には女房言葉に由来するものが数多くあり、その優美で上品な言葉遣いは、
時を越えて女性たちに語り継がれ、さらには丁寧な表現として、男性にも使われるようになりました。
学習院大学人文科学論集(著者・鈴木智映子氏) によりますと、昭和31年頃にピークを迎えた 「お」 の使用は、
昭和30~40年代に減少した後、大幅な減少は見られず、平成に入って再び減少傾向にあるとのことです。
以前は 「 お帳面に、きれいな お字 を書く 」 という言い方もされていたそうですが、
「 お帳面 」 は 「 ノート 」、「 お茶の間 」 は 「 リビング 」、「 おさらい 」 は 「 復習 」、
「 お三時 」 や 「 おやつ 」 は 「 ティータイム 」 へと、時代は移り変わって行きました。
そういえば、童謡「 どんぐりころころ 」(大正時代の作品) に、
「 お池 にはまって さあ大変 」 「 やっぱり お山 が恋しいと 」
という歌詞がありますが、最近では、子供に対してもあまり聞かれなくなった 「お」 の使い方ですね。
言葉は生きていて、常に変化していますが、特に 美化語 は、その時代を反映しているように思われます。
冒頭に、『 「自然と付けてしまう」のは、どのような背景があるのか 』と書きましたが、
「よく聞く」 「そのように教わった」 という場合、人は 「 自然と付けてしまう 」 ものですし、
たとえば、お客様と従業員(立場)、男性と女性(性別)、大人と子供(年齢差)、そして親疎など、
話し手と聞き手との関係によっても、自然と付けたり、逆に、自然と省いたりするものです。
美化語 を取り入れることで、その言葉だけでなく、全体を敬語で整えようとする意識が働きます。
過不足なく使いこなして、敬語に磨きをかけたいものです。
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りっちゃんが件名にしてくださった「もじもじ」。
こちらも女房言葉 と、密かに期待したのですが、
残念ながら、「いじいじ」や「うじうじ」と同じく、動詞に掛かる副詞でした。
「もじ」=「文字」ですので、むしろ「ほの字」や「御(おん)の字」の仲間かも知れませんね。
「黒文字」や「ひもじい」もそうなんですね。
何だか「もじ」を探してしまいますよ。
本当に近いうちにおめもじしましょうね!
いつも関心をお寄せくださり、ありがとうございます。
>「お目にかかる」ことを「おめもじ」
他にも、和菓子をいただくときに使う楊枝の「黒文字」や、
空腹という意味の「ひもじい」も女房言葉だそうですよ。
の美味しい季節、近いうちに「おめもじ」願いたいものです。
何でも由来を知ると忘れないし、他の言葉も「もしかして」と関心が高まります。
「お目にかかる」ことを「おめもじ」と言いますが、この「もじ」もインターネットで検索したら接尾語と書いてありました。
最初、「おめもじ」を知ったときは「???』と思いましたが、この言葉が似合うようになりたいですね。
それにしても、julietさんの探究心に頭が下がります。