【2015総括シリーズ その拾弐】
本年度の総括、最後はやっぱり「映画」で。
いろいろ語りたいことがあるので、3日連続で展開しましょう。
なぜ「た・い・か・ん」というタイトルなのかは後述するとして、きょうはベスト20の「20位~11位」までを発表。
それぞれのコメントも長めなので、とっとといってみよう!!
※14年12月~15年11月に劇場公開された映画から選出
、
20位『ジヌよさらば』
一円も使わないで生きていくために、この村にきました。
原作は、漫画家いがらしみきおの『かむろば村へ』。
監督は松尾スズキ、主演は松田龍平。
「お金恐怖症」を患った青年が、ジヌ(銭)を使わず生きるため過疎の村にやってくるが・・・。
三谷某とちがって、劇作家の松尾スズキは「映画に必要なこと」をきちんと理解して撮っている。
そのうえで演劇的な要素も持ち込み、「自分しか創れないもの」として完成させているところが立派だと思った。
19位『GONIN サーガ』

20年も前の映画の続編を、前作をも超えるテンションで描き切った石井隆「円熟期」の快(怪)作。
ドロップアウトしたものたちの「遺族たち」で物語を紡ぐというところに、石井隆のこの映画に対する深い愛が感じられて感動する。
絶叫しまくる若手男優たちも熱演しているが、最も輝いているのは土屋アンナ。(裁判がんばれ!!)
そして、石井隆への友情と忠誠を証明するために「復活」した根津甚八である。
映画は、やっぱりエロスとバイオレンスなんだなぁ!!
18位『ナイトクローラー』
「偽装」してまで特ダネを狙うパパラッチをとおし、現代社会の歪みを描く。
ジェイク・ジレンホールが大熱演、誰かが「現代のトラビスだ」と評したが、けっして的外れな指摘ではないと思った。
映画好きのあいだでは「潜水艦映画にハズレなし」といわれているが、
『ネットワーク』や『誘う女』、『トーク・レディオ』に『クイズショウ』・・・メディアを考察した映画「も」ハズレが少ないのではないだろうか。
17位『Mommy マミー』
50年代、ルイ・マル。
70年代、スピルバーグ。
そして2010年代、グザヴィエ・ドラン。
ドランはまだ26歳、しかし「まぐれ」で佳作を撮り続けているわけではないことは、誰の目にも明らかで。
『わたしはロランス』で鮮烈な日本デビューを飾った神童の最新作は、「発達障害の子どもを持つ親が、法的手続きを経ることなく養育を放棄して、施設に入院させることが出来る」法律が施行された世の中を生きる、哀しい親子の物語。
舞台は過酷だが、ドランのヒトを見つめる眼差しはどこまでも温かく、深い、深過ぎる慈愛に満ち満ちている。
16位『アリスのままで』
ジュリアン・ムーア、オスカー主演賞受賞作。
若年性アルツハイマーを患った大学教授と、その家族―が、それによって生じる様々な壁に動揺し、立ち向かい、克服し、絆を深めていくさまを描く。
ジュリアンの入魂演技が最大の見どころ・・・であることはまちがいないが、この映画の完成で「役目を終えた」かのように急死した共同監督のひとり、リチャード・グラツァーの遺作としても映画史に残るべきだろう。

合掌。
15位『トイレのピエタ』
主演は、ロックバンド「RADWIMPS」の野田洋次郎。
共演に、CMで活躍の多かった杉咲花。
原案に手塚治虫とあるが、天才・手塚が死の直前まで記していたことで知られる『病床日記』から想を得た物語である。
画家を目指し美大で学び卒業するも、その願いが叶えられぬまま余命数ヶ月と宣告された主人公は・・・。
野田も好演しているが、杉咲花が抜群にいい。
物語の求心力を担った彼女は、ほのかなエロスさえ感じさせ、この年齢でしか許されないであろう自由さでスクリーンを華麗に(しかし不器用に)舞うのであった。
14位『インヒアレント・ヴァイス』
映画界で最も先端をいく男、PTAことポール・トーマス・アンダーソンが、前作『ザ・マスター』でエネルギーを使い過ぎたのか、肩の力を抜いて創った、しかしさすがのクオリティを保つ珍作。
トマス・ピンチョンの探偵小説『LAヴァイス』が原作にはなっているが、物語を物語る気など「さらさら」なく、ただひたすらドラッグでイッちゃっている探偵の、遅々として進まない調査をユーモアとエロスたっぷりに描いている。
おおらかな70年代を礼賛しつつ、PTAなりに「追悼する映画」なんだなぁ、、、と思った。
13位『バクマン。』
漫画家を目指すふたりの高校生の物語を、映画的アイデア満載で描いた快作。
スマッシュヒットを飛ばした大場つぐみ・小畑健コンビの原作漫画は、存在は知っていたものの目を通すことはしなかった。
原作ファンからすればいろいろいいたいこともあるだろうし、現場を知っている業界筋から批判が出たように「そんなこと、あるはずない」という展開もあるのだろう。
しかし映画としては、青春物語としては、一級品だと思う。
佐藤健、神木隆之介ともに熱演。
とくに健くんは、初めてきちんとした俳優だと思えた。
そして誰もがいうだろうが、エンディングの斬新かつ野心的な試みにおおいに感心。
というわけで、サカナクションにも賛辞を送りたい。
12位『私たちのハァハァ』…トップ画像
ロックバンド「クリープハイプ」の大ファンである北九州の女子高生4人組が、ライヴに参戦するために自転車で1000kmの旅に出る姿をドキュメンタリータッチで軽やかに描いた傑作。
自撮り映像やSNS投稿などを積極的に取り入れる監督・松居大悟のセンスは間違っていない、それにより女子高生たちのリアルな息遣いまでを感じさせてくれるところが、まさに「ハァハァ」なのである。
強引にたとえれば、これは現代女子版の『スタンド・バイ・ミー』。
はっきりとした目的があったのに、その旅で、結果的に「それではない成果」を得ることになる少女たち―が、きらきら輝いて眩しいくらいなのだった。
11位『百円の恋』
新設された脚本賞、「松田優作賞」第1回グランプリ作品を完全映画化。
引きこもりをつづける32歳の負け犬女子が、生まれて初めて独り暮らしを始め、100円ショップで働きながらボクシングに目覚めていくさまを「現代的、」というより「70年代的、」な濃密描写で描く熱い一品。
脚本も共演の新井浩文もクリープハイプの主題歌『百八円の恋』も悪くないが、主演の安藤サクラが圧倒的。
ここ数年の日本映画の傑作(の、いくつか)には必ず彼女が関わっており、彼女が関わっている映画に触れていれば「日本映画の最先端」を知ることが出来る―といっても過言ではない。
10年後も20年後も、目の離せない女優であってほしい。
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明日のコラムは・・・
『た・い・か・ん ~15年度映画ベスト20(中)~』
本年度の総括、最後はやっぱり「映画」で。
いろいろ語りたいことがあるので、3日連続で展開しましょう。
なぜ「た・い・か・ん」というタイトルなのかは後述するとして、きょうはベスト20の「20位~11位」までを発表。
それぞれのコメントも長めなので、とっとといってみよう!!
※14年12月~15年11月に劇場公開された映画から選出
、
20位『ジヌよさらば』
一円も使わないで生きていくために、この村にきました。
原作は、漫画家いがらしみきおの『かむろば村へ』。
監督は松尾スズキ、主演は松田龍平。
「お金恐怖症」を患った青年が、ジヌ(銭)を使わず生きるため過疎の村にやってくるが・・・。
三谷某とちがって、劇作家の松尾スズキは「映画に必要なこと」をきちんと理解して撮っている。
そのうえで演劇的な要素も持ち込み、「自分しか創れないもの」として完成させているところが立派だと思った。
19位『GONIN サーガ』

20年も前の映画の続編を、前作をも超えるテンションで描き切った石井隆「円熟期」の快(怪)作。
ドロップアウトしたものたちの「遺族たち」で物語を紡ぐというところに、石井隆のこの映画に対する深い愛が感じられて感動する。
絶叫しまくる若手男優たちも熱演しているが、最も輝いているのは土屋アンナ。(裁判がんばれ!!)
そして、石井隆への友情と忠誠を証明するために「復活」した根津甚八である。
映画は、やっぱりエロスとバイオレンスなんだなぁ!!
18位『ナイトクローラー』
「偽装」してまで特ダネを狙うパパラッチをとおし、現代社会の歪みを描く。
ジェイク・ジレンホールが大熱演、誰かが「現代のトラビスだ」と評したが、けっして的外れな指摘ではないと思った。
映画好きのあいだでは「潜水艦映画にハズレなし」といわれているが、
『ネットワーク』や『誘う女』、『トーク・レディオ』に『クイズショウ』・・・メディアを考察した映画「も」ハズレが少ないのではないだろうか。
17位『Mommy マミー』
50年代、ルイ・マル。
70年代、スピルバーグ。
そして2010年代、グザヴィエ・ドラン。
ドランはまだ26歳、しかし「まぐれ」で佳作を撮り続けているわけではないことは、誰の目にも明らかで。
『わたしはロランス』で鮮烈な日本デビューを飾った神童の最新作は、「発達障害の子どもを持つ親が、法的手続きを経ることなく養育を放棄して、施設に入院させることが出来る」法律が施行された世の中を生きる、哀しい親子の物語。
舞台は過酷だが、ドランのヒトを見つめる眼差しはどこまでも温かく、深い、深過ぎる慈愛に満ち満ちている。
16位『アリスのままで』
ジュリアン・ムーア、オスカー主演賞受賞作。
若年性アルツハイマーを患った大学教授と、その家族―が、それによって生じる様々な壁に動揺し、立ち向かい、克服し、絆を深めていくさまを描く。
ジュリアンの入魂演技が最大の見どころ・・・であることはまちがいないが、この映画の完成で「役目を終えた」かのように急死した共同監督のひとり、リチャード・グラツァーの遺作としても映画史に残るべきだろう。

合掌。
15位『トイレのピエタ』
主演は、ロックバンド「RADWIMPS」の野田洋次郎。
共演に、CMで活躍の多かった杉咲花。
原案に手塚治虫とあるが、天才・手塚が死の直前まで記していたことで知られる『病床日記』から想を得た物語である。
画家を目指し美大で学び卒業するも、その願いが叶えられぬまま余命数ヶ月と宣告された主人公は・・・。
野田も好演しているが、杉咲花が抜群にいい。
物語の求心力を担った彼女は、ほのかなエロスさえ感じさせ、この年齢でしか許されないであろう自由さでスクリーンを華麗に(しかし不器用に)舞うのであった。
14位『インヒアレント・ヴァイス』
映画界で最も先端をいく男、PTAことポール・トーマス・アンダーソンが、前作『ザ・マスター』でエネルギーを使い過ぎたのか、肩の力を抜いて創った、しかしさすがのクオリティを保つ珍作。
トマス・ピンチョンの探偵小説『LAヴァイス』が原作にはなっているが、物語を物語る気など「さらさら」なく、ただひたすらドラッグでイッちゃっている探偵の、遅々として進まない調査をユーモアとエロスたっぷりに描いている。
おおらかな70年代を礼賛しつつ、PTAなりに「追悼する映画」なんだなぁ、、、と思った。
13位『バクマン。』
漫画家を目指すふたりの高校生の物語を、映画的アイデア満載で描いた快作。
スマッシュヒットを飛ばした大場つぐみ・小畑健コンビの原作漫画は、存在は知っていたものの目を通すことはしなかった。
原作ファンからすればいろいろいいたいこともあるだろうし、現場を知っている業界筋から批判が出たように「そんなこと、あるはずない」という展開もあるのだろう。
しかし映画としては、青春物語としては、一級品だと思う。
佐藤健、神木隆之介ともに熱演。
とくに健くんは、初めてきちんとした俳優だと思えた。
そして誰もがいうだろうが、エンディングの斬新かつ野心的な試みにおおいに感心。
というわけで、サカナクションにも賛辞を送りたい。
12位『私たちのハァハァ』…トップ画像
ロックバンド「クリープハイプ」の大ファンである北九州の女子高生4人組が、ライヴに参戦するために自転車で1000kmの旅に出る姿をドキュメンタリータッチで軽やかに描いた傑作。
自撮り映像やSNS投稿などを積極的に取り入れる監督・松居大悟のセンスは間違っていない、それにより女子高生たちのリアルな息遣いまでを感じさせてくれるところが、まさに「ハァハァ」なのである。
強引にたとえれば、これは現代女子版の『スタンド・バイ・ミー』。
はっきりとした目的があったのに、その旅で、結果的に「それではない成果」を得ることになる少女たち―が、きらきら輝いて眩しいくらいなのだった。
11位『百円の恋』
新設された脚本賞、「松田優作賞」第1回グランプリ作品を完全映画化。
引きこもりをつづける32歳の負け犬女子が、生まれて初めて独り暮らしを始め、100円ショップで働きながらボクシングに目覚めていくさまを「現代的、」というより「70年代的、」な濃密描写で描く熱い一品。
脚本も共演の新井浩文もクリープハイプの主題歌『百八円の恋』も悪くないが、主演の安藤サクラが圧倒的。
ここ数年の日本映画の傑作(の、いくつか)には必ず彼女が関わっており、彼女が関わっている映画に触れていれば「日本映画の最先端」を知ることが出来る―といっても過言ではない。
10年後も20年後も、目の離せない女優であってほしい。
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明日のコラムは・・・
『た・い・か・ん ~15年度映画ベスト20(中)~』