【2015総括シリーズ その拾弐】
1日サボってしまい、どうもごめんなさいです。
本年度の劇場公開作ベスト4位~1位を、とっとと発表していこう。
このベスト20を中心に本年度の映画界を検証するのが、あすの「体感って、なにかね」です。
※14年12月~15年11月に劇場公開された映画から選出
04位『木屋町DARUMA』
四肢をなくした元ヤクザ(遠藤憲一)が借金取りの「最終兵器」となり、債務者を追い込んでいく。
裏社会のルポルタージュ作家として有名な丸野裕行の原作を、前作『捨てがたき人々』でも素晴らしくねちっこい演出力をみせた榊英雄が映像化、「根性入ってる」いや「入り過ぎな」問題作。
まず「DARUMA」という、差別語「とされている」ことばをタイトルに冠した勇気を称えたい。
そして、キャリアなんてクソ喰らえ的なキャラクターを嬉々として演じる遠藤憲一に乾杯。
さらに、瓦ばかり割っていた武田梨奈が女優開眼する瞬間に立ち会えたことに感謝。
毒気ばかりではない、悲哀からにじむユーモアや「かすかな、真にかすかな」救済の微光をも感じさせ、
観るものを選ぶ映画でありながら、観たものは他者に「観なきゃ損をする」といいたくなる「じつに困った」映画なのだった。
※「急遽」同率でランクイン!!
04位『恋人たち』
観てきたばかりの公開中の映画を、ベスト20に「強引に」割り込ませた。
(結果、ベスト21に)
寡作のひと、橋口亮輔の最新作。
妻を通り魔殺人で亡くした夫アツシは、橋梁点検の仕事をしている。
主婦の瞳子は、自分に関心を持ってくれない夫と姑の3人暮らしをつづけているが、ひとりの中年男と親しくなっていき・・・。
弁護士の四ノ宮は同性愛者で「恋人あり。」だが、学生時代から思いつづけているひとが居て・・・。
市井の民を優しく厳しく見つめる、いわば現代日本版の『マグノリア』。
ひとは、それでも生きていく―悟りを得たかのような語り口に、橋口亮輔の覚悟のようなものを感じて深い感動を覚えた。
観客動員は「ぜんぜん…」だが、「映画の力を信じたい」と思うひとは絶対に観るべき作品である。
03位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
はっきりいっちゃおうじゃないか。
『ワイルドスピード』で満足し、あれがアクション映画のメインストリームだと勘違いしているアンチャンネーチャンは「お呼びでない」。
しかし、これを観ないで年越しを迎えてしまうのは、童貞のまま青春を終えるようなものだ。
これから観るものは、そこらへん覚悟してこの映画を「浴びて」ほしい。
前シリーズからじつに30年が経過、
豪州の星でありつづけるジョージ・ミラー監督も70歳となり、さすがに衰えたのではないか・・・などという心配は杞憂に終わった。
なめていました、すいません。
あのころのエネルギーそのままで描くのは、アクション、アクション、ひたすらアクション!!
物語は、あってないようなもの。
台詞だってサイレントと勘違いしてしまうほど少ない。(だから日本語吹き替え版で観たとしても、EXILEナンチャラの下手さ加減が気にならない!)
映像のダイナミズムとアクションの快楽―という、映画の持つ原初的な魅力だけで突っ走る120分に触れて「なにも感じない」ものが居るとするならば、それはちょっと重病なので治療してもらったほうがいいだろう。
02位『野火』
観てよかったけど、2度と観たくない―そんな感想が続出したという、超「体感型」の戦争映画。
大岡昇平の傑作小説を、インディーズの雄・塚本晋也が10年の歳月をかけて完全映画化した執念の作品である。
戦場におけるカニバリズムという残酷な主題に慄き、出資者はゼロ。
世界の塚本なのに、どのスタジオも協力してくれなかった。
それでも映画化したい塚本は自主制作を決意した・・・ゆえに、デジタル映像処理は完璧ではなく「安っぽさ」が残る。
しかしその「安っぽさ」が効果的に機能し、戦死というものの即物性(=非ドラマ性)を浮かび上がらせた。
さっきまで話していた戦友が「見えざる敵」の銃撃に遭い即死―こんな描写が延々とつづくので、わずか80分の作品だが180分の大作くらいの疲労感が残る。
スターと話題性で『永遠の0』を観たひとは、ぜひこっちも観てほしい。
その理由は「観れば分かる」と思うので、敢えていわない。
01位『6才のボクが、大人になるまで。』…トップ画像
プロの俳優とはいえない少年エラー・コルトレーン、6歳。
彼が18歳になるまでの成長と家族のアレヤコレヤの物語を、実際に12年かけて描いた傑作にして労作。
劇映画のスタイルを崩さぬまま、なんらかの実験要素を取り入れる―リチャード・リンクレイター監督の作風はいよいよ先鋭的になり、
現代映画から一歩、いや二歩先をいく発想により、映画そのものの可能性を信じさせてくれた点において、本年最大の収穫となった。
2000年代の米国が透けて見えてくるという構造は、いわば鋭利さを増した『フォレスト・ガンプ』のようでもあり、
オスカーの作品賞は『バードマン』で正解かもしれないが、監督賞はやっぱりリンクレーターにあげるべきではなかったか。
なんだかスッキリしないので、日本の映画小僧から、この偉大なる実験映画小僧に似非オスカー像を授与したい。
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明日のコラムは・・・
『体感って、なにかね』
1日サボってしまい、どうもごめんなさいです。
本年度の劇場公開作ベスト4位~1位を、とっとと発表していこう。
このベスト20を中心に本年度の映画界を検証するのが、あすの「体感って、なにかね」です。
※14年12月~15年11月に劇場公開された映画から選出
04位『木屋町DARUMA』
四肢をなくした元ヤクザ(遠藤憲一)が借金取りの「最終兵器」となり、債務者を追い込んでいく。
裏社会のルポルタージュ作家として有名な丸野裕行の原作を、前作『捨てがたき人々』でも素晴らしくねちっこい演出力をみせた榊英雄が映像化、「根性入ってる」いや「入り過ぎな」問題作。
まず「DARUMA」という、差別語「とされている」ことばをタイトルに冠した勇気を称えたい。
そして、キャリアなんてクソ喰らえ的なキャラクターを嬉々として演じる遠藤憲一に乾杯。
さらに、瓦ばかり割っていた武田梨奈が女優開眼する瞬間に立ち会えたことに感謝。
毒気ばかりではない、悲哀からにじむユーモアや「かすかな、真にかすかな」救済の微光をも感じさせ、
観るものを選ぶ映画でありながら、観たものは他者に「観なきゃ損をする」といいたくなる「じつに困った」映画なのだった。
※「急遽」同率でランクイン!!
04位『恋人たち』
観てきたばかりの公開中の映画を、ベスト20に「強引に」割り込ませた。
(結果、ベスト21に)
寡作のひと、橋口亮輔の最新作。
妻を通り魔殺人で亡くした夫アツシは、橋梁点検の仕事をしている。
主婦の瞳子は、自分に関心を持ってくれない夫と姑の3人暮らしをつづけているが、ひとりの中年男と親しくなっていき・・・。
弁護士の四ノ宮は同性愛者で「恋人あり。」だが、学生時代から思いつづけているひとが居て・・・。
市井の民を優しく厳しく見つめる、いわば現代日本版の『マグノリア』。
ひとは、それでも生きていく―悟りを得たかのような語り口に、橋口亮輔の覚悟のようなものを感じて深い感動を覚えた。
観客動員は「ぜんぜん…」だが、「映画の力を信じたい」と思うひとは絶対に観るべき作品である。
03位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
はっきりいっちゃおうじゃないか。
『ワイルドスピード』で満足し、あれがアクション映画のメインストリームだと勘違いしているアンチャンネーチャンは「お呼びでない」。
しかし、これを観ないで年越しを迎えてしまうのは、童貞のまま青春を終えるようなものだ。
これから観るものは、そこらへん覚悟してこの映画を「浴びて」ほしい。
前シリーズからじつに30年が経過、
豪州の星でありつづけるジョージ・ミラー監督も70歳となり、さすがに衰えたのではないか・・・などという心配は杞憂に終わった。
なめていました、すいません。
あのころのエネルギーそのままで描くのは、アクション、アクション、ひたすらアクション!!
物語は、あってないようなもの。
台詞だってサイレントと勘違いしてしまうほど少ない。(だから日本語吹き替え版で観たとしても、EXILEナンチャラの下手さ加減が気にならない!)
映像のダイナミズムとアクションの快楽―という、映画の持つ原初的な魅力だけで突っ走る120分に触れて「なにも感じない」ものが居るとするならば、それはちょっと重病なので治療してもらったほうがいいだろう。
02位『野火』
観てよかったけど、2度と観たくない―そんな感想が続出したという、超「体感型」の戦争映画。
大岡昇平の傑作小説を、インディーズの雄・塚本晋也が10年の歳月をかけて完全映画化した執念の作品である。
戦場におけるカニバリズムという残酷な主題に慄き、出資者はゼロ。
世界の塚本なのに、どのスタジオも協力してくれなかった。
それでも映画化したい塚本は自主制作を決意した・・・ゆえに、デジタル映像処理は完璧ではなく「安っぽさ」が残る。
しかしその「安っぽさ」が効果的に機能し、戦死というものの即物性(=非ドラマ性)を浮かび上がらせた。
さっきまで話していた戦友が「見えざる敵」の銃撃に遭い即死―こんな描写が延々とつづくので、わずか80分の作品だが180分の大作くらいの疲労感が残る。
スターと話題性で『永遠の0』を観たひとは、ぜひこっちも観てほしい。
その理由は「観れば分かる」と思うので、敢えていわない。
01位『6才のボクが、大人になるまで。』…トップ画像
プロの俳優とはいえない少年エラー・コルトレーン、6歳。
彼が18歳になるまでの成長と家族のアレヤコレヤの物語を、実際に12年かけて描いた傑作にして労作。
劇映画のスタイルを崩さぬまま、なんらかの実験要素を取り入れる―リチャード・リンクレイター監督の作風はいよいよ先鋭的になり、
現代映画から一歩、いや二歩先をいく発想により、映画そのものの可能性を信じさせてくれた点において、本年最大の収穫となった。
2000年代の米国が透けて見えてくるという構造は、いわば鋭利さを増した『フォレスト・ガンプ』のようでもあり、
オスカーの作品賞は『バードマン』で正解かもしれないが、監督賞はやっぱりリンクレーターにあげるべきではなかったか。
なんだかスッキリしないので、日本の映画小僧から、この偉大なる実験映画小僧に似非オスカー像を授与したい。
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明日のコラムは・・・
『体感って、なにかね』