音楽がなくても、映画は創れる。
いやサイレント時代を指していっているわけではなく、実際に現代でも、野心的な映画監督によって音楽を一切使用しない、ことばは悪いが「愛想のない」映画も誕生している。
その逆に、音楽・音響効果がないと成立しない映画もある。
きょうは、そんな「サウンドありき」の映画10傑を展開したい。
ミュージカル映画だけじゃない、
ダンス映画だけじゃない、
音楽とワンセットで語られる映画って想像以上に多く、10本に絞ることが難儀だった。
映像のあとに音楽をつけたのか、先に音楽があって映像を構築していったのか―そんな疑問さえ浮かぶほど、映像と音楽が幸福な結婚を果たしている名画たち。
まずは、その結婚が不幸を生んだ例として、サウンド映画のワースト3を挙げてみよう。
(1)『稲村ジェーン』(90)
サウンドトラック以外のところを褒めたひとって、誰か居たのだろうか。
(2)『ラストソング』(94)
ミュージシャンを目指す若者の物語。
クサい台詞の連発に、寒気が止まらなかった。
(3)『ボクシング・ヘレナ』(93)
父親デヴィッド・リンチは、50~60年代ポップスを駆使して不気味な物語を紡ぐ。
その娘ジェニファーは、同じように猟奇的な物語を扱いながら、流す音楽はレニー・クラヴィッツやマドンナだった。
処女作で躓いちゃったなぁ、、、と思ったものである。
では、結婚が幸福だったほうの10傑をどうぞ。
(1)『砂の器』(74…トップ画像)
はじめの120分は前戯で、ラスト20分が本番。
橋本忍も、そのつもりで創っている。
そしてこの20分間の主役は、紛れもなく音楽なのだ。
(2)『ピアノ・レッスン』(93)
エイダは、ピアノとともに生きている。
(3)『ファンタジア』(40)
先に音楽ありき、の好例。
たしかにクラシックには、物語性が詰まっているものね。
そのことにいち早く気づいたディズニーさんって、やっぱり凄いのだ。
(4)『アマデウス』(84)
シーンや台詞のいくつかは、音楽をもとに構築していったという。
モーツァルトの嫁コンスタンツェの母親がモーツァルトに金切り声で叱っていると、それがそのままオペラの一場面へとオーバーラップしていく・・・とても映画的で、個人的なお気に入りのシーンだ。
(5)『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)
映画としては「あんまり好きではない」のだが、監督トリアーの企みと、主演ビョークの熱演には素直に賛辞を送りたい。
「もう、この世には見る価値のあるものがない」から「失明してもいい」と歌うセルマの歌声が奪われなくて、ほんとうによかったと思う。
(6)『リンダリンダリンダ』(2005)
女子高生バンドの物語。
熱くはないが冷めてもいない・・・そんな彼女たちの日常が独特な「間」で描かれ、こういう青春もあるよね、と思わせてくれる。
(7)『シェルブールの雨傘』(64)
すべての台詞が歌に乗せて発せられる。
歌声が吹き替えなのは残念だが、映画表現を一歩前進させた点において、もっともっと評価されていいのではないか。
(8)『ザ・コミットメンツ』(91)
失業保険をもらいながらバンド活動をする若者たち。
労働者階級の日常をリアルに取り入れた群像劇は、ラストまで甘くない。
コーラスのひとり「イメルダ」を演じた女優さんに恋をしたが、いまなにをやっているのかな。
(9)『巴里のアメリカ人』(51)
ジーン・ケリーの超絶ダンスに目が釘付けになるが、ガーシュインの名曲の数々も素敵!!
さらにいえば音楽やダンスだけでなく、色彩美にも注目してほしい。
(10)『モダンタイムス』(36)
テクノロジーの暴走を批判する映画において、敢えて歌声を披露したチャップリンの覚悟を思うと、それだけで涙が出てくる。
チャップリンが作詞作曲をした謎の言語の歌『ティティナ』には、いろんな思いが込められているのだ。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『年末年始企画(5)マッスル映画10傑』
いやサイレント時代を指していっているわけではなく、実際に現代でも、野心的な映画監督によって音楽を一切使用しない、ことばは悪いが「愛想のない」映画も誕生している。
その逆に、音楽・音響効果がないと成立しない映画もある。
きょうは、そんな「サウンドありき」の映画10傑を展開したい。
ミュージカル映画だけじゃない、
ダンス映画だけじゃない、
音楽とワンセットで語られる映画って想像以上に多く、10本に絞ることが難儀だった。
映像のあとに音楽をつけたのか、先に音楽があって映像を構築していったのか―そんな疑問さえ浮かぶほど、映像と音楽が幸福な結婚を果たしている名画たち。
まずは、その結婚が不幸を生んだ例として、サウンド映画のワースト3を挙げてみよう。
(1)『稲村ジェーン』(90)
サウンドトラック以外のところを褒めたひとって、誰か居たのだろうか。
(2)『ラストソング』(94)
ミュージシャンを目指す若者の物語。
クサい台詞の連発に、寒気が止まらなかった。
(3)『ボクシング・ヘレナ』(93)
父親デヴィッド・リンチは、50~60年代ポップスを駆使して不気味な物語を紡ぐ。
その娘ジェニファーは、同じように猟奇的な物語を扱いながら、流す音楽はレニー・クラヴィッツやマドンナだった。
処女作で躓いちゃったなぁ、、、と思ったものである。
では、結婚が幸福だったほうの10傑をどうぞ。
(1)『砂の器』(74…トップ画像)
はじめの120分は前戯で、ラスト20分が本番。
橋本忍も、そのつもりで創っている。
そしてこの20分間の主役は、紛れもなく音楽なのだ。
(2)『ピアノ・レッスン』(93)
エイダは、ピアノとともに生きている。
(3)『ファンタジア』(40)
先に音楽ありき、の好例。
たしかにクラシックには、物語性が詰まっているものね。
そのことにいち早く気づいたディズニーさんって、やっぱり凄いのだ。
(4)『アマデウス』(84)
シーンや台詞のいくつかは、音楽をもとに構築していったという。
モーツァルトの嫁コンスタンツェの母親がモーツァルトに金切り声で叱っていると、それがそのままオペラの一場面へとオーバーラップしていく・・・とても映画的で、個人的なお気に入りのシーンだ。
(5)『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)
映画としては「あんまり好きではない」のだが、監督トリアーの企みと、主演ビョークの熱演には素直に賛辞を送りたい。
「もう、この世には見る価値のあるものがない」から「失明してもいい」と歌うセルマの歌声が奪われなくて、ほんとうによかったと思う。
(6)『リンダリンダリンダ』(2005)
女子高生バンドの物語。
熱くはないが冷めてもいない・・・そんな彼女たちの日常が独特な「間」で描かれ、こういう青春もあるよね、と思わせてくれる。
(7)『シェルブールの雨傘』(64)
すべての台詞が歌に乗せて発せられる。
歌声が吹き替えなのは残念だが、映画表現を一歩前進させた点において、もっともっと評価されていいのではないか。
(8)『ザ・コミットメンツ』(91)
失業保険をもらいながらバンド活動をする若者たち。
労働者階級の日常をリアルに取り入れた群像劇は、ラストまで甘くない。
コーラスのひとり「イメルダ」を演じた女優さんに恋をしたが、いまなにをやっているのかな。
(9)『巴里のアメリカ人』(51)
ジーン・ケリーの超絶ダンスに目が釘付けになるが、ガーシュインの名曲の数々も素敵!!
さらにいえば音楽やダンスだけでなく、色彩美にも注目してほしい。
(10)『モダンタイムス』(36)
テクノロジーの暴走を批判する映画において、敢えて歌声を披露したチャップリンの覚悟を思うと、それだけで涙が出てくる。
チャップリンが作詞作曲をした謎の言語の歌『ティティナ』には、いろんな思いが込められているのだ。
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明日のコラムは・・・
『年末年始企画(5)マッスル映画10傑』