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にっぽん男優列伝(314)松田優作

2016-02-16 06:41:01 | コラム
49年9月21日生まれ・89年11月6日死去、享年40歳。
山口・下関出身。

公式サイト


松田優作(まつだ・ゆうさく)さんが壮絶死を遂げたころ、自分は中学3年生でした。

まだ映画小僧を自称しておらず、映画ファンですらなく、ほかのクラスメイトより「少しだけ」映画が詳しいというだけの、世間知らずのガキ。
だから優作(以降、敢えて呼び捨て)の死そのものにはピンとこなかったのですけれど、ワイドショーを観ていると、
ホタテマン・安岡力也や原田芳雄といった「大の大男」が号泣している、
仲間が早死にしたとはいっても、これは泣き過ぎなのではないか、なぜ皆はこれほどまでに哀しむのか・・・と思っていたのです。

つまり優作の凄さというものを、黒澤の『生きる』(52)―死んでから知る―スタイルで経験したのが自分や、自分の下の世代なのですよね。

ちなみに黒澤と優作の接点はない・・・ことは、ありません。
駆け出しだったころに黒澤の自宅を訪問、弟子入りを志願して数日間「座り込み」をしたそうですが、本人に会うことも出来ず、以降「頼まれても、黒澤の作品にだけは出ない!!」と語っていたそうです。


※自分が優作を初めて意識したのは、おそらくトライアングルのCMだったと思います。
ヘンな俳優さんだな、、、そんな風に思っていました。




<経歴>

韓国人の母親に弁護士になるよう強く薦められ、高校を中退し渡米。
しかしカルチャーギャップに悩み心身ともに疲れ果てて帰国、夜間高校に通う。

71年5月、「新演劇人クラブ・マールイ」(主宰・金子信雄)に入団。
翌年、「文学座付属演技研究所」に入所する。

転機は73年。
村野武範の推薦で『太陽にほえろ!』(72~86、日本テレビ)に、ジーパン刑事としてレギュラー出演を果たす。
観ていないひとまで知っている、「なんじゃこりゃあー!」の殉職シーンが話題となって知名度がグンとアップする。

同年、『狼の紋章』で映画俳優としてのデビューも飾る。
このころに帰化申請もおこない日本国籍を取得しました。

原田芳雄と共演した『竜馬暗殺』(74)、初主演を果たしたコメディ『あばよダチ公』(74)、
舘ひろしとの演技合戦が爆笑必至の『暴力教室』(76)、ナイーブな侍という新しい時代劇に挑戦した『ひとごろし』(76)。

頭角を現し始めた76年、呑み会の席で暴行事件を起こし懲役10月、執行猶予3年の有罪判決を受ける。
このため、しばらく芸能界を謹慎していました。

大作『人間の証明』(77)、
村川透の最高傑作であろう『最も危険な遊戯』(77)と『殺人遊戯』(77)、
『俺達に墓はない』(79)、
村川透とは相性がよかったようで『蘇える金狼』(79)と『処刑遊戯』(79)、そして『野獣死すべし』(80)でもタッグを組む。

暴行事件の記憶も薄らいだ79年、テレビの世界でも優作は活躍。
実験要素をふんだんに盛り込んだ『探偵物語』(日本テレビ)は、後進の表現者たちに多大な影響を与えました。

工藤栄一の演出が光る『ヨコハマBJブルース』(81)、文芸大作『陽炎座』(81)。

83年、キャリア後期の盟友・森田芳光と初タッグを組んで『家族ゲーム』に主演。
乾いた笑いがクセになる、日本映画史上でもトップクラスに入るコメディ映画の傑作でした。

85年、再びモリタと組んで漱石の『それから』を映画化。

86年―。
漫画を原作とした『ア・ホーマンス』を企画するも、監督と制作意図で対立し、急遽「代打で」監督も引き受けることとなる。



これが、優作にとっての最初で最後の映画監督作品。
流れとしては北野武と同じ感じもしますね、よく分からない映画ともいえますが、なぜか憎めない「ごった煮」SFとなっています。

ARBの音楽も、当時としては格好よかったのでしょうし。(すいません、ちょっと皮肉っぽいですかね)

深作欣二が演出、吉永小百合と共演した『華の乱』(88)のころから膀胱癌に苦しむも、関係者のほとんどに知らせず撮影に臨む。
病状が深刻化してもなお映画の仕事をつづけ、『ブラック・レイン』(89)で念願のハリウッド・デビューを果たす。

贔屓目ではなく、マイケル・ダグラスよりもアンディ・ガルシアよりも、健さんよりも、若山トミーよりも、優作の演技は冴えていました。

この映画の見どころは、ジョークではなくガッツ石松と優作の演技だったと思いますよ。


公開は、89年10月6日のこと。
ちょうどその1ヵ月後の11月6日、優作は息を引き取りました。

享年40歳。
伝説というものは、短命であることを理由に「より」伝説化されていく―という皮肉があるのだよなぁ。。。

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明日のコラムは・・・

『にっぽん男優列伝(315)松田龍平』
コメント (2)
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