きのうラブホテルのアルバイトの話をしたので、ついでというか、この仕事の初体験エピソードを記してみたい。
というか、この仕事では初体験づくし。
裏の裏の裏の裏の裏の裏の世界を知りたいひとには、体験アルバイトでもいいから「強く」薦めたい。
自分が経験したズンドコ・エピソードを記す前に、もう少しラブホテルそのものについて語ろう。
仏国の鬼才ギャスパー・ノエが現代日本を捉えた、『エンター・ザ・ボイド』(2009)。
ラブホテル街を上空から捉えるシーンがあり、ある識者がこれを「ザーメンのタンク場」と評した。
いい得て妙、というか、こんな形容を自分が出来なかったことが悔しかった。
そう、ラブホテルは端的にいってザーメンのタンク場である。
卑下の上に卑下を足していえば、清掃員は他人のザーメンを片していることになる。
24歳のころの自分は、当時の支配人にストレートにこういって怒られた。
そりゃ当然だ、当然だが、と同時に、自分がいっていることだって真実なんだと思った。
自虐だが、嫌な仕事というわけでもなかった。
自分でザーメン出したほうが楽しいに決まっている、しかし、部屋がキレイだとアンケート用紙に書いてもらうとうれしいし、その晩のメイクラブをセッティングしたのが自分だと思うと、それはそれで悪い気はしないのであった。
※当時働いていたホテルの、現在…名前も変わってしまった
さて。
いつものようにルーム清掃をしていると、フロントのおばさんから下りてくるよう入電があった。
フロントには、いかつい男が8人も立っていた。
神奈川県警の刑事たち。
ある男の確保と、ある女の救出が目的だという。
302号室に宿泊した、30代の男と20代の女。
男は銃刀法違反・傷害で前科あり。
彼が駐車場に停めている車は盗難車であることが判明、さらに薬物所持の疑いもある。
その男が、ウチの娘を連れ回している―20代女の母親の通報により、刑事が動いたというわけ。
フロントは防犯上の理由もあって、対面式とはいえない「超」小窓のタイプ。
自分は302号室に食事を届けており、自分「だけが」室内の様子と女の顔を見ている。
突入(!)する前に最終確認したいからと、刑事は自分に女の写真を見せてきた。
・・・・・。
写真は、化粧ばっちり。
しかし自分が見た女は、風呂上りだったのである。
似ている。
と、いえば似ている。
似ていない。
と、いえば似ていない。
生涯で何度か「面通し、のようなもの」を経験しているが、自分、これが大の苦手。
苦手でないひとも珍しいと思うが、もし間違っていたらどうしよう、このひとが犯人でなかったらどうしよう、、、と思うと、自信を持って指を差したり頷いたり出来なくなってしまうのだ。
自分が「いつになく」モジモジ? していると、リーダーらしい刑事が本部かどこかに電話をかけ、「いま係のかたが確認しました。突入の準備を始めます」と報告しやがっている!!
確認した!?
「―それからおにいさん、悪いけどね、突入の際、何が起こるか分からない。宿泊は8組でしょう。連中を除いて7組。その7組をね、帰してほしいんだ」
「え、いま、深夜の3時ですよ」
「そう、3時。緊急事態だから、何が起こるか分からないんだ」
「・・・・・」
フロントのおばさんを見ると、我関せずみたいな顔をしている。
えー、自分が??
というわけで。
寝ているかもしれない、メイクラブしているかもしれない7部屋のドアを叩くことになったのであった。
つづく。
※めまい必至、『エンター・ザ・ボイド』のオープニング・クレジット
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(161)』
というか、この仕事では初体験づくし。
裏の裏の裏の裏の裏の裏の世界を知りたいひとには、体験アルバイトでもいいから「強く」薦めたい。
自分が経験したズンドコ・エピソードを記す前に、もう少しラブホテルそのものについて語ろう。
仏国の鬼才ギャスパー・ノエが現代日本を捉えた、『エンター・ザ・ボイド』(2009)。
ラブホテル街を上空から捉えるシーンがあり、ある識者がこれを「ザーメンのタンク場」と評した。
いい得て妙、というか、こんな形容を自分が出来なかったことが悔しかった。
そう、ラブホテルは端的にいってザーメンのタンク場である。
卑下の上に卑下を足していえば、清掃員は他人のザーメンを片していることになる。
24歳のころの自分は、当時の支配人にストレートにこういって怒られた。
そりゃ当然だ、当然だが、と同時に、自分がいっていることだって真実なんだと思った。
自虐だが、嫌な仕事というわけでもなかった。
自分でザーメン出したほうが楽しいに決まっている、しかし、部屋がキレイだとアンケート用紙に書いてもらうとうれしいし、その晩のメイクラブをセッティングしたのが自分だと思うと、それはそれで悪い気はしないのであった。
※当時働いていたホテルの、現在…名前も変わってしまった
さて。
いつものようにルーム清掃をしていると、フロントのおばさんから下りてくるよう入電があった。
フロントには、いかつい男が8人も立っていた。
神奈川県警の刑事たち。
ある男の確保と、ある女の救出が目的だという。
302号室に宿泊した、30代の男と20代の女。
男は銃刀法違反・傷害で前科あり。
彼が駐車場に停めている車は盗難車であることが判明、さらに薬物所持の疑いもある。
その男が、ウチの娘を連れ回している―20代女の母親の通報により、刑事が動いたというわけ。
フロントは防犯上の理由もあって、対面式とはいえない「超」小窓のタイプ。
自分は302号室に食事を届けており、自分「だけが」室内の様子と女の顔を見ている。
突入(!)する前に最終確認したいからと、刑事は自分に女の写真を見せてきた。
・・・・・。
写真は、化粧ばっちり。
しかし自分が見た女は、風呂上りだったのである。
似ている。
と、いえば似ている。
似ていない。
と、いえば似ていない。
生涯で何度か「面通し、のようなもの」を経験しているが、自分、これが大の苦手。
苦手でないひとも珍しいと思うが、もし間違っていたらどうしよう、このひとが犯人でなかったらどうしよう、、、と思うと、自信を持って指を差したり頷いたり出来なくなってしまうのだ。
自分が「いつになく」モジモジ? していると、リーダーらしい刑事が本部かどこかに電話をかけ、「いま係のかたが確認しました。突入の準備を始めます」と報告しやがっている!!
確認した!?
「―それからおにいさん、悪いけどね、突入の際、何が起こるか分からない。宿泊は8組でしょう。連中を除いて7組。その7組をね、帰してほしいんだ」
「え、いま、深夜の3時ですよ」
「そう、3時。緊急事態だから、何が起こるか分からないんだ」
「・・・・・」
フロントのおばさんを見ると、我関せずみたいな顔をしている。
えー、自分が??
というわけで。
寝ているかもしれない、メイクラブしているかもしれない7部屋のドアを叩くことになったのであった。
つづく。
※めまい必至、『エンター・ザ・ボイド』のオープニング・クレジット
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明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(161)』