Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

初体験 リッジモント・ハイ(169)

2016-04-12 05:26:42 | コラム
万引きGメン―正式名称は、私服保安員―の研修期間は、異様に長い。

ひとりで店を任されるようになるまでには・・・
早いひとでも半年、遅いひとでは3年以上を要する。

そりゃそうだ、警官でもない「一般人」が現行犯逮捕し、ソイツを犯罪者にしてしまう職業なのだから。

自分は八王子の小さな警備会社に在籍していたが、研修場所は秋葉原だった。

敢えて偏見の強い表現をするが、いろんな不審者が居るため、様々な事案が起こり、研修場所として理想的な街なのである。


美少女ゲームのパッケージを手に取りながら、もういっぽうの手でナニをナニしているキチガイが居た。

店の外から指示を送り、妊婦の嫁に万引きさせる鬼畜旦那が居た。
(逮捕されたとしても、妊婦だから情状酌量っぽくなるのではないか・・・という発想からの犯行である)

女子店員に一目惚れをし、彼女の手を放さないジジイが居た。
(「保安」員だから、そういう事案にも対処する)


遊ぶには面白い街だと思う。

ユニークなものが売っているし、メイドは可愛いし、東京のなかでも六本木とかとは「別のベクトルで」自由度が高く、何時間居ても飽きないことはたしか。

けれども。
自由度が高いことの代償か、「秋葉原通り魔事件」(2008年)が起こる「前から」不審者の出没も多かったのだ。


研修2日目―。

電化製品からゲームソフト、フィギュアまで扱い、秋葉原地域だけで何店舗も展開する「ソフマップ」の警備。




自分は1号店から、先輩は8号店から警備を始め、真ん中で合流、そこで昼食を取り情報を交換し合うという流れ。

先輩には「なにがあっても、ひとりで勝手に行動しようとするな。犯行を目撃したら、すぐに俺に連絡しろ」といわれていた。

・・・のだが、1号店の警備を始めてすぐに浮浪者風の男の万引き現場に遭遇し、男はもう店の外に出てしまっていた。

8号店に居る先輩に電話をかけても、間に合うわけがない。

もういいや。
犯罪者を取り逃がすより、先輩に怒られたほうがマシだろう・・・と考え、男の肩をつかんで声をかけた。

「分かりますよね」

これ、自分が決まって「声かけ」に使用していた台詞である。

「あん?」

と返されたので、もういちど丁寧にいってみた。

「なぜ声かけられたのか、分かりますよね」

これでシラを切るようであれば強く出てみるが、男は、

「・・・あぁ」

と返し、罪を認めたので、男のベルトを掴んだ状態で先輩に電話をした。


「え! 捕まえちゃったの!? なんでまた・・・」
「すいません、先に連絡する時間がなかったもので」


万世橋警察署(トップ画像)の、待合室にて―。

先輩はぽつりと、「ヌケガケしやがって・・・」といった。


・・・・・。

いやいや。


まぁ、分からないでもない。
長いことGメンやってみて気づいたが、この職業もまた「成績がすべて」なのである。

営業職のように、事務所の壁に成績をグラフ化したものが貼り出される。

成績が悪ければボスから小言をいわれるし、また、店のほうからも「あのひとはNG」などと指名拒否されてしまうのだった。


それはともかく。
取調室が、なんだか騒がしいぞと。

警官がひとり、「新聞紙持ってこい!!」と叫んでいる。

いかつい警官たちが何人もワチャワチャし始めたので、気になって取調室の前までいってみた。

「おい、コイツ連れてきたの君たち?」
「えぇ、まぁ・・・」

「いきなりクソもらしたぞ!!」
「えっ」

「君たちさぁ、もうちょっとマシなヤツを捕まえてきてくれよ」


・・・って、知らんがな!!


犯人が取調室で、クソをもらした―というインパクトを前に、研修2日目の大仕事が「完全に」負けてしまった。

ガッデム!!


でも、まぁいいか。

これはこれで大きな経験であったし、なにより、ちょっと拗ねていた先輩が自分と顔を見合わせて「笑ってくれたから」ね。


おわり。


※秋葉系格闘家といえば自演乙だろうが、もうちょっと活躍出来ると思っていたのだけれどもね。
対日本人とであれば結果を残せる、しかし・・・といった感じかな~。




…………………………………………

明日のコラムは・・・

『柔肌に絆創膏』
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする