ミルズ「―なにをきっかけにヒトゴロシになるかなんて、分からない。ジョディ・フォスターの声で、レーガンを撃ったヤツだって居る世の中だ」
映画『セブン』(95)より
…………………………………………
ヤツが、戻ってくる。
映画ファンのあいだではよく知られている犯罪者、ジョン・ヒンクリー。
レノンを撃ったマーク・チャップマンや、シャロン・テートを惨殺したマンソンほど有名ではないが、
10代のころのジョディ・フォスターに恋をして、ストーカーとなり、当時の大統領レーガンを撃った男である。
『タクシードライバー』(76)の狂信的な信者であることは自分と一緒だが、それを地で行ってしまうとは。
けれども「電波受け取っちゃった」系の犯罪者はヒンクリーにかぎった話ではない、
女子大生シンガーをめった刺しにした男だって、ひょっとすると相模原の犯人だって同種かもしれない。
(日本でいう)医療刑務所にずっと入所していたヒンクリーも、現在は還暦を過ぎている。
「危険性はない」という判断で「戻ってくる」ということらしいが、この事件がジョディに与えた影響はあまりにも大きい。
裁判では『タクシードライバー』が上映され、一部では監督スコセッシに対する批判もあがった。
それだけ、この映画の持つ負のエネルギーが強烈だった―という証にもなるのかもしれないが・・・。
映画を学ぶ学生だったころ、自分は「伝記」の課題シナリオでヒンクリーを取り上げた。
きょうのタイトルと、トップ画像がそれである。
同級生が向田邦子や諸葛孔明を取り上げるなか、ひじょうに浮いていたが周囲の評判はよかった。
同級生のひとりは「題材がよかったんだ」と評し、それは褒めているのかもしれないが、カチンときた。
彼はたしか、映画監督の川島雄三を取り上げていた。
そっちだって、よい題材じゃないか。
しかし彼のシナリオは評価を受けなかったので、その負け惜しみだと解釈した。
モノがちがうんだよ、オメーなんかと。
こっちは、愛と憎悪で映画を捉えているんだクソ童貞めが! そんな風に思ったのであった。
タイトルの「五百通」とは、ヒンクリーがジョディに送った恋文を指している。
ヒンクリーとジョディのキャリアを調べたうえでのシナリオ化ではあったが、この数は「多少」どころか「かなーり」盛っている。
映画的なインパクトを意識した脚色だ。
しかし手紙の内容は誇張せず、実際に公開されたものを「そのまま」引用した。
以下の手紙は、ヒンクリーが「決行」する前、ジョディに最後に送った手紙とされている。
歴史的価値? のあるものだと思うので、全文載せておこう。
…………………………………………
やあジョディ、
レーガンを暗殺しようとすれば、こっちが殺される可能性も大きい。だから今のうちに君に手紙を書いておく。
知ってのとおり、僕は君のことをとても愛している。この数カ月、多くの詩や手紙やメッセージを送った。ひょっとしたら君が僕に興味を持ってくれるのではないかと思ったからだが、そうはならなかった。
少なくとも君が僕の名前を知っていて、僕が君のことをどれほど好きかも知っていてくれているのは嬉しい。僕が君の家のドアの下や郵便受けに残したメッセージが迷惑だったのは分かっているが、僕にとってはこの方法が一番ラクに想いを伝えられる方法だった。
君とは電話で2回話したけれど、君に直接自己紹介する勇気はどうしても出なかった。内気なせいもあるが、本当に君の邪魔をしたくなかったんだ。そして君の宿舎の周りを行き来しながら、僕は気づいた。僕は笑い者かもしれないが、世間話以上の存在だと。少なくとも君は、僕がずっと君を愛することを知っている。
ジョディ、もし君の心を奪い、残りの人生を共に過ごせるなら、レーガンを殺す計画はすぐやめる。認めるよ。僕がこんなことをするのは、今すぐ君にわかってもらいたいから。君のためならこれだけのことが出来るんだということを、はっきりとわかってもらわなければならない。自分の自由やひょっとしたら命さえ犠牲にしても、君に僕のほうを振り向いてもらいたい。これから1時間後に、(レーガンのいる)ヒルトンホテルに向かう。
ジョディ、お願いだから自分の心をよく見つめて、こんな歴史的偉業を果たす僕に、君の尊敬と愛を勝ち取るチャンスをくれ。
永遠の愛を、
ジョン・ヒンクリー
…………………………………………
『タクシードライバー』より、銃の密売シーンを。
トラビスが、銃の所持許可証を持っていなかったのは意外だった。
そしてこの密売業者の、うさんくささといったら、ない。
銃だけでなく、ドラッグやキャデラックも売ろうとするし。
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明日のコラムは・・・
『creature』
映画『セブン』(95)より
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ヤツが、戻ってくる。
映画ファンのあいだではよく知られている犯罪者、ジョン・ヒンクリー。
レノンを撃ったマーク・チャップマンや、シャロン・テートを惨殺したマンソンほど有名ではないが、
10代のころのジョディ・フォスターに恋をして、ストーカーとなり、当時の大統領レーガンを撃った男である。
『タクシードライバー』(76)の狂信的な信者であることは自分と一緒だが、それを地で行ってしまうとは。
けれども「電波受け取っちゃった」系の犯罪者はヒンクリーにかぎった話ではない、
女子大生シンガーをめった刺しにした男だって、ひょっとすると相模原の犯人だって同種かもしれない。
(日本でいう)医療刑務所にずっと入所していたヒンクリーも、現在は還暦を過ぎている。
「危険性はない」という判断で「戻ってくる」ということらしいが、この事件がジョディに与えた影響はあまりにも大きい。
裁判では『タクシードライバー』が上映され、一部では監督スコセッシに対する批判もあがった。
それだけ、この映画の持つ負のエネルギーが強烈だった―という証にもなるのかもしれないが・・・。
映画を学ぶ学生だったころ、自分は「伝記」の課題シナリオでヒンクリーを取り上げた。
きょうのタイトルと、トップ画像がそれである。
同級生が向田邦子や諸葛孔明を取り上げるなか、ひじょうに浮いていたが周囲の評判はよかった。
同級生のひとりは「題材がよかったんだ」と評し、それは褒めているのかもしれないが、カチンときた。
彼はたしか、映画監督の川島雄三を取り上げていた。
そっちだって、よい題材じゃないか。
しかし彼のシナリオは評価を受けなかったので、その負け惜しみだと解釈した。
モノがちがうんだよ、オメーなんかと。
こっちは、愛と憎悪で映画を捉えているんだクソ童貞めが! そんな風に思ったのであった。
タイトルの「五百通」とは、ヒンクリーがジョディに送った恋文を指している。
ヒンクリーとジョディのキャリアを調べたうえでのシナリオ化ではあったが、この数は「多少」どころか「かなーり」盛っている。
映画的なインパクトを意識した脚色だ。
しかし手紙の内容は誇張せず、実際に公開されたものを「そのまま」引用した。
以下の手紙は、ヒンクリーが「決行」する前、ジョディに最後に送った手紙とされている。
歴史的価値? のあるものだと思うので、全文載せておこう。
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やあジョディ、
レーガンを暗殺しようとすれば、こっちが殺される可能性も大きい。だから今のうちに君に手紙を書いておく。
知ってのとおり、僕は君のことをとても愛している。この数カ月、多くの詩や手紙やメッセージを送った。ひょっとしたら君が僕に興味を持ってくれるのではないかと思ったからだが、そうはならなかった。
少なくとも君が僕の名前を知っていて、僕が君のことをどれほど好きかも知っていてくれているのは嬉しい。僕が君の家のドアの下や郵便受けに残したメッセージが迷惑だったのは分かっているが、僕にとってはこの方法が一番ラクに想いを伝えられる方法だった。
君とは電話で2回話したけれど、君に直接自己紹介する勇気はどうしても出なかった。内気なせいもあるが、本当に君の邪魔をしたくなかったんだ。そして君の宿舎の周りを行き来しながら、僕は気づいた。僕は笑い者かもしれないが、世間話以上の存在だと。少なくとも君は、僕がずっと君を愛することを知っている。
ジョディ、もし君の心を奪い、残りの人生を共に過ごせるなら、レーガンを殺す計画はすぐやめる。認めるよ。僕がこんなことをするのは、今すぐ君にわかってもらいたいから。君のためならこれだけのことが出来るんだということを、はっきりとわかってもらわなければならない。自分の自由やひょっとしたら命さえ犠牲にしても、君に僕のほうを振り向いてもらいたい。これから1時間後に、(レーガンのいる)ヒルトンホテルに向かう。
ジョディ、お願いだから自分の心をよく見つめて、こんな歴史的偉業を果たす僕に、君の尊敬と愛を勝ち取るチャンスをくれ。
永遠の愛を、
ジョン・ヒンクリー
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『タクシードライバー』より、銃の密売シーンを。
トラビスが、銃の所持許可証を持っていなかったのは意外だった。
そしてこの密売業者の、うさんくささといったら、ない。
銃だけでなく、ドラッグやキャデラックも売ろうとするし。
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明日のコラムは・・・
『creature』