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◎2024年8月21日(水)
白駒池駐車場(7:30)……青苔荘(7:43)……白駒湿原(8:10)……ニュウ(9:11~9:37)……中山峠分岐(10:32)……中山(10:51)……中山展望台(10:58)……高見石小屋(11:56)……白駒荘(12:30)……駐車場(12:45)
もう40年ほど前になろうか。電車の中で女性が山の話をしていて、こちらはつい聞き耳を立てた。「このあいだ、ニュウに行ったの。楽しかったよ」。「ニュウってどこ?」。「八ヶ岳の北の方の山」。ニュウなんて山は知らなかったので後で調べた。ハイキングレベルで登れる山のようで、興味はなくなり、その後にいろんなルートで天狗岳界隈を歩いたりしたが、中山峠を通った時ですら、その近くにあるニュウにはわざわざ行きたいとは思わなかった。
何でこの期に及んでということになる。夏バテで体調不良が長期化し、まして猛暑続きでは山に行く気にもなれない。仕事は外回りだし、休みの日まで暑い外に出たくはなかった。これでは体力も衰える一方だと絶えず気になり、楽をして登れる涼しい山はないものかといろいろ考えた。おそらく寒いくらいだろうの乗鞍岳がベストだが遠過ぎる。そこで思いついたのが件のニュウ。標高は2352m。駐車場ですら2094mとある。標高的に涼しくないはずはなく、単純標高差ですら250mでは歩くのも楽だろう。実際には、山歩きには一か月近くのブランクもあり、自分にはハイキングレベルで歩ける山ではなくなっていて、楽だと思うこともなかったが。
ここで少しばかり余談を入れる。この山名の「ニュウ」。当初、オッパイ形のピークだから「乳」とばかりに思っていた。念のために山名事典を調べると、「ニュウは入で、稲をハザ木に掛けた形に似ていることからの山名」とある。ハザ木そのものがわからずに調べ、あああれかとわかったが、なぜそれが「入」になるのかは疑問のままだ。山頂までの途中の標識には「にう」、「にぅ」、「にゅう」、「にゆう」、「ニュウ」、「ニュー」といくつも書き込まれていた。ここでは「ニュウ」で通すことにする。山頂には新しげで手の込んだ山名板があり、これは「ニュウ」になっているものの、標高が「2532m」と記されていて、えっ、ここ、男体山よりも高いの? と思ったが、地形図の等高線を確認してみても、2352mを2532mに間違えているのは確かで、これではせっかくの山名板も泣いてしまう。ちなみに、2年前の記録の写真にはこの先代版の山名板が置かれていて、それは2352mとなっている。
麦草峠の無料駐車場にするか600円の白駒池駐車場にするかで迷った。白駒池駐車場の方が歩く距離も短そうなので、そちらに車を入れたが、この駐車場、土日は午前6時には満車になるようで、平日の今日あたりは出発時時点で20台ほどだった。収容180台となってはいるが、それは無理かと思う。コースの下調べをすると、樹林帯の中は泥濘が多く、下りは大石だらけで嫌になるとあったから、スパイク地下足袋にした。地下足袋なら、泥が付いてもタワシで洗うだけだし、岩場ならスパイクは考えものだが、大石なら問題なかろうとの判断だが、結果として、引っかけて滑ることもなく選択に間違いはなかった。
(白駒池、ニューへの入口)
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(木道が続いていた。ということは、この辺は雨が降ると泥濘になるのだろう)
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出発。それにしても涼しい。車載の気温計は19℃になっていた。ニュウを選んで正解と言える。準備中の方は数人いたが、大方はすでに出払っているようだった。ただ、後で考えると、自分の出発時刻は何とかぎりぎりセーフで、もっと遅く出発していたり、さらにノロマな歩きをしていたら、ガスが充満し、見たい景色も見られなかったろう。「てんきとくらす」では終日Aだったが、それはニュウだけのことであって、周囲の展望が約束されているわけではない。
幅の広いきれいな木道が続いている。これがずっと続くわけではなく、白駒池の周辺だけらしい。ニュウまで行く人はそれほど多くはないようで、下山時で気づいたが、大方の行楽客は一時間弱の白駒池周回だけで済ませているようだ。池の周辺の紅葉は絶品のようで、特にその時期には混むらしい。かなり離れた八千穂高原スキー場からシャトルバスを運行しているようだ。
(樹林帯が続く。ふかふかしたコケは見ているだけで気持ちも和む)
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(こんな感じで、看板にはコケの説明が加わる)
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(これがそのカモジゴケだろうか)
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いきなりの樹林帯。視界の効く樹林にはコケがやたらと目立ち、このコケは山頂直下まで続くことになる。看板には「白駒の森」とあり、コケの説明書き付き。雰囲気は好きだが、コケに詳しいわけではない。この先にもコケの説明が続き、いろんな種類があって感心してしまったが、自分には、花と同様に区別がつかない。風はないものの、蒸し暑いわけでもなく、空気そのものがひんやりとしている。コケの恩恵だろうかとさえ思う。これでは汗もかくまいと思ったが、確かに暑さによる嫌な汗をかくことはなかったが、身体を動かすわけだから、汗は自然に流れる。これだけでも不快感はまったくなかった。まして湿気もない。
(木道はまだ続き)
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(青苔荘)
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(そして白駒池)
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(左が中山だろうか。右に対岸の白駒荘が見えている)
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分岐から青苔荘方面に向かうと右手に白駒池が見えた。ボート乗り場の桟橋に寄ってみた。なるほど、これが錦秋の頃には輝くばかりになるのか。見に来てみたいものだが、高速代と2時間半の時間をかけ、駐車できる保証がないのは困りもので、だったら、渋滞覚悟で日光か那須に行った方がましかもしれない。
青苔荘を過ぎてほどなく、白駒池周遊道から離れる。標識では稲子湯とニュウ方面がダブルになっている(稲子湯方面は途中から離れる)。以前、稲子湯から天狗岳に行った際には、ここを通ることはなく、直接、中山峠に行った。
(暗がりに歩いたらゾクゾクしそうだ)
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(良い感じのコケだったので)
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(行楽客は、おそらくこちらまでは来ないだろう)
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(白駒湿原)
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(湿原を過ぎるとやはりこうなった)
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(ニュウのエリアに入った)
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コケを見ながら歩いて行くと、木道は蛇行し、泥濘も出はじめた。だが、ここ数日は降雨がないのか、軽い泥道程度のものだし、簡単に避けられる。白駒湿原(湿原というほどの広さはなかったが)を過ぎると、木道は朽ちた丸太が雑然と並べただけになり、それもまたすぐになくなってしまった。
前置きが長過ぎたが、ここからが本格的なニュウへの歩きになる。
(こんな窪みのある石をいくつか見かけたが、これは何だろう。雨によるものではないと思うが、酸性雨?)
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(ラブホテル案内のような標識。せいぜい「ニュー・中山」か一文字空きにすればいいのに)
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(「にう」の標識。この先も多種な山名になって出てくる)
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(前方を歩く二人連れ。初心者は歩きづらかろう)
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急なところはまったくと言ってよいほどにない。だが、初めて歩くところだし、予想外の激坂があるやもしれず、用心してゆっくり歩きに徹した。前を歩く一人は休憩されたがために抜いたものの、さらに先の二人連れとは50m以上の等間隔をとったが、遅れがちなカミさんに気づかれてしまい、追い抜く抜く羽目になってしまった。
踏み跡らしき道があちこちに向かう。入り込むとチョン切れては戻る。分岐以外の本道は一本通しで、それも、ピンクテープが誘導してくれるとようやくわかった。このいろんな踏み跡というのは、おそらく、泥道を避けようとしてついたものだろうと思う。
(やはり、ここは雨降りが多いようだ。樹の根が剥き出しに暴れている)
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樹林の先には切れた空が薄く見えている。そこに至ってもなかなか頂上に近づいている気配はなく、いつまで経っても切れた空は上に覗いている。自分がどの辺にいるのか知りたいが、GPSを忘れてきていた。スマホに入れた『山と高原地図』でも確認はできるが、ザックから出すのが面倒だった。高度計もセットはしていなかった。そんなところに、上から青年が下って来た。別に、こちらから聞いたわけではないが、「もう少しですよ。最高でしたよ。白駒池もはっきり見えたし」と満足げに語ってくれた。「もう少し」にはほっとしたが、別に上から白駒池を見たいわけではなく、実は天狗岳を見たかった。自分には、北八ツでは天狗岳がアイドル的な存在だった。余計な話。もう何十年も天狗岳には行っていないが、あの山は無雪期に行く山ではないと思っている。初めて夏に行った際、岩の裏に回ると、広範囲なキジ場になっていてびっくりした。暑い時ゆえに悪臭のルツボになっていた。以来、雪のある時期に行っていた。今はどうなっているかは知らない。
(大岩を通過)
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(もう山頂のようだ)
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(ニュウ山頂。ここでザックをデポする)
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(天狗岳が見えていた。久しぶり)
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大きな岩を通過してようやく稜線に出た。標識には左がニュウで、右が中山峠とある。ほどなく山頂が見えた。岩場の山頂だが、あれがハザ木云々の姿なのだろう。周囲を見回すと、天狗岳もしっかりと聳えている。岩峰に長居するのも落ち着かないだろうと、下に荷物を置いて、カメラだけ持って山頂に登った。出発から1時間40分。コースタイムは1時間30分から50分だから、まぁこんなものだろう。休憩をとることもなかったし、息切れもなかった。
(あれがホザ木に稲穂を掛けた形なの? 乳に見えないことは確かだが)
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(北側。白駒池が見える。ずんぐりした蓼科山は見えていない)
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(白駒池をアップで。ボート乗り場が見える)
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(山頂の山名板と三角点標石。2532mとある。奥に見えるのが蓼科山だろうか)
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(雲が大分降りてきている)
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山頂には5人くらい休んでいて、これから登って来るハイカーの姿も何人か見えた。北側には蓼科山に続く北八ツの山々、真下には白駒池が見える。南側には天狗岳…しか見えない。すっきりした空だったら、硫黄岳も富士山も見えるらしい。こうして景色を眺めている間に雲がどんどん湧いてきて、せっかくの天狗岳は隠れた。せめて30分でも早く到着していたらと悔やんだが、富士山まで見えると知ったのは帰って来てからのことで、この先の中山展望台でも、記したすべての山々が「見えるらしい」で終わった。天狗岳を見られただけでもラッキーと思えばいいが、帰ってから複雑な気分になったことは確かだ。出がけにGPV気象予報で確認した時には、このあたりはかなり薄い雲になっていて、それを信じればこれほどの視界にはならないはず。
その間、山頂からの景色を眺めていただけだったわけではない。親子連れに写真を撮ってもらったり、逆にオレが撮ってやったりもしている。この親子連れの子供にはびっくりした。年長の幼稚園児らしい男の子だったが、後ろ向きで崖下を眺めているところに「ボク、頑張ったね」と声をかけたら、こちらを振り向いた。その顔を見たら、何で、オレの孫がここにいるのかと驚くくらいに似ていた。孫には、山に連れて行ってくれとせがまれているが、そのままになっている。自分の子供だったらともかく、孫となると、無血縁の他人が入り込むので、ケガでもされたら、話がややこしくなる。
(ザックデポ地に戻って食事。右のお二人は、さっき追い抜いたが、よく見ると、背中が汗でびっしょりになっている。自分はそこまでにはなっていない。荷物はやはり下にデポしたようだ)
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(天狗岳方面はガスが多くなってきた)
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(そして雲に隠れた。到着が15分遅かったら、天狗岳も見えずにがっかりだったろう)
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景色も消えたので、ザックの置いてある場所に戻ってパンを食べながら休憩する。今日は珍しく1.5リットルほどの水を持ってきたが、最終的には500ccも飲んでいなかった。汗はかきながらも、暑くはないから、水も欲しくならない。食事をしている時におかしなことを聞かれた。「中山方面にはどうやって行くんですかね?」。どちらから来たのか聞くと白駒の池からとのこと。だったら、すぐそこに中山分岐の標識があったはずですけどと答えると、気づかなかったらしい。単独の方だったが、大丈夫だろうか。
(中山方面に向かう。中山は奥の小高いところかと思う)
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(樹の根が続いたが、むしろ、こういうところの歩きは好きだ)
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(振り返ってニュー。もうガス間のシルエット)
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(数分後にはこうなった)
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休憩を切り上げて中山に向かう。100mほど歩いて振り返ると、ニュウはすでにガスで消えかかり、ほどなくして見えなくなった。ここもまた樹林帯ながらも、左手に開けたところがあって、わざわざ立ち寄ると、真っ白な世界でしかなかった。
(さほどに歩きづらくはなかった。むしろ、地形図では左下に断崖が続くようで、景色が見えないのでは、緊張感もなく歩けた)
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(楽そうだが、地味な登りになっている)
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(幻想的な風景。むしろ、「もののけの道」はここの方が似合う。前を歩く二人連れがチラリ)
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(中山峠分岐)
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急ではないが、緩い登りが続く。これが長くなると地味にきつい。途中、立ち枯れがすごいなと思ったが、これは北八ツらしい縞枯れの森だった。これにガスが加わって幻想的な風景になっていたりする。得体のしれないキノコもあちこちに出ている。ここでもコケを見ながら、ようやく平坦になったところで中山峠分岐に着いた。天狗岳方面に行くのなら、ここで南下することになる。そちら方面にある途中の展望地から天狗岳を正面に見に行きたかったが、もはや視界も悪く、景色も見られないのでは意味もない。このまま中山に向かうことにした。実は、ここで、ニュウに行く途中で追い越したご夫婦が休んでいて、ニュウからさっさと下って行ったのは覚えている。ここに至るまでチラチラとあのご夫婦だなと思いながらも、距離を前よりも離して歩いていた。ご夫婦は中山峠の方に向かって行った。ここで一緒になった他の単独氏二人は迷う様子もなく中山の方に向かった。わざとらしいが、二人の姿が見えなくなったのを確認してから、中山に向かった。後ろからヒタヒタはごめんだ。
(しばらくは平坦。そろそろ疲れ出してはいる)
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(この先、石が出てくる。特にうっとうしくはなく、石畳を歩いているような感じだった)
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(右手。見ていて雰囲気が良さそうな稜線が続いている)
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(開けていたから、ここが中山かと思ったが違った)
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(中山山頂)
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平たい大きな石が続くようになる。別段、障害にはならないが、石の上を滑らないように気を遣う。右手にシラビソの直線的な稜線が見えてくる。その奥に高い山がありそうだが、ガスで見えないし、何山かもわかりかねる。登り詰めたところが開けていて、中山かと思ったがさにあらず。改めて樹林帯に入り込んだところに中山の標識があった。標高2496m。ここは確実に男体山よりも10mは高い。三角点はない。ただの素通りのピークといったところだ。長居して休憩するところでもないので立ち止まって確認しただけ。そのまま行く。このあたりから、大きな石も次第に気に障るようになってきた。道は平坦だから、せいぜい、うるさいなといったところだったが。
(中山展望台)
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(雲がなければ絶景スポットだと後で知った)
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中山山頂から数分ほど歩いたところに中山展望台の標識があって、4人ほど休んでいて、峠分岐で先行した方もここで食事中だった。いわば、大石だらけの賽の河原といった風情だが、青空はほんの少し残っていながらも、展望は雲でまったくない。これから雨が降り出しそうな雰囲気にさえ思える。前述したが、青空の下なら、ここからの展望はよろしく、蓼科山がどかりと大きく見え、中央アルプスやら御嶽山、乗鞍山も視界内で、ずっと寝転んでいたくなるらしいが、積まれたケルンすら見えないのでは、ここの展望台の広さの感覚もつかめない。景色もない展望台にいてもしょうがないので、石の上を伝いながら、少しばかり小回り探索をしてみただけで終わりにした。風も出てきていて、少々寒く感じた。
(ラストの下りへ)
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さて、ここまでは特別にクタクタになるほどのこともなかったが、この先が下り一辺倒で障害物だらけの厄介な歩きだった。高見石小屋まで1時間下りだったが、2時間にも感じ、そこで終わりではなく、さらに白駒荘まで30分が1時間にも感じた。ネット記事では、白駒池からニューまでのピストン歩きの方も見受けられるが、歩く前までは、中山含めての周回もせずにもったいないものだと思ったものだが、歩いた結果からして、その方が賢明だったかもしれない。中山展望台まではさほどにきつくも感じなかったが、その先には、下りながらもうんざりし、おそらくその影響だろうか、翌日は身体中筋肉痛やら打ち身で痛かった。
(モンベル寄贈の木道。青苔荘付近にはヤマレコ寄贈があった。ヤマップの文字は見かけなかった)
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(部分的なご愛嬌かと思った)
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展望台からは相変わらずに大石が続く。一時的にモンベル寄贈の木道はあったが、これは泥濘対策用であってすぐに終わった。あとは、果てしなく、大石ゴロゴロの下りが続く。風景があればともかく、左右は相変わらずにコケと縞枯れでもない立ち枯れの樹林が続き、道は直線的に下っている。前後に人の気配はなく、一人きりで歩いている。
(ご愛嬌どころか、まさか、これが延々と続くとは…)
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(あまり苦労もない泥濘。左右から簡単に巻ける)
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平たい石ばかりではなく、尖がった石も出てきて、段差のあるところもある。幸いに滑って転倒することはなかったが、片手ストックが踏み抜いて、バランスを崩し、右足の向う脛をしたたかに石に打ちつけてしまい、うずくまったのが一回。出血はあったがたいしたものでもない。痛みにばかり気を向けていたら、ストック突きがスカスカになっているような違和感を覚えた。ストッパーが丸ごとなくなっていた。おそらく、スッポ抜けた際に持って行かれたのだろう。今回は無くし物が他にもあり、登り途中でカメラのレンズキャップはどこに行ったのやら。消耗品だと思えばよいだけのことだが、自然の中に人工物を紛れ込ますというのもどうかと思う。
(オコジョを探す余裕はないが、ここに至ってもしつこくコケの説明。コケ以外の情報が欲しい)
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(これで石ゴロからは開放されたと思った)
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(高見石小屋到着。気が緩んで休憩したが、これで終わったわけではなかった)
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とにかく長い。下に平地のようなものが見え、あそこまでかと思ったのが何度もあった。そしてようやく高見石小屋到着。ほっとした。ここで終わりだろう。この小屋の名物はあげパンとのことで、山記事にも写真付きで出てくる。実際、時間も正午前だったから、買い待ちかと思う客の並びらしいのが奥に見えた。興味はない。土産に買ったところで、ここで食べるからおいしいだろうのことで、土産にして家で食べたらおいしいと感じることはあるまい。ここで肝心な見逃しがあった。小屋の後ろに高見石という石の高台があり、そこからの展望が良く、白駒池も真下に丸見えだったようだ。惜しいことをした。ガスが出ていても、近くの白駒池は隠れてはいまい。
(さらにひどくなったような気がする。勘弁してくださいな)
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(大石が少なくなっただけのことで、大勢の人が歩くから、道の状況は悪くなった感じ)
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ベンチで一休みし、もう安泰だろうと下山する。ところがどっこいだった。数量的に少なくなったものの、荒れた大石主体の道は相変わらず続き、大勢のハイカーや行楽客が歩いているためか、道は部分的に削られていたり、段差も高くなり、今度は手を樹にかける回数が多くなった。こんなに長い悪路歩きは初めてかもしれない。上り使用だったら少しは違ったろう。
(ようやく木道。これとて、当初はどこで切れるのか信用できかねた)
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(信用してもよいようだ。標識に「駐車場」が出てきた)
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(再び白駒池。青空は消えていた)
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(白駒荘。洋館風だ)
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道が再び平坦になった。今度こそ最後だろうな。木道も見えている。半端に切れてもいない。木道を行くと、軽装の行楽客の姿を多く見かけるようになった。標識にも「駐車場」が現れた。白駒池が見えたので寄ってみる。何だ、出発時に見たところだった。ここを通る予定ではなかった。丸山に寄るつもりはなかったが、高見石小屋から西→北→東に向かう破線路を下るつもりでいた。
(あとは天国と地獄の違いだろう。しかし、下り地獄はきつかった。注意散漫で歩いたら何度もこけたろう)
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(駐車場に帰着。車がかなり増えていた)
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駐車場に到着。係員が数人誘導している。車はざっと50台以上はあるか。白駒池は平日でも混む人気のスポットなのだろう。ここが涼しいことは、おそらくは多くの人が知っているから来るのだろうし。
着替えを済ませて帰途に就く。エアコンはつけず、窓は全開にした。入り込む風は涼しい。さすがに高速に入ってからエアコンを入れたが、その分、涼しさは続いた。これが2時間以上。ニュウの余韻の涼しさのようなものだ。家が近くなり、スタンドに入った。車から出るとクラクラした。車載温度計は36℃になっている。せっかく涼しい気分で歩いてここまで来たのに、結局は元の木阿弥。当分夏バテが続きそうだ。
今回のニュウ歩きは、天狗岳を見られただけでも満足だったが、雲やガスさえなかったら、展望もまたさらに楽しめようだ。これは帰ってから調べて後悔したこと。快晴時に比べたら、かなりの半端歩きだったようだ。もう一度、改めて行きたい。だが、あの中山からの下りにはまいった。行くとしたら、あそこを通らないコースを歩くことにしよう。それがなかったら、逆歩きにするか。
白駒池駐車場(7:30)……青苔荘(7:43)……白駒湿原(8:10)……ニュウ(9:11~9:37)……中山峠分岐(10:32)……中山(10:51)……中山展望台(10:58)……高見石小屋(11:56)……白駒荘(12:30)……駐車場(12:45)
もう40年ほど前になろうか。電車の中で女性が山の話をしていて、こちらはつい聞き耳を立てた。「このあいだ、ニュウに行ったの。楽しかったよ」。「ニュウってどこ?」。「八ヶ岳の北の方の山」。ニュウなんて山は知らなかったので後で調べた。ハイキングレベルで登れる山のようで、興味はなくなり、その後にいろんなルートで天狗岳界隈を歩いたりしたが、中山峠を通った時ですら、その近くにあるニュウにはわざわざ行きたいとは思わなかった。
何でこの期に及んでということになる。夏バテで体調不良が長期化し、まして猛暑続きでは山に行く気にもなれない。仕事は外回りだし、休みの日まで暑い外に出たくはなかった。これでは体力も衰える一方だと絶えず気になり、楽をして登れる涼しい山はないものかといろいろ考えた。おそらく寒いくらいだろうの乗鞍岳がベストだが遠過ぎる。そこで思いついたのが件のニュウ。標高は2352m。駐車場ですら2094mとある。標高的に涼しくないはずはなく、単純標高差ですら250mでは歩くのも楽だろう。実際には、山歩きには一か月近くのブランクもあり、自分にはハイキングレベルで歩ける山ではなくなっていて、楽だと思うこともなかったが。
ここで少しばかり余談を入れる。この山名の「ニュウ」。当初、オッパイ形のピークだから「乳」とばかりに思っていた。念のために山名事典を調べると、「ニュウは入で、稲をハザ木に掛けた形に似ていることからの山名」とある。ハザ木そのものがわからずに調べ、あああれかとわかったが、なぜそれが「入」になるのかは疑問のままだ。山頂までの途中の標識には「にう」、「にぅ」、「にゅう」、「にゆう」、「ニュウ」、「ニュー」といくつも書き込まれていた。ここでは「ニュウ」で通すことにする。山頂には新しげで手の込んだ山名板があり、これは「ニュウ」になっているものの、標高が「2532m」と記されていて、えっ、ここ、男体山よりも高いの? と思ったが、地形図の等高線を確認してみても、2352mを2532mに間違えているのは確かで、これではせっかくの山名板も泣いてしまう。ちなみに、2年前の記録の写真にはこの先代版の山名板が置かれていて、それは2352mとなっている。
麦草峠の無料駐車場にするか600円の白駒池駐車場にするかで迷った。白駒池駐車場の方が歩く距離も短そうなので、そちらに車を入れたが、この駐車場、土日は午前6時には満車になるようで、平日の今日あたりは出発時時点で20台ほどだった。収容180台となってはいるが、それは無理かと思う。コースの下調べをすると、樹林帯の中は泥濘が多く、下りは大石だらけで嫌になるとあったから、スパイク地下足袋にした。地下足袋なら、泥が付いてもタワシで洗うだけだし、岩場ならスパイクは考えものだが、大石なら問題なかろうとの判断だが、結果として、引っかけて滑ることもなく選択に間違いはなかった。
(白駒池、ニューへの入口)
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(木道が続いていた。ということは、この辺は雨が降ると泥濘になるのだろう)
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出発。それにしても涼しい。車載の気温計は19℃になっていた。ニュウを選んで正解と言える。準備中の方は数人いたが、大方はすでに出払っているようだった。ただ、後で考えると、自分の出発時刻は何とかぎりぎりセーフで、もっと遅く出発していたり、さらにノロマな歩きをしていたら、ガスが充満し、見たい景色も見られなかったろう。「てんきとくらす」では終日Aだったが、それはニュウだけのことであって、周囲の展望が約束されているわけではない。
幅の広いきれいな木道が続いている。これがずっと続くわけではなく、白駒池の周辺だけらしい。ニュウまで行く人はそれほど多くはないようで、下山時で気づいたが、大方の行楽客は一時間弱の白駒池周回だけで済ませているようだ。池の周辺の紅葉は絶品のようで、特にその時期には混むらしい。かなり離れた八千穂高原スキー場からシャトルバスを運行しているようだ。
(樹林帯が続く。ふかふかしたコケは見ているだけで気持ちも和む)
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(こんな感じで、看板にはコケの説明が加わる)
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(これがそのカモジゴケだろうか)
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いきなりの樹林帯。視界の効く樹林にはコケがやたらと目立ち、このコケは山頂直下まで続くことになる。看板には「白駒の森」とあり、コケの説明書き付き。雰囲気は好きだが、コケに詳しいわけではない。この先にもコケの説明が続き、いろんな種類があって感心してしまったが、自分には、花と同様に区別がつかない。風はないものの、蒸し暑いわけでもなく、空気そのものがひんやりとしている。コケの恩恵だろうかとさえ思う。これでは汗もかくまいと思ったが、確かに暑さによる嫌な汗をかくことはなかったが、身体を動かすわけだから、汗は自然に流れる。これだけでも不快感はまったくなかった。まして湿気もない。
(木道はまだ続き)
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(青苔荘)
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(そして白駒池)
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(左が中山だろうか。右に対岸の白駒荘が見えている)
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分岐から青苔荘方面に向かうと右手に白駒池が見えた。ボート乗り場の桟橋に寄ってみた。なるほど、これが錦秋の頃には輝くばかりになるのか。見に来てみたいものだが、高速代と2時間半の時間をかけ、駐車できる保証がないのは困りもので、だったら、渋滞覚悟で日光か那須に行った方がましかもしれない。
青苔荘を過ぎてほどなく、白駒池周遊道から離れる。標識では稲子湯とニュウ方面がダブルになっている(稲子湯方面は途中から離れる)。以前、稲子湯から天狗岳に行った際には、ここを通ることはなく、直接、中山峠に行った。
(暗がりに歩いたらゾクゾクしそうだ)
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(良い感じのコケだったので)
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(行楽客は、おそらくこちらまでは来ないだろう)
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(白駒湿原)
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(湿原を過ぎるとやはりこうなった)
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(ニュウのエリアに入った)
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コケを見ながら歩いて行くと、木道は蛇行し、泥濘も出はじめた。だが、ここ数日は降雨がないのか、軽い泥道程度のものだし、簡単に避けられる。白駒湿原(湿原というほどの広さはなかったが)を過ぎると、木道は朽ちた丸太が雑然と並べただけになり、それもまたすぐになくなってしまった。
前置きが長過ぎたが、ここからが本格的なニュウへの歩きになる。
(こんな窪みのある石をいくつか見かけたが、これは何だろう。雨によるものではないと思うが、酸性雨?)
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(ラブホテル案内のような標識。せいぜい「ニュー・中山」か一文字空きにすればいいのに)
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(「にう」の標識。この先も多種な山名になって出てくる)
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(前方を歩く二人連れ。初心者は歩きづらかろう)
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急なところはまったくと言ってよいほどにない。だが、初めて歩くところだし、予想外の激坂があるやもしれず、用心してゆっくり歩きに徹した。前を歩く一人は休憩されたがために抜いたものの、さらに先の二人連れとは50m以上の等間隔をとったが、遅れがちなカミさんに気づかれてしまい、追い抜く抜く羽目になってしまった。
踏み跡らしき道があちこちに向かう。入り込むとチョン切れては戻る。分岐以外の本道は一本通しで、それも、ピンクテープが誘導してくれるとようやくわかった。このいろんな踏み跡というのは、おそらく、泥道を避けようとしてついたものだろうと思う。
(やはり、ここは雨降りが多いようだ。樹の根が剥き出しに暴れている)
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樹林の先には切れた空が薄く見えている。そこに至ってもなかなか頂上に近づいている気配はなく、いつまで経っても切れた空は上に覗いている。自分がどの辺にいるのか知りたいが、GPSを忘れてきていた。スマホに入れた『山と高原地図』でも確認はできるが、ザックから出すのが面倒だった。高度計もセットはしていなかった。そんなところに、上から青年が下って来た。別に、こちらから聞いたわけではないが、「もう少しですよ。最高でしたよ。白駒池もはっきり見えたし」と満足げに語ってくれた。「もう少し」にはほっとしたが、別に上から白駒池を見たいわけではなく、実は天狗岳を見たかった。自分には、北八ツでは天狗岳がアイドル的な存在だった。余計な話。もう何十年も天狗岳には行っていないが、あの山は無雪期に行く山ではないと思っている。初めて夏に行った際、岩の裏に回ると、広範囲なキジ場になっていてびっくりした。暑い時ゆえに悪臭のルツボになっていた。以来、雪のある時期に行っていた。今はどうなっているかは知らない。
(大岩を通過)
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(もう山頂のようだ)
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(ニュウ山頂。ここでザックをデポする)
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(天狗岳が見えていた。久しぶり)
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大きな岩を通過してようやく稜線に出た。標識には左がニュウで、右が中山峠とある。ほどなく山頂が見えた。岩場の山頂だが、あれがハザ木云々の姿なのだろう。周囲を見回すと、天狗岳もしっかりと聳えている。岩峰に長居するのも落ち着かないだろうと、下に荷物を置いて、カメラだけ持って山頂に登った。出発から1時間40分。コースタイムは1時間30分から50分だから、まぁこんなものだろう。休憩をとることもなかったし、息切れもなかった。
(あれがホザ木に稲穂を掛けた形なの? 乳に見えないことは確かだが)
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(北側。白駒池が見える。ずんぐりした蓼科山は見えていない)
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(白駒池をアップで。ボート乗り場が見える)
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(山頂の山名板と三角点標石。2532mとある。奥に見えるのが蓼科山だろうか)
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(雲が大分降りてきている)
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山頂には5人くらい休んでいて、これから登って来るハイカーの姿も何人か見えた。北側には蓼科山に続く北八ツの山々、真下には白駒池が見える。南側には天狗岳…しか見えない。すっきりした空だったら、硫黄岳も富士山も見えるらしい。こうして景色を眺めている間に雲がどんどん湧いてきて、せっかくの天狗岳は隠れた。せめて30分でも早く到着していたらと悔やんだが、富士山まで見えると知ったのは帰って来てからのことで、この先の中山展望台でも、記したすべての山々が「見えるらしい」で終わった。天狗岳を見られただけでもラッキーと思えばいいが、帰ってから複雑な気分になったことは確かだ。出がけにGPV気象予報で確認した時には、このあたりはかなり薄い雲になっていて、それを信じればこれほどの視界にはならないはず。
その間、山頂からの景色を眺めていただけだったわけではない。親子連れに写真を撮ってもらったり、逆にオレが撮ってやったりもしている。この親子連れの子供にはびっくりした。年長の幼稚園児らしい男の子だったが、後ろ向きで崖下を眺めているところに「ボク、頑張ったね」と声をかけたら、こちらを振り向いた。その顔を見たら、何で、オレの孫がここにいるのかと驚くくらいに似ていた。孫には、山に連れて行ってくれとせがまれているが、そのままになっている。自分の子供だったらともかく、孫となると、無血縁の他人が入り込むので、ケガでもされたら、話がややこしくなる。
(ザックデポ地に戻って食事。右のお二人は、さっき追い抜いたが、よく見ると、背中が汗でびっしょりになっている。自分はそこまでにはなっていない。荷物はやはり下にデポしたようだ)
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(天狗岳方面はガスが多くなってきた)
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(そして雲に隠れた。到着が15分遅かったら、天狗岳も見えずにがっかりだったろう)
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景色も消えたので、ザックの置いてある場所に戻ってパンを食べながら休憩する。今日は珍しく1.5リットルほどの水を持ってきたが、最終的には500ccも飲んでいなかった。汗はかきながらも、暑くはないから、水も欲しくならない。食事をしている時におかしなことを聞かれた。「中山方面にはどうやって行くんですかね?」。どちらから来たのか聞くと白駒の池からとのこと。だったら、すぐそこに中山分岐の標識があったはずですけどと答えると、気づかなかったらしい。単独の方だったが、大丈夫だろうか。
(中山方面に向かう。中山は奥の小高いところかと思う)
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(樹の根が続いたが、むしろ、こういうところの歩きは好きだ)
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(振り返ってニュー。もうガス間のシルエット)
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(数分後にはこうなった)
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休憩を切り上げて中山に向かう。100mほど歩いて振り返ると、ニュウはすでにガスで消えかかり、ほどなくして見えなくなった。ここもまた樹林帯ながらも、左手に開けたところがあって、わざわざ立ち寄ると、真っ白な世界でしかなかった。
(さほどに歩きづらくはなかった。むしろ、地形図では左下に断崖が続くようで、景色が見えないのでは、緊張感もなく歩けた)
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(楽そうだが、地味な登りになっている)
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(幻想的な風景。むしろ、「もののけの道」はここの方が似合う。前を歩く二人連れがチラリ)
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(中山峠分岐)
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急ではないが、緩い登りが続く。これが長くなると地味にきつい。途中、立ち枯れがすごいなと思ったが、これは北八ツらしい縞枯れの森だった。これにガスが加わって幻想的な風景になっていたりする。得体のしれないキノコもあちこちに出ている。ここでもコケを見ながら、ようやく平坦になったところで中山峠分岐に着いた。天狗岳方面に行くのなら、ここで南下することになる。そちら方面にある途中の展望地から天狗岳を正面に見に行きたかったが、もはや視界も悪く、景色も見られないのでは意味もない。このまま中山に向かうことにした。実は、ここで、ニュウに行く途中で追い越したご夫婦が休んでいて、ニュウからさっさと下って行ったのは覚えている。ここに至るまでチラチラとあのご夫婦だなと思いながらも、距離を前よりも離して歩いていた。ご夫婦は中山峠の方に向かって行った。ここで一緒になった他の単独氏二人は迷う様子もなく中山の方に向かった。わざとらしいが、二人の姿が見えなくなったのを確認してから、中山に向かった。後ろからヒタヒタはごめんだ。
(しばらくは平坦。そろそろ疲れ出してはいる)
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(この先、石が出てくる。特にうっとうしくはなく、石畳を歩いているような感じだった)
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(右手。見ていて雰囲気が良さそうな稜線が続いている)
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(開けていたから、ここが中山かと思ったが違った)
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(中山山頂)
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平たい大きな石が続くようになる。別段、障害にはならないが、石の上を滑らないように気を遣う。右手にシラビソの直線的な稜線が見えてくる。その奥に高い山がありそうだが、ガスで見えないし、何山かもわかりかねる。登り詰めたところが開けていて、中山かと思ったがさにあらず。改めて樹林帯に入り込んだところに中山の標識があった。標高2496m。ここは確実に男体山よりも10mは高い。三角点はない。ただの素通りのピークといったところだ。長居して休憩するところでもないので立ち止まって確認しただけ。そのまま行く。このあたりから、大きな石も次第に気に障るようになってきた。道は平坦だから、せいぜい、うるさいなといったところだったが。
(中山展望台)
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(雲がなければ絶景スポットだと後で知った)
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中山山頂から数分ほど歩いたところに中山展望台の標識があって、4人ほど休んでいて、峠分岐で先行した方もここで食事中だった。いわば、大石だらけの賽の河原といった風情だが、青空はほんの少し残っていながらも、展望は雲でまったくない。これから雨が降り出しそうな雰囲気にさえ思える。前述したが、青空の下なら、ここからの展望はよろしく、蓼科山がどかりと大きく見え、中央アルプスやら御嶽山、乗鞍山も視界内で、ずっと寝転んでいたくなるらしいが、積まれたケルンすら見えないのでは、ここの展望台の広さの感覚もつかめない。景色もない展望台にいてもしょうがないので、石の上を伝いながら、少しばかり小回り探索をしてみただけで終わりにした。風も出てきていて、少々寒く感じた。
(ラストの下りへ)
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さて、ここまでは特別にクタクタになるほどのこともなかったが、この先が下り一辺倒で障害物だらけの厄介な歩きだった。高見石小屋まで1時間下りだったが、2時間にも感じ、そこで終わりではなく、さらに白駒荘まで30分が1時間にも感じた。ネット記事では、白駒池からニューまでのピストン歩きの方も見受けられるが、歩く前までは、中山含めての周回もせずにもったいないものだと思ったものだが、歩いた結果からして、その方が賢明だったかもしれない。中山展望台まではさほどにきつくも感じなかったが、その先には、下りながらもうんざりし、おそらくその影響だろうか、翌日は身体中筋肉痛やら打ち身で痛かった。
(モンベル寄贈の木道。青苔荘付近にはヤマレコ寄贈があった。ヤマップの文字は見かけなかった)
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(部分的なご愛嬌かと思った)
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展望台からは相変わらずに大石が続く。一時的にモンベル寄贈の木道はあったが、これは泥濘対策用であってすぐに終わった。あとは、果てしなく、大石ゴロゴロの下りが続く。風景があればともかく、左右は相変わらずにコケと縞枯れでもない立ち枯れの樹林が続き、道は直線的に下っている。前後に人の気配はなく、一人きりで歩いている。
(ご愛嬌どころか、まさか、これが延々と続くとは…)
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(あまり苦労もない泥濘。左右から簡単に巻ける)
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平たい石ばかりではなく、尖がった石も出てきて、段差のあるところもある。幸いに滑って転倒することはなかったが、片手ストックが踏み抜いて、バランスを崩し、右足の向う脛をしたたかに石に打ちつけてしまい、うずくまったのが一回。出血はあったがたいしたものでもない。痛みにばかり気を向けていたら、ストック突きがスカスカになっているような違和感を覚えた。ストッパーが丸ごとなくなっていた。おそらく、スッポ抜けた際に持って行かれたのだろう。今回は無くし物が他にもあり、登り途中でカメラのレンズキャップはどこに行ったのやら。消耗品だと思えばよいだけのことだが、自然の中に人工物を紛れ込ますというのもどうかと思う。
(オコジョを探す余裕はないが、ここに至ってもしつこくコケの説明。コケ以外の情報が欲しい)
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(これで石ゴロからは開放されたと思った)
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(高見石小屋到着。気が緩んで休憩したが、これで終わったわけではなかった)
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とにかく長い。下に平地のようなものが見え、あそこまでかと思ったのが何度もあった。そしてようやく高見石小屋到着。ほっとした。ここで終わりだろう。この小屋の名物はあげパンとのことで、山記事にも写真付きで出てくる。実際、時間も正午前だったから、買い待ちかと思う客の並びらしいのが奥に見えた。興味はない。土産に買ったところで、ここで食べるからおいしいだろうのことで、土産にして家で食べたらおいしいと感じることはあるまい。ここで肝心な見逃しがあった。小屋の後ろに高見石という石の高台があり、そこからの展望が良く、白駒池も真下に丸見えだったようだ。惜しいことをした。ガスが出ていても、近くの白駒池は隠れてはいまい。
(さらにひどくなったような気がする。勘弁してくださいな)
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(大石が少なくなっただけのことで、大勢の人が歩くから、道の状況は悪くなった感じ)
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ベンチで一休みし、もう安泰だろうと下山する。ところがどっこいだった。数量的に少なくなったものの、荒れた大石主体の道は相変わらず続き、大勢のハイカーや行楽客が歩いているためか、道は部分的に削られていたり、段差も高くなり、今度は手を樹にかける回数が多くなった。こんなに長い悪路歩きは初めてかもしれない。上り使用だったら少しは違ったろう。
(ようやく木道。これとて、当初はどこで切れるのか信用できかねた)
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(信用してもよいようだ。標識に「駐車場」が出てきた)
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(再び白駒池。青空は消えていた)
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(白駒荘。洋館風だ)
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道が再び平坦になった。今度こそ最後だろうな。木道も見えている。半端に切れてもいない。木道を行くと、軽装の行楽客の姿を多く見かけるようになった。標識にも「駐車場」が現れた。白駒池が見えたので寄ってみる。何だ、出発時に見たところだった。ここを通る予定ではなかった。丸山に寄るつもりはなかったが、高見石小屋から西→北→東に向かう破線路を下るつもりでいた。
(あとは天国と地獄の違いだろう。しかし、下り地獄はきつかった。注意散漫で歩いたら何度もこけたろう)
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(駐車場に帰着。車がかなり増えていた)
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駐車場に到着。係員が数人誘導している。車はざっと50台以上はあるか。白駒池は平日でも混む人気のスポットなのだろう。ここが涼しいことは、おそらくは多くの人が知っているから来るのだろうし。
着替えを済ませて帰途に就く。エアコンはつけず、窓は全開にした。入り込む風は涼しい。さすがに高速に入ってからエアコンを入れたが、その分、涼しさは続いた。これが2時間以上。ニュウの余韻の涼しさのようなものだ。家が近くなり、スタンドに入った。車から出るとクラクラした。車載温度計は36℃になっている。せっかく涼しい気分で歩いてここまで来たのに、結局は元の木阿弥。当分夏バテが続きそうだ。
今回のニュウ歩きは、天狗岳を見られただけでも満足だったが、雲やガスさえなかったら、展望もまたさらに楽しめようだ。これは帰ってから調べて後悔したこと。快晴時に比べたら、かなりの半端歩きだったようだ。もう一度、改めて行きたい。だが、あの中山からの下りにはまいった。行くとしたら、あそこを通らないコースを歩くことにしよう。それがなかったら、逆歩きにするか。
暑い日が続きますね。毎年、この時期は例年になく異常な感じになってしまいます。そして雨も多い。低山以外は、安心して山登りできる日も少なくなったような気がします。
ぶなじろうさんがニュウに行かれたことがないとは驚きでした。あの辺もつぶさに歩かれていると思っていました。ニュウへの上りは雰囲気が良くてなかなかお薦めなのですけどね。
例の下り道ですけど、下りではなく、上り使用で、今回の私とは逆に歩いた方がよいかもしれません。その方があまり負担にならない気がします。
私は見たこともありませんが、白駒池の紅葉は素晴らしいようですよ。その時期に歩いてみたらいかがでしょうか。
ニュウですか!
自分も若い頃から名前だけ気になっていた所ですが、これまで未踏でした。実は白駒池も行ったことがありません。ただ、ガツガツ歩くために主稜線だけを辿っていたのでした。
ニュウからの天狗岳は意外とかっこいいんですねギリギリで見られてよかったですね。
本記事前半を読んでいる時は、俺も近々行ってみようかなと思ったのですが、中山からの下りを読んだり写真を見たりしたら、「あっ、俺の一番苦手な道だ」と気づきました。涼しそうなのでチョット残念です。