たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

尾瀬の小淵沢歩き

2016年07月25日 | 尾瀬周辺の山
◎2016年7月23日(土)

大清水駐車場(6:17)……小淵沢歩道分岐(7:01)……入渓(7:48)……小淵沢田代(10:29)……尾瀬沼ビジターセンター(11:15)……一ノ瀬休憩所(12:39)……大清水(13:39)

 一か月のブランク。特別な事情があったわけでもないが、山歩きがちょっとばかり億劫になっていた。仕事、天気、暑さと、理由を探せばいくらでも出てくるが、一か月も歩かないのでは山がますます縁遠くなる。そのうちに探せる理由は天気だけになり、梅雨明けが8月にずれこむことさえ願う始末になった。これではどうにもならない。ここらでどこかに行かなくては徒にブランクだけが延びてしまう。手っ取り早いところで、考えずに済む足尾となるが、足尾の山は暑い。
 この時期だし、沢歩きをしたいところだが、万年初心者が一人で歩ける沢となると限られる。つい足尾のショボい沢に入って石畳見物でもと思い浮かんだが、想像しただけで汗が落ちてくるし、ヘタをすれば、松木川か仁田元沢で泳いで帰るだけにもなりかねない。結局、特別な事情もなく、昨年行ったから尾瀬の沢にしようかとなった。ネット記事を眺めると、小淵沢あたりは、どうも自分のレベル未満っぽいオバちゃんやネエちゃんやらも大騒ぎしながら遡行している。ハーネスなんか付けちゃって、格好だけはサマになっている。これなら、オレも行けんじゃないかといったのが小淵沢にした理由だ。オレは上からロープで引っ張ってもらわずともに行けるわい。滝の直登が無理なら大回りでもして巻けばいい。特別な不安はないよ。ということで自己納得させて出かけた。

 結果として、小淵沢は自分レベルにもやさしい沢であった。念のため、30mロープを持参したが、登る際にどうやって使うかも知らず、さりとて途中で下って帰ることもなく、結局、ロープを意識することもなく終わったが、ヘルメットと沢靴だけで事足りる沢でもあった。もちろん、ハーネスだのといった自分にはお飾りだけの腰のモノは持ちもしなかった。決して、無い無いで行ける沢ということではない。あくまでもこの日の状況と自分のレベルではということだ。
 見ごたえのある巨瀑がなくて物足りないところもあったが、小滝も含め、雰囲気の良い滝をいくつも見た。直登できるのもあれば、巻いたのもあった。自分レベルには十分に楽しめた。しかし、一か月のブランクはきつかった。ことに小淵沢田代からのハイキングコースの帰り道の歩きは応えた。帰宅してから久しぶりに足が痛くなった。

(大清水の第2駐車場)


(直進は一ノ瀬への車道。右の奥鬼怒林道に入る)


(一ノ瀬への旧道が分岐する。ここは直進。帰りは左からここに出た)


 尾瀬の天気予報はころころ変わったが、昨日から安定し、今日は確実に晴れるだろう。沼田経由2時間で大清水に到着。大半の車が鳩待峠へのバス乗り換えのようで、大清水の駐車場は空いていたが、手前は満車。下ったところの駐車場に誘導された。一日500円。さすがに尾瀬は涼しい。気温は18℃くらいだろうか。
 準備をしていると、釣り人の姿が目に入った。グループが無線で交信している。まさか小淵沢ではあるまいな。沢靴を履き、ヘルメットをザックに括り付けて出発。今日は小淵沢田代に通じる歩道を目指すので奥鬼怒林道に入る。ここは、一ノ瀬に向かう旧道の一部と重なっている。
 しばらく歩くと、釣り人が3人、前を歩いている。さっきの方々だ。駐車場からショートカットしたのだろう。歩く速度からして抜かなきゃならない状態になり、その際に話を聞くと、中ノ岐沢本流での釣りのようで、小淵沢のことはご存知なかった。まずはほっとする。

(オモジロ沢の滝)


 オモジロ沢を通過。見事な滝が左に現れた。「滝の国群馬」には落差15mとあるが、そんなにあるようには思えない。当初、この沢も念頭にあったが、その先は猛烈なヤブが延々と続きそうなのでボツにしていた。途中から引き返しの歩きは避けたい。沢への踏み跡もあり、自分にも容易に登れそうな滝なので試してみたかったが、ここで時間をつぶすわけにもいかず、さっき追い抜いた釣り人にへっぴり腰で登っている姿を見られたくもない。機会があったらということにしておくが、その先に見ごたえのある滝が続くかどうかは不明だ。せめて、帰り道でここを通りたかった。

(小淵沢田代は左。注意したが標識の類いは見かけなかった)


(こんな感じの歩道。ここを歩くのは初めてだ)


 林道から離れ、小淵沢田代に向かう歩道に入る。歩道は上でヤブっぽくなるようだが、出だしはしっかりした道になっている。案内板はなかった。車の轍もある。歩道は沢沿いになっていて、早々に沢に降りたいところだが沢まではまだ高い。涼しいとはいえ、次第に汗が出てきて、汗ふきの手拭いは大分しめっている。
 後ろで物音がした。振り返ると二人のハイカー。こんなところを歩く方も珍しい。この歩道、大方は下りで使うようだ。親子のような年齢差で登山靴。沢ではないだろう。それにしても速い歩きだ。休んで先に見送ったが、しばらくは二人の後ろを歩いた。あまり差は広がりもせず、自分もハイピッチで歩いていたようだ。これでは汗もかく。

(ここから入渓)


 沢が接するところに出た。この辺から入渓するか。標高1510m付近だ。準備する。とはいっても、沢靴はすでに履いているし、ヘルメットをかぶって、脚絆を巻き、たばこを一本。さらに菓子パン一個。これだけでも15分はかかった。気持ちの準備に時間がかかってしまった。
 最初の印象は、石がゴロゴロした冴えない沢だった。今日のアクアステルス系の沢靴はやたらと滑って、いきなりフラフラ歩きになった。酔っぱらいの歩きにも似て、先が思いやられる。流れはきれいだ。苔むした倒木もある。たまにナメ床が出てきて、こんなところはほっとする。そして、上に橋が見えてくる。歩道とクロスするところだろう。

(橋をくぐる。この辺は荒れている)


(ナメ床が現れる)


 橋下を過ぎると、これまでの歩きづらさから幾分解放された。小ぶり三段のナメ滝を越えるとナメ床の沢が続く。これはいい。滑りも多少おさまった。小淵沢は典型的な癒し系の沢のようだ。ただ、水源が尾瀬沼と思うと、きれいな水ながらも飲む気にもなれないし、とても清流とは感じなくなってしまうのは残念なことだ。
 変化のある小滝が続く。いずれも階段状になっていて問題なく越えられる。水流はあるが、追い返されるほどの急流でもなく、やさしく逆らって歩くのがちょっとした刺激にもなる。水は少し冷たいか。しかし、入ってしまったら意識もしなくなる。ただ、この冷たさ、そのうちにふくらはぎに響き、やがて右足を上げると左足のふくらはぎが痛くなるといった具合に、痙攣の兆しが出てくるのには困ったもので、一時は右足先が外側に傾いて固まったりした。やばいなと思いながらも、次第に身体が適合して痛みは薄らいでいった。やはり持病だね、これ。今後ともうまく付き合うようにしないと。

(いい感じ)


(流れも清らか)


(3mほどのスダレ状)


(階段状のナメ)


 2~3mのナメ滝や階段状の滝。今のところ楽しみながら遡行している。滑るところもあるが、その辺は慎重に足を置いて確認してから歩を進める。落ちたとて、この程度ならケガの程度もたかが知れている。下は50センチ以上の深みにもなっているし。

(これも3mほどか)


(感覚3mが続く。センノ沢にもこういうのがあった)


(5mナメ)


(飽きない)


 3mほどのスダレ状の滝が現れ、その先に大ぶりの滝が出てくる。この滝、増田氏は「最初の8m滝」と記されているが、ひろた氏は「5mナメ」とされている。まぁ5mが無難なところだろう。しかし、目測が何でこう3mも違うのか。以降はひろた氏サイズにしておく。で、この5mナメは左の水際から入り、せっかくだからと、途中から中に移動してみた。期待したずぶ濡れにはならなかったが、シャワーを浴びて何とも気持ちがいい。こんなことを一人でやっていても素っ気がないものだが、一人で楽しんでいる限りは仕方もないし、一々歓声も上げられない。黙ってにんまりするしかない。ちょっと寂しい。
 この滝を過ぎると平凡な沢になった。ゴミやら倒木でちょっとうるさい。だが、これも一時的で、すぐにまた5mほどのナメ滝。これは傾斜も緩やかで直登。相変わらず階段状やナメ床が続く。沢に陽射しが入り込み、暑くなってきた。危険なところは特にもなく先に進んで行ける。

(こういうのもまたいい感じ)


(ここが「テン場適地」なのだが、湿っぽく四畳半程度で適地には思えなかった)


 右岸に、テン場適地を見る。小淵沢遡行記事にはよく出てくるスポットだ。ここで一服つけていると、上流から釣竿を持ったオジサンが下ってきた。やはり、釣り人も入るのか。オジサンは上に2人いるとおっしゃっていたが、それが沢登りなのか釣り人なのかはわからない。

(大きいのが見えてくる)


(8m滝)


 先に行くと、前後して釣りのオジサンが2人下ってきた。この方たちのことかと、その時は納得した。この先にはだれもいないだろうと。そして、何やら大きな滝が見えてきた。ということは、釣り人3人ともに、ここからの引き返しだろう。この上にサカナはいないということだろうか。
 8m滝だった。前の岩がコブになっていて、甲羅の大きなカメに見えなくもない。ここは右から水流際を巻いた。落ち口真下で滝に移動できなくもないようだったが、水の勢いもあって、無茶そうなことはやめにする。

(6mほどか)


(ここは流れもあって狭いので脇をスルー)


 まだまだ続く。沢が右にカーブする先には6mほどの滝。ここは右の水際だが、ちょっとばかりへつり気味に取りついた。平凡な沢に戻っては滝が出てくるという飽きない変化がおもしろい。一条の細い急な滝が出てきて、これは脇を巻く。そして二俣。右から細く急な流れが入り込む。あくまでも本流を辿りたいので、ここは凡流の左だろう。実は、魚影はこのあたりまであった。

(10mナメ。写真で見る限りはどこでも登れそうだがそうでもない)


(お薦めスポットですなぁ)


 10mのナメ滝。段状になっていて直登できそうだが、滝壺は深く、真下には行けない。無理はせずに左の水際から。落ち口に出ると、かなりの高度感がある。
 ここまで記して、いささか飽きてきた。素人が滝や沢の状況を表現しようにも、相応の専門的な語彙に乏しいのでは、作文する側はただ歯がゆいだけで、つい同じような表現になってしまう。となると、読む側からすれば、いずれもどこまでも繰り返しの沢と滝になってしまう。以降は、ひろた氏の記録に合わせた記載だけにとどめることにしよう。
 ところで、この10mのナメ滝だが、下から見上げて作戦を練っていると(そんな大それたものではなく、いかに巻くかだけのことだが)、落ち口を横切る人の姿がちらっと見えた。先行者がいるようだ。あの釣りのオジサンがおっしゃっていた2人とは、沢歩きのことだったのだろうか。いずれにしても、追いつきたくも追い越したくもないので、10分ほど滝の下で待機した。タバコ2本。ここに限らず、その先でも出会いたくないばかりに大分休んだし、沢はゆっくりと歩いたので、都合20分ほどは時間つぶしに費やしたろう。後で考えると、もしかして歩道を先行して行った2人組だったのだろうか。よくわからない。
 時間つぶしのおかげで、以降は先に人の姿を見ることはなかったが、人影も濡れた足跡も感じることがなかったのは何とも不思議だ。自分と先方の速度からして出会ってもおかしくはないのだが。

(ノッペリ5mで苦戦する)


 続いてひろた氏記載の「ノッペリ5m滝」だ。そろそろ終盤になっているが、このノッペリ越えには苦戦した。本日一番の試練だったかも。右は水が深いので左から巻こうとしたが、斜面はズルズルで草つかみ。さらに落ち口直下で滝に移動を試みると、ツルっと滑った。ここはそのまま巻くしかあるまいが、復帰してもつかめるものは細いササしかなく、束にしてつかんだ。このササもまた下流方向に向いていて、滑ってさっぱり先に進まない。ササは上ほどに元気がよく、ビシバシと跳ね返る。何とか、落ち口先7~8mほどのところに降り立ったが、沢床に着地するにも苦労し、全身、真っ白になってしまった。

(最後の7m。増田氏は8m)


(横から。滝壺は虹になっていた)


 沢がそろそろ終わりになりつつある。水流が次第に細くなってきた。ナメ床は依然続くが、石のゴロゴロが出てきた。もう一つ滝があるはずだ。増田氏によれば「最後の8m滝」。ひろた氏の「唯一巻いた7m滝」ということになる。間もなくその滝の下に出た。見た目派手な滝だ。ほぼ垂直。巻くことしか考えていない。左は岩場で大巻きも無理。右から巻くしかないだろう。ここを直登する方はいないようで、左岸側にしっかりした踏み跡が付いていた。これを辿って落ち口に出た。
 もう滝は終わりであることがわかっている。沢の様相も細く、左右から草がかぶり、ヤブめいてきた。この先、変な離脱をすると猛烈なヤブ天国になるようで、地道に沢筋を追って歩いた方がいいだろう。

(寂しくなってきた)


(ナメ床の最後のあがき)


(そして the End)


 一瞬ナメ床が現れ、さらに沢筋が細くなる。右から枝沢が落ちてくるが、そのまま左のカーブ沿いに行く。ヤブの中、執拗に水流は続き、やがて伏流になった。尾瀬沼から直通の沢かと思っていただけに意外な感もあったが、地図を見る限りは、源頭部は尾瀬沼から離れている。尾瀬沼の水ではなかったのだろうか。下流の右岸部からの流れ込みは尾瀬沼からかと思うが。

(付録のヤブ漕ぎ)


(登山道へようこそ)


 さて、定番のヤブ漕ぎ。ササは身の丈以上だ。しかし、昨年のヤブ漕ぎに比べたら軽いもので、さほどに密でもなく、水流切れから5分で登山道に出てしまった。早速、石に座り込み、まずはヘルメットを外してホコリを叩いて一服。そして菓子パンを食べる。ご無事でなにより。ワイワイ騒ぎながら登る沢であることもうなずけた。

(小淵沢田代)


(ワタスゲ)


 さてと、ネット情報では尾瀬のニッコウキスゲは終わったようだ。寂しいものだが、このまま下るしかあるまい。下りで別沢といった概念はない。ほどなく木道の通った小淵沢田代に出た。ハイカーの姿はまったくなし。ふとおかしなことを思い出した。<♪夏がくれば思い出す。はるかな尾瀬、遠い空…>。今はまさにその時期なのだろうが、水芭蕉が夏というのもおかしなもので、足元の水芭蕉は花を落とし、大きな葉が茶色になって干からびている。あるいは6月の初夏を歌ったものなのか。

(池塘で休む)


(しつこく。日光の山並みを遠望)


 左手前方に見える山は檜高山だろう。ついでだから登ってみたいところだが、尾瀬の山は登山道から離れると熾烈なヤブ山になる。あの山もまた残雪期の山だろう。かろうじて残ったワタスゲが点在している。もう生気はない。
 小淵沢田代の標識が現れ、池塘の脇で休む。日光の山並みが見えている。だれもいない空間。いい気分の贅沢だ。

(苦しい上り道)


(尾瀬沼と燧ケ岳がちらり)


 大江湿原からのハイキングコースが合流する。ここからは上りになるはずだ。緩やかな傾斜ながらも応えた。立ち休みを繰り返す。帰り道では、ここと三平峠までが上りとなっている。一か月も歩かないとやはりきつい。沢歩きは別物のような気さえする。檜高山に南下する尾根を越えるとようやく下りになってほっとした。それにしてもだれも通らないところだが、右手に燧ケ岳が見えるようになって、ようやく2人組のハイカーが登って来た。ビジターセンターまでの間で出会ったのはこの2人だけ。ずっとスズを鳴らしていたが、もう外してもいいだろう。

(ビジターセンター。これでも閑散としているのだろう)


 テント場の脇を通過。テントは一張のみ。そして、賑やかなビジターセンターに出た。空いたベンチを見つけ、沢靴から地下足袋に履き替えた。履き替えの必要もなかったのだが、せっかく持って来たのだから使わないことには。おにぎりを一個食べる。そして今日初めての水を一口。風が止まって、大分暑くなっている。タバコを吹かしたかったが、こんなにハイカーがいっぱいいるのでは迷惑だろうと我慢する。タバコを嗜む人の姿も見かけない。

(改めて)


(これもまた改めて)


(沼山荘前)


 尾瀬沼を眺めながら下る。花らしきものはノアザミとわけのわからない黄色の枯れかかった花のみ。ニッコウキスゲは皆無だ。たまにユリを見かける。
 地下足袋も、木道を歩いているうちはいいが、石畳や何もなしになると足裏が痛くなる。ちょっと失敗したか。やはり尾瀬は登山靴の世界だろう。以前、長靴で尾瀬を歩いて違和感を覚えたが、地下足袋になるとさらにだ。意識のし過ぎか、向こうからやって来る方の目が自分の足元に向いているような気になってくる。さらに背中にはヘルメットなんかを背負っているから、かなりの場違いスタイルだろう。
 沼山荘前でタバコを吸っている方を見かけて仲間入り。まだ12時前だから、いくらか尾瀬探索もできるだろうが、尾瀬沼脇の木道を歩くハイカーの列を見て、その気持ちも萎えた。沼山荘でラーメンでも食したかったが、どうせ後悔するだけだろうと我慢する。

(本日最後の上り)


 用事もないし、ボーっとしていてもしょうがない。さっさと下るか。嫌な上りをこらえ、それでも10人くらいはかわして三平峠。地下足袋だと、気持ちだけは颯爽としたものになるが身体の動きはまったくついていかない。休憩したかったが、先客のグループがわいわいやっていて素通りとなる。後は長い感じの下りだ。この時間は下りよりも上りのハイカーが多い。土曜日だし、長蔵小屋にでも泊まるのだろう。押しくらまんじゅう状態だろうな。33年前に長蔵小屋に泊まったことがある。風呂付きの快適な山小屋だったが、風呂は石鹸禁止なのに、女風呂にはシャンプー持ち込みもいたそうだ。こんなことを長年やっていたら、水芭蕉も巨大化する。
 尾瀬とはいえ、ここは山なのだが、スニーカーに手ぶらのハイカーも目に付く。やはり尾瀬だからなのか。さらに標高が1,000mも高い乗鞍とて同じ。だが、自分の立場からして、こういう方々を批判はできない。若い頃、麓の温泉に泊まり、二日酔いの頭で、せっかくだから尾瀬に行ってみようかということになり、ザックはおろか登山グッズを何一つ持参せず、コンビニで買った水とおにぎりのみをポリ袋に入れ、スニーカーでぶらぶらと至仏山に登ったことがある。あの時、同行した高木はサンダル履きだったような気がする。周囲の目はひんしゅくでしかなかった。あれではまったく山を舐めきっている。実はそれ以前に自分には前科があり、大清水からサンダル履きの手ぶらで尾瀬沼に向かったことがある。その時は、たまたま高校時代の同級生が下山して来て、その格好をたしなめられ、一ノ瀬からすごすごと戻っていた。

(沢沿いになる)


(一ノ瀬休憩所)


 下りの展望は皆無。ちらっと四郎岳が見えた程度。やがて沢沿いになった。沢の小滝は涼しげだ。こんな衆目な沢をみー猫さんは歩かれたのか。ちょっと勇気がいる。今は釣り人が一人だけ。
 一ノ瀬到着。タクシー待ちのハイカーがざっと30人。迷わず旧道を下る。歩けるものなら歩く。タクシー代700円は大清水に着いてからのアイスクリーム代に回そう。この発想、結局は、途中のコンビニのアイスの方が安くてうまいだろうということになり、途中のコンビニで買ったのは冷たいお茶だけで、赤城SAで食べたラーメンへと変わっていく。

(旧道歩き)


(ゴングを鳴らしながら)


 旧道を歩く方はだれもいない。一旦、車道に出ることになるが、むしろ車道を歩くハイカーの姿が目についた。ただ、この車道、砂利道で足裏が痛くもなるし、タクシーが通過する度に土埃が舞って、歩いていて不快なだけ。すぐに旧道歩きに戻った。
 昨年は気づかなかったが、クマよけの鐘が300m間隔くらいで設置されていた。いずれも叩いてみたが、音色はなかなかのもの。この辺も時にはクマも出るのだろう。

(奥鬼怒林道に合流)


 奥鬼怒林道に合流。置かれた解説板を読むと、この旧道を経由して三平峠、沼山峠、七入に至る会津・沼田街道は1590年頃に沼田城主の真田信幸によって整備されたと記されている。真田丸の兄者の方だ(大泉洋というよりも、自分には渡瀬恒彦のイメージの方が強いし、弟に至っては草刈正雄のままだ)。その頃、小田原攻めの時期かと思うが、あるいはその一環なのだろうか。勢力図的にそんなことはないな。いずれにしても大河ドラマにはそんなネタは出てこない。大河ドラマといえば、先週、上田に遊びに行ったが、上田は真田丸一色になっていて、むしろ、岩櫃城のあった東吾妻町の観光協会が大河ドラマ館に出張って来て、見どころマップのチラシを配っている有り様だったが、上田に比べたら、沼田の真田丸騒ぎはそれほどのものでもない。もっとも、沼田の場合は、ずっと以前から真田を売りに出していた。

(大清水に帰着)


 足が大分いかれてきている。とにかく足裏が痛い。大清水に着いてほっとした。すぐに足袋を脱いでサンダルに履き替えた。
 さてと、風呂にでも入っていこうかといった気持ちもあって、着替えもせずにそのまま車を出したが、次第に面倒になり、コンビニに寄って、赤城SAでトイレに寄ったついでにラーメンを食べて帰り着くことになる。尾瀬ではまだ青空が覗いていたが、高速を走っている頃には雲が空一面に広がっていた。

 今回の歩きは7時間少々か。まとまった休憩タイムもとっていなかったので、一か月ぶりにしては歩き過ぎの感もある。だが、これからはさらに暑くなる。その前段階としては無難な歩き時間だったろう。
 沢歩きは、この小淵沢以外にも上越方面をいくつか考えていた。だが、自分のレベルで歩けるのかどうかは怪しいところだ。まして一人歩きだ。やはり、小淵沢クラスが手頃で無難だろうなとつい思ってしまう。足尾のショボ沢はまだ先だな。

(本日の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」

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16 コメント

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小渕沢 (みー猫)
2016-07-25 23:35:03
こんばんわ。
久々のアップですね。滝も多く涼しそうでいい沢ですね。そのうち行ってみます。尾瀬の沢の終末は低く被さった笹薮のイメージが強いですが短いのはいいですね。高木さんとお会いしたこと思い出しました。いかがお過ごしなんでしょう。ナメ沢は橋から入るというので歩き始めてあれれ~っと思ったのですが幸い誰も居なかったので気づかれなかったですよ。橋の先の登山道と別れるところから入渓したほうがいいですよね(笑)・・良さげな沢ありましたらお誘いくださいな。お疲れ様でした。
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小淵沢 (瀑泉)
2016-07-26 00:41:01
行って来られましたか。
やはり適度な間隔で面白そうな滝があって,中々,良さそうですネ
上越なんかと違って,こと大清水周辺は,北岐沢とか根羽沢とか良さげな癒渓が揃っていて,行ってみたいとは思うんですケドね。
ただ,どうしても車の規制があるから,登山道歩きの方が長くなっちゃうのがネックなんだよなぁ~。
とはいえ,小淵沢も歩きたい沢の一つなので,いずれ後追いさせていただくつもりですが。
尾瀬での地下足袋,自分は毎度ですケド,むしろ長時間の木道歩きの方が嫌ですネ。足裏全体に反発が来るし。むしろ小石や尖った岩の方が足裏健康法のようなモノで,痛気持良いですケドね。
靴といえば,中学生の時,親に連れられて鳩待峠~大清水を一日で歩いたことがあるのですが,靴底の薄い学生用の白い紐靴だったこともあり,足裏が腫れて,大清水までの林道歩きが辛くて仕方なかったことを,今でも鮮明に覚えていますヨ。
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小淵沢 (サクラマス)
2016-07-26 04:09:53
この名前を見て初めは八ヶ岳の方かと勘違いしました無知な私です。スダレ状の滝は私的には好みなので写真拝見してて良いなぁと感じました。釣り人がいるのであれば、沢登りではなく釣りにでも出かけても良いかと思います。万年初心者なんて、足尾の険しいところを登る方が、なにをおっしゃいますか。ブランク後でこれだけやれば仰る通り長時間でしょう。皆さん沢登りをやられて暑さをやり過ごしているのですね。素人ですが、どの滝も魅力的に見えますよ。
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みー猫さん (たそがれオヤジ)
2016-07-26 05:55:15
みー猫さん、こんにちは。早速のコメント、ありがとうございます。
実は、この小淵沢とともに浮かんだのが川場谷という沢なのですが、その川場谷、滝壺だったか深みから亡者のお声がかかって、誘いに乗ると引き込まれてしまうとかという話があって、これでは一人では行けないなと、高木に声をかけたのですが、つれない返事で、もう無視して、こちらにさっさと一人で行った次第ですよ。
今回のヤブ越えは本当に軽かったですね。増田氏記録では、どこを歩かれたのか15分ほどの苦しいバトルになったようです。この程度で済むところならどこの沢にでも行きたいですよ。むしろ、みー猫さん、適当な沢を見つけて、お誘いくださいな。
ナメ沢もいいですね。そこも考えたのですけどね。まずは小淵沢を先行しようと思ってしまいましてね。いずれ、荷鞍山の先の作業道と合わせて手ごろな沢を歩いてみたいのですが、作業道そのものがどこに出るのか不明で。それがわかれば、作戦も練りやすいのですが。FMさんだったが辿られたのではなかったでしたっけ。
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瀑泉さん (たそがれオヤジ)
2016-07-26 09:22:38
瀑泉さん、こんにちは。
尾瀬も、派手な滝や沢はなく、いわゆる地味な癒し系といったところですが、その分、あまり歩く方もいず、静かなものですよ。瀑泉さんには、沢をもう一本追加してのお歩きをお薦めいたします。せめてナメ沢かセンノ沢とか。
ただ、登山道に出たら、人ごみといった感じで、いつまでも余韻が続かないのが残念なところです。いろんな歩きのハイカーを目にしますしね。
瀑泉さんは、尾瀬方面は県を2つ越える感じで、ちょっと遠いですよね。
北岐沢、根羽沢ですか。ちょっと調べてみましたが面白げですね。北岐沢に至ってはオバちゃんが歩いたりもしているし(笑)。追々、検討してみますよ。
今回の地下足袋はスパ地下だったのですが、木道に心地よく食い込んで気持ちがよかったのですが、それ以外は痛いだけで。そうですか、むしろ足裏健康といった感覚で歩けばいいのですね。発想を切り替えることにいたしましょう。
瀑泉さんは、尾瀬といったら、思い出は足の痛みなのですね。ズック靴ではそりゃ痛いでしょう。私なんか、尾瀬のイメージはどうしてもサンダルになってしまうのですけどね。
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サクラマスさん (たそがれオヤジ)
2016-07-26 09:23:12
サクラマスさん、こんにちは。
今回の小淵沢も、ネット検索で「小淵沢」だけにすると山梨の小淵沢になるので、「尾瀬 小淵沢」にしませんとね。
サクラマスさんはスダレ状、お好みでしたか。それでしたら、小淵沢にぜひいらしてくださいよ。スダレ状の滝(とはいってもせいぜい3m前後ですけど)を結構、目にしましたよ。
スダレ状も、傾斜が緩いとサクッと登れ、適度に水をかぶって、この時期はなかなかいい気分になれますね。見ていると、全身で水を受けてみたいと思ったりすることもありますよ。
魚影を目にはしましたが、上に行くにつれて小さくなっていましたね。釣りのことは詳しくもないのですが、やはり中ノ岐沢本流でしょうか。ただ、中ノ岐沢も例外にもれず、大きな石がゴロゴロしておりましたから、遡行という感覚で行くとおもしろくないかもしれません。
サクラマスさんも「何をおっしゃる素人さん」ですか(笑)。レベルとすれば「初心者」以下ということでしょうか。私なんか、滅多に同行する方もいないし、やさしい沢しか歩かないのでどうしても「万年」になっちゃうのですよね。

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小渕沢 (ハイトス)
2016-07-26 22:15:34
こんばんは。
なかなかよさそうな沢ですね。
言葉での表現はともかく、写真だけでも充分に楽しめます。
増田さんやひろたさんも記事に残されているとなるとびびりますが、それほどでもなさそうですね。
自分でも行けそうな気になっています。
最初の滝はオモジロ沢の滝と言うのですね。
黒岩山の帰りにこの滝を眺めて上りのシミュレーションをしたことを思い出しました。(笑)
ここから登るとあとは藪みたいですね。
この辺りは増田さんがほとんど遡行されていたと記憶しています。
気持ちよさそうでした。
あー沢に行きたいですよ。ほんとは。
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Unknown (ふみふみぃ)
2016-07-26 23:38:02
足尾の地味沢と比べるとナメナメしてますね。水の流れも足尾よりゆったりしてたりするんでしょうか。なんだかのんびりとした流れに見えます。両岸も切り立ったところがなさそうでのんびりと歩くにはちょうどよさそうです。
尾瀬は遠いイメージがあり一度も行ったことがないですが高速使えばたそがれさんのところから2時間ですか。大清水辺りから登るならありだなと思いました。道を逸れると激藪と言うのが気になりますがどの程度なのか興味が湧きます。
上越方面の沢も考慮ですか。某稜線に行く際、水補給と藪回避に使おうと思ってる沢ならありますがしょぼすぎて沢歩きにもカウントできなそうです。

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ハイトスさん (たそがれオヤジ)
2016-07-27 06:05:34
ハイトスさん、こんにちは。
増田さん、ひろたさんはおろか、私も歩いた沢です。たかが知れております。
癒し系の沢と言ってしまえばそれまでですが、中ぶりの滝がいくつかあって、それを越える刺激もまたありました。何よりなのは、登山道に至るヤブとの格闘がさほどでもなく短時間で済んだということで、ここはやはりお薦めの沢です。あくまでも、自分レベルへの方々に対してのことですが。
沢に一人で行くのも気が引け、ハイトスさんをお誘いしたかったのですが、ここのところ振られ続きでしたものですから、敢えて連絡はいたしませんでしたが、ハイトスさんもぼちぼちといった具合まで回復されたようですね。いずれ別便にてお誘い申し上げます。
小淵沢をネットで調べていると、いろいろと他にもおもしろそうな沢がありましたし。
オモジロ沢の滝、ハイトスさんもお調べになりましたか。やはりヤブのようですね。引き返して来るというのもなんですよね。
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ふみふみぃさん (たそがれオヤジ)
2016-07-27 06:06:16
ふみふみぃさん、こんにちは。
今回の沢、下流部では流れも結構あって、そのためか流木やらが目立ってごちゃごちゃしておりましたが、上流に行くに連れて、流れは静かになり、きれいな雰囲気になりましたね。のんびりというほどの流れでもないのですが。
ナメ天国はいいですね。暗い回廊もなかったのはよかったですよ。
むしろ、こういう沢は地味系の沢とも言えるのではないでしょうか。この時期ですし、派手な沢には人もおりますよ。
上越の沢も考慮というほどのこともないのですが、ふみふみぃさんが出会ったオジサンの談が気になって調べると、確かに某稜線に向かって沢歩きをされた方もいましたね。私はそこまで泊りがけで行きたいとも思っていませんが、せめてさわりの部分だけでも、派手な沢とはどんなものかと覗いてみたいなとは思っております。
尾瀬もルート外は積雪期の歩きばかりを目にします。ここらでヤブをかきわけの歩きをふみふみぃさん、やってみてくださいな。残念ながら、シャクナゲさんは期待できないと思いますが。
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