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◎2011年5月21日(土)
<駐車場(6:15)……吊り橋(6:20)……1007m(7:08)……登尾沢ノ頭(1369.4m)の下・電波反射板跡(7:49)……造林小屋跡(8:28)……二瀬分岐(10:25)……和名倉山(10:35)……駐車場(14:00)>
ハイトスさんの雲取山山行の記事を拝見し、久しぶりに奥秩父の山を歩きたくなった。遙か以前、奥秩父を縦走した際、将監峠から和名倉山に行ったことはあるが、埼玉県の山ながら、地元の秩父側からは入ったことがない。この機会に歩いてみることにした。秩父湖からのルートは二瀬尾根ルートと呼ぶらしい。他のルートでもそうではあろうが、スズタケの激ヤブが続くようで、以前から、ここのヤブには興味はあった。ただ、登山ルートとしては、ただきつく、展望にも恵まれず、魅力にあふれたものではないらしい。
(あの吊り橋を渡って左に)
大学の山寮の手前、トイレ脇の駐車場に車を置いた。他に車はない。後で知ったことだが、途中で出会った方はその先の秩父湖展望駐車場に置いたとのこと。トイレ脇とはいえ、別に臭気漂うところではなかった。トイレに用事はない。用事は途中の道の駅で済ませた。大学山寮の脇を下る。この山寮の存在は、学生の頃から知っていた。どういう手続きをすれば使えるものなのか知りもしなかったし、自分の周辺でも利用したという話を聞かないままで卒業した。つまり、みんな、関心がなかったということだろう。一部のサークルやゼミが使っていたのだろうか。いつも素通りはするが、この存在を改めて知り、建物の現物をまじまじと見たのも初めてだ。吊り橋を渡る。ここからは下調べで十分なほどの知識を持っている。右に行けば×。左も先に行き過ぎると×。左に行き、100mも行かずに、分岐を上がる。ずっと杉の植林帯の登りが続く。ここまではスムーズにいった。
(尾根にようやく合流。もう汗でびっしょり)
杉林の中は風がまったく通わず、おまけに急で、すぐに汗ダクになる。かなり上に見えている尾根にはなかなか至らない。尾根が右からぐんぐんと急に上がっているのが分かる。これでは時間もかかる。ようやく尾根に合流するまで、何度、今日はやめにしようかと思ったことか。頻繁に休んだ。5分と連続して歩けなくなっていた。これでは歩きとは言えない。体調が悪いのかとも思った。尾根に出ると幾分涼しく、秩父湖もちらちらと見える。左は植林、右は雑木だ。散りかけたツツジも数本。地形図上の1007mと思われる地点に到着。何か印があるわけではなく、テープがあるだけ。ここまで一気に500m登った。まだ1,000mの標高差が残っている。まだ序の口。うんざり。尾根からは山頂まで、延々とテープが嫌になるほど目に付く。登山道そのものはないが、テープを追うしっかりした踏み跡が続いている。これでは、悪天時以外、迷うことはないだろう。問題はヤブエリアの状況だ。
(電波反射板跡)
やがて植林帯は終わり、明るい灌木帯の登りとなった。植林帯の歩き時のような、急な登りは少なくなった(と感じただけのことだった)。安蘇山塊の、人があまり入らない、踏み跡ルートの山歩きをしているような雰囲気だ。古ぼけた「登尾沢ノ頭」の標識のある地点に到着。「頭」そのものは、この上の1369.4mの三角点だ。ここがいわゆる「電波反射板跡」であるらしい。ここで一瞬、展望が開けるが、三峰神社の方が見える程度のもの。雲取山は視界には入らない。ここから、いわゆる水平道になる。結果的に、二瀬尾根をずっと巻いて歩き、1684mで一旦合流するものの、次の1913mでも巻いて二瀬分岐でまた合流となっていた。無理に尾根上を歩いて行けないこともないだろうが、そこに至るまでのヤブは手強そうで、行く気にもなれない。
(水平道の入口)
(ワイヤーがそのまま放置)
水平道の歩きは造林小屋跡地まで続き、時間にして40分弱。幅のある道になっている。森林軌道跡とのことで、東側に向かったワイヤーの残骸がいくつも目に入る。行く際には、ほとんど気にも留めなかったが、帰りに通ると、気分的な余裕ができたのか、道はかなり崩壊しつつあるのが分かる。途中、左手に、スズタケを刈り払った小径が分岐する。テープの付いた木には、標識らしきプレートが貼られている。字は消えている。1204mに向かう尾根上なのか、石津窪と呼ばれる沢に向かうのか判然としない。いずれにせよ、林道に出るには大洞川を渡らないといけないのだろう。現時点で、自分のいる位置がよく分からなくなっている。地形が読めない。ひたすら、水平道にもあるテープを追っている。
(造林小屋跡)
造林小屋跡到着。レール、滑車、車輪、ワイヤー、鍋、釜、一升瓶のおびただしい残骸。ビール瓶は見あたらない。水平道からここまでの様相からしても、かなりの規模の造林小屋と見受けられる。別にゴミあさりをした訳ではないが、一升瓶のラベルはすべて雨露で剥がれてしまっている。どんな銘柄の酒を飲んでいたのか興味があったのだが。奥に、つぶれたトタン屋根の小屋があった。その先にはチョロチョロ流れている沢があった。水をガブガブ飲んだ。意識的に飲まないと、後で痙攣を起こしてしまいそうなルートだ。ここは風通しが多い疎林で気持ちがいい。
(スズタケのヤブ街道)
奥秩父山岳会の「白石山頂方面」の標識があった。埼玉県側の呼称が「和名倉山」と思っていたが、地元でも白石山と呼んでいるのか。地理上の表記がそうなっているからだけのことだろうか。「この先、スズタケのヤブ 遭難多し!!」の警告。いよいよ始まりか。とはいえ、しばらくはまた登りが続いた。水平道を長く歩いていたせいか、またきつく感じる登りになった。上から、人の声が聞こえる。幻聴かもしれない。ここで、口を開けて歩いていたら、細かい虫が口に入った。ノドの中にとどまってしまい、しばらく噎せてしまった。水を飲んでも、痰切りしてもダメ。とうとう、吐き気をもよおす始末。散々、ノドをうならせて、ようやくひっかかりが消えた。苦しかった。同時進行でヤブに突入。と思ったが、さっぱり、本格的なヤブにならない。スズタケは場所によって背丈を超えるが、しっかりと人通り分は刈り払われ、一部、丁寧な整地までなされている。進行方向に、これまたテープが随所に巻かれている。時間にして30分弱。期待したヤブ地獄もあっけないものだった。
話し声が確実に聞こえた。姿も見えた。前方。やはり幻聴ではなかった。ちょっとした開かれた展望地で休んでいた。気のよさそうな若中年風2人組。5時に出発したとのこと。ここで、秩父湖展望台に駐車したことを知る。もう何度が来たことがあるのだろうか、後1時間程度だとおっしゃっていたが、にわかには信じられない。自分の頭の中はあと2時間だ。ここまで3時間20分歩いている。上りに5時間と見込んでいる。
(笹ッ場)
(北ノタル)
2人に先行して行く。実は休みたいところだったが、タイミングを逸してしまった。やがて、ちょっとした伐り開きの斜面になる。ここが「笹ッ場」か。いよいよ本格的に暑くなり、ここは無風。この先、奥秩父らしい苔むした倒木と原生林の景色が広がる。「北ノタル」と呼ばれるスポットらしい。この風景、昨年の聖岳に向かう際にも見た。薄い陽射しの中ではなかなか幻想的だが、雨が降っていたら、先が思いやられ、泣きたくなる風景画だ。高度計は2,000m近くを示し、ようやく、極端な登りから解放されたようだ。ほっとする。ここでちょっとしたミス。地形図に表された将監峠方面からの点線。北から東にカーブする部分が二瀬分岐なのだろうが、自分のいるとおぼしきところには、その目印がない。このまま先に行ってしまったのでは、将監峠に出てしまう。東に向かう尾根にかすかな踏み跡があり、入ってみると、すぐにヤブになってしまった。行ったり、来たりとうろうろした。取り付きが不明なまま、取りあえず、先に行く。しかし、これが正解。
(二瀬分岐)
(千代蔵休ン場。これを見上げて歩く)
痩せた灌木が連なる疎林の中、赤テープを頼りに進むと、「白石山頂25分」の標示に出た。そして。下からの道も合流していた。ここが二瀬分岐か。それにしても、地形図上の波線はもっと下・南側に寄せるべきであろう。埼玉県警の「家族に伝えたか?」標示が木に括りつけられている。ここまで来て今さらと思ったが、その下に、そんな気持ちを受けるかのように「今さらなんで、次回から心がけること」とオチが入っていた。「千代蔵休ン場」を通過。ここは伐採跡か?山火事跡か?ちなみに、この「千代蔵休ン場」も、「北ノタル」、「笹ッ場」ともに、その名称はネット上で記されたスポット名を盗用しただけのことで、正確な名称は知らない(笹ッ場はプレートがあるらしいが、確認できなかった)。南の展望が開ける。先に見えるのは飛龍山だろうか。ここまでも、からっとした、360度はおろか、180度の眺望も楽しめないでいる。
(もう少しで山頂)
山頂は樹林に隠れるようにしてあった。狭い。瞬間、日光のシゲト山の山頂を思い出した。将監峠から来たと思われる男女の先客2人が犬連れで休んでいた。将監峠と思ったのに理由はない。年齢的なものだけだ。会話が丸聞こえで、遠慮がちにちょっと奥に行こうとしても、針の山に向かうようで、この狭い一角でしか居場所もない。向かい合わせで休んだ形になり、居心地も悪く、無理に木を分けて奥に行き、タバコを一本吸って、退散した。いつもなら、セルフ写真でも撮るのだが、三角点にカメラを置き、「和名倉山」の標識をバックに撮ったとしても、6畳間のようなところで、無関心な客2人を前に10秒間の一人芝居を打っているようなもの。今回はカットした。普通なら、「撮りましょうか」と声がかかり、「恐れ入ります。すみません」となるものなのだが、それはなかった。山頂の写真を撮るにしても、どうしても、2人の姿の一角やら犬が入り込んでしまってうまくいかない。山名板を主役にアップにした写真になってしまった。とうとう、お2人とは、挨拶以外の会話も成立しなかった。
山頂には「仁田小屋登山口→」の標識があった。いきなり、正面には倒木がふさぎ、どうやって下るものなのだろうか。自分には縁がなさそうなので、つぶさに確認もせずに下山に入る。二瀬分岐の手前で、先の2人に出会う。ちょっと話をしたが、やはり、何度目かであるような雰囲気だった。この先、川又に下るルートがあるようだ。当初から予定はないが、遠慮しておいた方が無難だ。家族には何も伝えず、いつものように薄暗い時間に出てきている。三峰道路に車が放置されたままになっていると、警察から連絡があっても、ピンとこないだろう。
(展望もあっという間に消えてしまう)
下りはやはり長かった。一人で歩いているから余計に感じる。笹ッ場の先で、単独が登って来たのに出会う。彼も自分と同じに、このコースは初めてだそうで、日帰りだと言っていた。今日は、このコース、4人も通っている。なかなかの、隠れた人気コースとも言えようか。しかし、気持ちの余裕のある下り。いろいろと探索をしてみたが、展望にはまったく恵まれなかった。草木も枯れる時期なら、少しはいいのかも知れない。そして、急な登りがずっと続いていたことも改めて認識した。下りがきつかったのは確かだ。こういう山を下ると、足の爪に異状を来すのが常だが、今回も、左親指の爪がフカフカ状態になってしまった。いずれ剥がれるだろう。
(水場で大休止)
(居残りのツツジ)
造林小屋の水場と電波反射板跡で大休止する。造林小屋付近を探索したら、つい、帰り道が分からなくなった。ようやく、赤テープを見つけて復帰したが、この山域、うかつにコースから逸脱して歩くと、路頭に迷うことになりそうだ。しかしなぁと感心する。このルートの記事をネットでよく拝見するが、皆が皆ともに、同じような風景の写真を掲載している。自分もまた例外に漏れず。それほど、見所のある景色に恵まれないという証でもあろうか。
(吊り橋を渡って)
吊り橋を渡って駐車場に着くと、トイレ脇に車を置いて良かったとほっとした。展望台の駐車場はカンカン照りになっていた。こちらは日陰。日なたは30℃を超えている。汗ダクになり、気持ちも悪く、道の駅の温泉に入って帰宅する。風呂には、その筋と思しき方が入っていて、どうも落ち着いて長居ができなかった。長瀞ではライン下りの渋滞にあってしまった。33℃になった。窓を全開にした車が目立つ。世の中、節電の風潮になっているが、こう暑くてはたまらない。車の冷房をつけたとて、節電の非協力者と見なされるわけでもあるまい。エアコンをがんがんかけて帰った。
和名倉山に関しては、ちょっとでも山歩きにのめり込んでいる方なら、いずれは行ってみたいという意識をお持ちのことと思います。まして二百名山だか三百名山でもありますし。
私も、将監峠からは入ってみたことがあるものの、やはり、秩父側から歩いてみたいと常々思っておりましたし、きっかけがあればいつでも行くつもりでいました。
今回はハイトスさんの雲取山が気持ちのきっかけとなりました。
ただ、しんどかったというだけの印象が強い和名倉山でしたが、あのコースを歩いたことがいい経験にはなりました。他のコースには手がでませんでしたが。
ハイトスさんも、機会があったら、ぜひいらしてください。実際に歩いてみて、思っていたほどの強面の山ではありませんから。
和名倉山・・・前々から興味のあった山です。
登るのであれば秩父湖の吊り橋を渡ってとシミュレーションしておりました。
ただ、登りはほとんどアップダウンは無くずっと登りが続くのがきつそうだなぁと。
この山は将監峠から一部尾根で繋がっていますがほとんど独立峰の様で有る事も興味をひく点でした。
尤も山名は「白石山」でしたが。
今回特に行きたいと思った山をすぐに行動に移せるたそがれさんが少しうらやましい。
前回ハオハンさんが「山猿の道」とおっしゃっておりましたが今は大夫人の手が入っているようですね。
しかしたそがれさんで8時間弱となると少し気を引き締めていかんとなりませぬ。
埼玉県警の「家族に伝えたか?」の看板のオチは確かにその通りですね。
今ここで云われても・・ですね。
改めて「埼玉県の山」を見ました。「十分な読図力とやぶの経験を積んだ道のない山のエキスパート以外は入ってはならない」と記されていますね。これ、再版時にはトルツメですね。もっとも、私は6年前の初版を読んでいますが。
本当に目印がうるさいくらいあります。ただ、目印を見逃したり、変な散歩をしてしまったら、迷い狂います。
ヤブも少々興ざめでした。大きな壁みたいなイメージを抱いておりましたから。
後は体力でしょうが、強靱な肉体は必要もありません。女峰山後にぜひいらしてください。
熊ですか。造林小屋跡付近には出没する可能性はありますけど、今回に限り、獣臭を感じることはなかったですね。
私、てっきり、ぶなじろうさんは和名倉山に経験済みとばかり思っておりました。ブログ記事の中に、和名倉山に触れた部分がありましたから。
和名倉山、行かれましたか!!
高校生の時、十文字小屋の山中邦治さんに「和名倉山には熊がいる」と聞かされて以来、行ってはいけない山と認識しておりました。
最近では、サンチュウで会う人から「和名倉山に行きたい」と言う声を稀に聞くようになりました。
「山渓社・新分県登山ガイド・埼玉県の山」には、本コースが下山コースとして掲載されていました。時代は変わったのですね。
おいらは、たそがれさん風に言えば「迷い狂いそう」な気がしてなかなか踏み出せないコースでした。
写真を拝見する限り、踏み跡はソコソコあるようなので、おいらでも行けるカモ的な気分になりつつあります。あとは体力しだいですかね。今年も女峰山を予定しているので、その時のバテ具合で考えて見ます。
大変参考になりました。