
◎2021年2月19日(金)
ペンションすずらん(8:22)……パノラマ岩(10:14)……牛奥ノ雁ケ腹摺山(10:38~10:58)……雨ノ沢の頭(11:14)……小金沢山(11:40~12:09)……牛奥(12:49~12:55)……ペンションすずらん(14:17)
恒例の今季の富士山見物は小金沢山からスタートと当初より決めていたが、12月来、富士山ライブカメラを毎日のようにチェックしていても、山頂の冠雪はまだら状態でままならず、それは自分だけの思いだけでもないらしく、SNSの世界では地熱の上昇で噴火の前触れではないかと話題にもなったりもしたようだが、一月の中旬を過ぎてから、ようやく頭から腹近くまで真白き富士の嶺になってくれた。早々に見物に行きたかったが、タイミングと気分が合わず、だらだらと二月の中旬過ぎになってしまった。
県道は<ペンションすずらん>から先が冬季通行止めになっているので、大方はペンションからのピストン歩きをしているようで、自分にはそれでは面白くもなく、牛奥雁ケ腹摺山(以下、山名が長いので「牛奥」とする)と小金沢山までは一般登山コースで行き、帰路は、小金沢山から少し戻って、北西に尾根伝いに県道に下るつもりでいた。この尾根は「ミヨリ尾根」というらしい。ちなみに、上りは「雨ノ沢左岸尾根」になる。県道歩きが長くなるが、ピストンより少しはマシだろうと思っていた。
(ペンションすずらん)

ペンションすずらんでは、登山者向けに駐車場を無料開放している。その際、車のダッシュボードに計画書、連絡先等を記し、見えるように置いておかねばならず、これは事前にダウンロードして書き込んでいた。念のため、出発前にペンションに寄って、挨拶にいくと、オヤジさんが計画書を見せてくれと言うので、見せると、「登山届の提出先」のブランクを指摘された。キョトンとした。これが登山届ではないの? これまで、登山口に専用の用紙とポストでもあれば書き込んで、下山時にはポストを開けられれば回収した。個人情報を残すわけにはいかない。ポストがなければ出さずに登る。とにかく、どこをどう歩くのかはいつも気分次第なのだから、公的な(とはいっても私的機関経由になるが)登山届なぞ出したり、送信したことはない。それを指摘されて、反論しているのでは後味も悪い山行になりそうなので、「ココヘリにこれから提出します」と逃げたが、それはその場しのぎの返答。この欄は、ヤマレコ、YAMAP、山梨県警とでも記した方が無難のようで、オヤジさんが言うには、どこに出しても、そこから県警に送られるとのことだったから、ブランクは避けた方がいいだろう。自分の隣にもう一台の駐車があって、ダッシュボードには計画書が置かれていた。「この車の人はいい加減な計画書を書いている」と怒っていた。どこが不備なのかは知らないが、そこまでおっしゃるなら、計画書を登山届として代行して受理してくれればいいのにと思うものの、駐車代無料である以上は、理不尽だなとは思っても従わざるをえない。
この先の登山道の様子をオヤジさんからいろいろ聞いた。スパイク長靴で歩くつもりでいると言ったら、それはダメ。せめて、チェーンスパイクか軽アイゼン。「スパ長は滑る」と言われて、すごすごと登山靴に履き替えてチェーンスパイクを巻き、出番はなかったが、6本爪アイゼンもザックに入れた。また、計画書に書き込んだ、下りの「ミヨリ尾根」については、「先日もそこを下った人がいたけど、やめた方がいい」とのこと。自分には初めての山域だ。「やめた方がいい」の理由は言わなかったが、急尾根、雪深、不明瞭、…といったこともあるだろうし、このオヤジさん自身が歩いたことがないのかもしれない。それはともかく、地元に精通された方がおっしゃるのだから、あっさりとピストン歩きをすることになってしまった。ミヨリ尾根は別として、スパ長の件は不本意だったが、歩いてみて確かにスパ長では下りの分厚い凍結は危険が伴いそうで、チェーンスパイクでも危なかしかった。この点はごもっともということになるが、何だか、挨拶に行ったばかりに、首を傾げながらの出発になってしまった。
オヤジさんとのおしゃべりついでだが、ヤマレコ記事に14日にピストンで小金沢山に向かったら、牛奥の先は雪が深くてトレースもなく撤退したとあったがと話したら、「そんなことは絶対にありえない」と断言された。牛奥から小金沢山の稜線はラッセル歩きになるほどの雪は積もらないようだ。まぁ、オヤジさんとの会話でいろいろと複雑な心境になったことは確かで、小金沢山ではなく、無難に奈良倉山にでもしとけばよかったかなと思ったりしたのは正直なところ。
(道路を挟んで登山道に入る)

(しばらくはからっとした景色)

(頭が見えた)

(これがまた長い)

登山口はペンションから車道を挟んで向かい側。普通の雑木の山道で、右手前方に富士山の頭だけが見えている。フェンス沿いに歩いて行くと、やがて未舗装の林道らしき道に出て、これを横切るのかと思ったが、さもあらずで、この道をしばらく歩くことになる。地図には実線で記されている。今回の歩きで、この林道歩きが一番の苦痛だった。それを実感したのは帰路だった。とにかく長く感じた。林道沿いにもフェンスは続いている。事前調べでは、この林道が通っているあたりは開墾地ということになっているが、田畑があるわけではなく、平地はヤブになっている。
しばらくすると、工事中の看板が現れ、右手に迂回路。確かに、先にはプレハブ小屋が建っている。今日は平日なのに、工事の音は聞こえない。いずれにしても、林道歩きから解放されてほっとはした。迂回路にもフェンスは続き、フェンスの外はうっすらと雪が積もっている。
(林道を横切って、実質的な登山口)

(ガチンガチンになっている)

(大菩薩嶺かと思う)

(フェンスから外に出る)

やがて舗装林道を横切って、ようやく登山道といったところか。振り返ると、南アルプスの山々が白い峰を連ねている。左手近くに見える樹々の薄いピークは大菩薩嶺かと思う。あくまでも思い込みで、実際は南アルプスではなく八ヶ岳かもしれない。ここまで緩い登りではあったが汗をかいて暑い。上着は脱いだ。
いきなり急になった。伐採地跡になっている。日陰になっていて登山道は凍結している。何度も立ち休みしては息を整え振り返る。大菩薩湖の上日川ダムが見えた。その向こうの白い連山は位置的に八ヶ岳に違いない。ということは、さっき見えていたのはやはり南アルプスのようだ。
(伐採地を見下ろす。左側かすかにダム湖が見えている)

(1708m標高点付近)

(下り時は要注意だろう。こんなのがところどころにある)

伐採地の上に出て、ネットを外して外に出る。傾斜は少しは緩み、あとはどこにでもある登山道歩きながらも、展望はない。たまに階段ステップもある。周囲は雑木が続き、富士山の頭は見えていない。正面に太陽光をもろに受ける。凍結路は続いている。登りだから滑ることはない。すでに1708m標高点は過ぎているはずだ。
余計なことをここで敢えて記す。なぜ、休暇を取ってまで平日に富士山見物に出かけたのか。実は悲観的な事情があった。先日の健康診断で、肺のレントゲンでひっかかった。去年の10月の市の無料巡回健診では異状なしだったのに、会社健診では「要精密検査」だった。呼吸器系専門のクリニックに行き、紹介状なしでは行けない富士重工関係の大病院への紹介状を出してもらい、明日、大病院でのCT検査を受けることになっている。肺がんの疑いにでもなっていたら、もう山歩きはできないしと、見納めの覚悟で休暇を取って来ていた。後日談ではあるが、翌日、CT検査の画像CDをクリニックに持参したら、「何も異状はないよ」の一言だった。前回の脳ドッグでもそうだった。勤務先で指定する病院の健診はどうも信用できない。ムダな時間と金を費やし、精密検査までの「死」に直面した心労を考えれば鬱屈したものがある。何もなしの結果でいきなり解放はされたが、こうやって、タバコと酒を何十年も続ければ、カメラの精度はともかく、ひっかかっても当たり前のことで、どうにかしなければならないのは重々承知している。要精密検査が出た時点で、タバコは控えたが、何でもなかったことで、結局、帰りがけにコンビニでタバコを買って吸う始末だった。我ながら情けなくなる。それはともかく、この時の自分には、一歩一歩が最後の山歩きかなといった思いがあったし、富士山も山から眺める見納めと覚悟し、いろいろブツブツと急だとか景色が見えないなどと思いながらも、踏みしめながら歩いていた。鬱蒼とした、変化のない、面白くもない登山道歩きだが、これが最後かと思えば、苦も楽しいものにしたいもの。だが、なかなかすっきり切り換え気分にはなれないでいる。
ゼーゼーしながら登っていると、上から声がした。下って来る。二人連れ。ペンションの隣の車の方だろうか。神奈川県ナンバーながらも海向けで、山向きではない地区ナンバーの車。立ち話をする。牛奥だけで下るとのことで、小金沢山までは行かなかったらしい。二人揃ってスパッツをしていたので、上はスパッツが必要かと聞くと、必要ないとのこと。自分はスパッツ嫌いだからほっとしたが、小金沢山までの稜線歩きをしてないのでは参考になる話は聞けなかった。7時に歩き出したというから、下りではそんな時間かもしれない。この先はどうも一人らしい。
(牛奥かと思うが)

(頭から顔にかけて)

(階段もたまに見かける)

(最近ではないが新しい)

ようやく牛奥らしきピークが見えたが、まだ遠い。右手にようやく富士の嶺が見えた。樹の間からだからすっきりはしないが、上空には雲一つなくピーカンだ。陽がじわじわとそちらに移動しつつあるから気はあせる。正午近くなったら逆光富士山になってしまう。
依然として単調な登りが続く。これがまたつらい。途中で、クマの爪研ぎかシカ角をこすったのか知れない樹の跡を見ておののく。シカ糞は見ていないから、おそらくはクマだろう。ところどころに階段がある。いつもなら階段歩きは避けるが、脇は凍結しているので、階段の方が安心だ。固い雪も出てきたので、アイゼンにしようかと思ったが、まだチェーンスパイクで行けそうだし、もっとも交換の面倒くささもあって、そのままにした。
(大岩)

(パノラマ岩だった)

(パノラマ岩から大菩薩湖。その奥に八ヶ岳のはずだが。右端は大菩薩)

(南アルプス)

(ようやく胴体部も。これが限界だった)

岩稜帯になったようで、目の前に大岩が見えた。岩を登るわけではないが、左から回り込むと、これがパノラマ岩。岩の上に立ってみる。絶景富士を期待したが、ここからクリアに見えたのは南アルプス、八ヶ岳、大菩薩嶺、大菩薩湖で、富士山は見えるものの、樹の葉が邪魔ですっきりは見えない。岩から下りてあちこちにスポットを移動したがダメだった。
(岩稜帯を越えると)

(牛奥が近づいた)

(ここから富士山写真が続く)

(樹々の枝葉がない)

(いいねぇ)

(左に黒岳。確かに黒い山)

岩稜帯が終わった。ようやく目の前に牛奥。樹々に葉はなく、立ち枯れの状態になっている。生きているのだろうか。余計なものが邪魔せずに見られるすっきり秀麗富士が視界に入った。しばらく動き回って写真撮りをした。アップにすると、やはり、ここからでもアンテナ群の立つ無粋な三ツ峠山が入ってしまうようだ。やはり、富士は日本一の山なんだなぁ。無理に牛奥と小金沢まで行かずとも、ここで満喫といった感じになっているが、せめて牛奥の山頂だけは踏んでおこう。先ほどの二人連れ、牛奥だけでやめたと言って、小金沢まで行かずにもったいないなと思ったが、これだけでも見られれば確かに満足かもしれない。富士の手前の直近左に見えているのは黒岳だろうか。ここから眺める富士山にはなかなかの添え物だ。
(長居してしまった。山頂を目指す)

(だが、どうにも気になって仕方がない)

(牛奥の山頂に到着。時間がかかり過ぎ。標準タイムより30分近くオーバー。最近は気にならなくなった)

(山頂から)

(少しアップして。どアップは好みではない)

(また黒岳を入れて)

(このアップレベルで三ツ峠山のアンテナが入ってしまう)

牛奥雁ケ腹摺山山頂に到着。標高1994m。こんな高い山に登ったのは久しぶり。小金沢山はもっと高い。2014m。見上げれば真っ青なピーカン空。誰もいない秀麗の一人占め。無風。贅沢な気分だ。しばらく石に腰かけて富士山を眺める。やはり、至福の一時だ。今日、休暇にしたのは、肺がんのこともさることながら、GPV天気予報を見ていて、明日なら最高だなと急遽、休みを取った。正解だった。
牛奥は三角点ピークではない。区界標石があるだけだ。稜線の東は大月市で、西は甲州市。勝手なことだが、自分には、甲州市よりも塩山市の方が身近に感じたのだが、それはともかく、この時点では興奮していて、例の大月市建立の<秀麗富嶽十二景>看板を確認せず、気づいたのは小金沢山に着いてからのことだった。
(小金沢山へ)

(雪だまりのトレース)

(草は低いので登山道を無理に歩くこともない)

重くなりかけた腰を上げて小金沢山に向かう。やはりあせってはいる。せっかく小金沢山まで行って、秀麗の真上に太陽があったら、ろくな写真も撮れない。稜線尾根の歩きになる。牛奥に至るまでの雪よりは多いが、固くなったトレースもある。積雪は少なく、ところどころで雪は消え、同時にトレースが消えても、尾根伝いに歩けば、雪のあるところではトレースにぶつかる。ペンションのオヤジさんが言っていた「絶対にありえない」というのは、確かにそうだと思った。ヤマレコに投稿した方はどんな歩きをされていたのだろう。そのまま尾根伝いに歩けばいいだけのことなのに。複雑な稜線尾根でもない。むしろ明瞭だ。
雪がいくらか深くなったところで、そろそろスパッツでも着けた方がいいかと、ザックからスパッツを出したが、このスパッツはワークマングッズの野良作業用で、縦割りのチャック式でもなく、そのまま足先から入れる袋状のものだったから、腰かけて履こうとしても、長靴ならともかく、そもそも登山靴を履いたままでは靴を通らず、苦戦してもダメ。つまりはウエスト85センチの身体に79センチのズボンを履くようなもの。登山靴を脱いで着けるのも面倒で、結局はヤメにしたが、この先も、ズボン裾と靴の間の隙間から雪が入り込むことはなかった。
(南アルプス)

(牛奥と富士山)

(牛奥)

(飽きないのが不思議だ)

(小金沢山直下)

(例の看板を見て)

(小金沢山山頂)

振り向き振り向きで富士山を眺めながら小金沢に向かう。先に二つのピークが見え、おそらく、手前が雨ノ沢の頭で、その奥にちらりと見えるのが小金沢山だろう。この辺は牛奥の下で見た立ち枯れらしき樹々もなく、草地も続いているようで、振り返っては絶えず富嶽を気にしながら歩いた。
牛奥からのコースタイム40分で小金沢山に到着。もう少しで山頂だといったあたりから人の姿が見えていて、その時は、てっきり、自分とは逆方向に、石丸峠の方から歩いて来たのかなと思っていた。
牛奥のような一人占めの気分にはならず、自分より見るから確実に年上のオッサンがいた。ちょっと話をした。ペンションの駐車場の隣にあった車の持ち主のようで、小田原から来たとのこと。どうも、ペンションのオヤジさんが悪態をついていた車の人らしい。この先は石丸峠に下って、閉鎖県道を歩いて駐車場に戻るとのことで、わざわざスマホのルート地図を出して、これから下って75mの登りになるとおっしゃっている。だったら、このまま戻ったらいかがと言ったが、足に巻いたチェーンスパイク歩きが嫌なようで、むしろ、自分には石丸峠に下って、車道歩きをした方が楽だとのこと。そういう方もいるんだなと思いながら、実はミヨリ尾根を下るつもりでいたけどピストンにしたと言うと、「そんな道があるのかい?」。「いや、登山道はないですよ。尾根下りです」。「勝手に登山道にしたのかい」。まぁ、こんな会話になってしまい、どうも自分歩き方とは違うようだなと思いながら、「気が変わったら追いかけますよ」で別れた。ここまで来て、長い車道歩きをするつもりはない。実は石丸峠の南側にある天狗棚に登り返す鞍部から、西に下って行くとそのまま林道に出られるようだが、石丸峠からにせよ、車道歩きは長く、当初、それを利用して周回するつもりでいたが、県道の冬季閉鎖を知ってやめた次第だ。
(小金沢山から。下のゴチャゴチャした黒味がどうも…)

(少しは黒いのが消えたが、これ以上、大きくしたくはない)

(少し、角度を変えればマシか)

(太陽はすでに富士山の真上に来ているが、案外と陽は高かった)

(ネエちゃんたちが登って来た。そろそろ下るか)

一人になった小金沢山。ようやくほっとした。さっきまでオッサンがいたから、一人占めといった感じはないが、ここからの秀麗もなかなかだ。牛奥からの眺めよりも奥に入っている分、牛奥周辺の山々が見えて景色も広がっている。大月市選定の秀麗富嶽十二景も、あと残すは、5番・奈良倉山、8番・岩殿山 お伊勢山、10番・九鬼山 御前山、11番・高川山になった。5番は近々に行くつもりだ。8番にはこだわりもないが、ぶなじろうさんによれば、桜の時節が良いのではとのことなので、奈良倉山の後でいいだろう。頻繁に山梨に来るわけにもいかない。再開した群馬百名山の残り作業もいくつかある。
小金沢山からの秀麗の眺めは、自分としては牛奥の方が好みかなと思う。あくまでも写真撮りをする限りのことだが、ここからでは樹々の細かい枝葉が入り込んでしまう。さりとて富士山アップはどこから撮ったのかわからなくなるので好みではない。とはいっても、富士山はどこから眺めてもいいものだ。おにぎりを食べながら眺めていると、下から声が聞こえてきた。見ると、ネエちゃん二人が登って来る。おそらく、自分と同じピストンだろう。下るか。
(下りながら)

(滝子山に続く稜線)

(牛奥に戻る。荷物は三人組の)

(改めて)

(眺めて。やはり富士山は登るのは一回で十分。眺めに徹した方が良い山かも)

牛奥までの間にちょっとしたピークが二つほどあるが、決してきついものではない。なだらかな上り下りだ。繰り返しになるが、今でこそ雪が着いてはいるが、草原状になっていて、雪が消えた春あたりは気持ちの良い歩きを楽しめそうだ。富士山も何か所かですっきり見える。
牛奥には男女の三人組がいた。小金沢山側の雪の様子を聞かれた。行くかどうか決めかねているようだが、結局、行かないことにしたようだ。内心、ここまで来てもったいないものだと思った。
(下山にかかる)

(もういいか)

(手前が雨沢ノ頭で、奥が小金沢山かと思う)

(八ヶ岳)

(こんなところは下りやすいが)

(用心しないと滑りかねない)

(フェンスの中に入る)

(見上げる。これでは、登りで息も切れる)

長い下りが待っていた。登り返しはないからいいものの、何がつらいかといったら、やはり急な凍結路だった。帰路ではいくらか緩むと思ったが、相変わらず太くてガチンガチンだ。チェーンスパイクの歯では深く食い込まず、注意しないとズルリといく。下りは、この神経疲れが続いた。アイゼンに履き替えることも考えたが、結局は面倒くさいということになるが、そのままで下ってしまった。アイゼンにすれば神経疲れも多少は和らいだろう。しかしながら、思うに、ピストン歩きの面白みのなさというのは、同じところを歩くため、帰路がえらく長く感じることにあるのではないだろうか。少なくとも自分はそうだ。
(この辺は我慢もできたが)

(こうなると嫌気がさす)

(駐車地に到着。右手にペンションがあって、正面が昆虫館になっている)

だれにも会わずに林道に出てほっとする。もう凍結道からは開放されたが、ここからもまた長い。チェーンスパイクは外してもよかったが、すでに泥んこになっていたのでそのままにした。
未舗装林道に入った。この林道歩き、往路で長いと思ったが、復路の方がやたらと長く感じる。そろそろ疲れてきていることもあるのだろう。ようやくペンション駐車場に到着。出発からほぼ6時間。歩行時間は5時間。最近としては長い歩きだ。
隣の車のオッサンは、今頃、県道を延々と歩いているのだろう。車を覗くと、シートはフラットにしてあるから、車中泊しながらあちこちに行っているのだろう。そういえば、小金沢山で、周囲の山の名前をいろいろ教えてもらったが、すべて忘れた。
久しぶりに贅沢な歩きを楽しんだ。ただ、登山道そのものは稜線部以外に面白みのないもので、もし富士山が見えなかったら、ただの苦痛な歩きでしかなくなるだろう。
(今回の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
ペンションすずらん(8:22)……パノラマ岩(10:14)……牛奥ノ雁ケ腹摺山(10:38~10:58)……雨ノ沢の頭(11:14)……小金沢山(11:40~12:09)……牛奥(12:49~12:55)……ペンションすずらん(14:17)
恒例の今季の富士山見物は小金沢山からスタートと当初より決めていたが、12月来、富士山ライブカメラを毎日のようにチェックしていても、山頂の冠雪はまだら状態でままならず、それは自分だけの思いだけでもないらしく、SNSの世界では地熱の上昇で噴火の前触れではないかと話題にもなったりもしたようだが、一月の中旬を過ぎてから、ようやく頭から腹近くまで真白き富士の嶺になってくれた。早々に見物に行きたかったが、タイミングと気分が合わず、だらだらと二月の中旬過ぎになってしまった。
県道は<ペンションすずらん>から先が冬季通行止めになっているので、大方はペンションからのピストン歩きをしているようで、自分にはそれでは面白くもなく、牛奥雁ケ腹摺山(以下、山名が長いので「牛奥」とする)と小金沢山までは一般登山コースで行き、帰路は、小金沢山から少し戻って、北西に尾根伝いに県道に下るつもりでいた。この尾根は「ミヨリ尾根」というらしい。ちなみに、上りは「雨ノ沢左岸尾根」になる。県道歩きが長くなるが、ピストンより少しはマシだろうと思っていた。
(ペンションすずらん)

ペンションすずらんでは、登山者向けに駐車場を無料開放している。その際、車のダッシュボードに計画書、連絡先等を記し、見えるように置いておかねばならず、これは事前にダウンロードして書き込んでいた。念のため、出発前にペンションに寄って、挨拶にいくと、オヤジさんが計画書を見せてくれと言うので、見せると、「登山届の提出先」のブランクを指摘された。キョトンとした。これが登山届ではないの? これまで、登山口に専用の用紙とポストでもあれば書き込んで、下山時にはポストを開けられれば回収した。個人情報を残すわけにはいかない。ポストがなければ出さずに登る。とにかく、どこをどう歩くのかはいつも気分次第なのだから、公的な(とはいっても私的機関経由になるが)登山届なぞ出したり、送信したことはない。それを指摘されて、反論しているのでは後味も悪い山行になりそうなので、「ココヘリにこれから提出します」と逃げたが、それはその場しのぎの返答。この欄は、ヤマレコ、YAMAP、山梨県警とでも記した方が無難のようで、オヤジさんが言うには、どこに出しても、そこから県警に送られるとのことだったから、ブランクは避けた方がいいだろう。自分の隣にもう一台の駐車があって、ダッシュボードには計画書が置かれていた。「この車の人はいい加減な計画書を書いている」と怒っていた。どこが不備なのかは知らないが、そこまでおっしゃるなら、計画書を登山届として代行して受理してくれればいいのにと思うものの、駐車代無料である以上は、理不尽だなとは思っても従わざるをえない。
この先の登山道の様子をオヤジさんからいろいろ聞いた。スパイク長靴で歩くつもりでいると言ったら、それはダメ。せめて、チェーンスパイクか軽アイゼン。「スパ長は滑る」と言われて、すごすごと登山靴に履き替えてチェーンスパイクを巻き、出番はなかったが、6本爪アイゼンもザックに入れた。また、計画書に書き込んだ、下りの「ミヨリ尾根」については、「先日もそこを下った人がいたけど、やめた方がいい」とのこと。自分には初めての山域だ。「やめた方がいい」の理由は言わなかったが、急尾根、雪深、不明瞭、…といったこともあるだろうし、このオヤジさん自身が歩いたことがないのかもしれない。それはともかく、地元に精通された方がおっしゃるのだから、あっさりとピストン歩きをすることになってしまった。ミヨリ尾根は別として、スパ長の件は不本意だったが、歩いてみて確かにスパ長では下りの分厚い凍結は危険が伴いそうで、チェーンスパイクでも危なかしかった。この点はごもっともということになるが、何だか、挨拶に行ったばかりに、首を傾げながらの出発になってしまった。
オヤジさんとのおしゃべりついでだが、ヤマレコ記事に14日にピストンで小金沢山に向かったら、牛奥の先は雪が深くてトレースもなく撤退したとあったがと話したら、「そんなことは絶対にありえない」と断言された。牛奥から小金沢山の稜線はラッセル歩きになるほどの雪は積もらないようだ。まぁ、オヤジさんとの会話でいろいろと複雑な心境になったことは確かで、小金沢山ではなく、無難に奈良倉山にでもしとけばよかったかなと思ったりしたのは正直なところ。
(道路を挟んで登山道に入る)

(しばらくはからっとした景色)

(頭が見えた)

(これがまた長い)

登山口はペンションから車道を挟んで向かい側。普通の雑木の山道で、右手前方に富士山の頭だけが見えている。フェンス沿いに歩いて行くと、やがて未舗装の林道らしき道に出て、これを横切るのかと思ったが、さもあらずで、この道をしばらく歩くことになる。地図には実線で記されている。今回の歩きで、この林道歩きが一番の苦痛だった。それを実感したのは帰路だった。とにかく長く感じた。林道沿いにもフェンスは続いている。事前調べでは、この林道が通っているあたりは開墾地ということになっているが、田畑があるわけではなく、平地はヤブになっている。
しばらくすると、工事中の看板が現れ、右手に迂回路。確かに、先にはプレハブ小屋が建っている。今日は平日なのに、工事の音は聞こえない。いずれにしても、林道歩きから解放されてほっとはした。迂回路にもフェンスは続き、フェンスの外はうっすらと雪が積もっている。
(林道を横切って、実質的な登山口)

(ガチンガチンになっている)

(大菩薩嶺かと思う)

(フェンスから外に出る)

やがて舗装林道を横切って、ようやく登山道といったところか。振り返ると、南アルプスの山々が白い峰を連ねている。左手近くに見える樹々の薄いピークは大菩薩嶺かと思う。あくまでも思い込みで、実際は南アルプスではなく八ヶ岳かもしれない。ここまで緩い登りではあったが汗をかいて暑い。上着は脱いだ。
いきなり急になった。伐採地跡になっている。日陰になっていて登山道は凍結している。何度も立ち休みしては息を整え振り返る。大菩薩湖の上日川ダムが見えた。その向こうの白い連山は位置的に八ヶ岳に違いない。ということは、さっき見えていたのはやはり南アルプスのようだ。
(伐採地を見下ろす。左側かすかにダム湖が見えている)

(1708m標高点付近)

(下り時は要注意だろう。こんなのがところどころにある)

伐採地の上に出て、ネットを外して外に出る。傾斜は少しは緩み、あとはどこにでもある登山道歩きながらも、展望はない。たまに階段ステップもある。周囲は雑木が続き、富士山の頭は見えていない。正面に太陽光をもろに受ける。凍結路は続いている。登りだから滑ることはない。すでに1708m標高点は過ぎているはずだ。
余計なことをここで敢えて記す。なぜ、休暇を取ってまで平日に富士山見物に出かけたのか。実は悲観的な事情があった。先日の健康診断で、肺のレントゲンでひっかかった。去年の10月の市の無料巡回健診では異状なしだったのに、会社健診では「要精密検査」だった。呼吸器系専門のクリニックに行き、紹介状なしでは行けない富士重工関係の大病院への紹介状を出してもらい、明日、大病院でのCT検査を受けることになっている。肺がんの疑いにでもなっていたら、もう山歩きはできないしと、見納めの覚悟で休暇を取って来ていた。後日談ではあるが、翌日、CT検査の画像CDをクリニックに持参したら、「何も異状はないよ」の一言だった。前回の脳ドッグでもそうだった。勤務先で指定する病院の健診はどうも信用できない。ムダな時間と金を費やし、精密検査までの「死」に直面した心労を考えれば鬱屈したものがある。何もなしの結果でいきなり解放はされたが、こうやって、タバコと酒を何十年も続ければ、カメラの精度はともかく、ひっかかっても当たり前のことで、どうにかしなければならないのは重々承知している。要精密検査が出た時点で、タバコは控えたが、何でもなかったことで、結局、帰りがけにコンビニでタバコを買って吸う始末だった。我ながら情けなくなる。それはともかく、この時の自分には、一歩一歩が最後の山歩きかなといった思いがあったし、富士山も山から眺める見納めと覚悟し、いろいろブツブツと急だとか景色が見えないなどと思いながらも、踏みしめながら歩いていた。鬱蒼とした、変化のない、面白くもない登山道歩きだが、これが最後かと思えば、苦も楽しいものにしたいもの。だが、なかなかすっきり切り換え気分にはなれないでいる。
ゼーゼーしながら登っていると、上から声がした。下って来る。二人連れ。ペンションの隣の車の方だろうか。神奈川県ナンバーながらも海向けで、山向きではない地区ナンバーの車。立ち話をする。牛奥だけで下るとのことで、小金沢山までは行かなかったらしい。二人揃ってスパッツをしていたので、上はスパッツが必要かと聞くと、必要ないとのこと。自分はスパッツ嫌いだからほっとしたが、小金沢山までの稜線歩きをしてないのでは参考になる話は聞けなかった。7時に歩き出したというから、下りではそんな時間かもしれない。この先はどうも一人らしい。
(牛奥かと思うが)

(頭から顔にかけて)

(階段もたまに見かける)

(最近ではないが新しい)

ようやく牛奥らしきピークが見えたが、まだ遠い。右手にようやく富士の嶺が見えた。樹の間からだからすっきりはしないが、上空には雲一つなくピーカンだ。陽がじわじわとそちらに移動しつつあるから気はあせる。正午近くなったら逆光富士山になってしまう。
依然として単調な登りが続く。これがまたつらい。途中で、クマの爪研ぎかシカ角をこすったのか知れない樹の跡を見ておののく。シカ糞は見ていないから、おそらくはクマだろう。ところどころに階段がある。いつもなら階段歩きは避けるが、脇は凍結しているので、階段の方が安心だ。固い雪も出てきたので、アイゼンにしようかと思ったが、まだチェーンスパイクで行けそうだし、もっとも交換の面倒くささもあって、そのままにした。
(大岩)

(パノラマ岩だった)

(パノラマ岩から大菩薩湖。その奥に八ヶ岳のはずだが。右端は大菩薩)

(南アルプス)

(ようやく胴体部も。これが限界だった)

岩稜帯になったようで、目の前に大岩が見えた。岩を登るわけではないが、左から回り込むと、これがパノラマ岩。岩の上に立ってみる。絶景富士を期待したが、ここからクリアに見えたのは南アルプス、八ヶ岳、大菩薩嶺、大菩薩湖で、富士山は見えるものの、樹の葉が邪魔ですっきりは見えない。岩から下りてあちこちにスポットを移動したがダメだった。
(岩稜帯を越えると)

(牛奥が近づいた)

(ここから富士山写真が続く)

(樹々の枝葉がない)

(いいねぇ)

(左に黒岳。確かに黒い山)

岩稜帯が終わった。ようやく目の前に牛奥。樹々に葉はなく、立ち枯れの状態になっている。生きているのだろうか。余計なものが邪魔せずに見られるすっきり秀麗富士が視界に入った。しばらく動き回って写真撮りをした。アップにすると、やはり、ここからでもアンテナ群の立つ無粋な三ツ峠山が入ってしまうようだ。やはり、富士は日本一の山なんだなぁ。無理に牛奥と小金沢まで行かずとも、ここで満喫といった感じになっているが、せめて牛奥の山頂だけは踏んでおこう。先ほどの二人連れ、牛奥だけでやめたと言って、小金沢まで行かずにもったいないなと思ったが、これだけでも見られれば確かに満足かもしれない。富士の手前の直近左に見えているのは黒岳だろうか。ここから眺める富士山にはなかなかの添え物だ。
(長居してしまった。山頂を目指す)

(だが、どうにも気になって仕方がない)

(牛奥の山頂に到着。時間がかかり過ぎ。標準タイムより30分近くオーバー。最近は気にならなくなった)

(山頂から)

(少しアップして。どアップは好みではない)

(また黒岳を入れて)

(このアップレベルで三ツ峠山のアンテナが入ってしまう)

牛奥雁ケ腹摺山山頂に到着。標高1994m。こんな高い山に登ったのは久しぶり。小金沢山はもっと高い。2014m。見上げれば真っ青なピーカン空。誰もいない秀麗の一人占め。無風。贅沢な気分だ。しばらく石に腰かけて富士山を眺める。やはり、至福の一時だ。今日、休暇にしたのは、肺がんのこともさることながら、GPV天気予報を見ていて、明日なら最高だなと急遽、休みを取った。正解だった。
牛奥は三角点ピークではない。区界標石があるだけだ。稜線の東は大月市で、西は甲州市。勝手なことだが、自分には、甲州市よりも塩山市の方が身近に感じたのだが、それはともかく、この時点では興奮していて、例の大月市建立の<秀麗富嶽十二景>看板を確認せず、気づいたのは小金沢山に着いてからのことだった。
(小金沢山へ)

(雪だまりのトレース)

(草は低いので登山道を無理に歩くこともない)

重くなりかけた腰を上げて小金沢山に向かう。やはりあせってはいる。せっかく小金沢山まで行って、秀麗の真上に太陽があったら、ろくな写真も撮れない。稜線尾根の歩きになる。牛奥に至るまでの雪よりは多いが、固くなったトレースもある。積雪は少なく、ところどころで雪は消え、同時にトレースが消えても、尾根伝いに歩けば、雪のあるところではトレースにぶつかる。ペンションのオヤジさんが言っていた「絶対にありえない」というのは、確かにそうだと思った。ヤマレコに投稿した方はどんな歩きをされていたのだろう。そのまま尾根伝いに歩けばいいだけのことなのに。複雑な稜線尾根でもない。むしろ明瞭だ。
雪がいくらか深くなったところで、そろそろスパッツでも着けた方がいいかと、ザックからスパッツを出したが、このスパッツはワークマングッズの野良作業用で、縦割りのチャック式でもなく、そのまま足先から入れる袋状のものだったから、腰かけて履こうとしても、長靴ならともかく、そもそも登山靴を履いたままでは靴を通らず、苦戦してもダメ。つまりはウエスト85センチの身体に79センチのズボンを履くようなもの。登山靴を脱いで着けるのも面倒で、結局はヤメにしたが、この先も、ズボン裾と靴の間の隙間から雪が入り込むことはなかった。
(南アルプス)

(牛奥と富士山)

(牛奥)

(飽きないのが不思議だ)

(小金沢山直下)

(例の看板を見て)

(小金沢山山頂)

振り向き振り向きで富士山を眺めながら小金沢に向かう。先に二つのピークが見え、おそらく、手前が雨ノ沢の頭で、その奥にちらりと見えるのが小金沢山だろう。この辺は牛奥の下で見た立ち枯れらしき樹々もなく、草地も続いているようで、振り返っては絶えず富嶽を気にしながら歩いた。
牛奥からのコースタイム40分で小金沢山に到着。もう少しで山頂だといったあたりから人の姿が見えていて、その時は、てっきり、自分とは逆方向に、石丸峠の方から歩いて来たのかなと思っていた。
牛奥のような一人占めの気分にはならず、自分より見るから確実に年上のオッサンがいた。ちょっと話をした。ペンションの駐車場の隣にあった車の持ち主のようで、小田原から来たとのこと。どうも、ペンションのオヤジさんが悪態をついていた車の人らしい。この先は石丸峠に下って、閉鎖県道を歩いて駐車場に戻るとのことで、わざわざスマホのルート地図を出して、これから下って75mの登りになるとおっしゃっている。だったら、このまま戻ったらいかがと言ったが、足に巻いたチェーンスパイク歩きが嫌なようで、むしろ、自分には石丸峠に下って、車道歩きをした方が楽だとのこと。そういう方もいるんだなと思いながら、実はミヨリ尾根を下るつもりでいたけどピストンにしたと言うと、「そんな道があるのかい?」。「いや、登山道はないですよ。尾根下りです」。「勝手に登山道にしたのかい」。まぁ、こんな会話になってしまい、どうも自分歩き方とは違うようだなと思いながら、「気が変わったら追いかけますよ」で別れた。ここまで来て、長い車道歩きをするつもりはない。実は石丸峠の南側にある天狗棚に登り返す鞍部から、西に下って行くとそのまま林道に出られるようだが、石丸峠からにせよ、車道歩きは長く、当初、それを利用して周回するつもりでいたが、県道の冬季閉鎖を知ってやめた次第だ。
(小金沢山から。下のゴチャゴチャした黒味がどうも…)

(少しは黒いのが消えたが、これ以上、大きくしたくはない)

(少し、角度を変えればマシか)

(太陽はすでに富士山の真上に来ているが、案外と陽は高かった)

(ネエちゃんたちが登って来た。そろそろ下るか)

一人になった小金沢山。ようやくほっとした。さっきまでオッサンがいたから、一人占めといった感じはないが、ここからの秀麗もなかなかだ。牛奥からの眺めよりも奥に入っている分、牛奥周辺の山々が見えて景色も広がっている。大月市選定の秀麗富嶽十二景も、あと残すは、5番・奈良倉山、8番・岩殿山 お伊勢山、10番・九鬼山 御前山、11番・高川山になった。5番は近々に行くつもりだ。8番にはこだわりもないが、ぶなじろうさんによれば、桜の時節が良いのではとのことなので、奈良倉山の後でいいだろう。頻繁に山梨に来るわけにもいかない。再開した群馬百名山の残り作業もいくつかある。
小金沢山からの秀麗の眺めは、自分としては牛奥の方が好みかなと思う。あくまでも写真撮りをする限りのことだが、ここからでは樹々の細かい枝葉が入り込んでしまう。さりとて富士山アップはどこから撮ったのかわからなくなるので好みではない。とはいっても、富士山はどこから眺めてもいいものだ。おにぎりを食べながら眺めていると、下から声が聞こえてきた。見ると、ネエちゃん二人が登って来る。おそらく、自分と同じピストンだろう。下るか。
(下りながら)

(滝子山に続く稜線)

(牛奥に戻る。荷物は三人組の)

(改めて)

(眺めて。やはり富士山は登るのは一回で十分。眺めに徹した方が良い山かも)

牛奥までの間にちょっとしたピークが二つほどあるが、決してきついものではない。なだらかな上り下りだ。繰り返しになるが、今でこそ雪が着いてはいるが、草原状になっていて、雪が消えた春あたりは気持ちの良い歩きを楽しめそうだ。富士山も何か所かですっきり見える。
牛奥には男女の三人組がいた。小金沢山側の雪の様子を聞かれた。行くかどうか決めかねているようだが、結局、行かないことにしたようだ。内心、ここまで来てもったいないものだと思った。
(下山にかかる)

(もういいか)

(手前が雨沢ノ頭で、奥が小金沢山かと思う)

(八ヶ岳)

(こんなところは下りやすいが)

(用心しないと滑りかねない)

(フェンスの中に入る)

(見上げる。これでは、登りで息も切れる)

長い下りが待っていた。登り返しはないからいいものの、何がつらいかといったら、やはり急な凍結路だった。帰路ではいくらか緩むと思ったが、相変わらず太くてガチンガチンだ。チェーンスパイクの歯では深く食い込まず、注意しないとズルリといく。下りは、この神経疲れが続いた。アイゼンに履き替えることも考えたが、結局は面倒くさいということになるが、そのままで下ってしまった。アイゼンにすれば神経疲れも多少は和らいだろう。しかしながら、思うに、ピストン歩きの面白みのなさというのは、同じところを歩くため、帰路がえらく長く感じることにあるのではないだろうか。少なくとも自分はそうだ。
(この辺は我慢もできたが)

(こうなると嫌気がさす)

(駐車地に到着。右手にペンションがあって、正面が昆虫館になっている)

だれにも会わずに林道に出てほっとする。もう凍結道からは開放されたが、ここからもまた長い。チェーンスパイクは外してもよかったが、すでに泥んこになっていたのでそのままにした。
未舗装林道に入った。この林道歩き、往路で長いと思ったが、復路の方がやたらと長く感じる。そろそろ疲れてきていることもあるのだろう。ようやくペンション駐車場に到着。出発からほぼ6時間。歩行時間は5時間。最近としては長い歩きだ。
隣の車のオッサンは、今頃、県道を延々と歩いているのだろう。車を覗くと、シートはフラットにしてあるから、車中泊しながらあちこちに行っているのだろう。そういえば、小金沢山で、周囲の山の名前をいろいろ教えてもらったが、すべて忘れた。
久しぶりに贅沢な歩きを楽しんだ。ただ、登山道そのものは稜線部以外に面白みのないもので、もし富士山が見えなかったら、ただの苦痛な歩きでしかなくなるだろう。
(今回の軌跡)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
全ての写真に一片の雲も写っていませんね。歩いている間、ず~っと晴れていたようですね。そんな快晴の歩きでしたらさざかし爽快そうです。「満喫」も納得です。自分もこのへんはもう一度歩いてみたいような気がしています。
今回の歩きコースは、県道が冬季通行止めでは致し方もないですが、自分には不本意で、気持ち良く歩けたのは牛奥から小金沢山間の稜線歩きだけでした。雰囲気がいいですね。
ぶなじろうさんのように、大菩薩から滝子山方面に延々と歩きたいものですが、つい車利用に頼ってしまって、ぶつ切りの歩きしかままなりません。
しかし、わざわざ狙ったということもありますが、無風、快晴の中の歩きは最高ですね。眺める富士山への思いもまた天気次第で変わるだなぁと実感しています。
次は奈良倉山と思ってはいるのですが、今のところの通行止めではこれもまたピストンになりそうで、それではせっかくの秀麗ももったいなく、九鬼山の電車の利用も視野に入れております。
牛奥からのスッキリ富士、良いですね.その手前の枯れ木帯からの富士も見事です.これぐらい青空ですと三ッ峠は気になりませんね. 私は、牛奥、小金沢山より、枯れ木帯の方からの光景が気に入ってます.
往復しましたか、、私は、記事の中のオッサンと同じ閉鎖林道歩きで帰ってきました(笑) 石丸峠付近を見ておきたかったのと、往復はちょっと避けたかった為です.石丸峠付近から望む富士も中々でしたよ.他の十二景の多くは、富士の見える方向を伐採してますよね.その点、牛奥や小金沢山はそうではないようです.次は奈良倉ですか、時間が余っちゃいますね.
改めて記事は拝見しましたよ。石丸峠に出ていましたね。私も、石丸峠からの富士山はどんなものなのか見たいところもあって、その気になったのですが、それをやると、車道歩きが長くなるし、それ以前に、大菩薩を回らないと半端な歩きになりそうだしと、結局はやめたのですが、牛ノ寝通りにも興味がありますので、その際にでもと思っています。
次はおっしゃるとおりに奈良倉山のつもりではいるのですが、鶴峠から登ったのでは確かに時間を持て余すし、雪田爺さんのように三頭山までの余力もないだろうしと、ふかしろ湖から松姫峠に出て奈良倉山と鶴寝山に行こうかなと思っているのですが、その前に、九鬼山と高川山を片付けておいた方がいいかなと、ちょっと悩むところです。両方回って、これに御前山を付けるほどの歩きもできないだろうし…。
ブログには記していませんが、通行止めがなかったら、ここに車を置いて、こう行って、ああ行ってと、石丸峠に出る線のないコースも考えていたのですが、それも持ち越しですが、それまで、富士山の雪が残ってくれていればいいのですが。
今回の歩きですが、雪田爺さんのおっしゃるとおり、自分にも、牛奥下の枯れ木帯からの眺めが最高だったと思っています。