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◎2022年11月16日(水)
大子町第一駐車場(8:43)……コース上の生瀬富士(9:33)……茨城ジャンダルム先の生瀬富士(9:42)……コース上の生瀬富士(9:50)……立神山(10:05)……滝のぞき(10:49)……滝川に入って生瀬滝の落ち口近くに行って戻る(11:04~11:12)……ミス戻り(11:25)……滝川渉って月居山登山口(11:33)……月居観音堂(12:03)……月居山(12:09~12:48)……月居観音堂(12:58)……袋田の滝側の月居山登山口(13:19)……袋田の滝吊橋まで(13:26)……生瀬滝への登り(13:30)……生瀬滝展望台(13:44)……袋田の滝歩道(13:55)……駐車場(14:13)
予定では奥久慈男体山に行くつもりでいたが、ネット記事を眺めていると月居山が紅葉のピークを迎えているらしく、生瀬富士と合わせて周回することにした。生瀬富士を加えたのは、同山に「茨城ジャンダルム」という危なげな岩場の区間があるようで、冗談半分で興味があった。出っ張り部分のようだし、恐そうだったら寄らなきゃいいだけのことで、ジャンダルムを眺めただけでも月居山には行ける。過去に滑落事故はないようだ。だったら、自分でも大丈夫ではないのか? ヘルメットをかぶってまで歩いているハイカーもいないようだし(中にはいるだろうが)。ただ、「茨城ジャンダルム」としたのが、ユーモアなのか本気からなのかは現地で見てみないとわからない。いずれにしても、生瀬富士、月居山ともに歩くのは初めてで、計画時点で生瀬富士のことを「きせふじ」と思っていたほどだ。『てんきとくらす』で扱っている茨城県の山は12山しかない。一覧を見ればすぐに生瀬富士は特定できる。「な行」にあったとは気にも留めなかった。ちなみに「月居山」を「つきおれ」と知ったのは先週のことで、それまではそのままに「つきおり」だった。特殊な人名、地名の読み間違いは失礼にはあたらないが、人前で話したり、記したりするのはやはり恥ずかしい。
(駐車場から。奥の小さいのが生瀬富士で、手前が立神山らしい)
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大子町は遠かった。6時に家を出たが、ナビをセットすると3時間以上かかる。それも矢板インター経由だった。矢板からの一般道がとにかく長い。それでも一般道で時間を稼いだから2時間半少々で着きはしたが、軽自動車だったから身体が窮屈だった。別に理由もなく町営の第二駐車場に入るとガラガラ。第一も空いているんじゃないのかと第一に向かったら、8時半過ぎの時点で4台くらいの空きしかなかった。大方の利用者が登山目的のようだ。ハイカー姿が目立った。この時間に袋田の滝に行く方はそんなに多くはあるまい。
(県道から標識にしたがって離れる)
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(ほどなく山道になる。傾斜も緩く歩きやすい)
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(見上げると色づきが濃くなっていて期待できそう)
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生瀬富士の登山口が何となくわからないままに歩き出すと、すぐに標識があった。前をオッサンが歩いていた。山道に入ってもしばらくは平坦だった。こういうところの歩きは得意だ。つい、オッサンを追い越してしまったら、今度は、オッサンが真後ろをヒタヒタとついて来る。歩きづらくて仕方がなく、登りになりかけたところで立ち止まって先行してもらう。「歩くペースがちょうど良い感じだったからくっついてしまいましたよ」なんて言っていたが、こちらはプレッシャーを感じる。オッサンから50m離れて歩いた。
オッサンの前を4人グループが歩いていた。途中で上着を脱ぎ始めた。こちらも汗ばんできていたので、上を脱ごうとしたら、先でオッサンも脱いでいたので、結局は、こちらがまた先行してしまった。この4人グループ、今日は月居山まで前後しながら歩くことになる。
(そして始まった)
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(点在といった感じだが、歩いていて気持ちが良い)
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(ロープが出てくる。さほどに急には感じなかった)
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(左方向、月待の滝まで6.1kmとは遠い。滝は後回しのドライブで)
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(次第に密になる)
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(停滞気味)
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ここまではさっぱりだったが、上に行くに連れて紅葉がきれいになった。タイミングとしてはちょうど良かったようだ。月居山の紅葉にばかり気をとられていたが、生瀬富士側も見頃で、結果としては、月居山よりも連続していてきれいだった。紅葉を楽しみながらでは歩きも遅くなる。途中、植林が左に出てくると、進行方向とは反対の左向きに「月待の滝6.1km」の標識を見かける。月待の滝は、帰りにドライブで観に行くつもりでいる。
岩場が目につくようになり、先が滞る。ほとんどが数人のグループなのだが、岩越えでは女性が慎重になってしまい、どうしても遅れる。下で登り終えるのを待っている状態が続く。後ろにも続いた。さっきのオッサンの姿も見える。今日のハイカーは平日にもかかわらずに多いようだ。
(生瀬富士山頂。正確には南峰か)
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(南峰から)
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ピークらしい岩場に立つと生瀬富士の手書き山名板があった。そして町で設置したらしい標識には「Mt.Namasefuji」とある。「この山、なませ富士というのか。きせ富士と思っていた」と独り言をぶつくさ言っていると、周囲のお二人から「なませ富士ですよ」と言われた。ここで気になった。この先、月居山方面に向かう際、ここからどちらに向かうのか。標識は見かけない。西からやって来て、北はジャンダルム。当然、絶壁側には下れない。南側にはロープが張られた急斜面が続いていた。ロープで塞がれていると理解した。だとすれば、ジャンダルム経由になるのだろうか。
(これがうわさの茨城ジャンダルム)
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(石はしっかりと岩にへばりついている)
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(生瀬富士の北峰ピークか)
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(ネットでよく見かける鉄のマーキングが落ちていた)
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(北峰からの眺め。彼とは月居山の登山口で再会した)
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(ジャンダルムを戻る)
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ここでジャンダルム渡りになる。すぐに見えているかと思ったら、手前にあるいくつかの大岩を越えないと見えないようだ。岩にはロープが掛けられている。前を何人かが向かっている。また滞った。さすがに恐いらしく、女性に先を譲られた。ありがたく先に行かせていただいた。うまい表現はできないが、ジャンダルムは幅広の蟻の戸渡りといったもので、長さは100mあるかどうかといったところだろう。すれ違いはできる。左右ともに切れてはいるがさほどに恐怖感はなかったし、浮石はなく、コンクリで固めたようになっていて歩きやすい。
どん詰まりに高さ3mほどのケルン状の小山があった。オニイちゃんが立って景色を眺めている(このオニイちゃんには月居山に登る際にも、同間隔で歩いていた)。自分も上がってみた。絶景とまではいかないが景色は良かった。ここも生瀬富士のピークらしく、つまりは、生瀬富士は双耳峰なのだろう。見た限り、この先に下るところはなかった。ジャンダルムを渡って大岩の下に戻った。件のオッサンがいた。聞いた。月居山にはどこを下ればいいんですかねと。「一旦戻って、分岐を標識に合わせて…」なんて言い出すから、方向が違うじゃないですかと応じると、「だって月待の滝に行くんでしょ」。「いや、月居山ですよ」。どうも、下で会話をした際、こちらの発声が不明瞭だったのか、月居と月待を聞き違えたらしい。手前ピークから南に下るのだそうだ。ロープが張ってましたけどと言うと、そこを下ればいいとのことだったが、スッキリしない。オッサンは地元なのか、よく来るのか知らないが、この辺に詳しく、月待の滝までは一部ヤブとのことだった。「月待の滝は後でドライブで寄りますよ」と言ったら笑われた。その後、このオッサンと会うことはなかった。
(南峰からここを下る。かなり急だ)
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(下る一方。気にはなったが、それ以上に気になったのが、この稜線沿いの紅葉)
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(同じく)
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(同じく)
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さて、南側ピークに戻って、ロープをよく見ると、ガード用のロープではなく、下に続くロープだった。かなり長い急坂になっている。この先、基本的には下りが続く。逆から登って来る方も結構いて、急なところもあり、逆歩きではつらいだろうなと思った。自分には、第一駐車場からの生瀬富士に至るコースはすこぶる楽だった。岩、岩での待ち時間が多かったので、かなりの休憩をとったからだろうか。
(少しの登り返しで小ピーク。立神山ではなかった)
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(次のピークが立神山)
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やたらと下るので、果たしてこの道でいいのかと気になりはしたが、右手にきれいな紅葉が続いていたので、さして深刻になるまでには至らず、ちょっとしたピークを登ると立神山の標識があったのでほっとした。この辺に来ると、出会う人もそんなに多くはなく(さりとて少ないわけでもない)、おそらくは、岩場があったから生瀬富士は流れが悪く、ハイカーが多いと思っただけのことかもしれない。立神山にはだれもいなかった。
立神山には「三角點」と記された標石があった。地図を広げて見た。生瀬富士も月居山にも三角点はなく、その間にもない。この標石は何だろう。そういえば、生瀬富士の南峰にも標石のようなものがあり、てっきり三角点とばかりに思っていた。文字が記されてはいたが確認はしていない。立神山のそれはしっかりと三角点になっている。かつては三角点で、今はなしということだろうか。
ところで、ここも含め、この先にも「月居山→」の標識は見かけない。あるのはあくまでも「袋田の滝→」だけだ。だから、自分のような初めて歩く者には、月居山まで行くとしてこれでいいのかと戸惑うところがあり、立神山にある方向指示標もまた例外に漏れず「袋田の滝→」だった。「月居山」が出てくるのは、袋田の滝の上の滝川を越えてから出てくる登山口標識からだった。
(また下る)
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(下り一方ではなく、登り返しの小ピークもいくつかある。大して苦労は要らない)
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(里からはかなり高いところを歩いている)
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またどんどん下る。傍らには補助ロープ。ハイキング道は落葉だらけで、その中には真っ赤なモミジの葉も混じっているのだが、これがまた滑る。今日はスパ地下にするかワークマンにするかで迷ったが、ジャンダルムもあるしと、ワークマンにしたのが失敗した。2回ほど滑って尻もちをついた。履物に迷ったのは瀑泉さんの記事は拝見していたからだ。逆方向ながらも滝川を越えるのに、川水が多かったらしく、奥さんをスパ地下履きの瀑泉さんがおんぶしたとあった。ジャンプは足の都合で不具合としても、昨日は雨が降ってもたいしたものでもなかろう。
(復活)
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(どうにも進まない)
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(さらにどんどん下っている。このまま月居山に行けずになってもかまわない気分状態)
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(月居山かと思う)
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(赤を入れてみた。逆光。それにしても赤だらけで黄色は少ない)
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(光も強すぎると鮮度がわかりづらいが、樹も含めた景色全体が赤くなっている)
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(これは最近の落葉だ)
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(これにはたまらなかった)
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(この間を下っている。さ迷いの感を覚えた)
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(赤だけか? と言いたくもなるが)
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(落葉もまた新鮮な色具合だ)
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下るに連れて、紅葉の中をさまよっているかのような気分になるのが不思議だ。途切れては現実に戻っても、次のさまよいが始まる。これは高ジョッキでも石尊山でも感じなかったことで、いつぞや篭岩山に行った際にも同じ感覚を味わった。茨城の山の紅葉は奥が深いようだ。これは褒め過ぎか? かもしれない。
4、5人のグループがやって来た。リーダー格らしいジイに話しかけられた。「ジャンダルム、行って来たんけー?」、「おらさ、イバラギジャンダルムっていうんけぇ、一度は見てみてぇと思ってやって来たんだー」。イントネーションからして茨城の方かと思ったが、敢えて聞きはしなかったが、栃木北部か福島南部のグループだろうか。余談。イントネーション、地元の話し言葉として面白かったのは足尾だった。足尾は栃木県でありながら、足尾線が走っていた関係か、日光よりも桐生に出る機会が多く、群馬弁混じりの栃木弁だった。今の若い人は方言丸出しでしゃべりはしないが、東京言葉を使っても、イントネーションで地が出てしまう。これは隠せない。どうでもいい話だったか。
(滝のぞき)
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(滝のぞきから袋田の滝)
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(同じく)
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このコースの楽しみは、ジャンダルムもさることながら、袋田の滝を上から見下ろせるというところにもあった。そのスポットは「滝のぞき」というらしい。下り続きでは、このまま町に出てしまうのではないのかといった心配はあったが、下っているわりには高度は維持しているようで、モミジが消えて右の展望が見えるところに出ると、右手の正面に月居山らしき高い峰が見え、町並みはかなり下に見えている。ネット記事を拾う限り、このコース歩きでの月居山への登りは階段もあってきついと大方に記されている。そのきつさは、左手の裾野付近が隠れていてよくはわからない。先に行けば何となくわかるかなと思っていると、手書きの標識に気づいた。それには「滝のぞき」とあった。
町で設置したアルミ板の標識はなく、あくまでも手書きの板だ。袋田の滝は真下になる。下は垂直になっている。柵やロープもない。大子町で知らんぷりを決め込んでいる以上は自己責任ということになる(それでいながら、町で設置した標識には「滝上展望台」とあった)。滝の大方は見えるものの、日陰ですっきりはしないし、水量もさほどではなく太目の糸状になっている。それでも真下の観瀑台の屋根だけは見下ろせた。覗き込む観光客の頭も見える。光の関係もあって、ここからの眺めでは判断はつかないが、滝の左右の岩壁の紅葉は、今の尾根を歩いている以上の色彩は欠いている。この袋田の滝は観光で観瀑台から正面に一度見たことがあるだけだ。もう30年以上前のこと。メインの目的は大洗でアンコウ鍋を食べることにあったから、ついでの滝の印象はあまりなく、デカイというだけだった。ちょうどの時季なのに氷瀑でもなかった。
(また下りになって)
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(滝の上流に出た)
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(貸し別荘らしい。あちらに行くのは避けたい)
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だれにも会わないままに先に下る。ようやく月居山の左裾野が見えてきた。見たところ、なだらかで、きつさはあまり感じない。どこに急登があるのだろう。あるとすれば山頂直下だろうか。下に川が見えてきた。もう落葉だらけになっている。滝川に着いた。ザックを背負った若い二人連れが川を前にして躊躇しているようだ。
(滝川を下る。生瀬滝の落ち口を見るつもりでいた)
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(ここまでで限界。沢靴なら先まで行けた)
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(戻る)
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(戻ったはいいが、何を勘違いしたのか、ここを上がり、右に行ってしまった)
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(道型とテープだけはあった。間違いに気づいて戻る)
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大きな勘違いをしていた。とんでもなく恥ずかしい方向音痴。ここでは、瀑泉さんのおんぶの記事記憶も消えている。自分がやったことを以下に記すとこうなる。ザックを岸にデポしてカメラだけ持ち、小さな板切れの橋を渡る。ワークマンに少し水が入った。かまわずに正面にそのまま向かわず、流れに合わせて右に下る。袋田の滝の上にある生瀬滝の落ち口を見ようとしたが、ズックでは無理なようで、ズックの限界で引き返す。そのまま板切れを渡ってザックを背負って、ここまで来た道の延長、つまりは川の右岸を先に歩いて行った。すでに二人連れの姿はない。なぜにそちらに行ったかというと、テープがあったからだけのことだが、これまでにもテープはあったが疎らだった。なぜ、こんなにテープが増えて続くのか不思議にもならなかった。ただ、道が急にヤブじみて細くなった。
かなり先まで行って、何となく変だなと思い、GPSを出して地図を確認した。あの川は渉って先に行くべきだったようだ。別荘みたいのが建っていたので、そちらは避け、見向きもしなかった。戻る。改めて板切れを渡った。別荘をまともに見ると、右側が歩けるようで、その先は広くなっている。行ってみると、右手に「月居山 生瀬滝⇒」の標識があった。別荘の前で、生瀬富士で見かけた4人グループが休んでいた。そのうちの一人はうらやましくもタバコをふかしていた。30分はタイムロスした。月居山の後は月待の滝以外に生瀬滝の予定もあったので、そのまま月居山に向かった。
(月居山登山口。いきなりの登りになっている)
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(先行のオニイちゃん。ジャンダルムから戻ったのはいっしょだった。こちらは30分のムダ歩きをしている。彼氏、鈍足か?)
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(そして階段になる。自分の歩幅には合っていた)
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(生瀬富士と立神山か? あるいは、駐車場から見えた生瀬富士は見えていないのかも。右峰の山肌の穴が気になった)
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対岸から見た限りは緩やかではあったが、確かに急だ。前をオニイちゃんがゆっくりと歩いている。自分と同じようなペースだ。たまに休んでは歩き出す。横顔がちらりと見えた。ジャンダルムの岩に立っていたオニイちゃんだった。彼氏の歩きに合わせよう。
階段が出てきて、右手に生瀬富士と立神山らしきピークが並んで見えた。写真を撮っていて気になった。立神岩の真下のむき出しの岩壁に穴がいくつか見える。どうやって穴まで下ったか、あるいは登ったかは窺い知れないが、あれは掘削の跡だろうか。鉱山でもあったのか。気になって帰宅後に調べたが、何も出てこなかった。
(階段の下り)
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(下って登ってこの小ピーク)
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(その先はどんどん下り)
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(月居山が近づく。目線からしてかなりの登りを強いられそうだ)
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下から声が聞こえて来た。振り返ると、4人グループ。休憩をゆっくりとって元気なはずだし、先行してもらおう。階段は延々と続いているわけではなく、平地もあってそんなところに階段はない。立ち止まって先に行ってもらった。そのうちに右手から歩道が上がって来る。袋田の滝から登るコースで、ここを下れば、途中で生瀬滝に寄り道できる歩道が分岐するはずだが、ここは月居山優先だ。そろそろ、色づきが復活し始めたから、このまま気分良く先に行きたい。
高台に出た。4人グループが休憩していた。結局、追い越した。前方にはオニイちゃんの姿が見える。下りになった。生瀬富士からの下りを体験していただけに、登り返しを想定するとあまり下りたくはない。下り途中で月居山が正面に見えた。どうもかなり下りそうだ。
(月居観音堂)
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(石仏群)
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(鐘撞堂)
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(山門付きだった)
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(月居城の案内板)
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鞍部らしきところに出た。これから登りかとため息が出る。ここから階段がある様子はない。オニイちゃんが左、右へと登っている。お堂があった。解説板には月居観音とある。「運慶作と伝えられる」観音像が祀られているとのこと。残念ながら中には入れないが、入れたとしても、観音像があるとは思えない。運慶だとしたら重文級だろう。山の中のお堂にそのままにしておくわけがない。そして石仏がずらりと10体以上。他に石灯篭、墓石のようなものもある。気持ちが安らぐスポットだ。門が見えたので近づくと鐘撞堂まであった。
では、ラストの登りに入るかと登り口に向かうと解説板。月居山の歴史については事前に調べていた。山頂にはその昔、月居城があった。袋田氏の築城で袋田城とも言われたらしい。関ヶ原の戦いの際、常陸国の大半を支配する佐竹氏は戦いには参加せず、心情的に西軍に与した。戦後処理で佐竹氏は半分未満の石高にされて辺地の秋田に飛ばされる。月居城は代々、佐竹氏の家臣の居城であったため、城主を失った月居城は廃城になった。そんな知識はあった。解説板にも同じようなことが記されていた。2年前、水戸で佐竹展をやったことがある。わざわざ見に行った。その時に登った宝篋山はあくまでもついでだった。自分のルーツはマタギと信じているから、佐竹氏とは何も関係はないが、秋田というだけでつい気になってしまう。月居山に決めたのはそんなところにもある。余談だが、I県に美人があまりいないのは、佐竹の殿様が美人をごっそり秋田に連れて行ったからだという邪説がある。これには笑ってしまう。
(最後の登りと覚悟して登った)
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(階段は消えた。さほどの傾斜でもなかった)
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(いよいよ出てきた。青葉がまだ多い)
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(山頂直下。ロープに頼るまでもない)
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(月居山山頂。正確に言えば月居城跡に到着)
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(この標識、左向きに「月居山」とあるのが気になった)
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(ここが月居山の山頂だ)
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意外にあっさりと山頂に着いてしまった。やはり、きついと言われているのは観音堂までの階段登りのようだ。それを過ぎると、ロープ場はあるものの巻き道がある。自分にはさほどに急には感じなかったのが正直のところで、階段の幅も無理なく一歩・一段ずつ登れたから苦情を寄せるコメントは何もない。
(戻ってしばらく紅葉を楽しむ)
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(同じく)
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(同じく)
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(同じく。むせかえる)
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(同じく。ここも樹が赤くなっている)
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(同じく)
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(見上げて)
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(ベンチは使えそうにないので、赤い絨毯にシートを敷いてランチ)
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山頂広場は黄、赤、緑でむせかえっていた。緑が黄赤に転じるのも時間の問題だろう。広場には「月居城跡」の石碑と標識が置かれている。だが、月居山の山名板が見あたらない。山頂は果たしてこれでいいのかと小高い丘に行ってみると、手書きの山名板があり、主図根点の石標があった。これを確認して広場に戻る。自分以外に5人いるだけだ。食事をしていたり、オニイちゃんのように、うろうろと紅葉を眺めていたりしている。自分もまたあっちへ行ったり、こっちに来たりの紅葉見物。飽きない。もういいかというところで、草むらにシートを敷いてランチにした。ベンチが2つほどあるが使用中だ。その間に4人グループと数人が登って来て賑やかになってきた。また、高ジョッキと石尊山との比較になってしまうが、両山ともに山頂は狭く、紅葉もまた山頂までは押し寄せていなかった。ここは違う。紅葉を眺めながらのランチ。食べる物は相変わらずの菓子パンだが至福の時を味わえる。来年また来よう。そんなことを思いながらアイコスを取り出す。間違ってステックの吸い口を先に入れてしまい、取り出そうとしたら中で折れて詰まってしまった。爪楊枝でもあればほじくれるがそんなものはない。満喫のはずの一服はかなわなかった。
(未練がましく)
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(立ち去りがたい)
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(これではなあ)
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(また見上げた)
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(同じく)
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(近づいて。数日後には真っ赤だろう)
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(ハイカーも多くなってきた)
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(ではオサラバ。忘れたり、気が変わらなければまた来年)
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(下る)
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腹を満たして、さてと、未練を残しつつ広場をもう一周して紅葉を確かめながら、下りはどうしようと考える。地図を見ると、4ルートあるが、すべて観音堂に戻ってから始まる。1ルートは登って来たコースだから対象外。それでいて、山頂から西に尾根伝いに下る踏み跡があった。これは、観音堂から西に下る破線に合流するものと思われる。ダイレクトに駐車場に向かうにはよいだろうが、生瀬滝を観るつもりがあるから、北に下る2本の破線コースの東側がいいだろう。結果として、地図にはないが、観音堂に着く間に合流した袋田の滝からのコースを下ればよかったようだが、そのコースは地図にも、地元発行のハイキングコースにも記されていないのでパスだが(それでいて、道型はしっかりとあったから結構、利用されているのだろう)、観音堂からの登り返しがつらい。とりあえずは観音堂まで下る。
観音堂に出る。繰り返しになるが、地図上はここから破線道が2本出ていて、右を選択すればよいだけのことだが、道の分岐はない。探し回ったが、月居山に登る道、往路で通った道、鐘撞堂の脇を通る道の三方向しかなく、とりあえずは、鐘撞堂脇の道に向かう。すぐに分岐。北東道と北西道の分岐はここらしい。左は「袋田の滝」、右は「袋田駅 滝本」となっている。頭が混乱した。生瀬滝に寄るなら北東で右のはず。何で左に袋田の滝なのか。方向感覚がまたおかしくなっているのかと思ったが、卍印の観音堂は後ろだ。間違ってはいない。地図を改めて見ると、「滝本」という地名が滝川の北にあり、袋田の滝の西側に位置している。考えたり、悩むのも面倒で、そのまま右に行く。
(月居城の石垣かねぇ)
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(せっかくだし、天狗党は歴史的には自分の興味外だが一応は見ておいてもいいだろう)
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(標識に合わせて下ったが、また標識が出て来て、つい、近道を選んだ。だが、頭の中ではこちらが天狗党だと思っている)
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(数字が下がる方向に行きたかったのだが、逆に上がる方向を歩くことになった。どういうわけ?)
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(紅葉のかけらもない山道)
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(なぜか袋田の滝の鑑瀑台が見えた)
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(さらに下る)
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(さっきから気になっていた立神山下の岩壁の穴。深く掘ってはいないようだ)
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(もうどうでもよい気分。ここに出た。男体山にはここからも行けるのか? あとでチェックしてみよう)
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(こんなのがあって)
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(その下には袋田の滝への遊歩道があった)
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堀切のようなところを通り、月居城の自然の石垣かなと想像しながら先に行くと、「袋田自然研究路」の看板が出てきて、今いるスポットは「⑩月居峠のたたかい」とあり、また分岐。左は「袋田温泉(旧県道)」、右は「袋田の滝(近道)」とあった。もう悩むこともなく右を下る。ご丁寧な研究路の図板もあって、⑩からは⑨、⑧と数字が下り、天狗党の乱の痕跡を辿るわけだ。すでに針葉樹の薄暗い道になり、紅葉は消えている。オッサンが登って来た。何気なく標識が見えた。何で⑫なんだ。数字は上がっている。もう何も感じなくなりかけていた。観音堂から道を間違えているようだ。正面に立神山が見え、観光客の流れが下に見え、石の階段となって、「月居山 男体山 登山口」の石標を見て、「かき氷」の暖簾とベンチの並ぶ食堂の通路に出てしまった。自分がどこにいるかは一目瞭然。袋田の滝の有料観瀑台が見えている。
(ついでだしと、袋田の滝に向かうと、生瀬滝の展望スポットに行くには、この階段を登るしかないようだ。遥か上まで急登になっているのであきらめた。)
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(袋田の滝へ)
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(袋田の滝)
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(モミジを入れてみた。光の加減が悪い時間帯だったか)
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ここまで下ってしまった以上、頭を整理してももう遅い。生瀬滝はあきらめ、せっかくだしと袋田の滝を観に行くしかないわけで、食堂の間を歩く。通路の先にある生瀬滝への鉄階段は今の自分にはとてつもなく急で、クネクネと遥か上まで続いている。体力が持ちそうにはない。おそらく、この階段を登れば、月居山の観音堂手前の上り坂に合流する形になっているのだろう。もしくは、ここに下るに至ってしまった、左右の方向感覚が鈍っていたどこかの道に出るのだろう。今さらに方向感覚の愚かさに嘆いても仕方がない。袋田の滝の300円有料観瀑台に入場するつもりはない。すでに滝のぞきから滝を見下ろしている。せめて吊橋だけは渡って、袋田の滝を観て駐車場に戻ることにしよう。観光客はわんさといた。ザックと登山靴のハイカーもいた。
(月居山に向かう階段を登ってしまった。このあたりでは、すでに左の手すりに手をかけている)
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(左に袋田の滝上段)
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金を払わずとも逆光になりつつある滝を眺め、ついでにモミジも入れることはできた。ほぼ満足。ここで帰りかけたが、これで終わりではもったいない。向こう見ずに、未練があった鉄の階段を上がってしまった。おそらく、途中で戻ることになるだろう。
折り返しの階段のステップ数を数えながら登った。そうでもしなければ気も紛れないし、体力も続かない。何度もこれが限界かと思うほどに階段は続き、月居山からのハイカーが下って来るのも増えた。とうとう手すりに手をかけてしまった。ステップ数に規則性はなかった。ハイカーではない軽装の物見遊山のジイチャン、バアチャンが下って来た。がっくりした。
(左の分岐に入る)
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(観瀑台から望む生瀬滝は遠過ぎる)
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(アップでかろうじて撮った)
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(上からだったら、ちょいと無理をすれば下に出られたかも)
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(戻って滝分岐から月居山ハイキングコースを見上げる。おそらく、次に月居山に行っても、ここを通ることはあるまい)
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(下る途中で袋田の滝)
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(鉄階段を下るだけ)
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階段から観える袋田の滝を眺めては休憩を入れ、ようやく左に生瀬滝の観瀑台の分岐になった。直進は月居山になっていて、相変わらず、急な階段が上に続いている。ここを登って月居山に向かうのは、時間は稼げて安心な歩きになるだろうがかなり難儀だろう。
観瀑台から眺める生瀬滝は遠過ぎだ。下に降りられやしないかと周囲を見回すが無理。フェンスで囲われ、越えたとしても懸垂下降になりそうだ。これで我慢するしかあるまい。滝上から下るなら何とかなったろうか。まぁ、危険を冒してまで近づきたくはない。息が整ったところで階段を下る。
(県道に向かう)
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(観光客が賑やかに往来していた)
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(駐車場に帰着。6時間半かけたわりにはさほどの疲れはない。満足歩きができたからだろう)
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人の流れに合わせて歩道を歩いて県道に出る。軒を連ねる土産店には人だかり。観光バスも並んでいる。平日なのに、紅葉の時季の観光地はこうも混雑しているのかの典型だ。なぜか鮎の塩焼きを扱っている店が多い。この鮎は那珂川産なのか滝川産なのか。鮎の塩焼きは好物だ。一串で済むわけがない。食べたかったが、観光地だし高いだろうなとやめた。買い食いしてしまったら、宇都宮ICから足尾経由の一般道帰りになる。
有料駐車場を過ぎると、歩いている人の姿は半分以上に減った。第一駐車場に到着。空きは増えていたが、3/4は埋まっている。大方がハイカーと思われる。後日、ヤマップやらヤマレコで確認すると、この日に月居山やら生瀬富士を歩いている人は多かったようだ。中には、団体さんが歩いていたと記された記事もあった。決して早い時間からの歩きではなかったが、団体さんとぶつからなかっただけでも幸いだった。月居山で多数のGB隊と同居する始末だったら紅葉の印象もまた半減したかもしれない。
もう2時15分だ。朝の犬の散歩はせずに出て来たから、早いとこ帰るべきだろうが、せっかく大子町までやって来た。予定通りに月待の滝に向かう。
(今回の歩き)
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この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
月待の滝は典型的な観光滝だった。見物客も結構いた。観るに値する滝ではあったが、残念なことに滝の上に光があたり、白っぽく見えたのは残念だった。名前の如く、月が出る夕暮れ時に観るのがベストなのかもしれない。ここは蕎麦屋の私有地らしく、むしろ手入れされたモミジだけはきれいだった。
(駐車地から車道を歩く。人だかりが月待の滝の入口。この滝は観光バスのコースらしい。団体さんが随分といた)
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(月待の滝を何枚か撮ったが、上は陽があたって白くなり、まともな滝の姿は撮れなかった)
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(滝裏に行けるとのことだった)
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(不動様ではないのが不思議ともいえる)
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(滝裏から)
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(足を濡らして右岸側に攀じ登った。それでもすっきりした滝は撮れなかった)
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(紅葉はきれいだったが)
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(もう夕暮れ時間になりつつある)
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(本日の名残り惜しさか)
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(ラストにしましょう。今日は赤だらけだったか)
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大子町第一駐車場(8:43)……コース上の生瀬富士(9:33)……茨城ジャンダルム先の生瀬富士(9:42)……コース上の生瀬富士(9:50)……立神山(10:05)……滝のぞき(10:49)……滝川に入って生瀬滝の落ち口近くに行って戻る(11:04~11:12)……ミス戻り(11:25)……滝川渉って月居山登山口(11:33)……月居観音堂(12:03)……月居山(12:09~12:48)……月居観音堂(12:58)……袋田の滝側の月居山登山口(13:19)……袋田の滝吊橋まで(13:26)……生瀬滝への登り(13:30)……生瀬滝展望台(13:44)……袋田の滝歩道(13:55)……駐車場(14:13)
予定では奥久慈男体山に行くつもりでいたが、ネット記事を眺めていると月居山が紅葉のピークを迎えているらしく、生瀬富士と合わせて周回することにした。生瀬富士を加えたのは、同山に「茨城ジャンダルム」という危なげな岩場の区間があるようで、冗談半分で興味があった。出っ張り部分のようだし、恐そうだったら寄らなきゃいいだけのことで、ジャンダルムを眺めただけでも月居山には行ける。過去に滑落事故はないようだ。だったら、自分でも大丈夫ではないのか? ヘルメットをかぶってまで歩いているハイカーもいないようだし(中にはいるだろうが)。ただ、「茨城ジャンダルム」としたのが、ユーモアなのか本気からなのかは現地で見てみないとわからない。いずれにしても、生瀬富士、月居山ともに歩くのは初めてで、計画時点で生瀬富士のことを「きせふじ」と思っていたほどだ。『てんきとくらす』で扱っている茨城県の山は12山しかない。一覧を見ればすぐに生瀬富士は特定できる。「な行」にあったとは気にも留めなかった。ちなみに「月居山」を「つきおれ」と知ったのは先週のことで、それまではそのままに「つきおり」だった。特殊な人名、地名の読み間違いは失礼にはあたらないが、人前で話したり、記したりするのはやはり恥ずかしい。
(駐車場から。奥の小さいのが生瀬富士で、手前が立神山らしい)
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大子町は遠かった。6時に家を出たが、ナビをセットすると3時間以上かかる。それも矢板インター経由だった。矢板からの一般道がとにかく長い。それでも一般道で時間を稼いだから2時間半少々で着きはしたが、軽自動車だったから身体が窮屈だった。別に理由もなく町営の第二駐車場に入るとガラガラ。第一も空いているんじゃないのかと第一に向かったら、8時半過ぎの時点で4台くらいの空きしかなかった。大方の利用者が登山目的のようだ。ハイカー姿が目立った。この時間に袋田の滝に行く方はそんなに多くはあるまい。
(県道から標識にしたがって離れる)
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(ほどなく山道になる。傾斜も緩く歩きやすい)
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(見上げると色づきが濃くなっていて期待できそう)
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生瀬富士の登山口が何となくわからないままに歩き出すと、すぐに標識があった。前をオッサンが歩いていた。山道に入ってもしばらくは平坦だった。こういうところの歩きは得意だ。つい、オッサンを追い越してしまったら、今度は、オッサンが真後ろをヒタヒタとついて来る。歩きづらくて仕方がなく、登りになりかけたところで立ち止まって先行してもらう。「歩くペースがちょうど良い感じだったからくっついてしまいましたよ」なんて言っていたが、こちらはプレッシャーを感じる。オッサンから50m離れて歩いた。
オッサンの前を4人グループが歩いていた。途中で上着を脱ぎ始めた。こちらも汗ばんできていたので、上を脱ごうとしたら、先でオッサンも脱いでいたので、結局は、こちらがまた先行してしまった。この4人グループ、今日は月居山まで前後しながら歩くことになる。
(そして始まった)
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(点在といった感じだが、歩いていて気持ちが良い)
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(ロープが出てくる。さほどに急には感じなかった)
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(左方向、月待の滝まで6.1kmとは遠い。滝は後回しのドライブで)
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(次第に密になる)
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(停滞気味)
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ここまではさっぱりだったが、上に行くに連れて紅葉がきれいになった。タイミングとしてはちょうど良かったようだ。月居山の紅葉にばかり気をとられていたが、生瀬富士側も見頃で、結果としては、月居山よりも連続していてきれいだった。紅葉を楽しみながらでは歩きも遅くなる。途中、植林が左に出てくると、進行方向とは反対の左向きに「月待の滝6.1km」の標識を見かける。月待の滝は、帰りにドライブで観に行くつもりでいる。
岩場が目につくようになり、先が滞る。ほとんどが数人のグループなのだが、岩越えでは女性が慎重になってしまい、どうしても遅れる。下で登り終えるのを待っている状態が続く。後ろにも続いた。さっきのオッサンの姿も見える。今日のハイカーは平日にもかかわらずに多いようだ。
(生瀬富士山頂。正確には南峰か)
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(南峰から)
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ピークらしい岩場に立つと生瀬富士の手書き山名板があった。そして町で設置したらしい標識には「Mt.Namasefuji」とある。「この山、なませ富士というのか。きせ富士と思っていた」と独り言をぶつくさ言っていると、周囲のお二人から「なませ富士ですよ」と言われた。ここで気になった。この先、月居山方面に向かう際、ここからどちらに向かうのか。標識は見かけない。西からやって来て、北はジャンダルム。当然、絶壁側には下れない。南側にはロープが張られた急斜面が続いていた。ロープで塞がれていると理解した。だとすれば、ジャンダルム経由になるのだろうか。
(これがうわさの茨城ジャンダルム)
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(石はしっかりと岩にへばりついている)
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(生瀬富士の北峰ピークか)
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(ネットでよく見かける鉄のマーキングが落ちていた)
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(北峰からの眺め。彼とは月居山の登山口で再会した)
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(ジャンダルムを戻る)
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ここでジャンダルム渡りになる。すぐに見えているかと思ったら、手前にあるいくつかの大岩を越えないと見えないようだ。岩にはロープが掛けられている。前を何人かが向かっている。また滞った。さすがに恐いらしく、女性に先を譲られた。ありがたく先に行かせていただいた。うまい表現はできないが、ジャンダルムは幅広の蟻の戸渡りといったもので、長さは100mあるかどうかといったところだろう。すれ違いはできる。左右ともに切れてはいるがさほどに恐怖感はなかったし、浮石はなく、コンクリで固めたようになっていて歩きやすい。
どん詰まりに高さ3mほどのケルン状の小山があった。オニイちゃんが立って景色を眺めている(このオニイちゃんには月居山に登る際にも、同間隔で歩いていた)。自分も上がってみた。絶景とまではいかないが景色は良かった。ここも生瀬富士のピークらしく、つまりは、生瀬富士は双耳峰なのだろう。見た限り、この先に下るところはなかった。ジャンダルムを渡って大岩の下に戻った。件のオッサンがいた。聞いた。月居山にはどこを下ればいいんですかねと。「一旦戻って、分岐を標識に合わせて…」なんて言い出すから、方向が違うじゃないですかと応じると、「だって月待の滝に行くんでしょ」。「いや、月居山ですよ」。どうも、下で会話をした際、こちらの発声が不明瞭だったのか、月居と月待を聞き違えたらしい。手前ピークから南に下るのだそうだ。ロープが張ってましたけどと言うと、そこを下ればいいとのことだったが、スッキリしない。オッサンは地元なのか、よく来るのか知らないが、この辺に詳しく、月待の滝までは一部ヤブとのことだった。「月待の滝は後でドライブで寄りますよ」と言ったら笑われた。その後、このオッサンと会うことはなかった。
(南峰からここを下る。かなり急だ)
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(下る一方。気にはなったが、それ以上に気になったのが、この稜線沿いの紅葉)
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(同じく)
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(同じく)
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さて、南側ピークに戻って、ロープをよく見ると、ガード用のロープではなく、下に続くロープだった。かなり長い急坂になっている。この先、基本的には下りが続く。逆から登って来る方も結構いて、急なところもあり、逆歩きではつらいだろうなと思った。自分には、第一駐車場からの生瀬富士に至るコースはすこぶる楽だった。岩、岩での待ち時間が多かったので、かなりの休憩をとったからだろうか。
(少しの登り返しで小ピーク。立神山ではなかった)
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(次のピークが立神山)
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やたらと下るので、果たしてこの道でいいのかと気になりはしたが、右手にきれいな紅葉が続いていたので、さして深刻になるまでには至らず、ちょっとしたピークを登ると立神山の標識があったのでほっとした。この辺に来ると、出会う人もそんなに多くはなく(さりとて少ないわけでもない)、おそらくは、岩場があったから生瀬富士は流れが悪く、ハイカーが多いと思っただけのことかもしれない。立神山にはだれもいなかった。
立神山には「三角點」と記された標石があった。地図を広げて見た。生瀬富士も月居山にも三角点はなく、その間にもない。この標石は何だろう。そういえば、生瀬富士の南峰にも標石のようなものがあり、てっきり三角点とばかりに思っていた。文字が記されてはいたが確認はしていない。立神山のそれはしっかりと三角点になっている。かつては三角点で、今はなしということだろうか。
ところで、ここも含め、この先にも「月居山→」の標識は見かけない。あるのはあくまでも「袋田の滝→」だけだ。だから、自分のような初めて歩く者には、月居山まで行くとしてこれでいいのかと戸惑うところがあり、立神山にある方向指示標もまた例外に漏れず「袋田の滝→」だった。「月居山」が出てくるのは、袋田の滝の上の滝川を越えてから出てくる登山口標識からだった。
(また下る)
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(下り一方ではなく、登り返しの小ピークもいくつかある。大して苦労は要らない)
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(里からはかなり高いところを歩いている)
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またどんどん下る。傍らには補助ロープ。ハイキング道は落葉だらけで、その中には真っ赤なモミジの葉も混じっているのだが、これがまた滑る。今日はスパ地下にするかワークマンにするかで迷ったが、ジャンダルムもあるしと、ワークマンにしたのが失敗した。2回ほど滑って尻もちをついた。履物に迷ったのは瀑泉さんの記事は拝見していたからだ。逆方向ながらも滝川を越えるのに、川水が多かったらしく、奥さんをスパ地下履きの瀑泉さんがおんぶしたとあった。ジャンプは足の都合で不具合としても、昨日は雨が降ってもたいしたものでもなかろう。
(復活)
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(どうにも進まない)
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(さらにどんどん下っている。このまま月居山に行けずになってもかまわない気分状態)
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(月居山かと思う)
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(赤を入れてみた。逆光。それにしても赤だらけで黄色は少ない)
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(光も強すぎると鮮度がわかりづらいが、樹も含めた景色全体が赤くなっている)
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(これは最近の落葉だ)
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(これにはたまらなかった)
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(この間を下っている。さ迷いの感を覚えた)
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(赤だけか? と言いたくもなるが)
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(落葉もまた新鮮な色具合だ)
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下るに連れて、紅葉の中をさまよっているかのような気分になるのが不思議だ。途切れては現実に戻っても、次のさまよいが始まる。これは高ジョッキでも石尊山でも感じなかったことで、いつぞや篭岩山に行った際にも同じ感覚を味わった。茨城の山の紅葉は奥が深いようだ。これは褒め過ぎか? かもしれない。
4、5人のグループがやって来た。リーダー格らしいジイに話しかけられた。「ジャンダルム、行って来たんけー?」、「おらさ、イバラギジャンダルムっていうんけぇ、一度は見てみてぇと思ってやって来たんだー」。イントネーションからして茨城の方かと思ったが、敢えて聞きはしなかったが、栃木北部か福島南部のグループだろうか。余談。イントネーション、地元の話し言葉として面白かったのは足尾だった。足尾は栃木県でありながら、足尾線が走っていた関係か、日光よりも桐生に出る機会が多く、群馬弁混じりの栃木弁だった。今の若い人は方言丸出しでしゃべりはしないが、東京言葉を使っても、イントネーションで地が出てしまう。これは隠せない。どうでもいい話だったか。
(滝のぞき)
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(滝のぞきから袋田の滝)
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(同じく)
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このコースの楽しみは、ジャンダルムもさることながら、袋田の滝を上から見下ろせるというところにもあった。そのスポットは「滝のぞき」というらしい。下り続きでは、このまま町に出てしまうのではないのかといった心配はあったが、下っているわりには高度は維持しているようで、モミジが消えて右の展望が見えるところに出ると、右手の正面に月居山らしき高い峰が見え、町並みはかなり下に見えている。ネット記事を拾う限り、このコース歩きでの月居山への登りは階段もあってきついと大方に記されている。そのきつさは、左手の裾野付近が隠れていてよくはわからない。先に行けば何となくわかるかなと思っていると、手書きの標識に気づいた。それには「滝のぞき」とあった。
町で設置したアルミ板の標識はなく、あくまでも手書きの板だ。袋田の滝は真下になる。下は垂直になっている。柵やロープもない。大子町で知らんぷりを決め込んでいる以上は自己責任ということになる(それでいながら、町で設置した標識には「滝上展望台」とあった)。滝の大方は見えるものの、日陰ですっきりはしないし、水量もさほどではなく太目の糸状になっている。それでも真下の観瀑台の屋根だけは見下ろせた。覗き込む観光客の頭も見える。光の関係もあって、ここからの眺めでは判断はつかないが、滝の左右の岩壁の紅葉は、今の尾根を歩いている以上の色彩は欠いている。この袋田の滝は観光で観瀑台から正面に一度見たことがあるだけだ。もう30年以上前のこと。メインの目的は大洗でアンコウ鍋を食べることにあったから、ついでの滝の印象はあまりなく、デカイというだけだった。ちょうどの時季なのに氷瀑でもなかった。
(また下りになって)
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(滝の上流に出た)
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(貸し別荘らしい。あちらに行くのは避けたい)
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だれにも会わないままに先に下る。ようやく月居山の左裾野が見えてきた。見たところ、なだらかで、きつさはあまり感じない。どこに急登があるのだろう。あるとすれば山頂直下だろうか。下に川が見えてきた。もう落葉だらけになっている。滝川に着いた。ザックを背負った若い二人連れが川を前にして躊躇しているようだ。
(滝川を下る。生瀬滝の落ち口を見るつもりでいた)
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(ここまでで限界。沢靴なら先まで行けた)
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(戻る)
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(戻ったはいいが、何を勘違いしたのか、ここを上がり、右に行ってしまった)
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(道型とテープだけはあった。間違いに気づいて戻る)
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大きな勘違いをしていた。とんでもなく恥ずかしい方向音痴。ここでは、瀑泉さんのおんぶの記事記憶も消えている。自分がやったことを以下に記すとこうなる。ザックを岸にデポしてカメラだけ持ち、小さな板切れの橋を渡る。ワークマンに少し水が入った。かまわずに正面にそのまま向かわず、流れに合わせて右に下る。袋田の滝の上にある生瀬滝の落ち口を見ようとしたが、ズックでは無理なようで、ズックの限界で引き返す。そのまま板切れを渡ってザックを背負って、ここまで来た道の延長、つまりは川の右岸を先に歩いて行った。すでに二人連れの姿はない。なぜにそちらに行ったかというと、テープがあったからだけのことだが、これまでにもテープはあったが疎らだった。なぜ、こんなにテープが増えて続くのか不思議にもならなかった。ただ、道が急にヤブじみて細くなった。
かなり先まで行って、何となく変だなと思い、GPSを出して地図を確認した。あの川は渉って先に行くべきだったようだ。別荘みたいのが建っていたので、そちらは避け、見向きもしなかった。戻る。改めて板切れを渡った。別荘をまともに見ると、右側が歩けるようで、その先は広くなっている。行ってみると、右手に「月居山 生瀬滝⇒」の標識があった。別荘の前で、生瀬富士で見かけた4人グループが休んでいた。そのうちの一人はうらやましくもタバコをふかしていた。30分はタイムロスした。月居山の後は月待の滝以外に生瀬滝の予定もあったので、そのまま月居山に向かった。
(月居山登山口。いきなりの登りになっている)
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(先行のオニイちゃん。ジャンダルムから戻ったのはいっしょだった。こちらは30分のムダ歩きをしている。彼氏、鈍足か?)
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(そして階段になる。自分の歩幅には合っていた)
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(生瀬富士と立神山か? あるいは、駐車場から見えた生瀬富士は見えていないのかも。右峰の山肌の穴が気になった)
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対岸から見た限りは緩やかではあったが、確かに急だ。前をオニイちゃんがゆっくりと歩いている。自分と同じようなペースだ。たまに休んでは歩き出す。横顔がちらりと見えた。ジャンダルムの岩に立っていたオニイちゃんだった。彼氏の歩きに合わせよう。
階段が出てきて、右手に生瀬富士と立神山らしきピークが並んで見えた。写真を撮っていて気になった。立神岩の真下のむき出しの岩壁に穴がいくつか見える。どうやって穴まで下ったか、あるいは登ったかは窺い知れないが、あれは掘削の跡だろうか。鉱山でもあったのか。気になって帰宅後に調べたが、何も出てこなかった。
(階段の下り)
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(下って登ってこの小ピーク)
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(その先はどんどん下り)
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(月居山が近づく。目線からしてかなりの登りを強いられそうだ)
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下から声が聞こえて来た。振り返ると、4人グループ。休憩をゆっくりとって元気なはずだし、先行してもらおう。階段は延々と続いているわけではなく、平地もあってそんなところに階段はない。立ち止まって先に行ってもらった。そのうちに右手から歩道が上がって来る。袋田の滝から登るコースで、ここを下れば、途中で生瀬滝に寄り道できる歩道が分岐するはずだが、ここは月居山優先だ。そろそろ、色づきが復活し始めたから、このまま気分良く先に行きたい。
高台に出た。4人グループが休憩していた。結局、追い越した。前方にはオニイちゃんの姿が見える。下りになった。生瀬富士からの下りを体験していただけに、登り返しを想定するとあまり下りたくはない。下り途中で月居山が正面に見えた。どうもかなり下りそうだ。
(月居観音堂)
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(石仏群)
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(鐘撞堂)
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(山門付きだった)
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(月居城の案内板)
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鞍部らしきところに出た。これから登りかとため息が出る。ここから階段がある様子はない。オニイちゃんが左、右へと登っている。お堂があった。解説板には月居観音とある。「運慶作と伝えられる」観音像が祀られているとのこと。残念ながら中には入れないが、入れたとしても、観音像があるとは思えない。運慶だとしたら重文級だろう。山の中のお堂にそのままにしておくわけがない。そして石仏がずらりと10体以上。他に石灯篭、墓石のようなものもある。気持ちが安らぐスポットだ。門が見えたので近づくと鐘撞堂まであった。
では、ラストの登りに入るかと登り口に向かうと解説板。月居山の歴史については事前に調べていた。山頂にはその昔、月居城があった。袋田氏の築城で袋田城とも言われたらしい。関ヶ原の戦いの際、常陸国の大半を支配する佐竹氏は戦いには参加せず、心情的に西軍に与した。戦後処理で佐竹氏は半分未満の石高にされて辺地の秋田に飛ばされる。月居城は代々、佐竹氏の家臣の居城であったため、城主を失った月居城は廃城になった。そんな知識はあった。解説板にも同じようなことが記されていた。2年前、水戸で佐竹展をやったことがある。わざわざ見に行った。その時に登った宝篋山はあくまでもついでだった。自分のルーツはマタギと信じているから、佐竹氏とは何も関係はないが、秋田というだけでつい気になってしまう。月居山に決めたのはそんなところにもある。余談だが、I県に美人があまりいないのは、佐竹の殿様が美人をごっそり秋田に連れて行ったからだという邪説がある。これには笑ってしまう。
(最後の登りと覚悟して登った)
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(階段は消えた。さほどの傾斜でもなかった)
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(いよいよ出てきた。青葉がまだ多い)
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(山頂直下。ロープに頼るまでもない)
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(月居山山頂。正確に言えば月居城跡に到着)
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(この標識、左向きに「月居山」とあるのが気になった)
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(ここが月居山の山頂だ)
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意外にあっさりと山頂に着いてしまった。やはり、きついと言われているのは観音堂までの階段登りのようだ。それを過ぎると、ロープ場はあるものの巻き道がある。自分にはさほどに急には感じなかったのが正直のところで、階段の幅も無理なく一歩・一段ずつ登れたから苦情を寄せるコメントは何もない。
(戻ってしばらく紅葉を楽しむ)
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(同じく)
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(同じく)
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(同じく。むせかえる)
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(同じく。ここも樹が赤くなっている)
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(同じく)
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(見上げて)
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(ベンチは使えそうにないので、赤い絨毯にシートを敷いてランチ)
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山頂広場は黄、赤、緑でむせかえっていた。緑が黄赤に転じるのも時間の問題だろう。広場には「月居城跡」の石碑と標識が置かれている。だが、月居山の山名板が見あたらない。山頂は果たしてこれでいいのかと小高い丘に行ってみると、手書きの山名板があり、主図根点の石標があった。これを確認して広場に戻る。自分以外に5人いるだけだ。食事をしていたり、オニイちゃんのように、うろうろと紅葉を眺めていたりしている。自分もまたあっちへ行ったり、こっちに来たりの紅葉見物。飽きない。もういいかというところで、草むらにシートを敷いてランチにした。ベンチが2つほどあるが使用中だ。その間に4人グループと数人が登って来て賑やかになってきた。また、高ジョッキと石尊山との比較になってしまうが、両山ともに山頂は狭く、紅葉もまた山頂までは押し寄せていなかった。ここは違う。紅葉を眺めながらのランチ。食べる物は相変わらずの菓子パンだが至福の時を味わえる。来年また来よう。そんなことを思いながらアイコスを取り出す。間違ってステックの吸い口を先に入れてしまい、取り出そうとしたら中で折れて詰まってしまった。爪楊枝でもあればほじくれるがそんなものはない。満喫のはずの一服はかなわなかった。
(未練がましく)
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(立ち去りがたい)
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(これではなあ)
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(また見上げた)
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(同じく)
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(近づいて。数日後には真っ赤だろう)
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(ハイカーも多くなってきた)
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(ではオサラバ。忘れたり、気が変わらなければまた来年)
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(下る)
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腹を満たして、さてと、未練を残しつつ広場をもう一周して紅葉を確かめながら、下りはどうしようと考える。地図を見ると、4ルートあるが、すべて観音堂に戻ってから始まる。1ルートは登って来たコースだから対象外。それでいて、山頂から西に尾根伝いに下る踏み跡があった。これは、観音堂から西に下る破線に合流するものと思われる。ダイレクトに駐車場に向かうにはよいだろうが、生瀬滝を観るつもりがあるから、北に下る2本の破線コースの東側がいいだろう。結果として、地図にはないが、観音堂に着く間に合流した袋田の滝からのコースを下ればよかったようだが、そのコースは地図にも、地元発行のハイキングコースにも記されていないのでパスだが(それでいて、道型はしっかりとあったから結構、利用されているのだろう)、観音堂からの登り返しがつらい。とりあえずは観音堂まで下る。
観音堂に出る。繰り返しになるが、地図上はここから破線道が2本出ていて、右を選択すればよいだけのことだが、道の分岐はない。探し回ったが、月居山に登る道、往路で通った道、鐘撞堂の脇を通る道の三方向しかなく、とりあえずは、鐘撞堂脇の道に向かう。すぐに分岐。北東道と北西道の分岐はここらしい。左は「袋田の滝」、右は「袋田駅 滝本」となっている。頭が混乱した。生瀬滝に寄るなら北東で右のはず。何で左に袋田の滝なのか。方向感覚がまたおかしくなっているのかと思ったが、卍印の観音堂は後ろだ。間違ってはいない。地図を改めて見ると、「滝本」という地名が滝川の北にあり、袋田の滝の西側に位置している。考えたり、悩むのも面倒で、そのまま右に行く。
(月居城の石垣かねぇ)
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(せっかくだし、天狗党は歴史的には自分の興味外だが一応は見ておいてもいいだろう)
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(標識に合わせて下ったが、また標識が出て来て、つい、近道を選んだ。だが、頭の中ではこちらが天狗党だと思っている)
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(数字が下がる方向に行きたかったのだが、逆に上がる方向を歩くことになった。どういうわけ?)
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(紅葉のかけらもない山道)
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(なぜか袋田の滝の鑑瀑台が見えた)
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(さらに下る)
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(さっきから気になっていた立神山下の岩壁の穴。深く掘ってはいないようだ)
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(もうどうでもよい気分。ここに出た。男体山にはここからも行けるのか? あとでチェックしてみよう)
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(こんなのがあって)
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(その下には袋田の滝への遊歩道があった)
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堀切のようなところを通り、月居城の自然の石垣かなと想像しながら先に行くと、「袋田自然研究路」の看板が出てきて、今いるスポットは「⑩月居峠のたたかい」とあり、また分岐。左は「袋田温泉(旧県道)」、右は「袋田の滝(近道)」とあった。もう悩むこともなく右を下る。ご丁寧な研究路の図板もあって、⑩からは⑨、⑧と数字が下り、天狗党の乱の痕跡を辿るわけだ。すでに針葉樹の薄暗い道になり、紅葉は消えている。オッサンが登って来た。何気なく標識が見えた。何で⑫なんだ。数字は上がっている。もう何も感じなくなりかけていた。観音堂から道を間違えているようだ。正面に立神山が見え、観光客の流れが下に見え、石の階段となって、「月居山 男体山 登山口」の石標を見て、「かき氷」の暖簾とベンチの並ぶ食堂の通路に出てしまった。自分がどこにいるかは一目瞭然。袋田の滝の有料観瀑台が見えている。
(ついでだしと、袋田の滝に向かうと、生瀬滝の展望スポットに行くには、この階段を登るしかないようだ。遥か上まで急登になっているのであきらめた。)
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(袋田の滝へ)
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(袋田の滝)
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(モミジを入れてみた。光の加減が悪い時間帯だったか)
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ここまで下ってしまった以上、頭を整理してももう遅い。生瀬滝はあきらめ、せっかくだしと袋田の滝を観に行くしかないわけで、食堂の間を歩く。通路の先にある生瀬滝への鉄階段は今の自分にはとてつもなく急で、クネクネと遥か上まで続いている。体力が持ちそうにはない。おそらく、この階段を登れば、月居山の観音堂手前の上り坂に合流する形になっているのだろう。もしくは、ここに下るに至ってしまった、左右の方向感覚が鈍っていたどこかの道に出るのだろう。今さらに方向感覚の愚かさに嘆いても仕方がない。袋田の滝の300円有料観瀑台に入場するつもりはない。すでに滝のぞきから滝を見下ろしている。せめて吊橋だけは渡って、袋田の滝を観て駐車場に戻ることにしよう。観光客はわんさといた。ザックと登山靴のハイカーもいた。
(月居山に向かう階段を登ってしまった。このあたりでは、すでに左の手すりに手をかけている)
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(左に袋田の滝上段)
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金を払わずとも逆光になりつつある滝を眺め、ついでにモミジも入れることはできた。ほぼ満足。ここで帰りかけたが、これで終わりではもったいない。向こう見ずに、未練があった鉄の階段を上がってしまった。おそらく、途中で戻ることになるだろう。
折り返しの階段のステップ数を数えながら登った。そうでもしなければ気も紛れないし、体力も続かない。何度もこれが限界かと思うほどに階段は続き、月居山からのハイカーが下って来るのも増えた。とうとう手すりに手をかけてしまった。ステップ数に規則性はなかった。ハイカーではない軽装の物見遊山のジイチャン、バアチャンが下って来た。がっくりした。
(左の分岐に入る)
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(観瀑台から望む生瀬滝は遠過ぎる)
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(アップでかろうじて撮った)
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(上からだったら、ちょいと無理をすれば下に出られたかも)
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(戻って滝分岐から月居山ハイキングコースを見上げる。おそらく、次に月居山に行っても、ここを通ることはあるまい)
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(下る途中で袋田の滝)
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(鉄階段を下るだけ)
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階段から観える袋田の滝を眺めては休憩を入れ、ようやく左に生瀬滝の観瀑台の分岐になった。直進は月居山になっていて、相変わらず、急な階段が上に続いている。ここを登って月居山に向かうのは、時間は稼げて安心な歩きになるだろうがかなり難儀だろう。
観瀑台から眺める生瀬滝は遠過ぎだ。下に降りられやしないかと周囲を見回すが無理。フェンスで囲われ、越えたとしても懸垂下降になりそうだ。これで我慢するしかあるまい。滝上から下るなら何とかなったろうか。まぁ、危険を冒してまで近づきたくはない。息が整ったところで階段を下る。
(県道に向かう)
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(観光客が賑やかに往来していた)
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(駐車場に帰着。6時間半かけたわりにはさほどの疲れはない。満足歩きができたからだろう)
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人の流れに合わせて歩道を歩いて県道に出る。軒を連ねる土産店には人だかり。観光バスも並んでいる。平日なのに、紅葉の時季の観光地はこうも混雑しているのかの典型だ。なぜか鮎の塩焼きを扱っている店が多い。この鮎は那珂川産なのか滝川産なのか。鮎の塩焼きは好物だ。一串で済むわけがない。食べたかったが、観光地だし高いだろうなとやめた。買い食いしてしまったら、宇都宮ICから足尾経由の一般道帰りになる。
有料駐車場を過ぎると、歩いている人の姿は半分以上に減った。第一駐車場に到着。空きは増えていたが、3/4は埋まっている。大方がハイカーと思われる。後日、ヤマップやらヤマレコで確認すると、この日に月居山やら生瀬富士を歩いている人は多かったようだ。中には、団体さんが歩いていたと記された記事もあった。決して早い時間からの歩きではなかったが、団体さんとぶつからなかっただけでも幸いだった。月居山で多数のGB隊と同居する始末だったら紅葉の印象もまた半減したかもしれない。
もう2時15分だ。朝の犬の散歩はせずに出て来たから、早いとこ帰るべきだろうが、せっかく大子町までやって来た。予定通りに月待の滝に向かう。
(今回の歩き)
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この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
月待の滝は典型的な観光滝だった。見物客も結構いた。観るに値する滝ではあったが、残念なことに滝の上に光があたり、白っぽく見えたのは残念だった。名前の如く、月が出る夕暮れ時に観るのがベストなのかもしれない。ここは蕎麦屋の私有地らしく、むしろ手入れされたモミジだけはきれいだった。
(駐車地から車道を歩く。人だかりが月待の滝の入口。この滝は観光バスのコースらしい。団体さんが随分といた)
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(月待の滝を何枚か撮ったが、上は陽があたって白くなり、まともな滝の姿は撮れなかった)
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(滝裏に行けるとのことだった)
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(不動様ではないのが不思議ともいえる)
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(滝裏から)
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(足を濡らして右岸側に攀じ登った。それでもすっきりした滝は撮れなかった)
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(紅葉はきれいだったが)
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(もう夕暮れ時間になりつつある)
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(本日の名残り惜しさか)
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(ラストにしましょう。今日は赤だらけだったか)
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事前に、瀑泉さんの記事を拝見して出かけました。生瀬富士の北峰から下られたという記憶がかすかにあったのですが、北峰の岩に立った際、それに続く道があるかどうかを調べるのを忘れてしまい、改めて戻ってから確認だけでもしておくべきだったと後悔しています。
いずれにしても、この界隈を歩くのは初めてでしたから、先ずは月居山をかけてオーソドックスに一般道を歩いて体験しただけでもよかったと思っています。
県北トレイルもかずま下りも含め、次回以降の課題にしておきます。早速出かけるにしては、大子町もちょっと遠いですから。
やはり、今回残念だったことは生瀬滝を間近に、それも真下から観られなかったことです。滝川を下った際、降りられるような気はしたのですが、沢靴でもなかったし、さりとて岸辺を足を濡らさずに歩けそうにもなかった。心残りですね。遠くから眺めて我慢したのはがっかりでした。
今回の歩きで、この界隈にはかなり興味を持ちました。課題が随分ありそうで、紅葉にかけずとも、ぼちぼちですかね。
確かにクリーンヒットでした。ここまではと期待もしていませんでしたし、紅葉は月居山で本番のつもりでいましたし。
ぶなじろうさんが生瀬富士コースはいまいちとおっしゃるのは、小難しルートで歩こうとされたからではないですか。第一駐車場からでしたら、すぐに標識も目に付くし、後は一本道で紛らわしいところもなく辿り着きますよ。
紅葉がきれいなところはどこにもあるでしょうけど、毎年、当たりはずれもある。今回の歩きは、天気さえ良ければ、必ず当たるといった気がいたします。
袋田の紅葉、堪能されたみたいですネ。
立神山の先の滝本へ下る峠は「かずま」と呼ばれていて、奥久慈で最も赤が多い場所なんですヨ。ちなみに、かずまから滝本へ下る道の上部も良い赤があるので、機会があればまた訪ねてみてください。
それと茨城ジャンダルムかは知りませんが「生瀬富士の岩稜」、北峰の先は薄いながらも踏み跡があって、下に進むほど明確になり生瀬の集落に降りられますヨ。
ちなみに降りた先には鳥居があって、自分が最初に訪ねた十数年前は北峰に注連縄だか梵天が飾られたから、少なくとも生瀬の人たちの信仰の対象だったようです。
それと、生瀬富士山頂で「月待の滝」の話ですが、此れは月待の滝から生瀬富士へと連なる「大子アルプス・鋸21峰」のことで、以前、みー猫さんが歩かれてますが、ヤブ山だった処を茨城県が「県北トレイル」として最近整備したんですワ。まぁ、そのおかげで生瀬富士も一躍脚光を浴びることになったみたいですケドね。
それと「生瀬の滝」へは、そのまま滝川を下っていただければよかったんですケドね。
まぁ、滝頭に着いた処で、左岸側の山に逃げれば踏み跡があって、特に危険個所も無く下流側に抜けられます。自分のブログにないか調べたらブログを始める前の2008年に訪ねていました。
これはクリーンヒットですね!奥久慈はカエデの生育に向いているのか、よそでは見られないほど密生していて、当たると圧巻ですねぇ~。それも真っ赤になるやつが多いですね。たそがれさんが、来年も・・・というくらいなので、相当の景観だったのでしょう。
自分は、茨城在住のyamasanpoさん、セとナさんの記録を参考に奥久慈を何回か歩いたのですが、生瀬富士周辺はイマイチルートがわからなくて、これまで未訪です。生瀬富士、行ってみたいですね。