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◎2020年1月11日(土)
鳥居峠(9:10)……小地蔵岳(10:15~10:24)……長七郎山(10:43~10:47)……小沼分岐(11:01)……茶ノ木畑峠分岐(11:24~11:34)……オトギの森看板(12:01)……小沼分岐(12:35)……小沼・休憩(12:39~12:47)……小沼対岸(12:57~13:06)……鳥居峠(13:30)
久しぶりに雪の山を歩きたくなった。ハイトスさんの黒檜山の記事を見たからかもしれない。ハードな歩きは望まないから近所で済ませたい。若干の雪の量で十分。となるとやはり赤城山しかなくなる。定番の黒檜山から駒ヶ岳か、鍋割山・荒山コースがオーソドックスだろうが、正直なところ、ツボ足でも歩けそうなトレースばっちりでハイカーが多いところは避けたい。地図を見て決めたのは人気がなさげな長七郎山。それも小地蔵岳を含めてのコース。ここなら、ハイカーも少ないだろうし、自分の記憶では小地蔵岳には行ったことがないような気がする。
雪山歩きとはいえ、お仕着せのコースを律義に歩くつもりはさらさらない。裾野を巻きながら登る長七郎山コースよりも、鳥居峠から直に小地蔵岳に登れるんじゃないのか。地図上の、桐生市と前橋市の市境になるあやふやな尾根というか斜面を登ってみようかといった考えが浮かぶ。出発地点は鳥居峠。この市境ルート、ブログ仲間の何人かが歩いていたような気がする。へぇ、そんなのもありかで記憶からはほとんど遠のいていた。その時点での予定では、小地蔵岳、長七郎山、地蔵岳の周回だった。今回は事前調べもまったくしなかった。鳥居峠まで車で入れるかも確認していない。赤城山だしとなめてかかったところがある。
今日の天気予報は、昨日までは朝から良天だったのが、出がけに確認すると、午前中は曇りで昼から晴れに変わっていた。それでいて天気がよろしくない予報だった明日は朝から晴れになってしまっている。昨晩のうちに準備は済ませていたから、このまま行くことにする。家を出たのは、犬の散歩後の7時半をとうに過ぎていた。これは計算づくで、赤城道路の凍結路の運転が恐かったからだ。往路の上りはいいが、大沼近くになれば下りになる。その下りが凍結していれば、ジムニーを四駆にして2NDにしたとてブレーキを踏めばふらつく。赤城道路ではないが、過去のトラウマがいくつかある。車の向きが反転したこともあった。とにかく、雪道はともかく、凍結路の運転は苦手だし、帰路とて、下り一辺倒だから、昼から晴れるのなら、晴れてしばらく経って凍結が緩んでから下りたい。そんな悪条件がなかったら、のんびりと犬の散歩なんかせずにさっさと出かける。
赤城道路に入ると、後ろから車が近づいて来た。嫌なパターンだ。先に行ってもらおうと姫百合駐車場に入り込む。用事もなかったが、せっかくだから、トイレを使う。小用。したくもないのに無理に出そうとするから時間もかかった。別に前立腺に異常があるわけではない。今日は最後まで大の方のトラブルはなかった。ここの駐車場には車は7~8台。雪が少ないような気がする。準備をしているハイカーが数人いた。改めて赤城道路に入って大沼に向かう。後続車がいるにはいた。バリバリの四駆もいる。だが、距離も離れているし、大方は大洞か黒檜の駐車場に向かう。分岐する鳥居峠まで来る車はなかった。鳥居峠まで来られるとは思いもしなかった。どうせ途中で通行止めだろうと。
(鳥居峠から覚満淵。奥に大沼。ぼんやりしている)
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鳥居峠の駐車場はかなりの凍結で凸凹になっている。外に出ると風はない。途中の電光掲示では気温-4℃になっていたが、さほどに寒くはない。実は、先日、ワークマンで<イージス360リフレクト透湿防水防寒ジャケット>なる上着を5,800円で買った。山でも使えると思ったからだ。レジにいたオジサンが「これ、暖かいですよ~」と言っていたが、それを今回、試し着するつもりでいた。風がないのでは暑苦しくなるだけだろうとやめた。代わりに、ここまで着てきていた、これまたワークマンの<高撥水マウンテンパーカー>3,900円を着たままで歩くことにする。最近、ワークマン製品はユニクロ並みに評判が高い。12本爪は大げさなので8本爪のアイゼンを付ける。靴は普通の革靴。雪山用ではない。結局、これで足がずっと冷たいままになる。ただ、小地蔵岳までの区間はアイゼンではなくワカンが正解だった。まさかと思っていたので、ワカンの準備はしてこなかったし、持ってきたとしても、おそらく必要あるまいと車の中に残したろう。
峠にある売店。ここは休業しているが、ビールの看板が気になり、いつも何屋なのか知らないままなのだが、そこの関係者だろうか、オジサンが軽トラでやって来て、その辺をぶらつきながら覚満淵を眺めている。覚満淵方面はどんよりした雲に覆われている。このオジサンと少しおしゃべりをし、ここから小地蔵岳に直に登るつもりだと言ったら、「雪があるから、それもいいかもな」と言われたが、無雪期ならヤブがひどいということだろうか。
ネエチャンが下からやって来た。駐車場を通り抜け、駕山方面に向かおうとして荷をおろし、汗ばんだのか上着を脱いで登って行った。単独のオバチャンや妙齢はよく見かけるが、最近はネエチャンの単独が増えた。先日の大蔵高丸にいた単独もネエチャンだった。決まってブスはいない。一昔前なら、単独のネエチャンもまた、あんたなら一人で歩いていても大丈夫だろうなと思うようなタイプが多かった。今は、そういうネエチャンはグループ歩きに入り込んで目立たなくなってしまった。
話は変わるが、瀑泉さんが鳥居峠から駒ヶ岳、黒檜山を歩かれたらしいが、この日だったかどうかは不明。同日だったとしたら、時間的にこのネエチャンのおそらくは前を歩かれていたのだろう。車は大洞か小沼、黒檜登山口に置いたのではないか。少なくとも峠の駐車場に長居したのは自分の車でしかなかった。
(ここを長七郎山にちょっと上がって左に移動して斜面に出る。ここから長七郎山に行くには遠回りで、やがては小沼駐車場から上って来る登山道に合流する。後で知ったこと)
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(出だしはさして埋まらず、まだ歩きやすかった。それも束の間)
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(こんなどんよりした中では霧氷も映えない)
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一旦、長七郎山へのコースに入り込む。数人しか歩いた跡はなく、このままでも雪に結構埋まりそうだ。意外と雪は多かった。すぐに左にずれて、斜面直登に入る。明瞭な尾根型はなく、どこを歩いても、いずれは小地蔵岳に至る。コンパスを使う必要もない。当然、物好きなハイカーはいないノートレース。期待していたわけでもないが少しは期待していた。
最初のうちはまだ歩きやすかった。たまにズボリとヒザにくる程度だった。そのうち数日前らしい足型も見かけて追いかけたが、たちまちのうちに消えた。そのうちにズボズボ歩きになる。足首程度ならまだしも、ヒザ越えのズボズボはつらい。
鳥居峠の標高は1392mらしい。向かう小地蔵岳は1574m。引き算すればたかが182m。30分もかからずに登れるはずだ。まして雪でヤブは雪の下になっている。断続的にヒザまできた。右手から、登山道を歩いているらしきハイカーの声も聞こえたが、そのうちに遠くなった。
(古いテープをたまに見つける。ここは上りよりも下りが難しいだろう)
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(踏み抜きも頻発する)
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(こちら側を歩きたいが、雪はかなり深いだろう)
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一歩一歩が重い。左手は樹林帯から抜け出した斜面になっている。そちらに行くと、ヒザ高では済むまい。このまま樹林の中を行った方が賢明だろう。それでも腰まで踏み抜くこともあって、遅々として先に進まない。これに吹雪が加わったら、泣きが出るだろうが、今のところは無風のまま。ガスはあるが50m先は見えている。ここで前述の後悔。ワカンだったらサクサクと登れたろう。まして、雪の表面だけは固い。何度も、樹林から外れた左を歩きたい気持ちにかられたが、ここはこらえた。
(なだらかになったから山頂は間もなくだろう)
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(素っ気ない小地蔵岳山頂)
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急斜面が続く。樹林とはいっても雑木の林の中だが、樹々はまばらになり、斜面もいくらかなだらかになり、左側の樹のない斜面も合流した。何となく、上に見えている平地がピーク、つまりは小地蔵岳かと思ったら、まさにそうで、反対側の南側からの足跡がそこまで続いている。小地蔵岳到着。
出発から小一時間ちょいながらもかなりバテバテになった。これは足の筋力の衰えでしかないが、まさか急斜面ラッセルになるとは思わなかった。まだ、雪のない時季のヤブの中を歩いていた方がやさしい歩きだったかもしれない。
素っ気ない山頂だ。ただの1574m標高点ピーク。一応、けじめとして吸いたくもないタバコを一服つける。腰掛けもなく立ったまま。山名板がいくつかあるだけの狭い平地。わざわざこんな山に「小地蔵岳」なんて名前を付けずともと思ったが、この先の長七郎山からここまでわざわざ来る方もいる。山名がある以上はこだわる方もいるのだろうが、だったら、鳥居峠から直に歩けばいいだろうに。何やかや記しても、つまりは、ラッセルして登ったウラミ、ツラミでしかなく、明瞭なトレースがあったら、そんなことは思わず、同類もいるものだと済ます。ちなみに、やはり、この小地蔵岳に登ったのは初めてのようだ。ここでメガネをサングラスに取り替える。
(真っ白で見えづらいが、ここから数人分の往復トレースがばっちりだった)
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(あ~ぁとため息。空が青かったらどんなにキラキラしているだろうか)
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(林道のようなところに出た)
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長七郎山に向かう。黒檜山ほどに歩かれてはいないが、数人分のトレースがあるだけでも何と楽なことか。こちらは踏み抜きの跡もなく、積雪は少ないようだ。傾斜も緩い下り。ここは霧氷が連なり、晴れていたら見ていても飽きないし時間がとられるかもしれない。
雪でしっかりと確認はできないが、林道のようなものが横切る。地図を見ると、確かに実線が通っていて、すぐそこで終点になっている。長七郎山に初めて登ったわけではない。以前、大猿公園から登ったことはある。だから、こんな反対側の林道の存在は知らない。地図では、この林道を下ると小沼の北側で県道に合流する。30分も歩けば済みそうだ。それを知ったら、長七郎山も急に俗っぽい山に感じてしまった。地図を見なきゃよかった。だが、考えてみれば、赤城山域そのものがポピュラーだし、ここで改めて嘆いても仕方がない。
(長七郎山はまっすぐ)
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(路地のようなところを歩く。雪庇もどきが張り出しているところもある)
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(ようやく陽が出てくる)
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(だれにも会わず、歩いていて気分はなかなか。晴れていたら最高だろう)
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小地蔵岳、小沼、長七郎山の三叉路を長七郎山方面に行く。トレースはさらに明瞭になった。陽がぼんやりとだが出てきた。相変わらず風もなく歩いていて雰囲気が良い。寒さはまったく感じず足が冷たいだけ。踏み抜きもない。ストック先が雪下の岩にあたる音であれっと思い、ストックを見ると、二本ともに先端のゴムキャップが外れて落としていた。何でこうも外れやすいのだろう。消耗品と思い、その都度に買うが、決して安くはない。「落ちにくい先ゴム」というのをアマゾンで見つけ、これが一個送料込みの880円。都合三回・三個購入して、現在庫は0。「山に落としてゴミにしない環境に配慮した先ゴム」のキャッチはどうしたのか、山のゴミにしてしまった。ゴミどころか2,640円を捨てたことにもなる。
(長七郎山山頂)
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(三角点)
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(おさらば。何も見えないのでは長居してもしょうがない。この山には石仏、石碑の類はないようだ。ところで、長七郎山の山名の由来は何だ? 人名からだろうけど。時代劇にあった松平長七郎か?)
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三角点を確認して長七郎山。だれもいない。真っ白で殺風景な山頂だ。さて、ここからどうしよう。地図を出す。小地蔵岳への登りで本日の体力の大方は消費している。小沼に下って地蔵岳への登り返し150mはトレース頼りとしてもきつそうだ。雪山を楽しんだからこれで十分だろうといった思いも出てくる。だが、このまま小沼に下って鳥居峠に戻ったのでは、まだ陽が十分に出ていない状態では凍結路のままだ。ぼんやりの陽と午後から晴れる天気予報を考えれば、時間つぶしをするしかない。
石井スポーツからもらってきた赤城山トレッキングマップを取り出す。「オトギの森」に寄り道という手もあるか。改めて地形図を広げる。実線だから、おそらく林道だろう。周回して戻る途中から破線になって山道。これでいくか。一時間くらいは時間稼ぎになって、そのうちに陽が出て青空にもなるだろう。
(賽の河原)
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下って賽の河原。雪で何も見えず、ただの開けた広場。賽は雪の下。とにかく陽がぼんやりと浮いているだけの白い世界になっていて、これはこれで良い風情だ。ここに雪が降り出したらもっと良かったかもしれない。視界が悪くなっても遭難することはあるまい。楽なコースになると、逆に悪条件を期待してしまう。愚かな思考は相変わらずだ。
樹林帯の下りになった。ここまでだれとも会うこともなかった。ここで小用を足そうとして、ズボンのチャックをおろした。突然、下からオッサンAが登ってきた。慌ててチャック開きはそのままに、幸いにも中味はまだ出してはおらず、中でつまんだだけだった。どういうポーズをとればいいのか瞬時悩んだが、ここで不自然な仕草もできず、仕方なくザックをおろして、何かを出すふりを装ってコンニチワ。オッサンの目付きは別にいぶかしむものではなかった。小でよかった。大なら言い訳も取り繕いもできやしない。しゃがんだままで固まるしかなく、コンニチワどころではない。下はカーブになっているのに気づかず、安心しきったのが失敗だった。小用は先に繰り越し、ザックを背負い、下りながらチャックを締めた。
(分岐。オトギの森は左だが、ここは二段になっていて、往路は上段、復路は下段を使った)
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分岐に出た。オトギの森を指す標識は二方向。一方は500mで片方は1000mとある。どうせ時間稼ぎだ。1000mを選ぶ。どうせ周回だし、またここに戻ることになる。そんなことよりも気になったのは、標識に記された英語、中国語、ハングルだが、英語で「Fairy Tale Forest」とあるのはうなずけるが、漢字で「神話之森林」となると首を傾げる。神話といったら神様の話。赤城の神様が水を欲しさに日光の水(中禅寺湖)を盗みに使いを出し、日光の神様の使いとバトルし、その間に手で水をすくって投げてできたのが赤城の大沼と小沼。その水を取り返そうと、日光の大蛇と赤城のムカデ群が戦場ヶ原で戦ったという話は薄らぼんやりと知っている。また、弘法大師が赤城山で開山しようとしたら、赤城山の神様に邪魔されたので、袈裟丸山で袈裟を丸めてすごすごと立ち去ったという話も袈裟丸山の賽の河原の看板に記されている。そんな神話にひそんだエピソードでもこのオトギの森にあるのか。もしくは「神話之森林」とある以上は、何らかの神様がらみの伝承でもあるのかと思ったが、ヒマつぶしに後で調べてもそんなものはなかった。日本語は正確に使いたいものだ。「神話」と「おとぎ話」はまったく違う。別に自分が怒っているわけではない。おとぎ話としても、どんな物語があったのか、かなり興味があったので調べても結局わからないままだった。
ここで1000mからやって来るオッサンBに出会う。挨拶だけで終わったが、この時点では、物好きなオッサンもいるものだなで終わった。オトギの森周回だとばかりに思っていたが、500m側に足跡はない。いったいどこから歩いて来たのか。
(雪のかぶった林道。これがなかなかの曲者で、オッサンBの足跡があるのにズボズボだった)
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(折り返し地点。茶ノ木畑峠は直進する。ここに来るまでに疲れている)
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オッサンBの足跡が続いている。ラッキーと思ったが、見た目には自分よりも体重が重そうだったわりには足跡は浅く、これを辿るとズボズボとヒザまで来る。こちらはやや下りになる。その違いなのか。とにかく雪の下は林道だ。工夫しながら沈まないように左右やら中央を歩いては、ボチボチ飽きたところで折り返し地点に到着。オトギの森にはまだ着いていない。ここは茶ノ木畑峠分岐。オッサンBの足跡は茶ノ木畑峠の方からやって来ている。大猿公園から来たのか、軽井沢峠の方からなのかは追ってみないとわからない。
ここでも疲れた。ここから別道で戻ることを考えるとうんざりする。この先はだれも歩いた足跡はない。お腹も空いたのでここでおにぎりを食べる。シートを出そうと思ったが、ザックの中にそんな便利なものはなかった。立ったまま。湯を入れたポットを持ってきているのにすでにその存在を忘れている。オニオンスープとコーヒーを飲むつもりでいたのだ。
(小沼分岐に戻る形になる。何をしにここまで来たのか。他人から見れば不可解な行動だ。自分でもそう思っている)
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(下は林道とはいってもこれだ)
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(歩きづらいの何のって。右のヤブを歩いたり、左の土手状を歩いたり、窪みを歩いたり…。先に進まない)
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(おとぎの森。どこが?)
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(青空が広がりつつある)
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味気ないランチで歩き再開。標識にはオトギの森400mとあるし、来た方向に小沼1000m。このまま戻った方が楽だったが、11時半時点でまだ陽は陰ったまま。頭には、余計な歩きをしてしまった後悔だけがあり、こうなるのなら地蔵岳に行けば良かった。
これがまた長い。そして雪も深く、またヒザ越えになる。林道から外れた山際を歩いた方がいくらか楽。だが、これも長くは続かず、ヤブから逃げて林道に戻ってはヒザ越えの繰り返し。
ようやく「おとぎの森」の看板のある所に出た。ここは以前歩いている。特別な御伽話の雰囲気があるわけでもないただの雑木の森。ちょうど12時。見上げる空は、いつの間にやら青空が覗いている。今日の天気予報は当たっていた。
(この先は左側を行くことになる)
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(リボンもあって、トレースはないが、ハイキングコースは何となく辿れる)
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(左の崩壊地。これを見て、何か大事なものを見忘れている気がしてくる)
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(地蔵岳だと思う。モフモフした感じだ)
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(対岸。あの尾根状のところを地蔵岳まで行けそうだが、地図で確認するとストレートになってはいず、途中で車道横切りになっている)
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林道はここで終点になっていて、この先は山道の登り。疎林の中を抜けて行く。トレースはないが、古いリボンもあって、何となく登山道はわかる。左は沢のようで、崩れているところもある。そんな崩壊地を眺めて、下を流れているのは粕川と気づく。ここに確か何かがあったなぁ。見どころスポットが。何だっけ。瀑泉さんのブログ記事にあったような…。思い出せない。いずれ見に行かねばと思っていたところだ。見下ろしながら思い出そうとしたが答が出ない。正解は小滝氷柱群。後で確認して失敗したで終わる。
何だっけ、何だっけと考えながら、テープを見て、ここからなら粕川に下れるなと思ったところで、目の前でオニイチャンが休んでいる姿が目に入り、名所スポットの思案は飛んで行った。びっくりした。ここまでそんな足跡も見ていなかった。
(ここは林道にでもなっているのか。このまま越える)
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(スノボーのオニイチャン)
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オニイチャンはスノボーだった。聞くと、ここまでスノボーで下ってみたがあまり面白くもないのでこれから帰るとのこと。休んでいるように見えたのは、プラブーツにアイゼンを装着しているところだった。先行したが、あっさりと抜かれ、林道に出たところで休んでいるところを抜き返し、また抜かれた。以降、姿は見ていないから、林道をスノボーでさっと下って行ったのかもしれない。
(小沼分岐に戻って小沼に下る)
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林道を這い上がって小沼分岐に戻った。もう青空になっていて、かなり汗をかいた。これから長七郎山に登るらしき二人連れの姿が見えた。そちらにもう用事はないので小沼200mの標識に合わせて林道を下る。さっき横切った林道とこの林道はどういう関係になっているのか気になったが、さっきの林道に足跡はなかった。ここは多数有りだ。この林道に合流していたのだろうか。
(水門から小沼。駒ヶ岳が見えている)
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(自分も小沼歩きに加わる)
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(地蔵岳。こちらからは電波塔群)
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(あの鞍部が目的地)
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(長七郎山方面。見えているわけではない)
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小沼に着いた。左に地蔵岳。赤城山トレッキングマップを見ると「水門」とある。湖上を歩く三人の姿が見える。ここ歩けるのか。湖畔歩きのつもりでいたが、歩けるとなると余計な歩きをせずに済む。菓子パンを食べて一服していると、犬連れが小沼から上がって来た。どこから沼に下るのかと思っていたから、あっさりとそこから下れるのを知った。
こういう歩きもまた面白い。水が見えているところはまったくない。平原を歩いている感じ。対岸が近づくと、ファミリーが湖上でソリ滑りに興じている。対岸に上がってベンチに腰かけて小沼を眺めていると、空身のハイカーがやって来ては湖上を歩いたりカメラを向けたりしている。知らなかったが、すぐ近くに小沼の駐車場があって、おそらくハイクを終えた人たちがついでに寄ってみたといった感じだ。オッサンAが小沼を渡って来た。彼は長七郎山だけだったのか。
(上がったところから小沼)
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(小沼駐車場)
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(こんなに秀麗な富嶽が大きく見えるとは思えないが)
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(富士山どころではない。逆光で見えづらいだけか)
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上にあがる。小沼駐車場には14、15台ほどの車。ここをベースに歩くには、駒ヶ岳、黒檜山では遠い。むしろ長七郎山や覚満淵といったところなのだろうか。小沼、大沼の解説板を見ながら先に行くと、「冨士見十三州」という言葉が目に入った。大方の「冨士見」の地名は富士山が見えるところから由来している。旧富士見村もまたそうだとは思っていたが、ここからパネルのような立派な富士山が見えるのか。だとすればわざわざ山梨まで出向くことはあるまいが、小沼の先は白い霞で富士山らしき山は見えない。鍋割山から富士山を見たことはあるが、これほどに大きくはなかった。小細工にするだろう。
(大沼と赤城神社)
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(ここの下りが嫌らしかった。階段が見え隠れしている)
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鳥居峠まではてっきり車道歩きとばかりに思っていた。今歩いている道が分岐して、一方は長七郎山、もう一方は鳥居峠に至るようだ。つまり、長七郎山に登山道で行くのに、鳥居峠からでは遠回りだということ。ここも初めて歩いた。
分岐から先は階段の下りになっていた。この階段がやっかいで、雪でよく見えないステップもある。案の定、ストックをステップから外してひっくり返ってしまった。起き上がるのにもがいた。最後でやってしまった。
(鳥居峠に到着。あちらを駒ヶ岳まで歩いたことはあるが、あのピークの篭山に登ったのかどうかは定かでない。深いガスの中、早々に道迷いをしていたし)
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(桐生方面)
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(改めて覚満淵。陽が出ると、出発時の顔とはえらく違ってくる)
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鳥居峠に到着。自分の車と軽のワゴン車があるだけ。帰り支度の間に何台かやってきたが、覚満淵を眺めてはさっさと帰って行った。暖い。ようやく上着を脱いでベンチに腰かけた。天気予報に合わせて予定通りになってくれた。下りの凍結路も少しは緩んでいるだろう。しかし、オトギの森は余計な歩きだった。今思うに、その小滝氷柱群を思い出していたら、立ち寄ってムダな歩きの感じはなかったと思うのだが。来月にでも改めてとしておこうか。
下り道は難なくとはいかなかった。スリップでもしたのか、上り車線の車が立ち往生していて、それを追い越す車がいたので、ここは上り優先だしと左に車を寄せようとブレーキを踏んだら車体がふらついた。日陰だったので、そこはまだ凍結したままだった。ひやりとした。姫百合駐車場を左に見るまで、ずっと緊張の運転だった。後続車がいなかっただけでも幸いだったか。
(本日の軌跡)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
鳥居峠(9:10)……小地蔵岳(10:15~10:24)……長七郎山(10:43~10:47)……小沼分岐(11:01)……茶ノ木畑峠分岐(11:24~11:34)……オトギの森看板(12:01)……小沼分岐(12:35)……小沼・休憩(12:39~12:47)……小沼対岸(12:57~13:06)……鳥居峠(13:30)
久しぶりに雪の山を歩きたくなった。ハイトスさんの黒檜山の記事を見たからかもしれない。ハードな歩きは望まないから近所で済ませたい。若干の雪の量で十分。となるとやはり赤城山しかなくなる。定番の黒檜山から駒ヶ岳か、鍋割山・荒山コースがオーソドックスだろうが、正直なところ、ツボ足でも歩けそうなトレースばっちりでハイカーが多いところは避けたい。地図を見て決めたのは人気がなさげな長七郎山。それも小地蔵岳を含めてのコース。ここなら、ハイカーも少ないだろうし、自分の記憶では小地蔵岳には行ったことがないような気がする。
雪山歩きとはいえ、お仕着せのコースを律義に歩くつもりはさらさらない。裾野を巻きながら登る長七郎山コースよりも、鳥居峠から直に小地蔵岳に登れるんじゃないのか。地図上の、桐生市と前橋市の市境になるあやふやな尾根というか斜面を登ってみようかといった考えが浮かぶ。出発地点は鳥居峠。この市境ルート、ブログ仲間の何人かが歩いていたような気がする。へぇ、そんなのもありかで記憶からはほとんど遠のいていた。その時点での予定では、小地蔵岳、長七郎山、地蔵岳の周回だった。今回は事前調べもまったくしなかった。鳥居峠まで車で入れるかも確認していない。赤城山だしとなめてかかったところがある。
今日の天気予報は、昨日までは朝から良天だったのが、出がけに確認すると、午前中は曇りで昼から晴れに変わっていた。それでいて天気がよろしくない予報だった明日は朝から晴れになってしまっている。昨晩のうちに準備は済ませていたから、このまま行くことにする。家を出たのは、犬の散歩後の7時半をとうに過ぎていた。これは計算づくで、赤城道路の凍結路の運転が恐かったからだ。往路の上りはいいが、大沼近くになれば下りになる。その下りが凍結していれば、ジムニーを四駆にして2NDにしたとてブレーキを踏めばふらつく。赤城道路ではないが、過去のトラウマがいくつかある。車の向きが反転したこともあった。とにかく、雪道はともかく、凍結路の運転は苦手だし、帰路とて、下り一辺倒だから、昼から晴れるのなら、晴れてしばらく経って凍結が緩んでから下りたい。そんな悪条件がなかったら、のんびりと犬の散歩なんかせずにさっさと出かける。
赤城道路に入ると、後ろから車が近づいて来た。嫌なパターンだ。先に行ってもらおうと姫百合駐車場に入り込む。用事もなかったが、せっかくだから、トイレを使う。小用。したくもないのに無理に出そうとするから時間もかかった。別に前立腺に異常があるわけではない。今日は最後まで大の方のトラブルはなかった。ここの駐車場には車は7~8台。雪が少ないような気がする。準備をしているハイカーが数人いた。改めて赤城道路に入って大沼に向かう。後続車がいるにはいた。バリバリの四駆もいる。だが、距離も離れているし、大方は大洞か黒檜の駐車場に向かう。分岐する鳥居峠まで来る車はなかった。鳥居峠まで来られるとは思いもしなかった。どうせ途中で通行止めだろうと。
(鳥居峠から覚満淵。奥に大沼。ぼんやりしている)
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鳥居峠の駐車場はかなりの凍結で凸凹になっている。外に出ると風はない。途中の電光掲示では気温-4℃になっていたが、さほどに寒くはない。実は、先日、ワークマンで<イージス360リフレクト透湿防水防寒ジャケット>なる上着を5,800円で買った。山でも使えると思ったからだ。レジにいたオジサンが「これ、暖かいですよ~」と言っていたが、それを今回、試し着するつもりでいた。風がないのでは暑苦しくなるだけだろうとやめた。代わりに、ここまで着てきていた、これまたワークマンの<高撥水マウンテンパーカー>3,900円を着たままで歩くことにする。最近、ワークマン製品はユニクロ並みに評判が高い。12本爪は大げさなので8本爪のアイゼンを付ける。靴は普通の革靴。雪山用ではない。結局、これで足がずっと冷たいままになる。ただ、小地蔵岳までの区間はアイゼンではなくワカンが正解だった。まさかと思っていたので、ワカンの準備はしてこなかったし、持ってきたとしても、おそらく必要あるまいと車の中に残したろう。
峠にある売店。ここは休業しているが、ビールの看板が気になり、いつも何屋なのか知らないままなのだが、そこの関係者だろうか、オジサンが軽トラでやって来て、その辺をぶらつきながら覚満淵を眺めている。覚満淵方面はどんよりした雲に覆われている。このオジサンと少しおしゃべりをし、ここから小地蔵岳に直に登るつもりだと言ったら、「雪があるから、それもいいかもな」と言われたが、無雪期ならヤブがひどいということだろうか。
ネエチャンが下からやって来た。駐車場を通り抜け、駕山方面に向かおうとして荷をおろし、汗ばんだのか上着を脱いで登って行った。単独のオバチャンや妙齢はよく見かけるが、最近はネエチャンの単独が増えた。先日の大蔵高丸にいた単独もネエチャンだった。決まってブスはいない。一昔前なら、単独のネエチャンもまた、あんたなら一人で歩いていても大丈夫だろうなと思うようなタイプが多かった。今は、そういうネエチャンはグループ歩きに入り込んで目立たなくなってしまった。
話は変わるが、瀑泉さんが鳥居峠から駒ヶ岳、黒檜山を歩かれたらしいが、この日だったかどうかは不明。同日だったとしたら、時間的にこのネエチャンのおそらくは前を歩かれていたのだろう。車は大洞か小沼、黒檜登山口に置いたのではないか。少なくとも峠の駐車場に長居したのは自分の車でしかなかった。
(ここを長七郎山にちょっと上がって左に移動して斜面に出る。ここから長七郎山に行くには遠回りで、やがては小沼駐車場から上って来る登山道に合流する。後で知ったこと)
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(出だしはさして埋まらず、まだ歩きやすかった。それも束の間)
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(こんなどんよりした中では霧氷も映えない)
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一旦、長七郎山へのコースに入り込む。数人しか歩いた跡はなく、このままでも雪に結構埋まりそうだ。意外と雪は多かった。すぐに左にずれて、斜面直登に入る。明瞭な尾根型はなく、どこを歩いても、いずれは小地蔵岳に至る。コンパスを使う必要もない。当然、物好きなハイカーはいないノートレース。期待していたわけでもないが少しは期待していた。
最初のうちはまだ歩きやすかった。たまにズボリとヒザにくる程度だった。そのうち数日前らしい足型も見かけて追いかけたが、たちまちのうちに消えた。そのうちにズボズボ歩きになる。足首程度ならまだしも、ヒザ越えのズボズボはつらい。
鳥居峠の標高は1392mらしい。向かう小地蔵岳は1574m。引き算すればたかが182m。30分もかからずに登れるはずだ。まして雪でヤブは雪の下になっている。断続的にヒザまできた。右手から、登山道を歩いているらしきハイカーの声も聞こえたが、そのうちに遠くなった。
(古いテープをたまに見つける。ここは上りよりも下りが難しいだろう)
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(踏み抜きも頻発する)
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(こちら側を歩きたいが、雪はかなり深いだろう)
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一歩一歩が重い。左手は樹林帯から抜け出した斜面になっている。そちらに行くと、ヒザ高では済むまい。このまま樹林の中を行った方が賢明だろう。それでも腰まで踏み抜くこともあって、遅々として先に進まない。これに吹雪が加わったら、泣きが出るだろうが、今のところは無風のまま。ガスはあるが50m先は見えている。ここで前述の後悔。ワカンだったらサクサクと登れたろう。まして、雪の表面だけは固い。何度も、樹林から外れた左を歩きたい気持ちにかられたが、ここはこらえた。
(なだらかになったから山頂は間もなくだろう)
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(素っ気ない小地蔵岳山頂)
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急斜面が続く。樹林とはいっても雑木の林の中だが、樹々はまばらになり、斜面もいくらかなだらかになり、左側の樹のない斜面も合流した。何となく、上に見えている平地がピーク、つまりは小地蔵岳かと思ったら、まさにそうで、反対側の南側からの足跡がそこまで続いている。小地蔵岳到着。
出発から小一時間ちょいながらもかなりバテバテになった。これは足の筋力の衰えでしかないが、まさか急斜面ラッセルになるとは思わなかった。まだ、雪のない時季のヤブの中を歩いていた方がやさしい歩きだったかもしれない。
素っ気ない山頂だ。ただの1574m標高点ピーク。一応、けじめとして吸いたくもないタバコを一服つける。腰掛けもなく立ったまま。山名板がいくつかあるだけの狭い平地。わざわざこんな山に「小地蔵岳」なんて名前を付けずともと思ったが、この先の長七郎山からここまでわざわざ来る方もいる。山名がある以上はこだわる方もいるのだろうが、だったら、鳥居峠から直に歩けばいいだろうに。何やかや記しても、つまりは、ラッセルして登ったウラミ、ツラミでしかなく、明瞭なトレースがあったら、そんなことは思わず、同類もいるものだと済ます。ちなみに、やはり、この小地蔵岳に登ったのは初めてのようだ。ここでメガネをサングラスに取り替える。
(真っ白で見えづらいが、ここから数人分の往復トレースがばっちりだった)
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(あ~ぁとため息。空が青かったらどんなにキラキラしているだろうか)
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(林道のようなところに出た)
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長七郎山に向かう。黒檜山ほどに歩かれてはいないが、数人分のトレースがあるだけでも何と楽なことか。こちらは踏み抜きの跡もなく、積雪は少ないようだ。傾斜も緩い下り。ここは霧氷が連なり、晴れていたら見ていても飽きないし時間がとられるかもしれない。
雪でしっかりと確認はできないが、林道のようなものが横切る。地図を見ると、確かに実線が通っていて、すぐそこで終点になっている。長七郎山に初めて登ったわけではない。以前、大猿公園から登ったことはある。だから、こんな反対側の林道の存在は知らない。地図では、この林道を下ると小沼の北側で県道に合流する。30分も歩けば済みそうだ。それを知ったら、長七郎山も急に俗っぽい山に感じてしまった。地図を見なきゃよかった。だが、考えてみれば、赤城山域そのものがポピュラーだし、ここで改めて嘆いても仕方がない。
(長七郎山はまっすぐ)
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(路地のようなところを歩く。雪庇もどきが張り出しているところもある)
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(ようやく陽が出てくる)
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(だれにも会わず、歩いていて気分はなかなか。晴れていたら最高だろう)
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小地蔵岳、小沼、長七郎山の三叉路を長七郎山方面に行く。トレースはさらに明瞭になった。陽がぼんやりとだが出てきた。相変わらず風もなく歩いていて雰囲気が良い。寒さはまったく感じず足が冷たいだけ。踏み抜きもない。ストック先が雪下の岩にあたる音であれっと思い、ストックを見ると、二本ともに先端のゴムキャップが外れて落としていた。何でこうも外れやすいのだろう。消耗品と思い、その都度に買うが、決して安くはない。「落ちにくい先ゴム」というのをアマゾンで見つけ、これが一個送料込みの880円。都合三回・三個購入して、現在庫は0。「山に落としてゴミにしない環境に配慮した先ゴム」のキャッチはどうしたのか、山のゴミにしてしまった。ゴミどころか2,640円を捨てたことにもなる。
(長七郎山山頂)
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(三角点)
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(おさらば。何も見えないのでは長居してもしょうがない。この山には石仏、石碑の類はないようだ。ところで、長七郎山の山名の由来は何だ? 人名からだろうけど。時代劇にあった松平長七郎か?)
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三角点を確認して長七郎山。だれもいない。真っ白で殺風景な山頂だ。さて、ここからどうしよう。地図を出す。小地蔵岳への登りで本日の体力の大方は消費している。小沼に下って地蔵岳への登り返し150mはトレース頼りとしてもきつそうだ。雪山を楽しんだからこれで十分だろうといった思いも出てくる。だが、このまま小沼に下って鳥居峠に戻ったのでは、まだ陽が十分に出ていない状態では凍結路のままだ。ぼんやりの陽と午後から晴れる天気予報を考えれば、時間つぶしをするしかない。
石井スポーツからもらってきた赤城山トレッキングマップを取り出す。「オトギの森」に寄り道という手もあるか。改めて地形図を広げる。実線だから、おそらく林道だろう。周回して戻る途中から破線になって山道。これでいくか。一時間くらいは時間稼ぎになって、そのうちに陽が出て青空にもなるだろう。
(賽の河原)
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下って賽の河原。雪で何も見えず、ただの開けた広場。賽は雪の下。とにかく陽がぼんやりと浮いているだけの白い世界になっていて、これはこれで良い風情だ。ここに雪が降り出したらもっと良かったかもしれない。視界が悪くなっても遭難することはあるまい。楽なコースになると、逆に悪条件を期待してしまう。愚かな思考は相変わらずだ。
樹林帯の下りになった。ここまでだれとも会うこともなかった。ここで小用を足そうとして、ズボンのチャックをおろした。突然、下からオッサンAが登ってきた。慌ててチャック開きはそのままに、幸いにも中味はまだ出してはおらず、中でつまんだだけだった。どういうポーズをとればいいのか瞬時悩んだが、ここで不自然な仕草もできず、仕方なくザックをおろして、何かを出すふりを装ってコンニチワ。オッサンの目付きは別にいぶかしむものではなかった。小でよかった。大なら言い訳も取り繕いもできやしない。しゃがんだままで固まるしかなく、コンニチワどころではない。下はカーブになっているのに気づかず、安心しきったのが失敗だった。小用は先に繰り越し、ザックを背負い、下りながらチャックを締めた。
(分岐。オトギの森は左だが、ここは二段になっていて、往路は上段、復路は下段を使った)
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分岐に出た。オトギの森を指す標識は二方向。一方は500mで片方は1000mとある。どうせ時間稼ぎだ。1000mを選ぶ。どうせ周回だし、またここに戻ることになる。そんなことよりも気になったのは、標識に記された英語、中国語、ハングルだが、英語で「Fairy Tale Forest」とあるのはうなずけるが、漢字で「神話之森林」となると首を傾げる。神話といったら神様の話。赤城の神様が水を欲しさに日光の水(中禅寺湖)を盗みに使いを出し、日光の神様の使いとバトルし、その間に手で水をすくって投げてできたのが赤城の大沼と小沼。その水を取り返そうと、日光の大蛇と赤城のムカデ群が戦場ヶ原で戦ったという話は薄らぼんやりと知っている。また、弘法大師が赤城山で開山しようとしたら、赤城山の神様に邪魔されたので、袈裟丸山で袈裟を丸めてすごすごと立ち去ったという話も袈裟丸山の賽の河原の看板に記されている。そんな神話にひそんだエピソードでもこのオトギの森にあるのか。もしくは「神話之森林」とある以上は、何らかの神様がらみの伝承でもあるのかと思ったが、ヒマつぶしに後で調べてもそんなものはなかった。日本語は正確に使いたいものだ。「神話」と「おとぎ話」はまったく違う。別に自分が怒っているわけではない。おとぎ話としても、どんな物語があったのか、かなり興味があったので調べても結局わからないままだった。
ここで1000mからやって来るオッサンBに出会う。挨拶だけで終わったが、この時点では、物好きなオッサンもいるものだなで終わった。オトギの森周回だとばかりに思っていたが、500m側に足跡はない。いったいどこから歩いて来たのか。
(雪のかぶった林道。これがなかなかの曲者で、オッサンBの足跡があるのにズボズボだった)
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(折り返し地点。茶ノ木畑峠は直進する。ここに来るまでに疲れている)
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オッサンBの足跡が続いている。ラッキーと思ったが、見た目には自分よりも体重が重そうだったわりには足跡は浅く、これを辿るとズボズボとヒザまで来る。こちらはやや下りになる。その違いなのか。とにかく雪の下は林道だ。工夫しながら沈まないように左右やら中央を歩いては、ボチボチ飽きたところで折り返し地点に到着。オトギの森にはまだ着いていない。ここは茶ノ木畑峠分岐。オッサンBの足跡は茶ノ木畑峠の方からやって来ている。大猿公園から来たのか、軽井沢峠の方からなのかは追ってみないとわからない。
ここでも疲れた。ここから別道で戻ることを考えるとうんざりする。この先はだれも歩いた足跡はない。お腹も空いたのでここでおにぎりを食べる。シートを出そうと思ったが、ザックの中にそんな便利なものはなかった。立ったまま。湯を入れたポットを持ってきているのにすでにその存在を忘れている。オニオンスープとコーヒーを飲むつもりでいたのだ。
(小沼分岐に戻る形になる。何をしにここまで来たのか。他人から見れば不可解な行動だ。自分でもそう思っている)
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(下は林道とはいってもこれだ)
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(歩きづらいの何のって。右のヤブを歩いたり、左の土手状を歩いたり、窪みを歩いたり…。先に進まない)
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(おとぎの森。どこが?)
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(青空が広がりつつある)
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味気ないランチで歩き再開。標識にはオトギの森400mとあるし、来た方向に小沼1000m。このまま戻った方が楽だったが、11時半時点でまだ陽は陰ったまま。頭には、余計な歩きをしてしまった後悔だけがあり、こうなるのなら地蔵岳に行けば良かった。
これがまた長い。そして雪も深く、またヒザ越えになる。林道から外れた山際を歩いた方がいくらか楽。だが、これも長くは続かず、ヤブから逃げて林道に戻ってはヒザ越えの繰り返し。
ようやく「おとぎの森」の看板のある所に出た。ここは以前歩いている。特別な御伽話の雰囲気があるわけでもないただの雑木の森。ちょうど12時。見上げる空は、いつの間にやら青空が覗いている。今日の天気予報は当たっていた。
(この先は左側を行くことになる)
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(リボンもあって、トレースはないが、ハイキングコースは何となく辿れる)
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(左の崩壊地。これを見て、何か大事なものを見忘れている気がしてくる)
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(地蔵岳だと思う。モフモフした感じだ)
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(対岸。あの尾根状のところを地蔵岳まで行けそうだが、地図で確認するとストレートになってはいず、途中で車道横切りになっている)
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林道はここで終点になっていて、この先は山道の登り。疎林の中を抜けて行く。トレースはないが、古いリボンもあって、何となく登山道はわかる。左は沢のようで、崩れているところもある。そんな崩壊地を眺めて、下を流れているのは粕川と気づく。ここに確か何かがあったなぁ。見どころスポットが。何だっけ。瀑泉さんのブログ記事にあったような…。思い出せない。いずれ見に行かねばと思っていたところだ。見下ろしながら思い出そうとしたが答が出ない。正解は小滝氷柱群。後で確認して失敗したで終わる。
何だっけ、何だっけと考えながら、テープを見て、ここからなら粕川に下れるなと思ったところで、目の前でオニイチャンが休んでいる姿が目に入り、名所スポットの思案は飛んで行った。びっくりした。ここまでそんな足跡も見ていなかった。
(ここは林道にでもなっているのか。このまま越える)
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(スノボーのオニイチャン)
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オニイチャンはスノボーだった。聞くと、ここまでスノボーで下ってみたがあまり面白くもないのでこれから帰るとのこと。休んでいるように見えたのは、プラブーツにアイゼンを装着しているところだった。先行したが、あっさりと抜かれ、林道に出たところで休んでいるところを抜き返し、また抜かれた。以降、姿は見ていないから、林道をスノボーでさっと下って行ったのかもしれない。
(小沼分岐に戻って小沼に下る)
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林道を這い上がって小沼分岐に戻った。もう青空になっていて、かなり汗をかいた。これから長七郎山に登るらしき二人連れの姿が見えた。そちらにもう用事はないので小沼200mの標識に合わせて林道を下る。さっき横切った林道とこの林道はどういう関係になっているのか気になったが、さっきの林道に足跡はなかった。ここは多数有りだ。この林道に合流していたのだろうか。
(水門から小沼。駒ヶ岳が見えている)
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(自分も小沼歩きに加わる)
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(地蔵岳。こちらからは電波塔群)
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(あの鞍部が目的地)
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(長七郎山方面。見えているわけではない)
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小沼に着いた。左に地蔵岳。赤城山トレッキングマップを見ると「水門」とある。湖上を歩く三人の姿が見える。ここ歩けるのか。湖畔歩きのつもりでいたが、歩けるとなると余計な歩きをせずに済む。菓子パンを食べて一服していると、犬連れが小沼から上がって来た。どこから沼に下るのかと思っていたから、あっさりとそこから下れるのを知った。
こういう歩きもまた面白い。水が見えているところはまったくない。平原を歩いている感じ。対岸が近づくと、ファミリーが湖上でソリ滑りに興じている。対岸に上がってベンチに腰かけて小沼を眺めていると、空身のハイカーがやって来ては湖上を歩いたりカメラを向けたりしている。知らなかったが、すぐ近くに小沼の駐車場があって、おそらくハイクを終えた人たちがついでに寄ってみたといった感じだ。オッサンAが小沼を渡って来た。彼は長七郎山だけだったのか。
(上がったところから小沼)
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(小沼駐車場)
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(こんなに秀麗な富嶽が大きく見えるとは思えないが)
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(富士山どころではない。逆光で見えづらいだけか)
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上にあがる。小沼駐車場には14、15台ほどの車。ここをベースに歩くには、駒ヶ岳、黒檜山では遠い。むしろ長七郎山や覚満淵といったところなのだろうか。小沼、大沼の解説板を見ながら先に行くと、「冨士見十三州」という言葉が目に入った。大方の「冨士見」の地名は富士山が見えるところから由来している。旧富士見村もまたそうだとは思っていたが、ここからパネルのような立派な富士山が見えるのか。だとすればわざわざ山梨まで出向くことはあるまいが、小沼の先は白い霞で富士山らしき山は見えない。鍋割山から富士山を見たことはあるが、これほどに大きくはなかった。小細工にするだろう。
(大沼と赤城神社)
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(ここの下りが嫌らしかった。階段が見え隠れしている)
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鳥居峠まではてっきり車道歩きとばかりに思っていた。今歩いている道が分岐して、一方は長七郎山、もう一方は鳥居峠に至るようだ。つまり、長七郎山に登山道で行くのに、鳥居峠からでは遠回りだということ。ここも初めて歩いた。
分岐から先は階段の下りになっていた。この階段がやっかいで、雪でよく見えないステップもある。案の定、ストックをステップから外してひっくり返ってしまった。起き上がるのにもがいた。最後でやってしまった。
(鳥居峠に到着。あちらを駒ヶ岳まで歩いたことはあるが、あのピークの篭山に登ったのかどうかは定かでない。深いガスの中、早々に道迷いをしていたし)
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(桐生方面)
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(改めて覚満淵。陽が出ると、出発時の顔とはえらく違ってくる)
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鳥居峠に到着。自分の車と軽のワゴン車があるだけ。帰り支度の間に何台かやってきたが、覚満淵を眺めてはさっさと帰って行った。暖い。ようやく上着を脱いでベンチに腰かけた。天気予報に合わせて予定通りになってくれた。下りの凍結路も少しは緩んでいるだろう。しかし、オトギの森は余計な歩きだった。今思うに、その小滝氷柱群を思い出していたら、立ち寄ってムダな歩きの感じはなかったと思うのだが。来月にでも改めてとしておこうか。
下り道は難なくとはいかなかった。スリップでもしたのか、上り車線の車が立ち往生していて、それを追い越す車がいたので、ここは上り優先だしと左に車を寄せようとブレーキを踏んだら車体がふらついた。日陰だったので、そこはまだ凍結したままだった。ひやりとした。姫百合駐車場を左に見るまで、ずっと緊張の運転だった。後続車がいなかっただけでも幸いだったか。
(本日の軌跡)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
大苦戦? それは大げさかと思います。せいぜい小苦戦でしょう。私が登った時も確かに積雪直後で、腿にまで抜けるところもあるにはありましたが、意外と下は締まっていましたから、猛烈なラッセルまでいかなかったし、山頂までの距離も標高差も大してないですよ。ベテランの方の記録でしたら、私の時よりもかなり悪条件だったのでしょうか。
私がやったことですから、ハイトスさん隊とて同様。こんなのもおもしろいですよ。ただ、問題はその後で、長七郎山に行くにしても、せいぜい地蔵岳に行ってくださいな。決しておとぎの森だけはお薦めしません(笑)。
鳩ノ峰と山王山ですか。えらく地味なところを歩かれましたね。ここまで記して、ブログを拝見すると、もうアップされてるじゃないですか。それも地蔵、長七郎まで行った記事もある。今年はえらく積極的ですね。後で読ませていただきます。
私なんか、昨日は筑波山で大苦戦というか苦笑歩きをしておりましたよ。
鳥居峠から小地蔵への厳冬期の登りは以前にどこかのサイトで積雪直後だったので大変苦戦したとの記事を覚えています。
このためやってみたいなぁと云う気持ちがありながらも、やっぱり止めておこうと思って数年です。w
所で先週になりますがたそがれさんの後追いで鳩ノ峰と山王山の周回をしてきました。
里山の静かな歩きを堪能してきましたよ。
やはりですね。この日に瀑泉さんが赤城山に行かれたと思っていましたが、私の出発タイムよりも遅く鳥居峠を通過とは少々意外です。15分の時差ということは、ほぼ同じ時間帯に小沼なりの駐車場と鳥居峠駐車場に着いて出発ということになりますか。
その篭山先のトレースは確実に単独ネエチャンのですよ。見るからに軽量級でしたから、だれが追いかけても埋まると思いますけど。
そうですか。富士山が見えましたか。いいですね~。午後から晴れて、実際に良天を意識できたのは小沼の渡りからでしたが、今日のコース設定はミスったと気づいてもすでに遅く、強がりせずに駒ヶ岳、黒檜の周回をしていればよかったと後悔しています。私のノロ足ではバッチリ展望を楽しめたはずです。
今日の新聞の群馬版に出ていました。暖冬の影響。大沼では氷結が不安定でワカサギ釣りができず、梨木の氷柱群も地肌むき出しで、軒下のツララ状になっていると。これからして小滝氷柱群、当日はさることながら、この先も微妙ですね。今日のような冷え込みが続けば別ですが、当初から暖冬の予想ですからね。
瀑泉さんの小地蔵記事は、先ほど改めて拝見いたしました。このエリアだけは、どうも例年よりも積雪が多い感じがします。ただどうなんでしょう。私はアイゼンとストックでしたから、ワカンなりスノウシューで歩いていれば、そんな感じも出てこなかったとも思いますし。
かくいう自分も,たそがれオヤジさんにコメをいただいたからということダケでもないのですが,同じく,みー猫さんやハイトスさんの記事を拝見して,いてもたってもいられず,行くことにしました。
ちなみに,鳥居峠が9時26分着だったので,もう少し早ければ,お会いできたのですが,停まっていたお車は,たがれオヤジさんのだったワケですネ。
それと,篭山の鞍部の先の雪庇もどきで,小さな足の足跡を見たのですが,此れが単独のネエチャンのだったのでしょうネ。ただ,いかんせん自分は重いので,このネエチャンのトレースに限らず,人様のトレースに乗っても沈んでしまうのですがネ(汗)。
小地蔵の直登,2年前の1月に登りましたが,その時より雪が多い印象ですネ。
結構な急斜面なので,みー猫さんのアドバイスもあり,ピッケルとスノーシューで登りましたが,ピッケル無しだと,左の立木の無い方は厳しいカモ知れませんネ。
それと,画像を見る限り,まだ小滝は水を落としていたようだから,氷柱群は2月の方が良いと思いますヨ。
自分の場合,途中で時間調整をしたこともありますが,途中,富士山も見えたし,黒檜山からの展望もバッチリでした。
何と、黒檜から下ってきて鳥居峠で、ポツンとあった私の愛車を横目で見て、そして状況はまだガスガスだったと。ということは、12時前に峠到着ということになりますね。何だかもったいないですね。あのからっとした青空の中で小沼を渡れなかったというのは。大沼が完全に凍り付いていなかったというのは、標高差だと思いますよ。よく調べたわけではないですが、小沼の方が100m以上高いようです。
私の場合は計算づくとはいっても、凍結路がこわかっただけで、時間つぶしのおとぎの森歩きはいまだもって我ながら不可解な歩きです。せめて小滝氷柱群の存在をしかと知っていれば、また展開も違ったでしょうけどね。
まだ瀑泉さんの記事アップはありませんが、コメントを分析する限り、どうも瀑泉さんも同日に鳥居峠から黒檜に行かれたようで、それが確かなら駒ヶ岳から先は晴れ渡って相応に満足されたかと思います。
小地蔵岳への斜面は、雪が深いというわけではなく、歩いている人がいないから、自然に深くなるということでしょう。しっかりした複数のトレースでもあれば、踏み抜きもなく、深いイメージは出てこなかったと思います。
赤城山もこれからでしょう。雪が締まるにはまだ早いですからね。
今回の勢いで、社山の南尾根でもと思ったのですが、ネット情報では少なくとも日光側は地肌も出ていて、雪山の歩きを楽しめるまでもないようで、これは先送りの様子見ですね。
私の場合後輩の雪山デビューの付き添いでオーソドックスに黒檜から駒ケ岳、鳥居峠でしたが。
あまり雪が多くない印象でしたが小地蔵への尾根は膝まででしたか。やはり北側は様相が異なるようで。3年位前の9月に今回のたそがれさんのルートより少し西寄りを歩きましたが、道型がありテープもあったような記憶があります。
たそがれさんは遅めに家を出て茶ノ木畑峠分岐、オトギの森に寄り道と時間調整がうまいですね。私は多少スタートを遅らせてだらだら歩けばそのうち晴れるだろうと8時くらいに歩き出しましたが結局鳥居峠についた時もガスガスで。たそがれさんの歩いた小地蔵・長七郎もいく予定でしたが今日は晴れないなと行くのをやめました。それで駐車場まで戻ったら晴れてくる始末です。天気が読めませんでした。なお鳥居峠にぽつんと停まっている一台がたそがれさんの車だとは気づきませんでした。
しかし小沼が歩いて渡れるくらい氷が厚かったとは意外ですね。大沼は上から見ていて氷が薄そうなところが見受けられてそのせいかワカサギ釣りもおらず。小沼も同じだと思っていました。知っていたら事のついでに小沼歩きにいったのですが。