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茶碗はどれも見ごたえがあり、一入作の狂言袴写赤楽もお気に入りですが、
一番心に残ったのは黒楽水指「不識」(ふしき)でした。
これも四代一入作、九代了入極があります。
不識とは達磨大師のことで、次のような話を伺うことが出来ました。
中国・梁の武帝は仏教を厚く信仰しており、
天竺から来た達磨を喜んで迎えました。
武帝は達磨にいろいろな質問をし、・・・最後に
帝曰く「朕に対する者は誰ぞ」
師曰く「不識(認識できぬ・・・空だから)」
武帝は達磨の答を理解せず、達磨は去って行ったのです。
後に武帝は後悔し、達磨を呼び戻そうとしましたが、
再び逢うことはありませんでした。
水指は「不識」の銘にふさわしく、
堂々と大地に根付いているような形容と落ち着きがあり、
一入の特徴である赤釉を黒釉の下に垣間見ることができます。
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棚は黒塗の高麗卓、
棗は少庵好「夜桜なつめ」(五代宗哲)、
茶杓は銘「大内山」、御所の左近桜で作られたとか。
かわいらしい蓋置ツクネは覚入作で、これも黒楽でした。
「黒ばかりになってしまいました・・・
今日は天気が良くなったので明るいのですが、雨や曇りだったら
黒の道具は見えにくいので、蝋燭を用意してました・・・」
黒の道具を囲む風炉先は「銀泥刷毛目」、15代吉左衛門監修と会記にあり、
柿渋を塗った和紙に当代自ら銀泥を刷毛で引いて仕立てたものでした。
その風炉先を眺めると、なぜか佐川美術館の茶室が連想されました。
風炉先は二つ作り、一つは佐川美術館茶室にあるそうです。
渋く華やぎのある銀泥刷毛目の風炉先に黒の道具が映えて、
これに蝋燭の灯りが加われば、パーフェクトかしら? それとも?
(体験してみたい・・・と密かに思いました)
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もう一つの「黒の魅力」は「夜桜なつめ」でしょうか。
今まで数回ご縁があったのですが、一度も夜桜をこの眼で見たことがありません。
黒の漆塗に、別の黒漆で桜絵を描いてあるそうで、
一番よく見えるのが蝋燭の灯りとか・・・
この日もご縁が無く、永遠に追い求める「漆黒の桜」になりそうです。
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今にして思えば、お点前さんが置かれた、蓋置ツクネにときめいた時から
「黒」の魔法にかけられたのかもしれません。
「黒の魅力」を知り尽くした当代ならではの道具組であった・・・!
と感嘆しながらも、黒の魅力に私めは当分嵌まりそうでございます。
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一番心に残ったのは黒楽水指「不識」(ふしき)でした。
これも四代一入作、九代了入極があります。
不識とは達磨大師のことで、次のような話を伺うことが出来ました。
中国・梁の武帝は仏教を厚く信仰しており、
天竺から来た達磨を喜んで迎えました。
武帝は達磨にいろいろな質問をし、・・・最後に
帝曰く「朕に対する者は誰ぞ」
師曰く「不識(認識できぬ・・・空だから)」
武帝は達磨の答を理解せず、達磨は去って行ったのです。
後に武帝は後悔し、達磨を呼び戻そうとしましたが、
再び逢うことはありませんでした。
水指は「不識」の銘にふさわしく、
堂々と大地に根付いているような形容と落ち着きがあり、
一入の特徴である赤釉を黒釉の下に垣間見ることができます。
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棚は黒塗の高麗卓、
棗は少庵好「夜桜なつめ」(五代宗哲)、
茶杓は銘「大内山」、御所の左近桜で作られたとか。
かわいらしい蓋置ツクネは覚入作で、これも黒楽でした。
「黒ばかりになってしまいました・・・
今日は天気が良くなったので明るいのですが、雨や曇りだったら
黒の道具は見えにくいので、蝋燭を用意してました・・・」
黒の道具を囲む風炉先は「銀泥刷毛目」、15代吉左衛門監修と会記にあり、
柿渋を塗った和紙に当代自ら銀泥を刷毛で引いて仕立てたものでした。
その風炉先を眺めると、なぜか佐川美術館の茶室が連想されました。
風炉先は二つ作り、一つは佐川美術館茶室にあるそうです。
渋く華やぎのある銀泥刷毛目の風炉先に黒の道具が映えて、
これに蝋燭の灯りが加われば、パーフェクトかしら? それとも?
(体験してみたい・・・と密かに思いました)
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もう一つの「黒の魅力」は「夜桜なつめ」でしょうか。
今まで数回ご縁があったのですが、一度も夜桜をこの眼で見たことがありません。
黒の漆塗に、別の黒漆で桜絵を描いてあるそうで、
一番よく見えるのが蝋燭の灯りとか・・・
この日もご縁が無く、永遠に追い求める「漆黒の桜」になりそうです。
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今にして思えば、お点前さんが置かれた、蓋置ツクネにときめいた時から
「黒」の魔法にかけられたのかもしれません。
「黒の魅力」を知り尽くした当代ならではの道具組であった・・・!
と感嘆しながらも、黒の魅力に私めは当分嵌まりそうでございます。
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