冬の京都は静かで寒くって好きかな・・・・南禅寺三門にて
(三門とは、仏道修行で悟りに至る為に透過しなければならない三つの関門を表わす、空、 無相、無作の三解脱門を略した呼称だそうです)
のち
のち
有馬温泉・雅中庵の初稽古の後、京都のYさまのお初釜の茶事にお招きいただきました。
その日は生憎の小雨模様、タクシーを降り、大きなカバンを引きずりながら3人(正客Oさま、次客暁庵、詰YYさま)で路地奥のYさま宅を目指しました。
到着すると、奥から調理の軽快な音が聞こえてきました。お正月早々のこと、さぞかしご準備が大変だったと思いますが、素晴らしいお茶事でございました。
「守破離」という道を指し示す言葉がありますが、多くの茶事や茶会を積み重ねて、到達されたYさまらしい独自の世界や表現に随所で感じ入りました。
御床の斬新なむずび柳に目を見張りました。”輪と和”が柔軟かつ芸術的に広がり、大綱和尚の「壽」のお軸と相和してシンプルでステキな空間です。
初炭では釘環とその扱いが珍しく、炉縁のほんのりとした赤(・・に見えます)や楽入の灰器がはんなりを醸し出し、ご亭主の所作を美しく引きたてていました。
香合は正月らしくお目出たい鶴、どこかで亀が出てくるのかしら?
懐石になり、「いつも美味しい懐石をたった一人で手際よく、どのようになさるのだろう・・?」と不思議なのですが、今回もまたどれもこれも美味しゅうございました。「今度作ってみたい・・・」と憧れ、大いなる刺激を頂戴しています。
そして、毎回ステキな懐石の器が登場するのも楽しみです。
懐石献立 (既に忘れていますが、参考にしたいので書きとどめておきます)
向付 蕪蒸 (白身魚、ゆり根、蕪、ワサビ)
汁 (熱) 慈姑 白味噌 辛子
煮物椀(熱) 蟹真蒸 シイタケ 三つ葉 柚子
焼物 鰆の西京漬 (銘々皿で)
炊き合せ 海老芋 棒鱈 春菊のお浸し
和え物 きのこ 水菜 青菜 ?
箸洗 柚子
八寸 カラスミ 芽キャベツ
湯斗 おこげ
香の物 千枚漬 赤カブ 沢庵 すぐき もう1種
酒 新潟産の ?
向付のかぶら蒸
懐石後に出されたお手製の花びら餅、お餅(雪平せっぺいとか)がやわらかく、中のゴボウと味噌餡が絶妙で感激しながら頂きました。
雨が本降りになり、待合へ中立し、銅鑼の音で後入りしました。
後座の御床がユニークで印象に残っています。
花は水仙と乙女椿、花が斜めにいけられているのですが、酒器だったという花入との出会いの妙でしょうか。
結び柳の縦の線と重ならず、見事に調和し、ご亭主の創意工夫が楽しく伝わってきます。
後座の点前座には棚(旅卓)が置かれ、小ぶりの水指(京唐津)がお似合いでした。水指に合う棚を探したそうです・・・。
金春金襴の仕覆が脱がされると、赤絵の小壷風茶入が現われ、早や心を奪われます。(紅安南かしら?)
茶入から濃茶が、床の柳のように美しい筋を見せながら回しだされると、すぐに茶香が漂い始めました。
熱い湯が注がれ、心を込めて練ってくださった濃茶の、なんと馥郁とまろやかで美味しいこと。濃さも程よく、飲みやすかったです。
「天授」(丸久小山園詰)という茶銘を聞いて、思わずうなずきました。
茶碗は大樋焼の飴釉(大樋年朗造)、形や飴釉が美しいだけでなく、口縁から濃い釉薬が少し垂れてモダンな景色を生み出していました。
点前座の旅卓(表千家流の棚です)
後炭もしてくださって嬉しかったです。
釜をあげたときの炉中の景色、胴炭は大きかったのでまだ黒々としていましたが、他の炭はほぼ燃え尽きて、過ぎた時間を告げています。
丸ぎっちょ、割りぎっちょが1個ずつ継がれ、丸管・割管・枝炭2本の4本を持ってさらりと置かれ、日頃の修練がしのばれます。
匙香ではなく、香合を取り出し、香(松濤)が炊かれました。香合は萩焼の分銅亀(田原陶兵衛造)、ここで鶴亀が揃い、めでたしめでたしでした。
(手作りの5種の干菓子が圧巻で美味しく・・・)
薄茶になり客3名でしたが、1人ずつお茶碗を変えて薄茶を点ててくださいました。お手作りの干菓子5種を1つずつ味わいながら、干菓子も薄茶もお話も堪能し、充実した時間を過ごしました。
(茶事後の写真なので替え茶器がかざられています)
Yさま、お心こもるおもてなしを頂き、ありがとうございました!
客一同、深く感動し、たくさんの刺激を受け、令和2年・お茶事の幸先良いスタートを切ることができたと、喜んでおります。
足腰が動くうちに、我が家の拙い茶事へ足をお運びくださると嬉しいです。
「お待ちしています・・・」