ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日本経済新聞紙の「働けない若者の危機 世界も悩む」を読んだ話の続きです

2013年03月30日 | 日記
 日本経済新聞紙の朝刊一面のコラム欄で、2013年3月23日から「働けない若者の危機 第5部世界も悩む その1」から3月27日の「同第5部世界も悩む その4」の4回シリーズを読んだ話の続きです。

 3月25日掲載の「働けない若者の危機 第5部世界も悩む その3」は韓国の就職氷河期に直面している若者層の話です。



 昨年、ソウル市の私立大学の4年生は英語検定能力テストのTOIECで900点以上という高得点を取り、自信を持って就職試験を受けたところ、全敗だったというエピソードから始まります。

 韓国のトップ大学のソウル大学などでも、3人に2人しか就職できない状況になっているそうです。韓国の厳しい受験競争を勝ち抜いても、高収入な社会的地位を得られるという幻想を信じている若者は、韓国にはいないと続けます。

 サムソン経済研究所によると、韓国では大卒の約40%が学歴に見合う仕事に就けないとのことです。大学生の約30%は休学して、就職予備校に通ったり、語学試験の勉強に励むという就職準備に力を入れるという“異常事態”に陥っているとのことです。韓国のサムソン電子やLGエレクトロニクスなど電機メーカーが日本の電機メーカーを凌駕(りょうが)する事業売上げを得るなど、企業の事業は好調ですが、それを支える若手人材は悩みが多いようです。

 大学生が増えている中国でも、80%しか就職できない事態に陥り、次第に深刻化しているそうです。

 3月27日掲載の「働けない若者の危機 第5部世界も悩む その4」は、オーストリアの「ユースギャランティー」という10歳代の若者に就職訓練の場を紹介する政策が効果を上げ、若者の失業率が9%台と低い数字になっていると伝えます。EU各国は、オーストリアのこの政策を参考にしたいと考え始めているようです。



 先進国では、若者の深刻な失業対策に対する政策が必要になっていることを示す事例です。

 ここで話を米国の製造業に変えます。米国の製造業では中心はGM(ゼネラルモーターズ)やフォードなどの自動車産業です。その自動車部品メーカーも米国を代表する産業ですが、大手自動車メーカーとともに次第に勢力を縮小しています。米国では製造業は次第に衰退していく傾向を強めています。

 スマートフォンの代表格である「iPhon」やタブレット端末「iPad」などを販売する米国のアップル社は、その部品を日本や韓国、台湾などの電子部品メーカーに依存し、その組み立てと品質保証を台湾の鴻海精密工業(ホンハイせいみつこうぎょう)に依頼しています。その鴻海精密工業は中国にある子会社のフォックスコン・テクノロジー・グループ(Foxconn Technology Group=鴻海科技集團)に生産を委託してます。

 大まかにいえば、米国のアップル社は中国の製造業の低賃金従業員に依存して、「iPhon」「iPad」を安く生産し、大きな販売収益を上げていることになります。この構図は今後も続く見通しです。低賃金の従業員が製造・組み立てなどの生産工程を担うアジアなどの国に委託することで、製品コストを抑える分業体制をとる限り、米国の製造業は成長しません。

 米国の製造業は航空機や医療機械などの製品単価が高く、組み立てに高度なスキルが必要な分野に限られそうです。これでは製造業は多くの人を十分には雇用できず、若手人材の受け皿にはなれません。

 日本でも、国内の人件費が高いとの理由から、海外に生産工場を移し、国内に逆輸入する製品も増え始めています。国内と国外の生産体制をどうデザインするかが問われ始めています。

 3月29日発行の日本経済新聞紙の朝刊には、政府の規制改革委員会は雇用分野の重点項目を議論し、まとめを出したと伝えています。職務限定の準正社員といえる限定正社員の導入を提案しているそうです。配属先の事業所や仕事の内容、労働時間の限定などを導入する一方で、給与水準は普通の正社員より低い労働条件を導入するとの提案だそうです。

 さらに、解雇の金銭解決の提案もまとめているようです。ただし、この「解雇の金銭解決の提案」は、今日の国会答弁で、安倍晋三首相は否定する答弁をしたと、別のニュースが報じています。

 とはいえ、日本の従業員の雇傭態勢や条件は議論の対象となり、いろいろな意見が併記されそうです。これが進めば、日本でも欧州や米国のように、若者の失業率が高まる可能性も出るかもしれません。企業が従業員を65歳まで採用する制度を導入することで、新卒採用に影響を与えないことを祈るばかりです。

 欧米の先進国で進んでいる若者の就職難はグローバルに広がり始めています。高度情報社会を謳歌する先進国にとって、かなり深刻な問題になっています。