ヒトリシズカのつぶやき特論

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持続可能性社会実現に向けた生物模倣技術の重要性を拝聴しました

2013年03月17日 | イノベーション
 東京都江東区内で開催されたシンポジウム「生物模倣技術(バイオミメティクス)がもたらす技術革新と博物館の役割」(主催は文部科学省科学研究費新学術領域「生物規範工学」)を拝聴しました。

 人類が開拓した、現在の人工物文明をどう考えるかという点で、大変示唆に富むシンポジウムでした。




 
 “生物模倣技術”“バイオミメティクス”とは、これまでは生物の機能を真似することでした。例えば、サメの肌表面の微細な凹凸などを真似した、水の流体抵抗が小さい水着などがその代表格です。東北新幹線の先頭車両の前に突き出た先頭部のデザインも野鳥のクチバシなどを模倣した、流体力学の賜物です。

 ただし、現在の生物模倣技術はまだ初歩的で、入り口に過ぎないようです。これからは真の生物模倣技術を実現したいという視点で、このシンポジウムは企画され開催されました。

 シンポジウムのまとめを担った東北大学大学院教授の石田秀輝さんは講演「結言:ネイチャーテクノロジーがもたらす持続可能性社会」の中で、「自然・生物はゴミを出さない」と解説します。地球表面は、太陽からの光や熱エネルギーを受け取って、多様で複雑な自然体系を創り出し、ゴミをつくらない持続可能性システムをつくり出していると解説します。地球で人類が長く繁栄できる持続可能性社会はこれからの研究開発成果にかかっていると主張します。

 今回のシンポジウムのテーマ名は「技術革新と博物館の役割」です。



 このシンポジウムを企画した東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授の下村政嗣さんは、「欧米などの博物館や動物園などは、自然・生物が持つ機能や生態系などを市民に分かりやすく伝える役目を本来業務として進めている」と説明します。大まかにいえば、生物学者が集めて体系化した自然・生物の“智恵”を、工学者などに伝えて、新しい工学体系をつくりたいと主張します。現在は、生物情報がまだ十分には伝わっていないといいます。

 下村さんは「問題提起持続可能性社会に向けた技術革新としての生物規範工学」として、以下のように主張しました。現在の人工物科学に基ずく工学などは、高温・高圧を利用し、化石燃料利用や原子力利用の発電を基に、金属材料ベースの文明を築いてきましたが、このままでは広義のゴミがたまってしまう。リサイクルなどの循環型社会を再構築するには、博物館にある生物標本・資料・論文などから、人類は学び直し、本当の循環型社会を目指す工学などを考え始めることが必要と説きます。

 生物のように室温に近い環境下で、穏やかな反応によって、目的の物質・材料などを創り出し、必要とする機能や機構を実現するには、まったく新たらしい反応などが必要となります。人類は、こうしたまったく新たらしい反応を実現する科学・技術体系を見いだすしかありません。まったく新しいイノベーションを起こすことは求められています。

 今回は壮大な話なので、細部は自分勝手な解釈を入れています。今後とも、循環型システムの持続可能性社会を目指す工学などを考え続けます。