2013年3月4日発行の日本経済新聞紙朝刊の1面に「社員の発明、会社に権利」という記事が載りました。
現在の安倍晋三内閣傘下に設けられた知的財産戦略本部(本部長は安倍首相)の傘下に設置された作業部会は、今後10年間の知的財産戦略ビジョンの“論点を整理”をまとめたようです。その中核は、職務発明規定を見直し、職務発明をした従業員が持つ特許権を、特許出願時点で企業が持つように修正する方向を示したものだということが、今回の報道記事の骨子です。
企業の研究者が従業員として“発明”した特許を、企業に譲る際に「相当の対価」を、企業は当該従業員に支払うという職務発明規定が特許法35条に定められています。この「相当の対価」の中身を従業員と会社が決める際に、従業員側が不満を持つことが多く、さまざまな訴訟が起き、それぞれ話題を集めました。
記事の中でも典型例として紹介している事例は、現在は米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授である中村修二さんが、以前に勤めていた日亜化学工業を訴えたものです。「青色発光ダイオード(LED)訴訟」と呼ばれたものです。その後も、いろいろな大手企業が元従業員から「相当の対価」を求める訴訟を受け、その度に話題を集めました。
こうした訴訟を減らすために、特許出願時に特許権を法人帰属(企業のもの)に変更したいというのが、今回、作業部会がまとめた論点整理です。
この問題の良し悪しは、なかなか難しいものです。日本の大手企業に勤める研究者(従業員)は、米国に比べて、給与所得水準が低く、ストックオプションなどによって巨額の報酬を得る機会がほとんどないからです。米国では、現行以上の地位(報酬)を求めて、転職することで年俸を高めていくことができます。
これに対して、日本はどの従業員もほどほどの地位・給与を安定的に受け取れるというのが、企業側の主張です。「みんながある程度、平等であることが幸せ」という考え方です。
ここで、大きく話を変えます。
3月3日に発行された朝日新聞紙が3面に掲載した「米財政 綱渡り続く」という記事の話です。米国オバマ大統領と共和党幹部の妥協案がまとまらず、米政府支出を幅広く一律に削る措置が実行されるという記事です。
米国の共和党とその支持者は、米国が英国から独立戦争を起こし(1775年4月から1783年9月)、自由を勝ち取る際に「できるだけ政府に頼らず、社会保障や福祉への政府関与は少ない方がいいと考える人が多くなった」と解説しています。小さな政府と自律的な国民がいいという考え方です。
日本では「皆保険」制度など、社会保障や福祉は政府の責任という考え方が支持を集めています。前政府の民主党だけではなく、自民党・公明党も原則は大きな政府指向です。
職務発明規定を見直し、企業に有利な規定に変更するために、企業は政府を動かして、法律を変えようとしています。国民だけではなく、日本の企業も“大きな政府”志向です。「お上がいうので、従う」という文化は、日本国民に根付いています。
米国の共和党支持者(WASP=ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントなどの白人・富裕層が中心)の小さな政府志向は、「自分の権利・安全は銃(ガン)で守る」という志向にもつながっています。米国も日本もそれぞれの国民は、大きな政府と小さな政府の選択に、その短所と長所の兼ね合いに深く悩んでいます。
現在の安倍晋三内閣傘下に設けられた知的財産戦略本部(本部長は安倍首相)の傘下に設置された作業部会は、今後10年間の知的財産戦略ビジョンの“論点を整理”をまとめたようです。その中核は、職務発明規定を見直し、職務発明をした従業員が持つ特許権を、特許出願時点で企業が持つように修正する方向を示したものだということが、今回の報道記事の骨子です。
企業の研究者が従業員として“発明”した特許を、企業に譲る際に「相当の対価」を、企業は当該従業員に支払うという職務発明規定が特許法35条に定められています。この「相当の対価」の中身を従業員と会社が決める際に、従業員側が不満を持つことが多く、さまざまな訴訟が起き、それぞれ話題を集めました。
記事の中でも典型例として紹介している事例は、現在は米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授である中村修二さんが、以前に勤めていた日亜化学工業を訴えたものです。「青色発光ダイオード(LED)訴訟」と呼ばれたものです。その後も、いろいろな大手企業が元従業員から「相当の対価」を求める訴訟を受け、その度に話題を集めました。
こうした訴訟を減らすために、特許出願時に特許権を法人帰属(企業のもの)に変更したいというのが、今回、作業部会がまとめた論点整理です。
この問題の良し悪しは、なかなか難しいものです。日本の大手企業に勤める研究者(従業員)は、米国に比べて、給与所得水準が低く、ストックオプションなどによって巨額の報酬を得る機会がほとんどないからです。米国では、現行以上の地位(報酬)を求めて、転職することで年俸を高めていくことができます。
これに対して、日本はどの従業員もほどほどの地位・給与を安定的に受け取れるというのが、企業側の主張です。「みんながある程度、平等であることが幸せ」という考え方です。
ここで、大きく話を変えます。
3月3日に発行された朝日新聞紙が3面に掲載した「米財政 綱渡り続く」という記事の話です。米国オバマ大統領と共和党幹部の妥協案がまとまらず、米政府支出を幅広く一律に削る措置が実行されるという記事です。
米国の共和党とその支持者は、米国が英国から独立戦争を起こし(1775年4月から1783年9月)、自由を勝ち取る際に「できるだけ政府に頼らず、社会保障や福祉への政府関与は少ない方がいいと考える人が多くなった」と解説しています。小さな政府と自律的な国民がいいという考え方です。
日本では「皆保険」制度など、社会保障や福祉は政府の責任という考え方が支持を集めています。前政府の民主党だけではなく、自民党・公明党も原則は大きな政府指向です。
職務発明規定を見直し、企業に有利な規定に変更するために、企業は政府を動かして、法律を変えようとしています。国民だけではなく、日本の企業も“大きな政府”志向です。「お上がいうので、従う」という文化は、日本国民に根付いています。
米国の共和党支持者(WASP=ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントなどの白人・富裕層が中心)の小さな政府志向は、「自分の権利・安全は銃(ガン)で守る」という志向にもつながっています。米国も日本もそれぞれの国民は、大きな政府と小さな政府の選択に、その短所と長所の兼ね合いに深く悩んでいます。