ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

装着型の作業支援ロボットシステムの製品化・事業化の話の続きです

2014年03月09日 | イノベーション
 筑波大学発ベンチャー企業のサイバーダイン(CYBERDYNE、茨城県つくば市)などの数社が、医療・福祉・介護分野向けの“ロボットスーツ HAL”のような作業を支援する装着型の作業支援ロボットシステムを製品化し事業化し始めた話の続きです。昨日2014年3月8日編に内容がいくらか重なります。

 福祉・介護分野向けの装着型ロボットシステムの中では、サイバーダインの“下肢用HAL”が一番有名なようです。新聞や雑誌、WEBサイトなどの記事やテレビ番組などでよく取り上げられているからです。

 最近、パナソニックの子会社のアクティブリンク(奈良市)は、2015年から装着型の「パワーローダー」を医療・福祉・介護分野向けにも適用する事業戦略をとったそうです。

 アクティブリンクは、2003年6月にパナソニック(当時は松下電器産業)の社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」に、現在同社の社長を務める藤本弘道さんが仲間と一緒に応募して設立したカーブアウト型ベンチャー企業です。パナソニックが株式の99パーセントを出資(保有)する子会社です。パワーアシストロボット「パワーローダー」を開発し、レスキュー作業や建設作業、工場作業など向けの支援ロボットを開発してきました。

 アクティブリンクは当初、100キログラム以上のモノを運ぶ作業を支援する建設作業支援に重点を置いて、“パワーローダー”の実用化を進めていたようです。2013年3月に、三井物産が資本の19パーセントに当たる4400万円を出資し、用途開発などを手がける営業面を強化し、30キログラム以下のモノを運ぶ用途開発も始めたようです。



 見た目は、“ミニミニガンダム”に乗っているような感じの、“重機”ロボットです。

 以前、ある機会にお目にかかった藤本さんは研究開発者という雰囲気の方でしたが、三井物産と資本提携し、マーケティングした結果、軽作業用の「パワーローダー」の製品化を重視するように事業戦略を修正したようです。最近は、ある経済誌の取材に対して「1体当たり50万円程度の製品化を目指す」と語っています。

 2014年2月27日に、菊池製作所と東京理科大学教授の小林宏さんが共同で設立したベンチャー企業のイノフェス(東京都葛飾区)も“マッスルスーツ”という作業補助・福祉用の機器を製品化する事業を始めます。同社は、小林宏さんのの研究開発成果である空気圧で作動する“人工筋肉”を利用するものです。

 小林さんも1台当たり30万円から50万円の手頃な価格の物流作業や介護作業を支援する“マッスルスーツ”を製品する計画です。

 こうした装着型の作業支援ロボットシステムの製品化、事業化が最近、活発になった背景には、行政による公的な研究開発支援が大きいようです。例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「生活支援ロボット実用化プロジェクト」を、経済産業省がそれぞれ2013年8月に高齢者の自立支援、介護実施者の負担軽減に資するロボット介護機器の支援として「ロボット介護機器開発・導入促進事業」を進めました。この支援企業の一覧をみると、医療・福祉・介護分野向けの装着型の作業支援ロボットシステムはまだ参入する企業が出てきそうです。

 たとえば、和歌山大学が研究開発している農業用の作業支援ロボットシステムは、弊ブログの2012年9月27日編に紹介しています。東京農工大学でも研究開発しています。こうした各大学の研究成果を基に参入する企業が増えていきそうです。日本市場で互いに競い合って、独創的ないい製品を実用化してもらいたいです。