新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

デマに踊らされていたとは

2020-02-29 08:07:32 | コラム
トイレットペーパーとボックステイシュが売り切れとは:

この原因が「中国から原料の輸入がなくなる」とか「マスクと同じ原料なので何れ品薄に」とのデマが出回った為だと聞かされた。スマートフォンを持っていない私にとっては、かなり興味あるデマだと思って寧ろ感心してしまった。一般の方ならば製紙業界の原料事情などをご存じな訳がないから、この手の根拠がないデマに踊らせられるのも尤もかと思った次第。


私にとっては先に挙げた「中国からの原料の輸入がなくなる」というのに最も興味を覚えた。そう言う理由は「中国は確かに今や世界最大の紙類の生産国だ。だが、事原料となると世界最悪の資源小国であり、パルプも古紙も大半を輸入に依存している」のだから。後難を恐れずに言えば「中国の製紙会社は自国の原料事情と国内消費量を顧みることなく設備投資に走った結果で、アメリカを追い抜く世界最大の生産国になった。しかしながら、原料を輸入に依存し、過剰な生産量を全世界に向けて輸出する以外生きる道がなくなった」のである。

一寸古い話を持ち出せば、故鄧小平氏はW社を訪問して「私は木材を買いに来たのではない。木を育てる方法を教えて貰いに来た」と言ったのは、社内では誰知らぬ者なき有名な話だった。彼は自国の資源不足問題を心得ていたので、教えを乞いに我が社を訪れたのだった。

その中国から我が国が製紙原料を輸入するというのはあり得ない筋立てだが、他の産業界ではこの度のコロナウイルス問題に関連して中国から部品等の輸入が途絶えがちであるとの危機感を訴える報道があったので、デマを流そうと思った連中はこの危機感に乗じたのだろうと読んだ。アメリカなどは最近まで中国に対する世界最大の古紙輸出国だったが、中国政府はその輸入古紙に混入する禁忌品の余りの多さに、アメリカからの輸入を制限し始めているのだ。その中国が原料を輸出する訳はないのだ。

トイレットペーパーやテイシュペーパー等を総称して衛星紙というが、私にとっては守備範囲に入ったことがない分野なので統計等にも疎い。だが、我が国にはクリネックス、エリエール、ネピア等の3大メーカーがあるし、静岡県に行けばトイレットペーパーを製造する多くの中小メーカーがあるし、四国も有力な供給源であり、供給体制は十分に整っていると思う。また、市場では次に紙おむつ(実際には紙ではなくパルプが使われているが)の買い占めも始まったとの報道もある。この原料のパルプも国産は兎も角、アメリカ等から十分に輸入出来る態勢にあると思う。

最後に「マスクと同じ原料」というのも好い加減な話だ。確かに不織布で出来ているマスクもあるが、我が国でそこまで原料の供給が出来なくなるほどのことなど考えられない。何れにせよ、私の担当外の分野での出来事だが、買い占めだの買い溜めに奔走するべき製品ではないと言えると思っている。2~3日前に我が家の反対側にあるイオン系の食品スーパーの「マイバスケット:の店頭からボックステイシュならぬプラスティックスフィルム包装のテイシュペーパーが消えていたので不思議なことだと訝っていたが、デマが原因だったと知らされて納得した。




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