新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

マスコミのUKのEU離脱関連の報道は不思議だ

2016-06-26 07:44:40 | コラム
EUには離脱した国の輸出に関税をかける規程があるのか:

23日にUKの国民投票(referendum)で離脱と決まるや、報道が過熱している。投票前にしきりに警告されたことが「もしも離脱となれば、UKに進出しEU域内に製品を送り込んでいた我が国の企業が新たにかけられる(だろう)関税で大いに不利になる」だった。だが、報道の主流は「残留」に傾いていたと思ってみていた。確かに、もしも離脱となればEU圏内のみならず世界全体に政治・経済・外交等の面で大きな影響があるとは報じられていた。中には、UKに進出している企業は代替地を検討すべきという論もあった気がする。

だが、先ず私はEUの規程など知りもしないと言って置くが、実際にはドイツが主導するEUでは離脱後直ちにUKから域内に輸出(出荷)される貨物に関税をかけるとは決まっていないような雰囲気なのだ。即ち、EUが離脱するUKに対して如何なる措置(制裁)を採るかはこれから決まることのようだが、マスコミ報道は我が国のUKに進出している企業の問題点ばかり採り上げて報じている気がする。関税をかけられて困るのは出荷する企業だけではなく、買い手側も買値が上がって喜ぶ者だろうか。言うなれば、関税賦課は「だろう話」のように思えてならない。

今回離脱という投票の結果が出て、私は初めてUKにも移民というか流入した廉価な労働力に大いなる不満を持つ層があり、アメリカと同様にそのような低学歴と若年層が職の不安定に悩まされ、言わば反体制派に回っていったのだと、知り得たのだった。マスコミ(や識者)は何故最初からそういう見方を示さなかったのだろうか。何故進出企業の不利にしきりに焦点を絞ったのだろうか。知っていて触れなかったのか、知らなかったのか、不思議なことだと思う。

私はこの事案に余り関心がなく、深く考えてもいなかったが、離脱派の中に大きな割合を占めたのが上記のような層だったと知らされて直ちに閃いたのが、既に昨日採り上げたアメリカではトランプ氏が大統領選挙で勝ってしまうのではないかということだった。念を押すまでもないとは思うが、トランプ支持の主力には本来は民主党支持だったはずの低学歴層や恵まれざる労働者たちがいたのだし、彼は移民を閉め出そうと主張しているのだ。

離脱派の勝利に終わるや株式市場は大揺れになったし、為替相場も大きく変動し、マスコミが常に騒ぎ立てる円高となってしまい、産経でさえ手詰まりだと報じている始末だ。離脱となればこうなることくらいは考えなくても解りそうなことだが、こういう負の面を採り上げた厳しい警告を余り見ていなかった気がする。知らなかったか、こういう事に疎い一般市民が不安な状態に陥るか、恐慌状態にも似たようなことになるかも知れないとは考えていなかったのかな。

私はEUの首脳であるドイツその他の指導者がこれから然るべき対策というか対抗策を鳩首会議して打ち出してくるのだと思う。そこにはマスコミが騒ぎ立てような悪い事態を生じないように、即ち世界に混乱を生じさせないような手が打たれると思って少しだけ期待しているし、そうすべきだと思っている。危機だの何のと騒ぎ立てて人心を不安にさせるのは未だ早いのではないかと思うのだが、如何。報道だけ見ればEUは無為無策で右往左往しているだけのようだが、そんなことはあるまい。

不思議に思うことは、去りしサミットで安倍総理が「リーマンショック級」と言い出した内容には、UKの離脱が不安材料にはなかった気がすること。しかし、現実に国民投票が離脱派の勝利に終わっただけでこの騒ぎだ。先の見通しか不明確だったのは必ずしも我が国の識者やマスコミだけではなく、EU諸国も同じだったような気が、少しだけする今日この頃だ。



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