新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

COVID-19用ワクチンに思う事

2021-05-14 08:37:27 | コラム
2回の接種を終えたという話を聞いた:

どうして、ワクチン接種の予約がこれほど難しい作業になってしまったかは知らないが、4月12日だったかから医療従事者への接種が開始され、遂に我々高齢者の番になったのだった。だが、5月の半ばに至っても「予約が取れたぞ」という声を殆ど聞いたことがなかった。そこに、2008年まで出演していたラジオ局のデイレクターさんが「家内が2回接種を終えた」と言われるので、詳細を聞けば、何の事はない病院の事務方だった。

そこに神奈川県下のH市に住む級友からは、同じ市内で病院を経営する同期生に「この街でもワクチンが確保できたので、病院でも受け付ける」と、定期検診の際に告げられたそうだ。そこで、早速その募集の2日目に電話で申し込み、2回目までの予約が取れたと知らせてきた。それでも、1回目の接種日は5月28日だそうだった。当方は既に述べたように、今月の29日の新宿区の5月分の最後の一口が取れており、家内は息子の協力で6月分の予約がネットで2日で採れたという幸運(なのだろう)。

二男とも語り合ったのだが、どうすれば朝から晩までPCの前に座って挑戦し続けたり、電話をかけ続けることから離れられるのかと。何故、新宿区では1回目の接種を終えないと2回目の予約が出来ないような制度にしたのか、少なくとも高齢者を除けば20万人以上も残っている人たちをどうやって処理するのか、区役所か保健所には一度感染した者の記録があるのか、感染者の抗体がどれほど持続するかの調査を終えているのか、現在よりも効率的な応募方法を編み出せないのか(例えば、誕生日の末尾一桁を取ってゼロから順に割り振っていくとか)などを検討したのだった。

だが、結論としては「何はさておいても、十分にワクチンが確保されていないことには、何も前には進むまい」となって終わった。何処かで報じられていたことは「我が国のように先進の経済大国の中では最も感染者も死者も少ない現状では、何もファイザーだけに限ったことではあるまいが、我が国に対して優先的に供給しようとは計画しないのではないか」だった。

そういう考え方もあるだろうが、永年のアメリカの対日輸出企業に勤務していた経験からも言えることは、月並みではあるが、交渉の鍵は押しと粘りに懸かっていると言わざるを得ない。どう考えても、ファイザーは同社というかアメリカ市場(史上?)でも希な“producer’s market”(一般的には「セラーズマーケット」だろうが)の状況下にあるので、並大抵の交渉術では玉の確保は難しいだろう。

私は何も一般価格よりも高く買えとは言わないが、アメリカの企業における「輸出」に対する考え方と扱いに触れておこう。アメリカという市場は需要の規模も大きく、地域としても広大だ。その市場では国内の需要を賄っていれば十分に経営が成り立つので、その昔は輸出に対してさほど熱心ではなかった。そこで、そこに発生したものの考え方は「海外に販売すれば(即ち、輸出だが)国内よりも高値が通るので、国内の需要家には失礼して外販すると仁義を切る」のだったのだ。裏を返せば、それほど内需に重きを置いていたのだった。

私には製薬業界の思想と経営哲学がどうなっているかは知り得ようもないが、ファイザーは既に増収・増益と公表している。問題は同社が「今こそ千載一遇の利益を挙げる機会」と看做しているか、「ここでは、全世界が熱望ているワクチンを利益を度外視しても、可能な限り大量に安定供給しよう」と考えているかだと思うのだ。EUのブリュッセルの工場からの域外への出荷に制限をかけた姿勢などを見ていると、二進法の思考体系で、EU域内優先策など採られては、我が国などは一溜まりもないだろう。



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