太平洋を挟んでM&Aが:
目下の所、アメリカと日本国内で中々の規模の買収の話が進んでいる。その対象になっているのがアメリカのUSスティールと我が国のセブン&アイ・ホールディングスである。
日本製鉄のUSスティールの買収:
既に取り上げたように日本製鉄のUSスティール買収は先ずトランプ氏が反対を唱え、ハリス副大統領も放っておく訳にはいくまいと反対を唱えて、暗礁に乗りかけた感が濃厚。私はアメリカ製造業界の実情に暗いトランプ氏はUSWと労働者と組合の保護を理由にして反対を始めたと見ている。ハリス副大統領にしたところで反対の理由も似ている。
世界の鉄鋼業界の実情、即ち中国が世界最大の粗鋼生産国となって世界の市場を席巻した為に、アメリカを始めとする諸国の製鉄会社が経営不振に陥り、USスティールも深刻な不振に悩んでいるのだ。その会社を救おうと日本製鉄が乗り出したところ、トランプ氏とハリス副大統領が「労働者階層の保護」を唱え始めたのだが、USスティール社そのものが反対しているのではない事はご存じなのかと奇異に感じている。
カナダのアリマンタシォン・クシュタールがセブン&アイ・ホールディングスを:
次はセブンイレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングスが買収されるかもいう話。私は「コンビニエンスストア」(=コンビニ)の価値が未だに良く理解も認識も出来ていないので「我が国の人々の生活にとって欠くべからざる存在のコンビニが外国資本に買収されては・・・」と言って危機感を訴えるマスコミ論調について行きかねている次第だ。
今を去ること48年前のことだった。シアトルで目的地までの道を教えられた際に「セブンイレブンの角を曲がって」というのがあった。何の事だろうかと不思議に思って、商社の駐在の方に運転をお任せした。行って見れば、なるほど小規模な商店があった。転勤してきて間もない彼も「何を売っている店ですかね」という程度の認識だった。それが「コンビニエンスストア」だと教えられて、初めてアメリカでは色々な商売を始めるのだと解った。
そのコンビニであるが、私は三菱商事の傘下にあると思うローソンの竹増貞信社長がその経営の難しさを語って「24時間というか深夜営業による電気その他のエネルギー、人件費、品揃え、フードロス対策、商品の受け入れ態勢等々コスト上昇の負担が増加する一方で、小売価格を据え置く訳にも行かずに悩まされている」とその苦境を語っておられた。「フードロス」対策などは特に頭痛の種だという・。故にと言うか、私はコンビニで買うと割高になると思うので、余程のことがなければ利用したことがないのだ。
我が国ではセブン&アイ・ホールディングスが傘下のイトーヨーカドーの業績不振に悩み、徐々に撤退を開始したところに、カナダでコンビニエンスストア“Couch-Tard”(=クシュタール)を運営するアリマンタシォン・クシュタール(Alimentation-Couche-Tard)が買収を持ちかけてきた。セブン&アイ側は過小評価であるとして拒否の退勢。この会社は百貨店のそごう西武の経営が上手く行かずに売却した実績がある。
アリマンタシォン・クシュタールはカナダのケベック州モントリオールの近郊に本部を置く企業である。カナダの事情などを知る由もないが、セブンイレブンを持つセブン&アイ・ホールディングスを狙ってきた以上、何らかの勝算があるのだろう。だが、我が国の経済情勢はと言えば、自由民主党総裁選の候補者たちが景気回復や円安克服やデフレからの脱却を訴えている状態だ。
それでなくとも、多くのコンビニの店舗が24時間営業の継続が困難と言っている時に、アリマンタシォン・クシュタールが買収を仕掛けてきた根拠は何なのだろうか。現在の人手不足はコンビニ等々でセルフレジに切り替えて、外国人を雇用した程度で解消できる性質だとはとても思えない。セブン&アイ・ホールディングスが如何なる手法で買収を回避するか、アリマンタシォン・クシュタールに何か秘策と目的があるのかを見守っていきたい。
アメリカでは大統領候補者たちがUSスティール買収について反対を唱えているし、連邦政府の機関も乗り出しかねない雰囲気もある。我が国では自由民主党総裁選の候補者も立憲民主党の候補者たちも、このアリマンタシォン・クシュタールの件には触れていない。「国民の生活に欠くべからざる存在」というマスコミも経過報告だけで、反対を唱えないのは何か理由があるのだろうか。
参考資料:Wikipedia