Englishにもお国訛りがあると解る:
今回取り上げたいことは「同じEnglishであっても、国別と同じ国の中でも地域別でアクセントも何も違ってくる」という事なのである。
今朝のニュースでUNICEFのアフリカの所長の女性が語るところが流されていた。聞こえてきた英語がKing’s Englishではなかったので「意外だな」と思った。調べてみればアフリカ事務所長のようだった。
何故意外に感じたかと言えば、この種の国際的な機関で言わば管理職の地位にある方々の多くは(ヨーロッパの方が多いので)King’s Englishのアクセントで語られるのだ。だが、今朝程のアデル・ホドルさんがそうではなかったのは一寸意外だった。私の理解では、ヨーロッパの方は圧倒的に正調のイギリス語系(King’s English系)なのである。それは歴史的にも地域的にも理解できる現象だ。
English(英語でも良い)を教えるにしても学ぶにしても、このような違いがあることを知らないと、おかしな事になってしまう。嘗てテレビに数多く登場されたダニエル・カール(ドイツ系アメリカ人、Daniel Kahl)のように「山形訛り」を正調の日本語だと思って覚えてしまうことになるのだ。
そこで、先ず国別にどのような違いがあるかと言えば、大別して「英連合王国系の諸国に普及しているKing’s Englishとその系統」と「アメリカン・イングリッシュ」があると認識して良いと思う。
イギリス語(UK系)の特徴:
ここでは便宜的に「イギリス語」としてある。だが、我が国には最初に入ってきたのが世界の至る所に植民地を有していたイギリス(当初は英連合王国=UKとは言わなかった)だったこともあり、イギリス語即ちKing’s Englishが支配していたようだった。この言葉は私が屡々例に挙げるようにローマ字が近い発音で“o“は飽くまでも「オ」と発音し、アメリカ式のように「ア」とはならないような例があるのだ。
それだけではなく、UKのEnglishでも首都のロンドンの中で地区によってはLondon Cockneyという訛りがある。解りやすい例を挙げれば“a”を「アイ」と発音するのだ。その手っ取り早い例に「サッカー界の貴公子(何処が?)」と呼ばれるDavid Bechamは自らを「ダイヴィッド・ベッカム」と名乗っていた。こういう訛りがあることは出自を告白しているのと同じになってしまう。
Cockneyはこれだけに止まらず、オーストラリアやニュージーランドというUK系の諸国に引き継がれている。オーストラリアの歴代の首相の中にはAustraliaを躊躇なく「オーストライリア」と発音する人がいたのは紛れもない事実。オーストラリアの日常的な挨拶“Good day, mate.”は「グッタイ・マイト」となっている。
また、“I came here, today.“は私の好む訛りの例で「アイ・カイム・ヒア・トゥダイ」と発音する人は多い。「今日ここに死ぬ為に(to die)来た」と聞こえかねないのだ。
この傾向はニュージーランドにもある。我が社の中央研究所にいた博士号を持つ研究者と話し合った時に“basis weight”を「バイシス・ウワイト」と言われて一瞬「何の事」という表情になったらしく、これを見た彼は「ベイシス・ウエイト」と言い直したのだった。話を飛躍させるが、私は「このような訛りがあるオーストラリアやニュージーランドに英語を学習に行くのは如何なものか」と唱えている。いや、UK系と言っても良いのかも。
アメリカ語の南部訛り:
あの広い国土を考えて見て欲しい。地域で違いがあってもおかしくはないだろう。私は1972年8月に初めてアメリカに入り、目的地ジョージア州アトランタの空港に降り立った。ホテルへのシャトルバスがあると聞かされていたので、地上勤務の若い女性に訊いた。すると何と理解して良いのか途方に暮れるようなゆったりと歌うかのような言葉が返ってきた。でも何とか聞き返さずにバスには乗れた。初めての南部訛りだった。
このアトランタの事務所で担当の課長級の現地人(と敢えて言う)と約1時間話し合った。内容は理解できたと思った。そこに、ニューヨークから着任したばかりという若手のBertがやってきて「君はあの南部訛りと会談して話が通じたのか。素晴らしい。私は未だに彼等の南部訛りは殆ど聞き取れない」と言って嘆いて見せたのだった。南部訛り(Southern accent)とNYの訛りはそれほど違うという事。
実は、南部訛りには尊敬されない恨みがある。ビル・クリントン大統領は出身地のアーカンソー州の訛りが消えていなかった。1995年に香港に行った帰りの機内で隣に座ったビジネスマンは某大手の香港支社長でスタンフォード大学のMBAであると自己紹介した。彼に何気なく「クリントン大統領の南部訛りを聞く度に、何とかならないのかと思わざるを得ない」と言ってしまったのだった。
するとどうだろう。彼は私に握手を求めて「外国人の貴方が良く言ってくれた。我々はもう少しまともな英語を話す者を大統領に選ぶべきだったと反省している」とまで言うのだった。この例は些か極端で偏見的だが、南部訛りがどのように見られているかの例にはなると思う。
アメリカ東海岸:
基本的には南部のような極端なアクセントも訛りもない。だが、一般論としては「早口」で喋る傾向がある。我が事業部のニューヨーク州の名家の出身者がいた。彼の語り方を揶揄して「彼は今話している単語が終わらないうちに、もう次の言葉を話しているので困る」と社内で言われていた。大坂なおみさんはNY育ちではないはずだが、あの速さはNY出身者であるかのようだ。
アメリカ中西部:
何処かと言えばシカゴを思い浮かべて頂きたい。ヒラリー・クリントン(HI rally Clinton)はシカゴ出身で言わば言語明瞭のようである。この地区の出身者は「我らこそが正調のアメリカ語である」と胸を張る傾向。確かにその通りだとは思うが、クリントンさんは“r“を必要以上に響かせる発音をするので、品格がない。それはthirdやunderstandのような単語では“r“を強く発音するのは上品ではないとされているから。
アメリカ西海岸:
ロッキー山脈の西側で、大雑把に言えばカリフォルニア州、オレゴン州と我がワシントン州である。ここに生まれ育った人たちは「我らこそが正統のアメリカン・イングリッシュである」と公言する。私も同感である。それは早口ではないし、クリントンさんのようでもなく、我々にも真似しやすい発音であるから。私自身のことを言えば「これと英連合王国系の間を取るよう」にして明快に聞こえるように努力した。
その他:
例えば、フィリピンに行けば明らかなスペイン語訛りが聞こえて、植民地だった頃の影響が感じられる事がある。だが、フィリピンの人たちの英語の質は高いのである。
結び:
要するに「訛りがあるからと言って、他国や他の地域のEnglishを批判するのはfairではない」と言って良いと思うのだ。