ブラック企業で働く若者の権利を守っていこうと、若手弁護士たちが発足させた「ブラック企業被害対策弁護団」(代表・佐々木亮弁護士)。9月5日に開かれた設立記念のシンポジウムには、実際にブラック企業で働いていた若者も参加し、その実体験を告白した。
【関連記事:ブラック企業の共犯者!? サービス残業大好きのブラック社員にどう対抗すればいい?】
なかでも印象的だったのは、東北の被災県から来たという20代前半の女性の話だ。女性は従業員数百人のマッサージ事業を行う会社で約3年間、働いていたという。仕事の内容は、リゾートホテル内に設置されたマッサージコーナーで、宿泊客を相手にエステやマッサージを施すというものだった。
●求人募集で見た条件とまったく違う「長時間労働」
「求人には『正社員』と記載されていましたが、実際は『外交員』と言われました。勤務時間も、午後4時から11時か12時までとなっていましたが、実際の出勤時間は午後1時からで、不満に思っていました」
また、入社時にはないと聞かされていた「ノルマ(月ごとの売り上げ目標)」も課せられ、未達成を理由に給料が引き下げられた。女性は「とても達成できるような金額ではなかった」と振り返るが、中には自腹を切ってノルマを達成する同僚もいたという。
「月末になると定時を伸ばされ、売上が悪いと、『公休日を一日減らして出勤してほしい』と会社から言われました。休日出勤しても給料は増えず、逆に翌月、一日多く休むと給料を減らされました」
このような長時間労働や非現実的なノルマ要求のために、社員はどんどんやめていく。だが、会社は特に対策を打つわけではない。改善を要望しても、「会社の決まりなので」の一点張りだったという。
「社長は『人は宝』とよくおっしゃっていましたが、宝のように大切にされているなと感じたことは、一度もありませんでした。『こんないい環境で働ける会社はない』『会社に感謝して働きましょう』とも言われていましたが、感謝するところがまったくないと感じました」
●「親に相談しないように」と朝礼で釘をさされた
「新卒で入った、初めての会社」だったこともあり、この女性は労働相談に行くまで、会社のおかしさに気づかなかったという。「会社が言うからこれで正しいと思っていたんです」。
彼女に続いて、同じ会社で働いていたという別の20代前半の女性がマイクをにぎった。こちらの女性が指摘したのは、本来ならば会社が一部を負担しなければいけない社会保険に関する問題だ。
「会社は『社会保険のほうが多くとられるから、国民保険のほうがいい』と勧めてきました。どうしてもおかしいと思い、自分の親に相談したうえで、会社にそう伝えると、翌日みんながいる朝礼で『親に絶対に相談しないように』と言われました」
この女性もホテルでのマッサージ業務に従事していたが、仕事のストレスで円形脱毛症になってしまった。妊娠した同僚女性が、「おめでたいことだけど、やめてもらうことになるから」と、会社から退職勧告を受けたのも耳にした。
このほかにも、残業手当や深夜手当がきちんと支払われていないなどの問題があり、二人は会社をやめることを決意。弁護士にあいだに入ってもらって、未払賃金の請求を行いながら、それぞれ6月と7月に退社したという。
(弁護士ドットコム トピックス)