チェンマイ大学陶磁資料室への初回訪問時、担当教授は不在だったが、幸いにも陶磁資料室を見学することができた。窯址発掘調査で出土したと思える、サンカンペーンの破片を展示するケースの中に、青磁刻花文の断片が展示されていた。
そのことは、2015年7月1日付けの当該ブログ「チェンマイ大学陶磁資料室#2」で紹介した通りである。それは当該ブロガーにとっては初見であった。しかし異なる窯址の断片の可能性もあり、再確認は必須であった。
それに関し、8月6日に再訪したが残念ながら、またもや担当教授は不在であった。事務室のような部屋にいる人に尋ねると、アポイントがとれるとのことで、8月7日午前10時半とした。その時刻に三度目の訪問である。
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20年ぶりに正門からのアプローチである。そこから構内循環の1番バスに乗り込み、目的の陶磁資料室にむかった。
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破片を取り出し手で持ち、写真撮影も許可して頂いた。○と左右に○があるような結び文は印花文で、山谷のような二重線の文様は刻花文で、その二重線の間に点を刻んでいる。更に鍔縁には盛り上がった波文様をみる。これは細く伸ばした粘土紐を貼花にしたものである。
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上の写真はその鍔縁を拡大したものである。印花、刻花、貼花とおよそすべての技法を用いている。サンカンペーン愛好家には御存知の方もおられたと考えるが、当該ブロガーにとっては初見である。
その文様は、パヤオやナーン・ボスアックに通じるような印象であり、従来考えていた以上に、サンカンペーンは幅広く奥行きも深いものがある。ただ残念だったのは、またもや聞き忘れた。サンカンペーンのどこの窯址から出土したのか?
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聞き漏らしたもののヒントは胎土にある。みると薄い灰色で磁器質に近く白化粧されていない。過去この種の胎土を見た記憶がある。それはワット・チェンセーン古窯址で陶片採取すると、固く焼きしまった灰色胎土であった。その採取片に白化粧があったのか、無かったのか思い出せない。帰国後その陶片の再確認が必要である。
いずれにしても、サンカンペーンには、この種の複合技法は存在しないと、思っていただけに想定を超える印象である。再度サンカンペーンのオリジンや影響関係の再構築が必要であるとともに、サンカンペーン陶磁ではなく、サンカンペーンの陶工が参考にした他窯の陶磁が、サンカンペーンの窯跡から出土した可能性も残っている。更なる追求が必要であろう。誰か当件に関し見識をお持ちの方は、コメントをお寄せ頂きたい。