杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

松井妙子染色画展

2008-05-09 22:48:03 | アート・文化

 連休明けから怒涛のお仕事モードで、3日間、息つく暇がありませんでした。忙しいのはありがたい限りですが、5日間の坐禅の日々がウソのよう。お菓子やカップめんや冷凍ピザの食事が続き、気がつくと、全身に発疹ができ、お腹の調子も…。一種のデトックス反応でしょうか。

 7日から松坂屋静岡店で松井妙子先生の染色画展が始まりました。今日(9日)夕方、やっと時間がとれて、会場にうかがいました。

 

 

 事前に、しずおか地酒研究会会員の小楠さんから、「初日午前中に行かないと買えないってホント?」と聞かれ、「松井先生の作品は、ファンが1年越しに待ちわびているから、福袋のときみたいに開店前から並んで、10時と同時に6階ギャラリーまでダッシュしなければ好みの作品は買えないよ」と返事。小楠さんは半信半疑で7日朝9時から並び、10時になったら本当にダッシュする人がいて大慌てで後を追ったそうで、「9時に並んだときは1番だったのに、ギャラリーにゴールしたのは3番目だった。悔しい~!」とメールが来ました。それでも希望通りの『富士山とカワセミ』をゲットできて溜飲を下げたようです。

 そういえば、磯自慢酒造の寺岡社長も松井作品の大ファンで、本当に初日朝、エスカレーターを駆け上がって買われたことがあります。2月に映画撮影にうかがったとき、杜氏さんや蔵人さんたちの休憩室に、松井先生のふくろうがドーンと飾ってありました。

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 このご時勢、客がバーゲン並みの勢いで美術ギャラリーに殺到する作家がほかにいるでしょうか。大げさではなく、松井先生の個展は、ずーっとこの調子です。ひところに比べ、確かに高額の大型作品が初日に完売…とはいかなくなりましたが、ファンが1年間、コツコツとお小遣いをためて、初日朝一に駆けつける、その光景は松坂屋での個展が始まった13年前、いやそれ以前、新静岡センターギャラリーで開催していた頃から続いているのです。私も、センターで開催されていた頃、自分の小遣いで買える小品が奇跡的に1枚残っていたのを、迷わずゲットしました。購入できたのは、未だにその1枚だけです。

 

 

 先生の作品は、自然と動物を主人公にしたメルヘンの世界。お母さんが子どものために「きれいなもの、愛らしいもの、素直に感動できるものを見せたい」と思う、その心にドンピシャとはまるような、100%垣根なしに純粋な気持ちになれるものばかりです。この作風を、松井先生は30年来変えていません。それどころか、年を経るごとに構図は大胆に、色彩は鮮やかに、キャラクターはますます愛らしくなっています。作品はどんどん若返り、生命力に満ち溢れるようです。

 

  今年は、故郷金谷の茶畑やSLや富士山を題材に、おなじみのふくろうやカワセミが自然と融和するシンプルなテーマの作品が多いように見受けました。お母様の介護で家を空けられず、いつものように国内外各地にスケッチ旅行へ出かける機会が少なかったせいもあったでしょう。それだけに、先生の心の原点がすんなり伝わってくる、印象的な個展となりました。

 すでに私が買える額のものは残っていませんが、13日までの会期中、出来る限り通って心の活力をいただき、ついでに身体の毒素も出しきってしまいましょう。

 

 

 なお、松井先生の作品展は、9月27日(土)~11月3日(月・祝)まで、島田市金谷のお茶の郷博物館開館10周年記念として展示公開され、過去の秀作が一堂に会します。こちらもぜひお楽しみに。