杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

喜久酔at W.S.J

2008-05-15 10:11:22 | しずおか地酒研究会

 昨日(14日)は、青島酒造の瓶詰め作業を撮影した後、カメラマン成岡正之さんのオフィスで、1月から撮り溜めておいた青島酒造の仕込み作業8時間分を、深夜までかかって通しチェックしました。しずおか地酒研究会の会員を中心に始めた製作資金集めが、現在、目標額の約半分まできたところで足踏み状態となっているため、10~15分ぐらいのパイロット版を作って試写の機会を設け、新規の寄付者を集めようと考えているところ。日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さんや、酒エッセイスト藤田千恵子さんなど、私が個人的に信頼し、過去の地酒研活動にもご協力いただいた有識者の方々が、東京で夏頃、試写会をやりましょうと申し出てくださったのです。

 

 

 本当なら、地元静岡でそういう声がもらえたら、と願っているのですが、地元というのは、蔵元や取引店のしがらみとか、お酒の講座や愛好会の主宰者にしても、特定の店や蔵との関係が強いせいか、なかなか、すんなり、手を上げてくれないんですね。東京の有志から、評価の機会をもらえるというのは、ある意味、静岡吟醸がたどってきた歴史と重なる部分があります。今、撮っている蔵元さんたちの思いを、多少は疑似体験できるんだと割り切って、夏の試写会に向け、編集作業に臨もうと思います。

 

 

  

  深夜まで映像を凝視したにもかかわらず、今朝は気分爽快に目覚めました。画質も音も、そして主人公の青島孝さん&蔵人たちの表情、言葉、動きの一つひとつが素晴らしかったから。成岡さんも、「演出したわけじゃないのに、いい台詞を、絶妙なタイDsc_0033ミングで云うんだよなぁ、彼は」と青島さんをベタ褒めです。

 たとえば上槽シーン。槽の搾り口から滴り落ちる松下米を、一口含んで、数秒の沈黙のあと、「…生まれました」と一言つぶやく・・・現場で見ていた全身サイズの彼と、映像で眼にフォーカスされた顔面アップの彼では、その一言の重みや響きがガラリと変わります。ライターとして取材に追われ、記録写真を撮るだけで精一杯だったこれまでの酒蔵経験では得られなかった、青島さんの感動と同化できる時間が、そこにありました。

 

 皆造祝いで蔵元と蔵人が一献傾ける席では、ほろ酔い加減の青島さんが「正月に呑んだ、うちの吟醸、こんなに美味い酒が存在するなんて世の中の人は知らないんだよなぁって呻っちゃったよ」と本音をポロリ。蔵人から「造った人間が自己満足してちゃダメですよ。その美味しさをどう世の中に伝えるかを考えなきゃ」とたしなめられています。

 私も、今、撮っている映像に対し、「こんなにすごい酒造りの映像が存在するなんて、今はまだ世の中の人は知らないんだよなぁ」って気分は自画自賛状態。他人が聞いたら、アホかと思われるかもしれませんが、私も成岡さんも、スチール撮りに加わった山口嘉宏さんも、それだけの力のある被写体から、気持ちの部分で同化できるぐらい、多くのものを受信しているわけです。その感動を、あまり変に凝らずに素直に表現できたら、と思っています。

 

 

  

 昨日は嬉しいことがもう一つ。以前、このブログで「某メジャー新聞に青島酒造の記事と、私が映画撮影中に撮った写真が載ります」とお伝えしたとおり、4月18日付けのTHE WALL STREET JOURNAL ASIA版に掲載されました!

Dsc_0022

 

 先月末に青島さんから「東京のジョン・ゴントナーさん(アメリカ人日本酒ジャーナリスト)から、載ってたねって連絡が来たけど、まだ見本紙が来ないんだ」と聞き、静岡でウォールストリートジャーナルが置いてある図書館や書店をあれこれ探したんですが、皆無。県国際交流協会に問い合わせてもダメ。新聞社の友人から「経済専門紙だから、銀行や証券会社の国際部あたりに聞いたら手に入るんじゃない?」と言われ、そのままになっていました。

Dsc_0020

 

 

  

 昨日になって、青島酒造に届いた見本紙を一部分けてもらい、ようやく紙面を見ることができました。もちろん英文ですから、単語を拾い読みしただけですが、取材テーマは“Japan`s national drink goes organic”で、松下米に象徴される有機の酒米によるDsc_0021酒造りの価値を紹介したもののようです。

 取り上げた蔵は、青島さんのほか、新潟、奈良の蔵元を合わせ、計3蔵。私が提供した5カットほどの写真のうち、仕込み蔵でタンクに櫂を入れる蔵人原田さんを撮ったものが使われました。残念なことに、キャプションが「Mixing the ingredients at Aoshima Shozu」の誤字。これさえなければ手放しで大喜び…ですが、まぁ、アジア版とはいえ、国際新聞に見開きカラーで載ったのですから、良としましょう。

 もし職場等で入手できる方は、ぜひご覧になって、コピーして、周りに方に配ってくださいね!

 

 

*吟醸王国しずおか映像製作委員会 会員募集

吟醸王国と謳われる質の高い静岡の酒造りをハイビジョンカメラで映像化し、後世に伝えるプロジェクト。応援してくれる個人・団体を募集しています。会員には、作品完成後、会費に応じた枚数のDVDを進呈。また会費に応じて特典DVD、あるいはご本人出演のオリジナル特典DVDを制作・進呈します。

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