杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

多田杜氏の故郷

2008-10-18 22:04:08 | 吟醸王国しずおか

 今日(18日)は一日、発熱でダウン。せっかくのいいお天気、たまった洗濯や布団干しをしたかったのに夕方やっと起きられました。疲れてる自覚もなくあちこち走り回った一週間でしたが、やっぱり歳なんだろうか…。それでも、オクラホマの妹から誕生日プレゼントが届き、間髪入れず、一昨日、新幹線の中に置き忘れた大事なカメラがJR新大阪の落し物係から無事届き、熱もちょっと冷めたみたい。カメラのCFカードに保存してあった岩手県北上市の撮影風景をチェックし、ブログを書き始めています。やれやれ…。

 

 

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 15日(水)~16日(木)と、『吟醸王国しずおか』の撮影で磯自慢の杜氏・多田信男さんの故郷へ行ってきました。16日に蔵入りをする多田さんを、北上の実家から焼津まで密着撮影するためです。本当は14日の蔵入り予定でしたが、農作業の遅れから、2日ズレ込むことに。同郷の2人の蔵人は予定通りすでに14日に蔵入りしました。

 

 

 

 多田さんは、北上の実家では8代続く稲作農家で、今はリンゴ栽培も手掛けています。ゆうに10町歩はある広々とした田んぼでは、東北生まれの寒さに強い品種ひとめぼれを、長男の徹さんと二人三脚で育てています。

 

 15日夕方、北上に着いた私は、多田家の夕食におじゃまし、妻のイクさんと長男の嫁の延子さんの手料理をごちそうになりました。多田家は、多田さんのお母様、多田さん夫妻、長男夫妻と子供の4世代住まい。独り暮らしが長い私にとっては、こんな大家族の食卓、テレビのホームドラマでも観ているようです。

 

 ごちそうのお礼…とまではいきませんが、『吟醸王国しずおか』パイロット版のDVDコピーをご家族に観てみらいました。磯自慢での仕事ぶりを初めて見るご家族は、それなりに感慨深いものがあったと思います。孫の悠くんが、おじいちゃんの酒がサミットの晩さん会に使われたことを学校でも話題にされて、「びっくりしたけど嬉しかった」と喜ぶ姿が印象的でした。

 

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 延子さんにぜひに、と勧められたのが、この地域の特産「二子芋」。柔らかくて粘り気のある上品な里芋です。静岡の石川小芋に似ているでしょうか。衣を着けて丸ごと揚げた芋ボール、マヨネーズ&みそ&かつおぶしのドレッシングで和えた和風サラダ風ボールDsc_0011、絶妙な風味の芋の子汁など、アイディア料理が次々と出てきます。デザートには、多田家の畑で採れたブルーベリーのヨーグルト&もぎたてリンゴ。…当たり前ですが、ふだんスーパーで買うリンゴとは比べようもないみずみずしさと香り!

  

 

 

 食事の後は、多田さんが懇意にする料理店「枕流亭」に、多田さん夫婦とご一緒しました。多田さんの来店を待ちわびていたというご主人は、磯自慢はもちろん、十四代や東洋美人など人気銘柄を次々と出してきて、「ここでも焼酎人気Dsc_0014のほうが高いが、日本料理には日本酒が合うに決まってるだろうと腹の中で憤慨しながら、顔で笑って焼酎の注文を聞くんですよ」とざっくばらんに語ります。岩手日報に載った「洞爺湖サミット・乾杯は南部杜氏の酒~北上の多田さん“大変名誉”」の記事を嬉しそうに見せてくれて、コピーまでしてくれました。

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 22時過ぎに、遅れて静岡から駆け付けたカメラマンの成岡さんが合流し、二子芋で作った「北上コロッケ」に舌鼓。二子芋づくしの特製定食は、北上の秋を満喫する最適の味でした!

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 翌16日、多田さんが乗る昼前の新幹線の時間まで、出来る限り、多田さんの故郷の実景を撮りだめておこうと精力的に回りました。やっぱり画になるのは、多田家の近くを流れる雄大な北上川と、そのほとりに広がる広大な田んぼ。…静岡ではなかなか見られない光景です。

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 多田さんが幼い頃、よく遊んだという家のすぐ近くの八幡神社や、これから収穫のピークを迎えるリンゴ畑、そして北上駅で奥さまに見送られるまで、約半年間、故郷を留守にする多田さんの表情とたたずまいをカメラにおさめました。…こういう暮らしを45年続けている職人によって、私たちは美味しい酒を享受できているんだということを、心のレンズに焼きつけながら…。

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 移動中の多田さんを撮影する成岡さんの手荷物や自分の荷物や多田家でいただいたお土産などを手に提げ、やっとこさっとこ焼津の磯自慢酒造まで辿りつき、さぁ、次は蔵元さんや蔵人衆たちとの半年ぶりの再会シーンを撮ろうとしたら、肩にかけていたはずのニコンD70が見当たらず、大慌て。蔵に着くまで、カメラをどこかに置き忘れていたこと、気がつかなかったんですね。焼津駅から乗ったタクシーの会社に連絡せども見つからず、可能性があるとしたら東京から静岡まで乗ったひかりの車内しかありません。

 

 

 昨年、「朝鮮通信使」のロケハンに九州へ行った時、新幹線の車内に財布と携帯を落として、JRに連絡したら奇跡的に見つかったという経験を持つ成岡さんから、「もう名古屋も過ぎちゃっているかもしれないけど、一応は座席付近を確認してもらえるから、ダメもとで連絡してみれば」とアドバイスされ、ダメもとで連絡を入れたら新大阪でピックアップしたとのこと。落し物係の職員が宅配便で送ってくれることになりました。「精密機械なので本来は取りに来てもらわないと。もし壊れても責任は取れませんよ」とブツブツ言われましたが、今日届いたカメラは、プチプチを何重にも巻きつけ、段ボールケースにデカデカ「精密機械につき割れ物注意」シールを貼って入れてありました。見直しましたよJR!

 

 

 昨日(17日)は、丸一日、仕事で静岡市内を走り回り、夜21時過ぎに帰宅したら風邪の引き始めのような重だるさ。明日~明後日と東京出張なので、なんとしてでも熱を下げねば…。

 

 

 北上は、静岡に比べて1か月ぐらい先の陽気で、朝晩の寒さは本格的な冬。多田家でも炬燵を出していました。新大阪まではぐれ旅をして舞い戻ってきたカメラに残る多田家の温かい食卓の画(プライベート写真なので未公表にします、スミマセン)が、いい風邪クスリになりそうです。