杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ナムカラタンノーふたたび

2010-07-11 22:26:14 | 仏教

 今年に入り、竹島義高さん、萩原和子さんのご主人等、永い酒縁でお世話になった方やお身内の方の葬儀に参列する機会が続いています。今日(11日)も、しずおか地酒研究会や吟醸王国しずおか映像製作委員会で物心ともにお世話になっている酒販店ときわストア&地酒Barイーハトーヴォ(藤枝市岡部)・後藤英和さんの娘さんをお見送りしました。

 

 

 今日の葬儀のなにが辛いって、親が子を見送らなければならない姿を目の当たりにしたこと・・・。以前、自分と同世代の働き盛りの男性が急死し、お通夜にうかがったときの、残された妻子がむせび泣く姿に言葉を失ったことがありましたが、今日の葬儀は、会場全体がむせび泣くといった状態でした。

 後藤さんの長女さつきさんは23歳になったばかり。中学2年のときから血液の難病と闘い、病室で受験勉強をしながら2年越しで大学進学を果たしたそうです。自分の病と向き合いながら、進学先の静岡大学農学部では生物化学と薬学を専攻し、いのちを支える職業を志していたそうですが、キャンパス生活はわずか2カ月。先週7月7日七夕の朝、天に召されました。

 

 

 さつきさんとは面識はなく、遺影のお顔が初対面でしたが、彼女が希望を捨てずに学校では勉強やクラブ活動に励んでいたこと、同級生と励まし合いながら薬学の道を志したことなど、同級生の弔辞や後藤さんの喪主挨拶を通して、気丈に懸命に生きた女性の確かな輪郭が浮かんできました。

 

 

 涙を懸命にこらえながら、さつきさんの闘病の様子を淡々と語り、最後に「参列してくれた同世代の若い人にぜひお願いします。命を大切にしてください。親は、子どもが生きていてくれるだけで幸せですから」と語気を強めた後藤さん。過去いくつか参列した葬儀の喪主挨拶で、これほど心に響くメッセージはありませんでした。

 

 

 曹洞宗の葬儀だったので、過去ブログでも何度かふれた“ナムカラタンノー”の『大悲呪』を久しぶりに唱えました。相変わらず難解な言葉ばかりですが、持参したお経の文字を無心で追っていくと、座禅会の時のおだやかな精神状態が思い返され、溢れ出そうな涙をしばし堪えることができました。

 

 しかし・・・帰路、カーラジオから、福山雅治さんの新曲で、余命わずかな女子大生を主人公にしたというドラマの主題歌が流れ、目の奥に溜まっていたものがホロリと落ちてきました。

 いのちのやりとりをエモーショナルなドラマにして視聴率を稼ごうとする風潮は好きではありませんが、こういうことは、ドラマの中のフィクションではなく、身近に本当に起き得ることなんだと思うと、いのちの尊さを、平易な表現でもつねに訴え続ける意義があるんですね。

 

 

 泣いても泣いても癒されないときは、大悲呪のような難解な言葉に無心で向き合う。…今のところそれぐらいしか思いつきません。