杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

じっくり育てる

2010-07-27 19:03:42 | アート・文化

 7月があっという間に過ぎて行きます。昨夜(26日)は部屋のエアコンから突如水が噴き出し、あわててOFFにして、ひと晩グッと我慢。今日(27日)も一日、扇風機だけでしのいでいますが。いつの間にかエアコンなしでは暮らせない生活になってしまった自分を反省しています。昨夜は夕食時に電子レンジも急に故障し、チンするつもりの冷凍ご飯を湯せんする羽目に。電化製品ってハカったように同時期にいくつも故障するんですよねぇ・・・。それにしても、今の生活でエアコンと電子レンジが使えないのは、あまりにもイタイ・・・。

 

 

 『吟醸王国しずおか』の構成台本づくりに四苦八苦する中、嬉しい励ましメッセージをいくつかもらいました。

 

 杉錦の杉井均乃介さんからは、先月の藤枝・掛川試写会の試飲酒提供のお礼にお送りしたオリジナルお猪口に対し、暑中見舞いを兼ねたお礼状をわざわざいただきました。私が風邪で体調を崩していたことをご存知で、温かい気遣いの言葉と、「映画は焦らずにじっくり作ってください」のメッセージ。日本酒という時間をかけて熟成させる醸造酒の造り手らしい言葉だなと思いました。ふだん会う人には「完成はいつか」とせっつかれることが多いだけに、被写体である蔵元から「焦らず作れ」と言っていただけるのがどれだけ有難いか・・・。

 ほんの少しですが、彼らの、対象とじっくり向き合うものづくりの時間感覚を共有出来たような気がしました。

 

 三島の某居酒屋のご主人からは、「パイロット版を2年前に某所で観て入会チラシをもらったんだが、今からでも入会できるか?」とのお電話。面識のない方でしたが、「自分も地酒をじっくり丁寧に売っていく大切さを、ここ2年ほど実感している。時間がかかっても理解してくれるお客さんを育てることを継続しなくては。映画作りの思いと一緒です」と真摯に語られるのを聞いて、ジーンときました。

 造り手は仕込みの時、売り手はお客さんを前にした時、自分ならカメラやパソコンのキーボードを操作する時、すぐに答えが出ないことにいらだち、不安と闘い、それでも安直な方法に逃げずに向き合う・・・同じ同志なんだと思えてきます。

 

 

 24日(土)夜と、25日(日)日中は、静岡音楽館AOIで演出家や演奏家の先生方をインタビューする仕事でした。

 

 

 AOIは、自主企画コンサートが多く、聞けば国内外の作曲家がAOIのために書き下ろした処女作や、AOIの舞台空間に合わせて既存のプログラムを大胆にアレンジし直したものを開催しているそうです。プログラムを企画する芸術監督や企画委員には日本トップクラスの作曲家や演奏家が名を連ねています(・・・といっても私はこの世界に疎くて、資料をもらって初めてそんな偉い先生方が運営していたのかとビックリ)。

 

 

 それでも、音楽という、カタチに残らない芸術作品を、お客さんに感動というカタチで伝え残す、舞台での一発勝負。よく知られた楽曲を、有名アーティストに演奏してもらうなら企画の苦労はありませんが、初演モノや、通は知ってても一般の静岡市民には「?」という現代音楽や民族芸能のプログラムを、一発勝負の舞台で披露するのはプレッシャーではないかしら。

 

 

 インタビューした先生方は「コンサートを企画するというのは、ただ曲を並べるというのではなく、企画者自身にやりたいもの、表現したいものが明確にあり、自分のそれまでの創作活動が投影される」「思想をもった企画を続けていきたい」と力強く語ります。

 

 

 時間をかけて、心あるものをじっくり育て、丁寧に伝え、それがすぐに数字上の評価につながらなくても、途中でやめない努力。

 自分が「産みの苦しみ」の中にいるとき、その努力を実践している人々にふれることができて、また新たな勇気が湧いてきました。