6月24日(金)の中日新聞朝刊に掲載された富士山特集の記事。短歌や俳句って自分の仕事にもとても参考になるんですね。日本語の語彙のひびきやリズムってキャッチコピーを考えるときに大事だと実感できる。その意味で、今回の富士山百人一首はコピーワークのお宝本にもなりそうです。ぜひご一読くださいまし!
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富士山百人一首と富士山百人一句~一千年の時空を超え、詠み継がれる富士賛歌<o:p></o:p>
<o:p> </o:p>静岡県は平成21年12月議会で、2月23日を「富士山の日」に制定し、23年2月23日には『富士見の式典』を執り行った。その際、参加者に配布された『富士山百人一首』。万葉の時代から現代に至るまで、富士山を詠んだ短歌を100首選んで歌集にまとめたものだ。約2万
部を発行し、県内の小・中・高等学校等と市町立中央図書館に配架するとともに、希望者にも配布している。<o:p></o:p>
県では詩歌を通じて富士山の魅力を掘り起こすユニークな試みに取り組んでいる。<o:p></o:p>
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富士山の日制定への思い
川勝知事は、平成23年3月発行の静岡県総合情報誌『ふじのくに』誌上で、富士山の日の制定に寄せる思いを述べている。
「1年の内で一番陽が短いのが12月下旬の冬至。ここから気温がグッと下がり、晴天の日が続く。この冬季にこそ、富士山は白雪を冠した神々しい姿を見せる。冬は富士見の季節である」
「冬に富士山を愛でる習慣は古くからある。『万葉集』で山部赤人が、<o:p></o:p>
天地(あめつち)の 分れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 富士の高嶺を 天の原 ふりさけ見れば 渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり 時じくぞ 雪は降りける 語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 富士の高嶺は<o:p></o:p>
と詠んでいる。彼には、雪で覆われる富士山が神の如く見えた。(中略)日本人の誰もがそう思ったからこそ、富士山はずっと歌い継がれてきたのだと思う」。<o:p></o:p>
富士山の日の制定にあたっては、富士山に対する知事自身の深い見識がベースにあり、〈富士山の歌〉にも格別な思いがあったようだ。<o:p></o:p>
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歌枕の宝庫・静岡県と富士山<o:p></o:p>
県では富士山の日を制定した翌平成22年、静岡市出身の歌人・田中章義氏の提案で、富士山を詠んだ古今の歌人の歌で、好きな歌・心に残る歌を一般から募った。集まった歌は約450首。応募者は静岡をはじめ、東京、神奈川、栃木、長野、愛知、岐阜、大阪、福岡の各都府県に及んだ。<o:p></o:p>
集まった歌から100首を選び出したのは、奈良県立万葉文化館長で万葉学者として名高い中西進氏、歌人で文芸評論家の馬場あき子氏、歌人で国文学者の佐佐木幸綱氏、そして田中章義氏を合わせた計4人の選考委員。10月19日、11月24日の2回に分けて委員会を開催し、100首を決定した。
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田中氏は近著『しずおか歌枕紀行』の冒頭で、「詩歌人が感性の拠り所とした土地を“歌枕“と呼ぶ。静岡県にも多くの歌枕がある。しかもそうそうたる歌人が富士山を詠んでいることに感動し、川勝知事に提案して富士山百人一首が生まれることにもなった」と述べ、平成23年5月27日にグランシップ(静岡市駿河区)で開かれた『富士山百人一首フォーラム』でも、「県民一人一人が、富士山を詠んだ歌の中から“お気に入り”を見つけてほしい」と呼び掛けた。
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富士山百人一首は、西暦660年頃の生まれとされる万葉歌人・柿本人麻呂から、1962年生まれの俵万智氏、1970年生まれの田中章義氏まで100人の歌人の生年月日順に歌を並べ、子どもたちでも愛唱できるよう、すべての漢字にふりがなを付けた。いくつかを紹介しよう。<o:p></o:p>
田児の浦ゆうち出でてみれば真白にそ不二の高嶺に雪は降りける(山部赤人)
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晴れてよし曇りてもよし富士の山もとの姿は変わりざりけり(山岡鉄舟)
遠つあふみ大河ながるる国なかば菜の花さきぬ富士をあなたに(与謝野晶子)
香貫山いただきに来て吾子とあそび久しく居れば富士晴れにけり(若山牧水)<o:p></o:p>
日本の哲学であり神である大富士の山をろがむわれは(野村清 *静岡県出身)<o:p></o:p>
和歌のリズムを子どもたちに取り戻したい<o:p></o:p>
川勝知事は富士山百人一首の制作意図の一つとして「七五調や五七調といった日本の歌の独特のリズム感を子どもたちに取り戻したい」と述べている。また田中氏も「世界最古の詩集とも言われる『万葉集』の時代から、人々が自然を愛で、家族や四季折々の大地の表情を三十一文字にあらわし続けている。千年規模での国民的な詩歌の文化遺産を持つ日本は、世界的にもとても珍しい国」と、和歌の価値を強調する(「しずおか歌枕紀行」より。)<o:p></o:p>
今年度は『富士山百人一句』募集<o:p></o:p>
第2弾企画として、県は現在、俳人によって詠まれた富士山の俳句を募集している。年度末には『富士山百人一句』としてまとめる予定である。昨今、身近な暮らしや自然をテーマにした詩歌や川柳づくりがちょっとしたブームにもなっており、ゆくゆくは富士山を謳った一般からのオリジナル短歌の募集も期待できるところだ。<o:p></o:p>
奈良・万葉の時代から1300年を経て今なお、富士山は日本人にとって何物にも代え難い“歌枕”であるに相違ない。(文・鈴木真弓)<o:p></o:p>
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■「富士山百人一句」募集要項<o:p></o:p>
世界最短の詩と呼ばれる『俳句』の中から、現代までに俳人によって詠まれた富士山の俳句を募集し、『富士山百人一句』を選定する。これまで耳にした富士山の俳句で、好きな句、心に残る句を募集。<o:p></o:p>
○応募資格 なし<o:p></o:p>
○募集締切 平成23年8月31日(水)消印有効
○応募先 〒420-8601 静岡市葵区追手町9―6 静岡県文化・観光部総務企画課(富士山総合調整担当)<o:p></o:p>
電話054-221-3776<o:p></o:p>
FAX 054-221-2980<o:p></o:p>
bunkakankou-kikaku@pref.shizuoka.lg.jp
○応募方法 はがき・FAX・メールにて一人3句まで。それぞれの句ごとに作者、出典、出自(句集・句誌名)を明記の上、住所、氏名、年齢を添えて。*「蝦夷富士」や「薩摩富士」などの見立て富士を歌ったものは除く。
○選考委員 有馬朗人(静岡文化芸術大学理事長・俳人)、芳賀徹(静岡県立美術館長・俳句研究者)、冨士眞奈美(女優・随筆家・俳人)、須藤常央(俳人・第45回角川俳句賞受賞)
○応募者には平成24年3月発行予定の『富士山百人一句』を進呈。<o:p></o:p>