杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

NPO協働フォーラムと映画上映会

2008-01-08 10:37:28 | NPO

 来る1月19日(土)、静岡県男女共同参画センターあざれあ(静岡市葵区)で開催する『NPO協働推進フォーラムinしずおか~協働から考える地域福祉社会』は、社会の担い手―今回はとくに地域福祉をテーマに、行政・企業・NPOが協働で取り組む事例を紹介しながら、社会を支えるしくみやネットワークのあり方を考えるシンポジウムです。

 第1部は11時から14時まで、あざれあ2階展示ホールで約50団体のNPOがブースを出し、活動紹介をします。静岡にどんなNPO団体があるのか、代表者はどんな人かを知る絶好の機会だと思います。ライブ演奏や飲食コーナーも予定。“オトナの文化祭”って感じになるでしょうか。

 第2部は14時から16時30分まで、6階大ホールでのシンポジウムです。行政や企業との協働で実績を上げた4人のNPO代表者に、企業側、行政側の代表を加え、トークセッションを行います(私はMCとして、最初と最後にちょこっとご挨拶させていただきます)。

 この4人のNPO代表者というのが魅力的な方々で、昨日も紹介した「活き生きネットワーク」杉本彰子さん、ハンディキャップを持つ子どもや様々なマイノリティの人々のアート活動を支援する「クリエイティブ・サポートレッツ」久保田翠さん(静岡市民の方には、旧西武百貨店工事中、シャッターに描かれた画でおなじみ)、袋井市のまちづくりセンターふらっとの運営で市民と行政職員の見事な協働を推進中の「たすけあい遠州」稲葉ゆり子さん、地域の中に子どもの遊び場を創出し、トムソーヤスクール企画コンテスト全国最優秀に輝いた「ゆめ・まち・ネット」渡部達也さん。この4名は、静岡県の地域福祉を語るには欠かせない実践者です。NPOや福祉に縁のない方も、<こういう生き方で、社会の中で自分を活かす方法を見つけたんだ>と実感できるようなお話が聞けると思います。

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 第3部は17時から20時まで、私が個人的にも非常に楽しみにしているドキュメンタリー映画『新・あつい壁』の上映会&トーク会です。55年前に起きた殺人冤罪事件で、死刑に処された男性がハンセン病患者だったことから、事件を題材に中山節夫監督が69年に『あつい壁』を、07年に、若いルポライターが真相を探るという構成で『新・あつい壁』を製作。今回の上映会が静岡での初公開となります。

 私は今、自分自身が、ライフワークで取材し続ける静岡の酒をドキュメンタリー映画にしようと準備をしています。プロジェクトを立ち上げて以来、数多くのドキュメンタリー映画を観て、生身の対象者に対峙し、自分の尺度で表現することの怖さ・難しさが少しずつ解ってきていたところです。『あつい壁』のように、社会の暗部に切り込み、多くの問題を掘り起こし、世に訴える作品を背負った作家の<生き方>は、今の自分に大きな勇気と刺激を与えてくれるでしょう。

 当日は中山監督も来場し、上映後に作品解説をしてくれます。ぜひ多くの方に来ていただきたいと思います。

 

 なお、19日の催しはすべて入場無料。事前申し込みも不要です。第1部からでも、2部からでも、3部からでも結構です。直接、あざれあへお越しください。

 また、『新・あつい壁』は3月15日(土)13時から、アイセル21(静岡市葵区)にて上映会(前売1000円・当日1300円)があります。上映会については静岡上映実行委員会の千原美樹さんまでお問い合わせください。


身近なニュース当事者

2008-01-07 18:16:56 | NPO

 アメリカに住む妹から、昨日のブログに対し「アラスカでもアンカレッジのような都会ではちゃんとゴミの分別してるよ。資源ごみはワシントン州まで船で運ばなきゃならず、予算が厳しく、市内を収集車がこまめに回れないので、市民が分別処理場まで捨てに行ってます。都会以外では確かにアバウトな住民も多いけど」とフォロー情報が来ました。

 妹の香織は昨年末に看護麻酔士(CRNA=Certified Registered Nurse Anesthetist)の資格を取得し、アラスカからオクラホマの病院へ転勤が決まり、RV車で夫と柴犬2匹&猫3匹と北米西海岸を移動中です。3週間ぐらいかかるみたいです。米国のサブプライムローン焦げ付きの影響でアラスカの家が売れず、オクラホマで新居を買うまで時間がかかるため、当分はRV車暮らしとか。

 CRNAの資格を持つ日本人はたぶんすごーく珍しいと思います。結婚後、30歳を過ぎてから向こうの大学に入って看護師になり、アメリカ原住民専用病院のICUで夜勤もいとわず努力し(ICU病棟では彼女の口癖「isoge!  isoge!」が合言葉になっていたとか)、CRNA資格取得のための大学院進学の費用と、その間の給料までゲットした彼女の話は本1冊分書けそうです。今後、このブログで小出しに紹介していきます。

   

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 今日は、午前中いっぱい、静岡県NPO推進室主催で1月19日に開催する『NPO協働推進フォーラムinしずおか~協働から考える地域福祉社会』の準備会でした。私はなぜかフォーラムのMCを担当し、同時にNPO広報誌の取材もするというハードな雑務を仰せつかりました。内容は明日改めてご紹介しますが、パネリストは杉本彰子さん(NPO法人活き生きネットワーク)、久保田翠さん(NPO法人クリエイティブ・サポートレッツ)、稲葉ゆり子さん(NPO法人たすけあい遠州)、渡部達也さん(NPO法人ゆめ・まち・ねっと)など百戦錬磨の活動家ですから、きっとマイクの奪い合いになるでしょう。

 

 会議が終わった後、活き生きネットワークの杉本彰子さんと、静岡市郊外の麻機にある自家野菜料理の店『菜園』にランチに行きました。自宅のリビングのようなフロアで、茶畑や野菜畑を眺めながら、その場で採った季節の野菜&ハーブ&フルーツを素材にした手作り料理を味わえます。手間のかけようといい、オーナー母娘のもてなしぶりといい、ここのランチ1500円は私の取材歴の中でも★三つモノでした!。

 彰子さんも「豪華なおせちやホテルのバイキングがご馳走とは思わない、こういう料理を時間をかけてゆっくりいただけることが真のぜいたく」とご満悦の様子(写真)。実はご本人、薬害によるC型肝炎を患っているのですが、24時間年中無休の家事・介護・子育て・障害者自立支援を担うNPO団体を指揮し、入院治療ができない状況。せめて日ごろの食生活だけでも見直そうと、自然治癒食を懸命に勉強しているそうです。

 医療や福祉という、まったなし・エンドレスの激務で必死に頑張っている彰子さんや香織が、ニュース紙面を騒がせる社会問題の被害者になっている、ということに胸が痛むと同時に、世の中の不条理をつくづく感じます。私には、活字を通してエールを送ることしか出来ませんが…。


タルキートナの花火

2008-01-06 09:29:43 | 日記・エッセイ・コラム

 正月明け締め切りの仕事にメドがつき、ゆうべ、年末にネットレンタルしていた『不都合な真実』を観ていたら、3年前のアラスカ旅行のことを思い出しました。

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 氷河クルージングをしたとき、目の前のラッコの大群と、氷河が勢いよく崩れ落ちる光景に多くの観光客に交じって喚声を上げていた私ですが、考えてみれば喜んで眺めている状況じゃないんですね。

 アラスカには当時、現地で看護師をしている妹が、連邦海洋大気局(米国の気象庁)に勤めるアメリカ人の夫と住んでいました。妹の家では、ごみの分別をまったくせず、生ごみも燃えるごみもペットボトルも空き缶・空き瓶も、みんなひとつのダストボックスにポンポン捨てます。

 2週間あまり滞在して感じたのは、「人間が生活するスペースなんて微々たるもの、少しぐらいごみが出てもなんら影響がない、それだけ圧倒的に自然が支配している土地なんだ」ということ。自然保護の必要性を切迫感を持って感じるようになるには、まだ余裕がある、ということでしょうか。確かに日本でも、都会ほど、ごみ分別が厳しく、地方ではまだ、燃える・燃えない程度の分け方しかない土地もありますよね。

 それでも、アラスカにも油田ルートの大規模開発等で、都会化の波は否応なしに押し寄せるわけで、ごみ分別不要の暮らしがいつまで続くのか気がかりです。

 アラスカで撮った写真ファイルを久しぶりに紐解いたら、帰国後、静岡コピーライターズクラブの仕事展に出展した自作の詩がファイルの中に混じっていました。タルキートナというのはアンカレッジから北へ180キロほど上った、マッキンリー登山口の村で、ちょうど、独立記念日のささやかなパレードを見ることができました(昨日の『ひまわり』に引き続き、まったく季節感を無視した内容ですみません)。同業者から珍しく「いい詩ですね」と褒められたことを思い出し、再掲しようと思います。

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 時計の針は午前零時を指そうとしている。

 窓の向こうは白濁とした陽光を漂わせている。

 マッキンリー山の登山基地として知られるタルキートナは、ゴールドラッシュやアラスカ鉄道開通で沸く開拓時代の残影を持つ、人口800人の小さな町。そして植村直己が最後に立ち寄った町だ。

 200574日は一日中、雲に覆われ、白くどんよりした日だった。独立記念日のお祝いに花火が上がると聞いて、空の色が変わるのを待ち続けた。日付が変わろうというのに空は何も応えてくれない。

 不意に、ポンポンと空砲が鳴った。光も色もない煙火の乾いた爆発音。あっという間の出来事だった。ワシントンDCにいる妹が首都の花火大会の華やかさを電話で伝えてきたが、アラスカの空は何も変わらなかった。

 開拓者がやって来る前の静けさは、この空の下のどこかで凍りついたまま眠っている。独立記念日のない国の登山家も、どこかで一緒に眠っている。

 音だけのささやかな花火は、彼らの眠りを妨げない、ささやかな心遣いであればいい。

                             


冬のひまわり

2008-01-05 11:03:05 | 環境問題

 年末年始に追われる仕事に、静岡県のSTOP温暖化アクションキャンペーン活動報告書づくりがあることから、テレビで地球温暖化問題を取り上げた正月特番についつい見入ってしまいました。夕べも、水没寸前のパプアの島や干上がったアラル海の映像が印象的でしたが、鹿児島で11月に真っ赤なスイカが採れたとか、東京湾の屋形船が水位の上昇で橋をくぐれないといった国内の身近な現象にこそ、いっそうの恐怖を感じます。

 一昨年、1県広報誌の取材で、御前崎総合病院花の会の皆さんにお会いしました。入院患者の癒しになればと、画像診断科チームが病棟2階に一部分だけある屋上に 花畑を作り、階下の天井内温度と4階天井内温度を測定比較するという実験をしたのです。わずかですが、花畑のある階のほうが、夏、外気温を遮断する効果があり、冬は保温効果があることがわかりました。

 同会は2006年度のSTOP温暖化準グランプリを獲得し、賞金でデジタル温度計を購入し、昨年は花畑直下の土の部分と土のないコンクリ部分の一日の最高温度と最低温度を調べました。

 ブログで紹介してもいいですか?と連絡したところ、チームリーダーの塚本隆男さんから「建物の緑化の重要性を実感し、病院周辺のゴミ拾いや敷地内の樹木を数え、Co2の吸収量も調査しています。それ以外にも職員の階段利用を奨励し、電力量を減らしたり、電力量をCo2に換算する報告書を作っています」と近況メールをいただきました。

 一見、環境問題とは縁のない病院の中の小さな試みかもしれませんが、患者さんのために花を育てようとし、少しでもCo2を減らそうと面倒な測定や報告書づくりに時間を割く職員がいる病院っていいなって、素直に感じます。塚本さんが送ってくれたひまわりの画は、「鹿児島の冬のスイカ」に衝撃を受けた私の眼を癒してくれました(もちろん、ひまわりを撮影したのは夏ですのでご安心を)。

 現在、編集中のキャンペーン参加団体活動報告の中で、どこが2007年度のSTOP温暖化グランプリを受賞するのか楽しみです。


浜名湖の佃煮

2008-01-04 11:47:36 | 社会・経済

 年始は元旦だけ実家で寝正月をし、2~3日と環境問題に関する報告書制作、今日は県商工会連合会の「しずおか・うまいもの創生事業」のパンフレットを制作中です。

 すでに07年11月20日付の日経新聞に紹介されましたが、現在、静岡県が育成した新しい酒米「誉富士」を使った純米酒、東伊豆の稲取きんめ、由比の桜えび、浜名湖魚介の佃煮を詰め合わせにした酒肴ギフトセットを開発しています。

 誉富士の酒は、すでに市販されているものと同じ酒を特注の瓶に詰め代えるだけですが、きんめ、桜えび、佃煮は、このセットのために新たに作るオリジナル商品。3軒の業者の皆さんと、味付け、量、パッケージ等々、一から考え、試行錯誤をしながら作っています。

 私は酒呑み代表として事業に参加し、言いたい放題のことを言わせてもらいつつ、稲取、由比、雄踏の各産地を訪問しながら、その土地に長く伝わる食文化の価値と、その伝統を伝えるために、新しい味を創り出そうと挑戦する意義を改めて実感しました。

Photo  今、描いているのも、商品パンフレットというよりも、各地の食文化や生産者の思いを伝えるメッセージ集のようなもの。先ほど仕上げた雄踏篇では、昨秋、東京のグルメ&レストランショーで試しに出品し、大好評だった赤足エビの佃煮(写真)をはじめ、浜名湖で獲れる珍しい貝や小魚や小エビを食べやすい佃煮に仕上げた山田光男さんを紹介しました。

 県商工会連合会では「この事業は、地方の小規模業者の全国への販路開拓が目的だから、首都圏向けに売り込みをしたい」と言っていますが、こういうものは、むしろ地元にこそ知らしめるべきではないかな・・・と思いました。

 静岡県民が、まずこのセットの価値を認め、「わがふるさとの自慢です」と言って、県外の知り合いに贈答してくれるほうが、長い目で見て、その業者にとってプラスになるような気もします。

 ちょうど1ヵ月後の2月5~8日、東京ビッグサイトで開催のギフトショーでお披露目です。その前にプレスリリースをかけると思いますので、ぜひご注目くださいね!