5月13日 おはよう日本
小さな子どもの場合
体育の指導が必ずしも運動能力を高めることにはつながらないということが
最新の研究でわかってきた。
5月5日に開かれた日本保育学会で
子どもの運動能力の研究を続けている東京学芸大学の杉原隆名誉教授による
意外な研究結果の発表に注目が集まった。
「(体育)指導している幼稚園より
指導していない園のほうが(運動の点数は)高い。
(体育)指導をすればするほど(運動の点数は)低くなる。」
研究チームでは25m走や立ち幅跳びなど6種目について
9,000人の幼稚園児の運動能力を調べた。
比較したのは
マット運動や体操など体育指導を受けていない子どもと
週に2回以上体育指導を受けている子ども。
すると受けていない子どもは30点満点で19点台だったのに対し
受けている子どもは18点台。
指導を受けていない子どものほうが点数が高かったのである。
東京学芸大学 杉原隆名誉教授
「こんなに大きな差が出たのは予想外。
なんとか子どもが体力や運動能力を高めて欲しいと一生懸命指導しているが
指導のしかたが子どもの発達的な特徴にあっていなかった。」
なぜ運動能力が伸び悩んでしまうのか。
かつて体育指導を取り入れていた幼稚園では以前は
前転や跳び箱など特定の種目を繰り返し練習していた。
ところが同じ運動を繰りかえすため
子どもが経験する動きの種類が限られてしまう。
説明を聞いたり順番を待つ時間も長く
運動をする時間は短くなる。
さらに強い競争心を持つ年代ではないので
出来ない子がやる気を失ってしまうこともある。
まどか幼稚園 町山太郎副園長
「子どもたちがやらされている同じ運動を
繰り返しているだけでは子どもの動きは限定される。」
どうすれば運動能力を高められるのか。
その解決策が遊びである。
杉原教授によれば
幼児期に見られる運動は
登る・運ぶ・走るなど本来30種類以上ある。
遊びを通してたくさんの種類の運動を経験することが
運動能力のアップにつながるというのである。
この幼稚園では自由に遊ぶ時間を毎日もうけている。
好きな遊びをすることで子どもは体をうごかすことに熱中する。
園庭にもその仕掛けを作った。
木に足場を作ることで「登る」
遊具をあちこちに置いてバランスよく「渡る」
手や足を使って「ぶら下がる」
楽しく自由に遊べる環境を作ることでさまざまな運動を経験する。
東京学芸大学 杉原隆名誉教授
「私たちのデータでも
遊びのほうがいろんな種類の運動をたくさんしているし
たくさんいろんな動きを経験している子どもの方が
運動能力が高いという結果は出ている。
1つの運動を繰り返して上達させる時期ではない。」
ところが自由にさせると自分からは活発に体を動かさない子どもがいる。
そこでこの幼稚園では遊びを盛り込んだ運動指導も取り入れた。
おしりをつき手や足の力を使って逃げる鬼ごっこは
体をうごかすのが好きではない子どもにも運動の楽しさを知ってもらうためである。
東京学芸大学 杉原隆名誉教授
「いろんな動きをしたくなる環境をつくってあげて
出来るだけ活発にたくさんの運動を
自分たちで工夫して楽しんで体をうごかすことが大事。
そうすれば意欲も高まり運動能力も高まるという好循環が出てくる。」