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目指せ!EU官僚エリートの養成所

2013-05-11 08:24:10 | 海外ネットワーク
5月5日 NHK海外ネットワーク


27か国が加盟するEUは信用不安の影響から抜け出せずにいる。
危機克服に向けた政策の立案と実行は5万人の官僚が担っている。
そのEU官僚の養成所ともいわれる大学がカレッジ・オブ・ヨーロッパ欧州大学院大学。
EUは二度の世界大戦を踏まえてヨーロッパを戦場にしないという決意のもとに
一つのヨーロッパを目指して拡大と統合を進めてきた。
カレッジ・オブ・ヨーロッパはその理念を実現する人材の育成を目的に作られていて
EU加盟国の資金で運営されている。

世界遺産に登録されているベルギー ブルージュ市の中心部。
そこにカレッジ・オブ・ヨーロッパ欧州大学院大学がある。
この大学で学んでいるのはEU加盟国を含め世界50か国から来た400人余。
EU官僚を目指す学生や各国の若手官僚など
ほとんどが国から奨学金を受けるエリートである。
数式を使った経済理論の授業。
英語とフランス語で行われる授業ではヨーロッパの政治統合など
EUが向き合う課題についても学ぶ。
(ドイツ出身の学生)
「ヨーロッパの信用不安があったのでこの学校で経済学を専攻している。
 危機克服のためEUで経済政策に関わりたい。」
(フランス出身の学生)
「ヨーロッパの鉄道自由化に関心がある。
 できればその分野で働きたい。」
授業のカリキュラムはEUの政策決定過程や域外との貿易政策など
通常2年かける修士課程を10か月で履修する。
大学は学生たちが共同で取り組む課題を出して積極的に協力し合うことを求めている。
寮に入って共同生活を送る学生たちは食事の際にもお互いの理解を深めていく工夫がある。
食堂には国旗。
この日のメニューは国旗が掲げられていたウクライナ料理である。
週替わりで各国の料理が出される。
椅子には旗が掲げられた国々の著名人の顔が描かれている。
多様な文化に触れることで互いを尊重しあうようになる。
卒業した後も続く人間関係が育まれていく。
卒業生にはデンマークのシュミット首相やイギリスのクレッグ副首相など
首脳級の政治家を輩出。
存在感を増す卒業生たちは絆の強さと大学のある地名から
“ブルージュ・マフィア”と呼ばれている。
大学の設立にはイギリスのチャーチル元首相が関わっている。
第二次世界大戦から戦火を見寺得た各国から若者を集め
“ヨーロッパ全体の利益を考えるエリートの養成しよう”と1949年に設立された。
(カレッジ・オブ・ヨーロッパ ポール・ドゥマレ学長)
「大学の目的は第二次世界大戦後のヨーロッパの平和に貢献することだ。
 その建学の精神は今でも変わっていない。
 各国から集まった人材が寝食を共にしヨーロッパの問題について学んでいる。」
ずらりと並ぶヨーロッパの首脳たちの写真。
入学式には毎年その時代のキーパーソンが訪れて応援している。

ブルガリア出身の学生ニコレッタ・アルノードバさん(23)は
EU官僚をめざし早くから準備を始め書類選考に必要な成績をとる努力を続けてきた。
ブルガリアの大学は首席で卒業。
語学学校にも通って英語とフランス語をマスターしたと言う。
一番の関心は移民問題。
ブルガリアの人たちがEUの中のより豊かな国へと流れだしたことがきっかけである。
(ニコレッタ・アルノードバさん)
「移民問題はグローバルな現象。
 50~60年後に移民が減っているとは思えない。
 ヨーロッパ委員会がシンクタンクに勤め移民問題に関わりたい。」
この日の授業は今の移民政策をテーマにしたディベート。
“労働者の技能の高さに応じて移民を制限すべきか”討論した。
(学生)
「実際には高い技能を持った移民の方がより深刻な影響をもたらす。
 中間層の賃金が押し下げられることで移民への“不寛容”が高まってしまう。」
(ニコレッタ・アルノードバさん)
「低い技能労働者の移民は制限することが必要だが
 私たちは移民そのものに反対はしていない。」
(教授)
「こうした授業で政策を立案していくうえでの考え方が理解できるようになる。
 実務で間違いなく役に立つ授業だ。」
アルノードバさんは移民をテーマにした卒業論文をまとめるため
EUの政策担当者に直接話を聞くことにした。
EU側も大学の学生の訪問を積極的に受け入れて協力している。
(ニコレッタ・アルノードバさん)
「卒業生たちによるしっかりとしたネットワークがある。
 大学の質が高いことは良く知られていてそのことは今後大いに役立つ。
 EUで働くという目標に近づいていると思う。」

4月25日 歴代の卒業生が集まる念い1回の同窓会が開かれた。
卒業生の中から毎年1人を今年の顔に選ぶ。
今年は日本との貿易交渉にも関わったEU外交を担うオサリバン氏が選ばれた。
こうして強いきずなが保たれるのである。
(オサリバン氏)
「私たちは“ブルージュ・マフィア”と呼ばれている。
 組織力の高さを指してそう呼んでいるのかもしれない。
 寝食をともにしながら学ぶという大学での経験は
 ユニークな個性と能力を生み出している。」
一つのヨーロッパという理念を掲げ
困難に課題に立ち向かうエリートを養成するカレッジ・オブ・ヨーロッパ。
信用不安から抜け出そうと模索が続く今 その重要性は増している。       

 

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