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作詞家 岩谷時子さん死去

2013-11-03 07:00:00 | 編集手帳
10月29日 編集手帳

越路吹雪さんがスターになる前である。
所属する東宝はまだ、
経費をたっぷりとはくれない。
ラジオ番組で歌う外国曲の訳詞も、
本職に頼めばお金がかかる。
仲良しの女性マネジャーに泣きついた。
「あんた、やってよ。
 (学校は)英文科でしょ」

当時の越路さんにお金がなくてよかったと、
しみじみ思う。
あったなら、
『君といつまでも』も
『ベッドで煙草たばこを吸わないで』も
『夜明けのうた』も、
この世に生まれていなかったろう。

作詞のサの字も知らなかったかつてのマネジャー、
作詞家の岩谷時子さんが97歳で死去した。

深い友情で結ばれた越路さんが亡くなったとき、
岩谷さんは『眠られぬ夜の長恨歌』と題する哀切な長詩を書いている。
〈越路吹雪よ/寒くはないか/私は寒い…/逢あいに行ってはいけないか/越路吹雪よ〉。
33年ぶりの再会に思い出話は尽きまい。

言葉の指で聴き手の胸にそっと触れる。
そんな人だった。
〈街はいつでも/後ろ姿の幸せばかり…〉(ウナ・セラ・ディ東京)。
あるいは
〈草は枯れても いのち果てるまで…〉(旅人よ)。
今宵こよいはさて、
どの一節をグラスに浮かべよう。
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