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非常識なだけの人

2013-11-09 07:00:00 | 編集手帳
11月2日 読売新聞編集手帳

六代目尾上菊五郎に愉快な挿話がある。
相談ごとがあって初代中村吉右衛門の家を訪ねたが、
話がまとまらない。
電話を借りるふりをして受話器を壊して帰ってきたという。

大人の常識を踏みはずすにしても、
〈役者子供〉は愛嬌あいきょうがあって楽しい。
〈議員子供〉には鼻白むばかりである。
秋の園遊会で、
山本太郎参院議員が天皇陛下に手紙を渡した。
足尾鉱毒事件で明治天皇に直訴した田中正造を演じたつもりかどうか、
原発事故に関する内容だという。

「国政に関する権能を有しない(憲法第4条)」
天皇にどうしてもらおうというのだろう。

皇室を“駆け込み寺”と心得ているのなら、
いまどきの人ではない。
悩める人々を救う駆け込み寺とは、
山本氏自身が所属する「国権の最高機関(同41条)」たる国会のはずである。
自分の立場も、
相手の立場も、
皇室に対するマナーも、
場所柄も、
何も考えず、無邪気に書いた手紙かも知れない。
幼稚である、

六代目の舞踊は「神は腰に宿る」と評された。
至芸があって許される〈役者子供〉である。
単に非常識なだけの人には〈議員子供〉の呼び名さえもったいない。
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