11月10日 BIZ+SUNDAY
今年四輪車の発売50周年を迎えたホンダ。
新たな軽自動車や低燃費車を相次いで発売。
リーマンショックで落ち込んでいた業績を急速に回復させている。
10月発表のグループ全体の中間決算の営業利益は前年比28%増。
好調なホンダだが販売台数は去年世界で約400万台。
これは世界8位。
トップのトヨタの半分以下で韓国のヒョンデ自動車よりも少ない状況である。
こうした中ホンダは2016年度の販売台数を600万台にする目標を掲げている。
そのために新興国需要の取り込みと国内で販売が好調な軽自動車でのシェア拡大に取り組んでいる。
率いるのは創業者の本田宗一郎氏(1947~73)から数えて7代目となる伊東孝伸社長(2009~)60歳。
技術者出身でリーマンショック直後にホンダのかじ取りを任された。
1978年の入社以来 技術者として新車開発に携わってきた伊東社長。
1990年に発売されたNSXではボディを開発。
世界で初めて車体をすべてアルミニウムで作り上げ自動車業界に衝撃を与えた。
リーマンショックから間もない2009年に社長に就任。
当時自動車メーカーは急激な売り上げの落ち込みに直面し大幅な減産や人員の削減に追い込まれていた。
就任直後から伊東社長は会社立て直しに奔走した。
リーマンショックで陥った厳しい状況を乗り切るためホンダは低燃費の小型車や軽自動車の開発を強化。
業績は回復し2012年度は世界の販売台数で約400万台に達した。
これを2016年度には600万台に引き上げる計画である。
6極同時開発。
この方法で作られたのが今年9月に発売された新型の小型車フィット。
低燃費が売りで国内の販売台数は2か月で約9万台。
目標を3倍近く上回る売れ行きである。
今後世界120か国で販売を始めることにしている。
これまでホンダでは新車を世界で販売する場合日本で設計し各国の生産拠点がそれに基づいて車を生産してきた。
その結果新興国では調達しづらい材料が必要になったり
現地のニーズに合わない品質が高すぎる部品を使うなどコストが高くなりがちだった。
そこで今回からは地域ごとに最適な設計を行うことにした。
1台の車を世界6つの地域の実情に合わせて同時に設計することにしたのである。
これが6極同時開発である。
たとえば車の骨格となるボディ。
日本や欧米向けの設計では薄くて高い強度を持つ超ハイテン材という鋼材を最硫黄している。
一方 新興国向けの設計では現地で調達医者翠通常の功罪を採用しコストを抑えた。
さらに部品も可能な限り現地で調達する。
ワイパーは先進国向けの設計では高速走行を想定して空気抵抗が少ないものにした。
一方 新興国向けのワイパーは安価なものを採用。
高速道路が整備されていない国では空気抵抗にこだわる必要は無いと割り切ったのである。
新興国向けと先進国向けでは数千点の部品が異なっていて
新興国向けは2割から3割ほどコストを抑えることができる見込みである。
(ホンダ 田中健樹主任研究員)
「今まではすべての地域で成立するような最大公約数的な車を作らざるを得なかった。
ある地域にとっては過剰品質だったりすることがあった。
今回は地域のお客様のニーズに的確に応えることができる。」
備品の現地調達を一気に加速させるというホンダの戦略に系列の部品メーカーは対応を迫られている。
燃料噴射装置などをホンダ向けに生産しているメーカーは自らの競争力を高めるため海外展開を強化している。
この春から専門部署を設け海外の拠点を一元管理している。
このメーカーでは3年間でインドやメキシコなどに新たに12の拠点を次々と開設。
ホンダの動きに対応しながらほかの自動車メーカーとの取引も増やそうと世界的な生産体制の整備を急いでいる。
(ケーヒン 田内常夫社長)
「ホンダも市場が新興国で伸びている。
より廉価なものを求めていろいろなサプライヤー(部品メーカー)と付き合うことになるのではという予想の上で
我々としても特に廉価な製品はアジアを中心に調達網をしっかり作ろうと
環境の変化に生き残っていけるように自ら行動した。」
伊東社長が国内100万台体制を維持するための鍵を握ると考えているのが軽自動車である。
一昨年12月に発売したN-BOXは発売から2年近くで累計441万台を売るヒットとなった。
最大の売りは室内の広さ。
「自転車が載るぐらいの容量があるのはすごくいい。」
「広さもそうだし細かい作り込みだったり上手に仕上げてあるなと思う。」
実はこの車が発売される前ホンダの軽自動車事業は低迷していた。
ダイハツ工業、スズキという2強の前にシェアはわずか10%だった。
軽自動車の立て直しを託されたのは浅木泰昭さん。
浅木さんはかつてF1のエンジンの開発に携わったベテラン技術者である。
軽自動車の開発を命じられたとき戸惑ったと言う。
(ホンダ 浅木泰昭執行役員)
「なんで私が
どういう人事かなと思った。」
売れる軽自動車を作るにはどうしたらよいのか。
浅木さんは主なユーザーである女性のニーズを徹底的に分析することから始めた。
ヒントは身近なところにあった。
(ホンダ 浅木泰昭執行役員)
「娘が一人で塾から夜中に帰ってくる。
もう親は心配でしょうがない。
うちもそういう状況でしたけど
『もう自転車置いて車で迎えに行くから待ってなさい』といっても言うこと聞かない。
次の日困るから。」
自転車を簡単に積める軽自動車を開発すれば家庭の支持を得るはずだ。
そう考えた浅木さんは自転車が無理なく積めるよう車の設計を根本から見直した。
なかでもこだわったのがエンジンの位置。
衝突の安全を確保できるぎりぎりまで前に出しその分室内の広さを実現した。
さらに誰でも簡単に自転車が積み込めるよう床を出来るだけ低く設計した。
限られた条件のもとで車を開発することはF1も軽自動車も同じだと浅木さんは言う。
(ホンダ 浅木泰昭執行役員)
「F1はレギュレーション[規則]があってどう解釈してどう対処するかで勝敗が決まる。
軽自動車のレギュレーションがあって排気量寸法が決まっているから
祖のレギュレーションをどういう技術で乗り越えるかで勝負が決まる。
ターゲットは違うけど手法は同じような考え方でやっている。」
この結果ホンダの軽自動車のシェアは2011年度の10%から2012年度は18%まで拡大した。
ホンダは今軽自動車のスポーツカーの開発も進めている。
11月下旬の東京モーターショーで一般公開する予定である。
戦後間もなく2輪車メーカーとしてスタートしたホンダ。
「スーパーカブ」は世界で8500万台を販売。
1963年 4輪車を販売。
1964年 日本メーカーとして初めてF1に挑戦。
マクラーレンと組んだ1988年には16戦中15勝と圧勝した。
ホンダはリーマンショックをきっかけに撤退した自動車レースの最高峰F1に再来年から再び参戦すると発表。
(ホンダ 伊東孝伸社長)
「このたび私どもはフォーミュラーワン世界選手権に参戦することを決定いたしました。
将来ホンダを担う若い技術者からもF1に挑戦したいという声が上がった。
そして何よりホンダは創業以来レースに参戦し勝利することで成長してきた企業です。」
次世代の指導者技術として注目される自動運転。
政府の成長戦略にも織り込まれメーカー各社の開発が加速している。
ホンダも目的地まで自動で走行する車の実用化を目指して研究を進めている。
今年四輪車の発売50周年を迎えたホンダ。
新たな軽自動車や低燃費車を相次いで発売。
リーマンショックで落ち込んでいた業績を急速に回復させている。
10月発表のグループ全体の中間決算の営業利益は前年比28%増。
好調なホンダだが販売台数は去年世界で約400万台。
これは世界8位。
トップのトヨタの半分以下で韓国のヒョンデ自動車よりも少ない状況である。
こうした中ホンダは2016年度の販売台数を600万台にする目標を掲げている。
そのために新興国需要の取り込みと国内で販売が好調な軽自動車でのシェア拡大に取り組んでいる。
率いるのは創業者の本田宗一郎氏(1947~73)から数えて7代目となる伊東孝伸社長(2009~)60歳。
技術者出身でリーマンショック直後にホンダのかじ取りを任された。
1978年の入社以来 技術者として新車開発に携わってきた伊東社長。
1990年に発売されたNSXではボディを開発。
世界で初めて車体をすべてアルミニウムで作り上げ自動車業界に衝撃を与えた。
リーマンショックから間もない2009年に社長に就任。
当時自動車メーカーは急激な売り上げの落ち込みに直面し大幅な減産や人員の削減に追い込まれていた。
就任直後から伊東社長は会社立て直しに奔走した。
リーマンショックで陥った厳しい状況を乗り切るためホンダは低燃費の小型車や軽自動車の開発を強化。
業績は回復し2012年度は世界の販売台数で約400万台に達した。
これを2016年度には600万台に引き上げる計画である。
6極同時開発。
この方法で作られたのが今年9月に発売された新型の小型車フィット。
低燃費が売りで国内の販売台数は2か月で約9万台。
目標を3倍近く上回る売れ行きである。
今後世界120か国で販売を始めることにしている。
これまでホンダでは新車を世界で販売する場合日本で設計し各国の生産拠点がそれに基づいて車を生産してきた。
その結果新興国では調達しづらい材料が必要になったり
現地のニーズに合わない品質が高すぎる部品を使うなどコストが高くなりがちだった。
そこで今回からは地域ごとに最適な設計を行うことにした。
1台の車を世界6つの地域の実情に合わせて同時に設計することにしたのである。
これが6極同時開発である。
たとえば車の骨格となるボディ。
日本や欧米向けの設計では薄くて高い強度を持つ超ハイテン材という鋼材を最硫黄している。
一方 新興国向けの設計では現地で調達医者翠通常の功罪を採用しコストを抑えた。
さらに部品も可能な限り現地で調達する。
ワイパーは先進国向けの設計では高速走行を想定して空気抵抗が少ないものにした。
一方 新興国向けのワイパーは安価なものを採用。
高速道路が整備されていない国では空気抵抗にこだわる必要は無いと割り切ったのである。
新興国向けと先進国向けでは数千点の部品が異なっていて
新興国向けは2割から3割ほどコストを抑えることができる見込みである。
(ホンダ 田中健樹主任研究員)
「今まではすべての地域で成立するような最大公約数的な車を作らざるを得なかった。
ある地域にとっては過剰品質だったりすることがあった。
今回は地域のお客様のニーズに的確に応えることができる。」
備品の現地調達を一気に加速させるというホンダの戦略に系列の部品メーカーは対応を迫られている。
燃料噴射装置などをホンダ向けに生産しているメーカーは自らの競争力を高めるため海外展開を強化している。
この春から専門部署を設け海外の拠点を一元管理している。
このメーカーでは3年間でインドやメキシコなどに新たに12の拠点を次々と開設。
ホンダの動きに対応しながらほかの自動車メーカーとの取引も増やそうと世界的な生産体制の整備を急いでいる。
(ケーヒン 田内常夫社長)
「ホンダも市場が新興国で伸びている。
より廉価なものを求めていろいろなサプライヤー(部品メーカー)と付き合うことになるのではという予想の上で
我々としても特に廉価な製品はアジアを中心に調達網をしっかり作ろうと
環境の変化に生き残っていけるように自ら行動した。」
伊東社長が国内100万台体制を維持するための鍵を握ると考えているのが軽自動車である。
一昨年12月に発売したN-BOXは発売から2年近くで累計441万台を売るヒットとなった。
最大の売りは室内の広さ。
「自転車が載るぐらいの容量があるのはすごくいい。」
「広さもそうだし細かい作り込みだったり上手に仕上げてあるなと思う。」
実はこの車が発売される前ホンダの軽自動車事業は低迷していた。
ダイハツ工業、スズキという2強の前にシェアはわずか10%だった。
軽自動車の立て直しを託されたのは浅木泰昭さん。
浅木さんはかつてF1のエンジンの開発に携わったベテラン技術者である。
軽自動車の開発を命じられたとき戸惑ったと言う。
(ホンダ 浅木泰昭執行役員)
「なんで私が
どういう人事かなと思った。」
売れる軽自動車を作るにはどうしたらよいのか。
浅木さんは主なユーザーである女性のニーズを徹底的に分析することから始めた。
ヒントは身近なところにあった。
(ホンダ 浅木泰昭執行役員)
「娘が一人で塾から夜中に帰ってくる。
もう親は心配でしょうがない。
うちもそういう状況でしたけど
『もう自転車置いて車で迎えに行くから待ってなさい』といっても言うこと聞かない。
次の日困るから。」
自転車を簡単に積める軽自動車を開発すれば家庭の支持を得るはずだ。
そう考えた浅木さんは自転車が無理なく積めるよう車の設計を根本から見直した。
なかでもこだわったのがエンジンの位置。
衝突の安全を確保できるぎりぎりまで前に出しその分室内の広さを実現した。
さらに誰でも簡単に自転車が積み込めるよう床を出来るだけ低く設計した。
限られた条件のもとで車を開発することはF1も軽自動車も同じだと浅木さんは言う。
(ホンダ 浅木泰昭執行役員)
「F1はレギュレーション[規則]があってどう解釈してどう対処するかで勝敗が決まる。
軽自動車のレギュレーションがあって排気量寸法が決まっているから
祖のレギュレーションをどういう技術で乗り越えるかで勝負が決まる。
ターゲットは違うけど手法は同じような考え方でやっている。」
この結果ホンダの軽自動車のシェアは2011年度の10%から2012年度は18%まで拡大した。
ホンダは今軽自動車のスポーツカーの開発も進めている。
11月下旬の東京モーターショーで一般公開する予定である。
戦後間もなく2輪車メーカーとしてスタートしたホンダ。
「スーパーカブ」は世界で8500万台を販売。
1963年 4輪車を販売。
1964年 日本メーカーとして初めてF1に挑戦。
マクラーレンと組んだ1988年には16戦中15勝と圧勝した。
ホンダはリーマンショックをきっかけに撤退した自動車レースの最高峰F1に再来年から再び参戦すると発表。
(ホンダ 伊東孝伸社長)
「このたび私どもはフォーミュラーワン世界選手権に参戦することを決定いたしました。
将来ホンダを担う若い技術者からもF1に挑戦したいという声が上がった。
そして何よりホンダは創業以来レースに参戦し勝利することで成長してきた企業です。」
次世代の指導者技術として注目される自動運転。
政府の成長戦略にも織り込まれメーカー各社の開発が加速している。
ホンダも目的地まで自動で走行する車の実用化を目指して研究を進めている。