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小説の中の“類例なき社会”と“ 類例なき傲慢”

2013-11-23 07:00:00 | 編集手帳
11月20日 編集手帳

その小説で、
中国は心理学者や社会学者の珍重すべき研究対象になっている。
なぜなら、
〈叔父や叔母がいない社会は人類の歴史に類例がなかったから…〉。
アーサー・クラーク『2061年宇宙の旅』(早川書房)で、
中国の「一人っ子政策」に触れた一節である。

若い頃、
酸いも甘いも噛かみ分けたおじさんやおばさんから処世の手ほどきを受けた経験をもつ人は多かろう。
「おじ・おば」のいない社会がいかなる様相を呈するかはたしかに興味深い。

北京からの報道によれば、
その一人っ子政策が曲がり角を迎えたらしい。

いまは一人っ子同士の夫婦に限って認めている第2子の出産を、
夫婦どちらかが一人っ子の場合にも認めることにしたという。
労働力の減少を懸念してのことで、
“類例なき社会”は作家の空想に終わるかも知れない。

同じシリーズの『2010年宇宙の旅』には、
もう一つの空想が語られている。
中国が空の星を勝手に自国領と宣言する。
〈史上はじめて、ひとつの国家が他の天体の領土権を主張した〉。
“類例なき”傲岸ぶりのほうはすでに、
尖閣諸島をはじめとして地上の現実である。
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