3月13日 国際報道2017
ヨハン・シュトラウス2世が作曲したワルツの名曲「美しく青きドナウ」。
オーストリアのウィーンで初めて演奏されてから3月13日で150年。
初演のとき
この曲に歌詞が付けられていた。
この歌詞に込められたメッセージがいま混乱が続くヨーロッパで見直されている。
音楽の都ウィーン。
モーツァルトやベートーベンといった名だたる作曲者阿智が活躍した町として知られている。
「美しく青きドナウ」の初演から150年を記念する式典が開かれた。
初演当時を再現しようと
現在は演奏されることが少ない歌詞の付いた曲が披露された。
ヨハンシュトラウス2世作曲 「美しく青きドナウ」
ウィーンっ子よ 陽気にいこうよ!
えっ どうして?
見回してみなよ!
だからどうして?
ほら ほのかな光だ
そんなもの見えないよ
ほら カーニバルだよ!
ああ 本当だ!
(参加者)
「歌詞付きはほとんど聞いたことがないので
すばらしいわ。」
「美しく青きドナウ」が初めて演奏された1867年。
そのころのウィーンは普墺戦争でプロイセンに敗れ経済が低迷。
さらにコレラが流行するなど苦難の時代だった。
そうした時代に作られた「美しく青きドナウ」。
オーストリアではいま歌に込められた思いを伝えようと
各地で展示会や講演会が開かれ話題となっている。
「作詞をした詩人のヨゼフ・ワイルは
歌詞を通して暗く沈んでいた当時のウィーン市民を元気づけようとしていた」と
研究者は指摘する。
(シュトラウス研究所 ノルベルト・ルーバイ教授)
「この作品の本質的な部分は次の歌詞に集約されています。
“過去を振り返るな
だから踊るのだ 踊るのだ”と。」
こんな時代はごめんだね!
こんな時代なんて!
悲しんだってどうしようもない!
そうだ そのとおり
悩んだりくよくよしてもしょうがない
だから楽しく陽気にいこうよ!
“困難があっても前向きに生きていこう”という歌詞に込められたメッセージ。
イギリスのEU離脱に反イスラムなどの排外主義。
そしていまだ実感できない景気の回復
ヨーロッパは数々の困難に直面している今
「美しく青きドナウ」のメッセージが人々の心に響いている。
2月に開かれた講演会。
作曲者のシュトラウス2世の遠い子孫で
オーストリアの最高裁判所の判事を務めるエドワルド・シュトラウスさんが
歌詞の1節を息子のトマスさんと朗読した。
どんなに経済がダメでも
まずは まあ踊ろうよ
昔の方が良かったと 悔いて悲しむことに 何の意味がある?
今をできるだけ大切にしよう
自分のことだけで精一杯になり排他的になりかねない時代だからこそ
「美しく青きドナウ」に込められたメッセージを思い起こすべきだと訴えた。
(参加者)
「この歌詞は重要です。
なぜなら今の時代楽しいことばかりではないですから。」
「“人生を楽しみなさい”という当時のメッセージは
今の困難な時代にも通じます。」
(エドワルド・シュトラウスさん)
「英国のEU離脱など不安や不満はありますが
心配ばかりしていても始まりません。
皆が前向きになればよくない時代を乗り越えられるでしょう。」
時代を超え
今もウィーンの舞踏会で流れる「美しく青きドナウ」。
これからの未来を
暗く衝突の絶えないものをするのか
明るく融和が進むものにするのか
全ては人々の気持ちしだい
150年を迎えた名曲。
当時込められたメッセージが
2017年 一層響いている。