3月13日 国際報道2017
東京電力福島第一原子力発電所の事故から6年。
当時 所長だった吉田昌朗氏が
生前
政府の委員会の聞き取りに対して
事故直後の対応などを語った証言の記録
いわゆる「吉田調書」が世界有数の原子力大国フランスで注目されている。
「吉田調書」のフランス語翻訳本。
400ページ
述べ28時間に及ぶ証言全てがフランス語に翻訳された。
3冊の本にまとめられる予定で
これまでにそのうちの2冊が出版された。
翻訳作業を取り仕切ったパリ国立高等鉱業学校 フランク・ガル二エリさん。
ガル二エリさんは
フランス有数の研究機関で原発などのリスク管理の専門家として研究を続けている。
3年前 吉田調書が公開されると
フランスの原発の危機管理に役立つと考え翻訳に着手。
当時の政府や東京電力などの関係者30人近くから聞き取りも実施してきた。
(パリ国立高等鉱業高校 フランク・ガル二エリさん)
「原発所長の証言が発表されたのは初めてです。
スリーマイル島やチェルノブイリでも存在しません。」
2月 翻訳にかかわったメンバーが集まり「吉田調書」の意義について意見を交わした。
ガル二エリさんたちが注目しているのは
事故の経緯や事実関係よりも
事故の責任者としての吉田元所長の感情や心理などである。
事前の想定を大きく超える事態に直面した時に
吉田元所長がどのような気持ちで決断を下していたのか
読み解くことができるという。
(メンバー)
「誤っているかもしれない情報を
たった1人で評価するという過酷な現実が提示されています。」
「公的な報告書には人間的な要素がありません。
吉田調書との大きな違いです。」
50基を超える原発があり
電力の7割以上を原子力発電に頼る“原子力大国”フランス。
幸いにもこれまで大きな原発の事故が起きたことはない。
ガル二エリさんは
深刻な事故を経験した当事者がいないフランスだからこそ
原発に関わる人たちが当事者の証言に触れる必要があると考えている。
(パリ国立高等鉱業学校 フランク・ガル二エリさん)
「いつか同じような状況に身を置いた場合に備えて
吉田調書を読んでおくことが重要です。」
この日ガル二エリさんはパリ近郊にある原子力・代替エネルギー庁を訪れた。
担当局長に調書の内容を説明。
想定外の事態に直面した際
責任者がどういう心理になるのか
極限状態になることを想定した事故対策の必要性を訴えた。
(フランス原子力・代替エネルギー庁 ジャンマルク・カブドン局長)
「大事故を経験していないフランスは
証言を聞き
人として危機管理に取り組むしかありません。」
(パリ国立高等鉱業学校 フランク・ガル二エリさん)
「吉田調書を直視することで
原子力に携わる機関が事故対策の改革につなげられるはずです。
吉田調書にしかない要素が存在し
科学的な検証の対象になるということを提唱していきたい。」
ガル二エリさんは福島第一原発を視察し
今後は「吉田調書」の証言をもとに
事故の経緯を映像化することも検討していうということである。