3月25日 経済フロントライン
東芝のとっての誤算。
その1つが原発の建設方法に関する見込み違いだった。
子会社のウェスチングハウスは4基の原発を
従来の原発より短い期間
しかも低コストで完成させる計画だった。
その切り札が「モジュール工法」と呼ばれる最新の建設方法である。
まず別の州にある複数の工場でプラント設備をある程度まで製造。
それをモジュールとして輸送し組み立てる工法である。
現場での作業を少なくすることで
工期の短縮とコストの抑制が図れるはずだった。
しかしその思惑が外れる。
ボーグル原発の建設について州政府が2013年にまとめた報告書。
運び込まれたモジュールの品質が悪く
作り直しが相次いで発生したことが記されている。
(ジョージア州 公共サービス委員会 スタン・ワイズ委員長)
「モジュールが現場に到着したとき
それが東芝やウェスチングハウスが期待した基準
あるいは規制当局が承認できる基準に品質が達していなかった。
結局現場で作り直さなければなりませんでした。
作り直しは簡単にできません。
そこでまた工期の延期とコストの増加が発生したのです。」
アメリカでは
1979年のスリーマイル島の原発事故のあと
30年以上にわたって原発の建設は行われていなかった。
建設のノウハウが途絶えていたのである。
最新鋭の工法に現場の技術力が追いつかなかったことが工期の大幅な遅れにつながったという。
(ジョージア州 公共サービス委員会 スタン・ワイズ委員長)
「作業員の技術が期待したレベルに達していなかった。
それは全くの予想外でした。」
もう1つの誤算は建設コストに関して電力会社と結んだ契約だった。
ウェスチングハウスが手掛けるV.Cサマー原発を発注した電力会社の資料。
そこに記されているのは「固定価格契約」。
電力会社が負担する建設コストの上限を76億7,900万ドルに固定すると定められている。
この固定価格を超えて追加コストが発生した場合
電力会社ではなくウェスチングハウスが負担するという内容である。
なぜ建設側に不利な契約を結んだのか。
原発の建設コストについて長年分析を続けてきた
エネルギー経済・財務分析研究所のデビッド・シュリッセルさん。
2008年 ウェスチングハウスはライバル会社との激しい競争の末原発を受注した。
その過程で電力会社側は自分たちに有利な条件を求めてきたのである。
Q.原発建設で固定価格契約が結ばれるのは通常のことですか?
(エネルギー経済・財務分析研究所 デビッド・シュリッセルさん)
「電力会社は
追加で発生したコストのすべてを
電気料金を支払う人々に転嫁することはできないと感じていました。
なのでウエスチングハウスにもリスクの一部を負担させたのです。」
結局 工期が伸びたのでウェスハウスは巨額の追加コストを負担せざるを得なくなった。
(エネルギー経済・財務分析研究所 デビッド・シュリッセルさん)
「私が予想するに“企業の傲慢”があったのではないか。
彼らは自分たちの新設計を使えば
原発を迅速かつ安価に建設できると信じていた。
しかしそれは間違いでした。
東芝がウェスチングハウスの親会社として
痛みを味わっているのは致し方ないことだと思います。」