5月23日 キャッチ!ワールドEYES
2009年に巨額の財政赤字が発覚しヨーロッパを揺るがす金融危機へと発展したギリシャ。
ギリシャは財政の立て直しのためユーロ圏各国などからの金融支援を受け
8年にわたって緊縮策を進めてきた。
公務員を減らし
年金の削減や退職年齢の引き上げ
国営企業の民営化や増税などを実施し
去年は経済成長がプラスに転じて
政府の財政は2年連続の黒字となった。
夏を控えたギリシャの首都アテネ。
早くも多くの観光客でにぎわっている。
去年は過去最高となる3,000万人以上の観光客が訪れた。
(オランダ人観光客)
「リラックスできるし
食べ物もおいしいし
人もいいね。」
(アメリカ人観光客)
「初めてきたけど
街は美しいし
金融危機の影響は感じないね。」
主要産業の観光業や船舶業が好調で
去年は1,3%の経済成長を記録したギリシャ。
財政黒字もGDP比で4%と目標を超え
政府は危機からの脱出に自信を深めている。
(ギリシャ政府報道官 ジャナコプロス氏)
「今年8月以降 再び市場で資金を調達し
独り立ちできるようになります。
ギリシャが戻ってきたことを世界に示す象徴的な証しとなるでしょう。」
しかし政府の税制の改善が進む一方で
その実感を感じられないのが多くの自治体である。
アテネ近郊のマンドライディリア。
人口1万3,000人の町である。
緊縮策で超職員は20%近く削減された。
国からの補助金も約60%減少し
最低限の行政サービスを行なうので精一杯になっている。
苦境が浮き彫りになったのが去年11月の洪水被害である。
集中豪雨で河川が氾濫。
25人が死亡したほか
多くの住宅や公共施設が壊滅的な被害を受けた。
町で教育や広報を担当するコンスタスさん。
洪水から半年近くたった今も
被害を受けた学校や公民館など公共施設のほとんどを修復できないと言う。
(町議会 教育・広報担当 コンスタス議員)
「ここは劇場です。
地域にとって宝石のような存在でした。」
学校の劇や映画が上映され市民の憩いの場となっていた町の唯一の屋内劇場である。
しかし土泥が流れ込み今も修復のめどはたっていない。
国が管理している施設も同じ状況である。
暖房施設や電気系統などに大きな被害が出た幼稚園。
廃墟のような状態で放置され
子どもたちは別の幼稚園に通わざるを得なくなっている。
(町議会 教育・広報担当 コンスタス議員)
「町としてはすぐに再開させたいです。
しかし施設の管理を担当している国の教育省が修復できないのです。」
コンスタスさんをやり切れない気持ちにさせるのは修復できない実態だけではない。
実は町は前から“河川が氾濫する危険がある”として洪水対策を企画していた。
別の水路を建設し町の中心を流れる河川の水量を減らすというものである。
計画は2014年にまとまり
地方政府に提案。
しかし財政不足を理由に実現されなかった。
(町議会 教育・広報担当 コンスタスさん)
「失望しています。
何もしていないのではなくやりたくてもできないのです。
大きな違いです。」
町はいまも洪水対策が実施されないことに抗議を続けている。
ギリシャの自治体組織のトップは
“国から財源を減らされ続けた結果自治体の能力は危機的な状況に陥っている”と指摘する。
(ギリシャ自治体連合 パトゥリス会長)
「校庭も歩道も道路も建設できなくなりました。
自治体は十分に役割を果たせず
かつての質もなくなったのです。」
緊縮策は市民の命にかかわる医療にも影響を与えてきた。
政府は健康保険の支出を抑えるため
市民が負担する薬代を増やした。
これが年金生活者など低所得者にとって大きな打撃となっている。
(年金生活者)
「月330ユーロの年金をもらっていますが
私と夫の薬代は300ユーロにもなるのです。」
追い込まれた人々を支援しようと医薬品を無償で提供する団体がギリシャ各地で活動している。
6年前に起ち上げ今も毎月500~600人の人に利用されている団体。
働くのはボランティアの人たち。
医薬品は国内外からの寄付である。
ありとあらゆる種類の医薬品をそろえている。
今ギリシャでは市民が一致団結して苦境を乗り越えようとしている。
(利用者)
「糖尿病で発作も出るので
ここがなければ私は死んでいます。」
(団体の運営責任者 ビハス医師)
「今の社会の状況が良くなる兆候はまったくありません。
物理的にも精神的にも踏みとどまっていられるのは
ギリシャで強まった連帯感のおかげです。」