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“独裁者”フランコ総統 進む歴史の清算

2018-12-05 07:00:00 | 報道/ニュース

11月7日 キャッチ!ワールドEYES


1970年代まで40年にわたってスペインを支配した独裁者フランコ総統。
フランコ総統の遺体は国の慰霊施設で手厚く埋葬されているが
今年発足したサンチェス政権は
「ほかの戦没者に敬意を欠く」などとして別の場所に移す方針を決定した。
独裁政権を否定し歴史を清算するのが狙いだが
フランコ総統の遺族や保守派などは強く反発している。
フランコ総統については独裁者と評価がある一方
国を飛躍的に発展させたなどとして
いまだに英雄視する市民も少なくない。
スペインはいま歴史の清算にどのように向き合おうとしているのか。

10月 スペイン中部の山間部で重機が路肩を降り起こしていた。
フランコ総統の支持者によって殺害された人たちの遺骨を発掘する作業である。
スペインでは今も11万人余がこうしたかたちで埋まっていると見られ
各地でNGOなどによる発掘が行われている。
(NGO 歴史記憶回帰教会)
「2000年からこれまでに約8,000の遺体を掘り出しました。
 国内に複数の人が埋められている場所が2,500か所あるとみられています。」
80年余前2人の親族がここで殺害され埋められたという88歳の女性。
(遺族)
「このあたりに2人が埋まっています。
 正確な場所は分からないけど
 父方の叔父さんとその甥です。」
2人はフランコ派の男たちに射殺されたという。
村の住民も多くが知っていたが
独裁体制が続く中ではこの話に触れることはタブーだった。
「なぜ殺されたのか。
 共産主義だったから。
 ただそれだけの理由です。
 遺骨を掘り起こしていると
 村の人たちに伝えたのに皆 無関心です。
 言葉がありません。」
1930年代スペインで起こった内戦で
フランコ将軍率いる反乱軍が勝利。
その後40年にわたり独裁体制を築き
この間 左派など反体制派を中心に数十万人が弾圧により殺害されたという。
フランコ総統の死から40年余。
いまだに影を落とす独裁時代の過去を清算しようという取り組みが動き始めている。
首都マドリード近郊にある国の慰霊施設 戦没者の谷。
フランコ総統の指示で建設されたこの施設には
スペイン内戦の戦没者3万人余が埋葬されていて
自信も手厚く葬られている。
ところが今年発足した中道左派のサンチェス政権は
独裁体制を否定するためフランコ総統の遺体を運び出す方針を決定。
遺族の希望に沿って別の場所へ移すとしている。
与党の議員は「独裁者が手厚く葬られている現状は民主国家にふさわしくない」と主張。
(社会労働党 オドン・エルロサ議員)
「国民を殺害し
 国の経済や文化に打撃を与えた独裁者が
 内戦などで亡くなった3万2,000人の人たちに背を向け
 名誉ある埋葬をされていることは
 民主主義の尊厳を損なうものです。」
これに対してフランコ総統の支持者は強く反発している。
スペインではいまもフランコ総統を
“国の礎を築き伝統的な価値観やキリスト教の教えを守った英雄”とみなす国民が少なくない。
フランコ総統の業績を伝える活動を行なっている財団。
チチャロ会長は「総統の遺体を移すことは歴史に対する冒とくだ」と訴える。
(フランコ財団 チチャロ会長)
「何百万人ものスペイン人の気持ちを傷つけるだけだ。
 今のスペインがあるのは60年代に飛躍的に発展させたフランコ総統のおかげです。」
ところがいま話は思わぬ方向に向かっている。
マドリード中心部にあるアルムデナ大聖堂。
王宮に面し
多くの観光客らが訪れる。
フランコ総統の遺族は
ここの地下に所有するスペースに総統の遺体を埋葬する考えを明らかにしたのである。
首都の中心部にフランコ総統が葬られることには市民からも反発の声が上がっている。
(市民)
「大聖堂はだめです。
 誰にもわからないところにすればいいのに。」
「大聖堂に移すのであれば動かさない方がいいです。」
「総統の家族が埋葬されている別の場所に移せばいいのに。」
大聖堂の近くにある店では
遺体が移されると大聖堂が支持者が集まる
いわゆる聖地となり
対立の震源地になると不安を隠さない。
(美術品販売店 店主)
「巡礼の場所になるおそれがあり
 対立を生むようなことは避けるべきです。」

過去を清算する取り組みは
2007年に社会労働党率いる政権下で法制化された。
独裁体制を非難し
犠牲者の名誉を回復することや
フランコ派に由来する地名を改めるとしている。
しかしその後フランコ派の流れを生む中道右派の政権に変わったことで
この6年間は動きが止まっていた。
フランコ総統の遺体を移すことは
過去の清算に取り組む政権に交代したことを強く印象付けるもので
サンチェス政権にとっては重要な政策なのである。
遺族は自分たちが所有する大聖堂の地下に埋葬するとしているため
今のところ法的には問題がない。
このため政府は大聖堂を管理運営するカトリック教会も巻き込んで解決策を見出そうとしていて
副首相がバチカンを訪れた。
政府としてはカトリック教会が遺族を説得することを期待している。
しかし教会側は
この問題はスペイン政府と遺族の間で解決されるべきだという立場だと伝えられている。
このため政府は2007年に制定した法律を改正して阻止することも検討している。
ドイツやイタリアは第二次世界大戦で敗戦国となって
国際社会の厳しい監視の中で
独裁体制が明確に否定された。
しかし大戦では中立をつらぬき敗戦国にならなかったスペインは
独裁体制が存続し
総統の死後も否定されないまま民主化が進んだ。
それだけに国内にはいまだにフランコ総統をたたえる声も根強くある。
サンチェス政権としては国内に残る独裁政権の象徴を取り除くとともに
いまだ地中にある犠牲者を家族のもとに返すなどして
過去の清算を進めるとみられる。
しかしフランコ総統の遺体を移すという今回の取り組みでも難しさが浮き彫りになったように
抵抗勢力は少なくない。
スペインが過去との決別を果たせるのか
サンチェス政権の手腕が問われている。




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