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ニューヨーク南西部で進む巨大な再開発

2018-12-25 07:00:00 | 報道/ニュース

11月27日 キャッチ!ワールドEYES


NYマンハッタンの3つの地区におけるオフィスビル空室率は
ミッドタウン     9,2%
ミッドタウンサンクス 7,4%
ダウンタウン    12,0%
いちばん空室があるのはウォール街があるダウンタウンで 
その1,5倍以上の人気があるのがミッドタウンサウスとなっている。
ミッドタウンサウスでは大規模な再開発が進行中である。
なぜこの地区がいま注目されているのか。

マンハッタン南西部の一角でニューヨークで過去最大の再開発が進んでいる。
列車の広大な操車場にふたをして敷地を確保するハドソンヤード・プロジェクト
総事業費は日本円で約2兆8,000億円と
民間による開発としてはニューヨーク最大の事業である。
東京ドーム2つがすっぽりと入る敷地には
商業ビルやデパートなど13棟を建設。
公園も整備され
さながら新たな街を1つ作るような開発である。
中心に鎮座する松ぼっくりに似たオブジェは新たな観光名所にする狙いである。
最も高いビルには屋外の展望台。
高さは東京タワーの先端とほぼ同じの地上300mである。
再開発の発端は15年ほど前。
当時ニューヨークは2012年の夏のオリンピック招致に名乗りをあげていた。
その際メインスタジアムの予定地がこの場所だったのである。
結局 開催権を得られず
リーマンショックもあって開発はストップ。
しかしここ数年ニューヨークで起きている企業の大移動をきっかけに再び動き出したのである。
もともと南のウォール街に金融業をはじめ多くの企業が本社を置いていた。
その後 北のミッドタウンへの移動が続き
2010年ごろから
ミッドタウンから
このハドソン・ヤードのあるミッドタウンサウスに拠点を移そうという企業が増えている。
このプロジェクトには日本企業も参加している。
2つのビルを所有する三井不動産。
その投資額は約5,500億円である。
日本国内の事業が低金利でなかなか収益が見込めないなか
有力な投資先として参加を決めたのである。
なぜいま企業は拠点を移すのか。
その理由は
ターゲットとする次世代の価値観そのものにあるようである。
まもなく引き渡されるオフィスには大きなテラスがつくられていた。
(三井不動産アメリカ 社長)
「もともとこちらのビルの設計を進める際に
 テラスを設けるよう工夫をしてきました。
 とりわけミレニアル世代というか
 若い方の交流や憩いの場を提供する感じでした。
 いい人材にアピールするためのひとつの仕掛けなんでしょう。」
ミレニアル世代”。
おおむね1980~2000年にかけて生まれた人たちのことで
アメリカではすでに労働人口の35%
数年後には半分を占めると言われている。
その世代の中でも
高学歴で
アメリカ経済のけん引役を担う人たちが気に入るオフィスが必要となっているのである。
ハドソン・ヤード近くに住む岩泉紫響さんとエマさんのカップル。
今泉さんはアメリカ育ちの24歳。
建築デザインの仕事をしている。
インテリアデザイナーのエマさんと友人の3人でシェアして住んでいる。
バルコニーと2つのベッドルームとリビングで
家賃は月60万円超。
ここでの生活が気に入っているという今泉さんは
“ミレニアル世代”と呼ばれる自分たちが求めるものがこの地区にあるという。
(岩泉さん)
「ハドソン川も見えるし
 公園もあるし
 とてもいいところです。
 だから多くの企業や大勢の人々がここに集まるのは当然だと思います。」
ハドソン・ヤードのすぐ南には
洒落たレストランなどが多いチェルシー地区がある。
若者に人気のエリアがオフィスの近くにあることも
開発の原動力になっている。
(市民)
「すぐ近くで働いていますが
 眺めもいいし
 最高です。」
「キラキラした街でないとダメですが
 もちろん便利さも大切です。」
ミレニアル世代が未来を支える。
岩泉さんたちの会話には
「金融の街ウォール街だけがニューヨークの中心ではない」といった
新世代の自負心のようなものが見え隠れする。
(エマさん)
「ウォール街で働くのは
 私には合っていないと思います。」
「僕たちミレニアル世代が求めるのは
 常に新しい場所です。
 古い世代の人たちが不況を味わった場所ではないのです。」

企業業績がもうかっていることに加え
トランプ大統領の減税もあって
不動産に関しては企業が投資に回す資金が増えている。
“ニューヨークの中心に拠点を作って新しい若い人材をとる”。
オフィスビルの需要はかなり強いと言っていい。
マンハッタンの賃料は2008年のリーマンショックで大きく落ち込んだが
その後順調に回復し
すでにリーマンショック前を超える水準にまで上昇。
海外企業のニューヨークの商業不動産に魅力を感じている。
三井不動産のほかにも
ミッドタウンに東急不動産も大規模ビルを建設している。
マンハッタン全体で新しいビルがどんどん建っている。
若い世代にはウォール街は人気がないようである。
金融業が人気がないわけではなく
街の古さが人気がないのである。
不動産業でも新しくオフィスを作る余地が乏しく
建物自体が古い。
このためウォール街にあった大手金融グループはどんどん北へ移動している。
ハドソン・ヤードの新しいビルには大手ヘッジファンドが入居を決めている。
ミッドタウンにあるアメリカ総局の隣の隣のビルにはバンク・オブ・アメリカの拠点がある。
金融業を目指すミレニアル世代をひきつける意味でも
ミッドタウンは魅力である。
オフィスビルは需要が旺盛だが
住宅は頭打ちで
飽和状態になりつつあるというデータもある。
地元の不動産業界のジンクスで
1922年のエンパイアステートビル着工の直後に世界恐慌が起きた。
入居者があまり集まらなかった。
「エンプティーステートビル」=「空っぽのビル」と揶揄された。
大きなビルを建て始めると景気が落ち込む。
その声がまた強まってくるかもしれない。
景気には山と谷がある。
リーマンショックのあと山はずっと続いてきたもので
来年7月まで続けばアメリカの景気拡大は121か月と戦後最長になる。
そろそろ山が終わって谷に向かうという声も出てきている。
そのきっかけは何か。
1つは中国との貿易摩擦といったトランプ政権の政策。
もう1つは起業はもうかっている一方負債も多いとされている。
アメリカは金利が上がっていく予定である。
金利の上昇が負債の多い企業の経営を苦しめるという指摘もある。
そろそろ谷が来るのではという見方があるのはたしかである。
先日 OECD経済協力開発機構は『世界経済は谷を超えた」というリポートを発表した。
その経済を引っ張ってきたのがアメリカ
その中心がニューヨークである。
今年は活況を呈する不動産の再開発の進捗を横目に見ながら
景気のほころびを注意深く見ていく年に来年はなりそうである。




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